「……ハッ……」
濁った記憶の海の中で、再び目を覚ます。
視界を覆うのは、深い霧。
掴めそうで掴めない――大切な何かがその向こうにある。
(……これは……)
気づけば、自分の手には“あの剣”が握られていた。
一歩、霧へ踏み出す。
そして剣を振り下ろした。
本来なら霧など斬れるはずがない。
だが――
刃が通るたびに、霧は裂け、光が差し込んでいく。
「めたないとー!!」
もう一振り。
「おいメタナイト! 早くこっちに来いよ!」
もう一振り。
「メタナイト様ー!はやくはやく!」
遠くで聞こえる、懐かしい声。
仲間たちの声。
「「「メタナイト様ーー!!」」」
信頼できる部下たちの声。
その呼び声に胸が熱くなる。
(……どうして忘れていた……?)
霧が完全に晴れたその瞬間――
自分の記憶が鮮明に心へ戻ってきた。
(ナイトさん!?どこへ……って……あら?)
本来なら迫ってくるはずだった黒い塊の攻撃が――来ない。
不思議に思い目を開けると、そこには──
青い閃光に切り伏せられ、消えかけている黒い塊たちの姿があった。
「ナ、ナイトさん!?」
そして空から青い光が舞い降りる。
翼をなびかせ、静かに着地した影。
「怪我は無いか、ナギサ殿。」
「え、ええ……大丈夫です。ですが……ナイトさんこそ……!」
先ほどまで意識を失っていた姿が嘘のようで、ナギサの声は揺れる。
メタナイトは一度周囲へ視線を走らせる。
ナギサ一人だけの状態、現在地、今何をするべきか──状況を一瞬で理解した。
「……話は後だ。ナギサ殿、寮へ向かい救援を頼む。私はミネ殿とハスミ殿のもとへ向かう!!」
次の瞬間、青い光が弾けた。
メタナイトの姿はその場から掻き消え、
雷鳴の中、再び校舎へと飛び込んでいった。
校舎に入った瞬間、
空気そのものが淀んでいるのが分かった。
(先程の黒い霧……やはり…ダークマターの仕業か!!)
黒い霧が廊下を這い、天井から滴るように降りてくる。
その一つ一つが意思を持ったかのようにメタナイトに向かって襲いかかった。
「遅いっ!」
迫り来る黒い塊を一つ、二つ、三つと次々と斬り倒していく。
青い残光とともに、メタナイトは瞬く間に敵を斬り伏せた。
倒れた黒い塊は床で震え、霧のように消えていく。
だが進むたび、また別の塊が壁や天井からあふれ出す。
「数が多いな……。ならば!」
メタナイトの体が青く光り始める。
「メタクイック!」
翼の音と同時に、残像が残るほど素早い光が廊下を駆け抜ける。
≪ガアアァ……!≫
≪ギャアアッ……!≫
そしてその残像が通った後には叫び声意外何も残らなかった。
曲がり角に差しかかった瞬間――
黒い塊十数体が群れを成して何かを覆っていた。
メタナイトは剣を高く掲げる。
刀身に光が集まり、金色の剣に青のオーラが走る。
「スカイナイトソード!!」
振り下ろされた刃から、衝撃波が疾風のように放たれた。
爆ぜる風圧が廊下を揺らし、黒い塊の群れが一斉に吹き飛ばされる。
霧が晴れた先――
盾を構えたまま、黒い塊の塊に埋もれていたミネの姿が現れた。
「ナイトさん…!?」
メタナイトはすぐさま駆け寄り、残った霧を払う。
「ミネ殿、無事か! 話は後だ。ハスミ殿はどちらに!」
「私は……大丈夫です!ハスミさんはあちらの階段の方です!」
ミネが指差したのは、廊下の奥に続く階段。
そこでも黒い塊たちが蠢いており、何かを押しつぶすように蠢いているのが見えた。
「了解した!」
メタナイトはミネを安心させるように頷くと、次の瞬間には光のような速さで駆け抜け、周囲の黒い塊を青い軌跡を残しながら切り裂いていった。
階段へ向かう途中――
突如、黒い塊がうねりを上げながら一斉に集まり、
廊下いっぱいに“壁”のように立ちはだかった。
「邪魔だ――ドリルスラッシュ!」
メタナイトが剣を前に突き出した瞬間、彼の身体が回転しながら突進する。
渦を巻く刃が黒い塊を次々と引き裂き、
霧の破片が四方へ散っていく。
その勢いのまま、階段前に群がっていた大きな塊の中心へ突っ込む。
衝撃とともに黒い霧の群れが吹き飛び、
消え残った霧が天井付近で揺らめき、薄く消えていった。
その奥――
階段の壁にもたれかかっているハスミの姿が見えた。
「ハスミ殿、無事か!?」
だが返事はない。
むしろ彼女の身体からは、じわりと黒いオーラが立ち上っていた。
「……遅かったか!」
メタナイトが即座に跳躍。
直後、彼がいた床に銃弾が叩き込まれ、火花が散った。
「ハスミさん!?」
駆けつけたミネの目に映ったのは――
黒い気配に包まれ、無表情で銃を構えるハスミと、
その攻撃をかわすメタナイトの姿だった。
「ミネ殿! ハスミ殿は今、敵に操られている!」
メタナイトはそう叫びながら剣で斬り込む。だがハスミは驚くほど鋭く動き、メタナイトの斬撃をギリギリで回避した。
あの身体とは思えない速さと正確さ――“あのハスミ”だからこそ、操られた今が最悪だ。
「解除するには、一度気絶させるほどの衝撃を与える必要がある。だが……ダークマターは宿主が強いほど、さらに強力になる。」
短く言い切ると、メタナイトはミネの方を見る。
その視線は真剣そのものだった。
「ミネ殿、無礼を承知で問う。
ハスミ殿の戦闘力は……どれほどだ?」
ミネは唇をかみしめ、小さく息を呑む。
「……ハスミさんは、トリニティでも上位の実力者です。精神的にも、肉体的にも。今の私では……正面から押し留められるかどうか……」
ハスミは再び銃を構え、こちらへ照準を合わせる。
その双眸には、冷たく研ぎ澄まされた“殺意”だけが宿っていた。
――だが。
その次に耳に届いたのは銃声ではなかった。
「……ん? 何か聞こえて――」
ミネが言い終える前に、
ハスミの横の壁が爆音と衝撃とともに吹き飛んだ。
「何奴!?」
砂煙が廊下に広がり、瓦礫が転がる。
その向こうから――
「き”え”え”え”え”ッ!!」
その制服は赤に染まり、視線は合わず。
黒いショットガンを肩に担ぎ、狂気じみた奇声を上げた少女が姿を現した。
メタナイト
かめんの ナイトが クールに
けんざんっ! あおき つばさで
空をとんで つるぎでかれいに
てきを うつ! すばやさ ピカイチ
しゅぎょうの せいかだ!