ムクちゃんに幼馴染み生やせ   作:Switch2外れた

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 冒頭のお知らせは読み飛ばしていいです。


第2話

 

《お知らせ》ZAロワイヤルにご参加の皆様へ《重要》

 平素より当アプリのご利用、並びにZAロワイヤルへのご参加ありがとうございます。先日より多数のお問合せを頂いております、ゴーストタイプの「のろい」を用いた戦法に関して、ZAロワイヤルのルールを一部改訂しますことをお知らせします。

 

①今後、ZAロワイヤルの開催エリアはより厳密になります。見かけ上開催エリアに含まれているようでも、屋内のほとんどはエリア外であるとみなされるように変更しました。個別の判定については、それぞれの地点でスマホロトムにご確認下さい。

 

②ZAロワイヤルのエリア外からエリア内に攻撃した場合、また逆にエリア内からエリア外に攻撃した場合、そのバトルはシステム上無効になります。また内外を跨ぐ攻撃によって、ZAロワイヤルのバトルに影響を与えることを禁じます。通報によって当該違反行為が発覚した場合、遡ってそのバトルの勝敗は無効になり、報酬の返還を求めると共に利用規約5条13項に基づいて──

 

 

▽▽▽

 

 

 未練がましくアプリ内の告知を睨みつける。意味もなく数度のスクロールを挟んでお問合せフォームを開き、ブラウザバック。ベッドに寝転んでダラダラそんなことを繰り返していれば、背中にぐぐぐと圧力が掛かった。

 

「狭い……」

 

「俺の台詞な。ここ俺の部屋、これ俺のベッド」

 

「どけ」

 

「だから俺の台詞な?道理を弁えてねえのか?」

 

「力こそパワー。力こそジャスティス」

 

「道理を弁えてねえのか……つーか決め台詞をそんな──ってオイマジで落ちッ」

 

 奮闘むなしく蹴り落される。あまりの横暴に沈黙していれば、下手人がこちらを見下ろして一言。

 

「さっきから何してる?」

 

「……ツッコまねえぞ」

 

「ボケてない。ロトムと睨めっこしてたから、壊れたのかと思って」

 

「機械も人も蹴っても直んねえよ。お前今シローさんよりヤバいぞ」

 

「失礼極まる……それで?」

 

「あ?」

 

「悩みがあるなら優しい優しい幼馴染のムクちゃんが聞いてあげてもいい」

 

「ベタなツンデレみたいな……はあ。ま、ありがとよ」

 

 なんだか気まずくなって、床に寝転んだままごろんと顔を逸らした。相槌とも吐息ともつかない曖昧な「ん」という音を背に、少し目を瞑って──こう切り出した。

 

「金がないんだ」

 

「貸さない」

 

「え?流石に悪いって。ちゃんと返すよ」

 

「そっちじゃない。単に貸さない」

 

「ちゃんと返すよ?」

 

「貸さない」

 

「三千円、三千円でいいから……!」

 

「……それぐらいもないのか?最近は色々奢ってやったのに」

 

「だからこそだよ」

 

 ここ最近、二人で遊びに行くときの金は大体ムクが出していた。食事や交通費に限らず、服さえ奢ってもらったぐらいだ。

 先日巻き上げた賞金を返す、という名目である。別に盗まれた訳でもなく、ムクが正当に勝ち取ったものなので、返すも何もないのだが──それはさておき。

 

「人の金でする買い物ってさあ、自分の所持金が減らないからタガが外れるんだよね……」

 

「……まあ、びっくりする速度で返し終わったな」

 

「しかも財布空でも平気ってなるとさ、金を稼ぐモチベもなくて」

 

「今からでもロワイヤルで稼げばいい」

 

「クエーサーが俺を虐めるんだ……見ただろロワイヤルアプリの通知!『開催エリアの厳密化で呪い戦法を弱体化します』って、ほぼ俺名指しじゃん!許せねえよ……!」

 

「普通に戦え」

 

「いやっ……それはさあ。頭脳派(スマート)じゃねえじゃん」

 

 身を起こす気配と共に言葉が止まる。振り向けば、なぜかこちらを訝しがった瞳。

 

「……なんだよ」

 

「もしかして──まだ暗いところが怖いのか」

 

「違うが?」

 

「そうか」

 

「違うが?」

 

「ふーん」

 

「だから違うって。いやつうかさあ……!普通は暗がりって嫌なんだよ。陰気なムクちゃんには難しいかもだが」

 

 そういう意味では、確かに俺は暗闇が怖いのかもしれない。しかしあくまで()()()()だ。

 夜中にトレイに行けないとか、電気を消して眠れないとか、そんなことはない。暗くなったら外出を控える。それぐらい当たり前の行いだろう。

 

「帰り道が怖いからってよくウチに泊まるもんな」

 

「ガキの頃の話だろ……!」

 

「今でもよく泊まるけど」

 

「最近は治安が悪いからな?」

 

 不意打ち上等のストリートファイトが流行している、というのは本来警察が取り締まるレベルの事態である。

 そんな中で夜道を歩くなど正気の沙汰ではないし、ましてや無防備に開催地に踏み入れるような真似、避けて当然だ。

 

「ああ、つまり暗くて奇襲がある(びっくりする)のがダメなのか」

 

「お前やっぱ心読めてる?」

 

「語るに落ちた……ムクお姉ちゃんが一緒に行ってやるか?」

 

「絶対に、やめろ」

 

 手を組むなんて卑怯な──という話ではもちろんない。俺の評判のためだ。

 

 最近奢られ続きでムクのヒモとして見られ始めてきた。ジャスティスの会からはムクに集る悪い虫だと思われているフシがある。

 コタネちゃんなんか「様」呼びから「さん」呼びに変わったくらいだ。

 

 それでもトレーナーとしての腕、つまりロワイヤルのランクでなんとか面目を保っているのに、この上ロワイヤルまでムク頼りだと思われた日には──

 

「──闇討ちされる。ジャスティスの会に!」

 

「どうせ夜外出しないから平気」

 

「お前ら昼でも無法者じゃん!」

 

「じゃあ今から無法者らしく振る舞ってあげようかな」

 

「人の言葉でそう易々と自分を変えるな。……ともかく、頼む!三千円だけ!お願いします!」

 

 改まってそう頭を下げれば、呆れつつも真面目に答えてくれる。なんだかんだ幼馴染、お互いそれぐらいの貸し借りは今までもあった。

 

「三千円で怖がりは治せないと思うけど、返す当ては。ウチでバイトでもする?」

 

「へっ……三千円で闇を切り裂いてみせる。新たなるZAロワイヤルの最強戦術を思いついたんだよ」

 

「ダサ……三千円で新戦術って、進化の石?」

 

「正解~!カナリィに憧れてゲットしたシビシラスくん、この度めでたく──」

 

 バッと身を起こしボールを放る。ぬるりと這い出るは細長いボディ。

 

「──シビビールになりました!」

 

 新しい体にはしゃいだシビビールが、うねうね踊りながら鳴き声を上げた。滑らかなその身体を撫でつけ、気分の良さを助長してやる。

 こうしてうちの子の可愛いところを見せつければ、なんだかんだ優しい幼馴染である。俺の魂胆を見抜いてかため息を吐き、しかし微笑んでこう言った。

 

「……わかった。進化祝い。それぐらい貸してあげる」

 

「っしゃい!信じてたぜムクちゃん!」

 

「ちゃんと返せ。返せなかったら──ジャスティスの会に入れる。そしてウチに住み込みで事務と家事を手伝ってもらう」

 

「……」

 

 思わず言葉に詰まる。俺はシローさんも大好きだしいい人だとは思っているが、それはそれとしてあの怪しすぎる集団の一員に数えられたくはない。

 ムクと親しい時点で言っても仕方のないことではあるが──いや、しかし。普通に返せばいいだけだ。返せば問題ない。

 

「お、おーけー。頼むぜシビビールくん。いや未来のシビルドンくん。マジで……!」

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