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彼方からの旅人
「いやー、面白かったねー!」
青い扉が開き、とある部屋から四人の少女がぞろぞろと姿を見せる。
「はい!最高のゲームでした!!」
「次は協力型アクションとか作るのも良さそうだね。」
「プログラムが大変になりそう……。」
今ミレニアムで話題沸騰中のタイトル――
『森のポーヴィPiiDx』。
昔のPiiというレトロ機で出ていた『森のポーヴィPii』を、最新技術でまるっと作り直したリメイク作だ。
懐かしさで手に取る大人もいれば、純粋に面白くてハマる子どももいる。
まさにミレニアム内外で“世代を超えて遊ばれているゲーム”となっていた。
そして四人は、つい先ほどその作品の100%クリアを終えたばかり――。
「しかし、あそこでアイツが裏切るとは思わなかったねぇ……」
「アリス……その後の展開で感動しました……!改心して戻ってきてくれてよかったです!!」
「ねー……って、あれ?」
ミドリがふと足を止め、窓の外を指さす。
視線の先――
中庭の上空に、空を爪で裂いたみたいな裂け目が浮かんでいた。
まわりの空気がじわじわと歪んで見える。
「……なんだろう。エンジニア部の新しい実験……?」
ミドリが眉をひそめ、まじまじと観察する。
「あれ!ポーヴィに出てきた“異空間ゲート”にそっくりです!!」
「あー…確かに似てるかも。」
「みんな、ちょっと行ってみようよ!」
「だ、大丈夫かな…」
結局いつもの調子で、好奇心が勝った。
ゲーム開発部の四人は顔を見合わせ、そろって中庭へと駆け出した。
「下から見ると、ほんとにポーヴィのゲートそっくりだねぇ……」
モモイたちは、中庭のど真ん中にぽっかり浮かぶ裂け目の真下へとたどり着いた。
その裂け目は星をちょっとぐねらせたような見た目をしている。
「周りに誰もいないし……これ、やっぱ実験じゃないのかも……?」
ユズが周囲をぐるりと確認するが、エンジニア部はおろか、学生の姿はひとつもない。
その静けさの中で――
アリスがふとピクリと肩を揺らす。
「……? 今、何か聞こえませんでしたか?」
アリスは耳に手を当てる。
「なにも聞こえないよ?」
モモイも真似して耳に手を当てるが首をかしげる。
「いいえ!聞こえます!誰かが『あああ』って叫んでいるような……!」
「えー?、そんなの聞こえないって~」
「……待ってお姉ちゃん。確かに聞こえる。」
ミドリが真剣な顔で空を見上げる。
「わ、私も。なんか……少しずつ大きくなってる?」
ユズも同じように耳を澄ませながら、徐々に顔色を変えていく。
「え、ちょっと、皆して私をからかって――」
モモイが言いかけて、ふと裂け目を見上げた。
その瞬間。
「……え?」
裂け目の奥――
蒼い光のようなものが、どんどん大きくなっている。
「ちょ、ちょっと!? 皆あれ見て!!」
モモイが指を震わせながら裂け目を指さす。
他の三人も同時に顔を上げた。
「え、ちょっ……なにあれ!?」
「何か落ちてくる……!?」
「なんでしょうかあれは……?」
「えっどうするどうするどうする!!?」
四人の声が一斉に中庭に響き渡る。
「ウワアアアアアアア!!?」
突如響いた絶叫。
それはモモイたちの真上――裂け目の中からだ。
次の瞬間、中庭に衝撃音が鳴り響き、土と砂埃が舞い上がる。
四人は砂埃に思わず顔を覆う。
土煙が晴れそこに現れたのはーーー
土に半分埋まり、ぽこん、と球体のように盛り上がっている何か。
その青い体の一部と、白い布のようなものが地上にのぞいていた。
「な、なにこれ!?」
「生き物……には見えないような……?」
「ポーヴィに出てきた“トロロア”の登場シーンに似てます!!」
「にしては船が無いけど……」
観察していると――
「チョ、チョット! そこに誰かいるのカイ!?」
「「「うわっ、喋った!??」」」「喋りました!!」
四人の声が揃って裏返る。
「助けてヨォ!! 地面にハマって抜けないんダ!」
確かに、青い球状のそれはバタバタと体を揺らしていた。
「わかりました!!」
「ちょ、ちょっとアリス!?」
アリスは反射的に駆け寄り、青い球体を両手でしっかり掴む。
「引っ張ります!」
「イダダダダダダダ!! チョット力強イ強オ強イ!!」
青い球がぐにょっとわずかに伸びる。
ミドリが思わず眉をひそめた。
(伸びた……?)
「えーいっ!」
小気味よい音と共に、何かが勢いよく土から飛び出した。
「抜けました!!」
「「「…………えっ」」」
アリスの腕の中には――
直径30センチほどの青い球体と、ふわふわした白いローブ。
歯車のようなものがかたどられた服に、茶色の肌。
そして目がついていて、明らかに何かの生物である。
「イタタタ……。」
「大丈夫ですか?」
アリスは心配するように腕の中にいるそれを覗き込む。
「すっごい痛かったケド…何とかネ…。マ、助けてくれたし、一応感謝しておこうカナ。アリガトウ!」
「いえ! 困ってる人がいたら助けるのは当然です!!」
まっすぐな瞳で答えるアリス。
「……」
そのアリスの澄んだ瞳を見た瞬間、彼は無意識のうちに“ある記憶”を重ねてしまった。
困ったふりをして嘘をついて、必死に取り繕っていた自分にためらいもなく手を伸ばしてくれた。
裏切ったあとでさえ、何ひとつ恨み言を口にせず、普通に、当たり前のように、自分を救ってくれた。
(……カービィ……)
胸の奥が不意にちくりと痛む。
懐かしさと、やましさと、言葉にできない何かが混ざって。
青い球体は、しばし動きを止めてしまった。
「え、えーっと……固まってるとこ悪いけど…あなた、誰?」
モモイが気まずそうにそっと声をかける。
「ハッ、イケナイイケナイ!」
マホロアは我に返り、軽く頬(?)を叩いてぱぱっと頭を振ると、表情を明るく切り替えた。
「自己紹介がマダだったネ!」
アリスの手からぴょんと飛び降り、くるりと一回転して両手を広げる。
「ボクはマホロア! プププランドっていう国からやってきたんダ! ヨロシクネ!」
その瞬間――
今度はゲーム開発部が全員フリーズした。
まるで時を止められたみたいに固まる。
(アレ?ナンカ思ってた反応と違うナ…)
「ゴメン、あの、ちょっとだけ良いかな?」
「ウ、ウン。」
モモイがひきつった笑みでメンバーを手招きし、四人は端へ集まって小声で相談を始める。
「ちょ、ちょっと! 本当にトロロアみたいなの出てきたんだけど!?」
「しかも自己紹介までそっくりだったね……?」
「じゃ、じゃあ悪い奴なのかな……? 」
「で、でもトロロア最後は改心しましたよ!」
「それはエンディング後の話でしょ!?」
小声で盛り上がる四人。
少し離れた場所で――
(……ナニ話してるんダロ?)
マホロアはぽつんと取り残され、きょろきょろしながら中庭を見回していた。
(服装も建物モ……見タ感ジプププランドよりズット発展してるネェ……でも、エッガーエンジンズとは違ウ発展の仕方……どちらかというとスージーが言ってたHWCが建造シタ都市の方に近いのカナ?)
その頃、校舎の向こうで――
誰に気づかれることもなく、黒い煙がふわりと立ちのぼった。
細く細く、糸みたいにのびて、
ゆらゆら揺れながら空へ消えていく。
音はひとつもない。
破裂もしない。叫びもない。
ただ建物の影から、静かに“それ”だけが漏れ出していた。
この日、ミレニアムで何かが静かに動き始めたことを――
まだ誰も、知らなかった。
マホロアの喋り方が難しい...
読みづらいと思う方がいらっしゃいましたらお教えください。