桃色の軌跡   作:逆襲

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愉快なパーティーゲーム

セミナー部室の扉が、軽い音を立てて開いていく。

 

「あ、お疲れ様です、ユウカちゃん」

 

中では、さっきまで外に出ていたはずのノアが、書類を片付けながらこちらへ振り返った。

 

 

「お疲れ、ノア。ごめんね……こっちがバタバタしてたせいで他の用件をほとんど押し付けちゃって」

 

 

「気にしなくていいですよ。修理の依頼と報告は、もうまとめて提出しておきましたので」

 

ノアが柔らかく微笑む。

その後ろから、まるでユウカの影に隠れるように、ゲーム開発部の4人がぞろぞろと部室へ入ってきた。

 

「ノア先輩こんにちはー!」

 

「ええ、こんにちは……あら?」

 

ノアの視線が一人ひとりを順に追う。そして、ふとアリスの腕の中に抱えられたマホロアに目が止まる。

マホロアはノアの視線に気づくと、軽く手を振った。

 

 

「ユウカちゃん、こちらの方は……?」

 

「それを今から話し合うところよ。皆、あっちのソファに座って。」

 

 

 

 

 

「こちらをどうぞ。」

 

「ありがとネ。」

 

マホロアの前にお茶が置かれる。

そしてノアがソファにが腰を下ろし、空気がようやく落ち着いた。

 

 

「じゃあ聞くわね。マホロア、あなたはどうしてミレニアムに?」

 

「理由……というカ、ここに来るマデの経緯の方が正確カナ?」

 

マホロアがユウカを見上げる。

 

「どちらでも構わないわ」

 

 

 

「ボクの国でネ、空に奇妙な裂け目が見つかったンダ。……イヤ、裂け目自体はよく見つかるンだけド、そいつは今までと違って妙なエネルギーが溢れ出していてネ」

 

 

「裂け目って……さっき私達が見たやつかな?」

 

モモイが興味津々で前のめりになる。

 

「たぶんソレ。ボクは仲間と調査に向かったんだけド……急に裂け目が吸い込む力を出してネ。気がついたらここに落ちテタ、ってワケ。景色を見る限り、ボクがイタ星とは別の星だろうネェ……」

 

「「「「「別の星……!!」」」」」

 

その言葉がゲーム開発部のテンションを爆上げさせる。

 

 

「はいはい、興奮するのは後。落ち着いて」

 

ユウカが軽く手を叩くと、4人は我に返った。

 

 

「それデ、仲間もバラバラだし、調査どころじゃナイんだヨ……」

 

「なるほど……」

 

ユウカは腕を組み、困ったように息をついた。

 

 

「助けてあげたいのだけど……ごめんなさい。今ミレニアムは問題が山積みなの。さっきのメカワニの件もあるし……」

 

 

そう言って頭を下げるユウカ。

 

 

その隣で、モモイが勢いよく手を上げた。

 

「それ、私たちが手伝うよ!」

 

「お姉ちゃん!?」

 

ミドリが大きく目を見開く。

 

「だって困ってる人……人かどうかはわかんないけど、そのままは嫌だし!」

 

「はい! アリスもお手伝いしたいです!」

 

アリスがぴょこんと手を上げる。

 

 

「まぁ、確かに事情聞いといて放っておくのは気が引けるね」

「う、うん……私も」

 

ミドリとユズも続いて賛同した。

 

「あと、この展開がすっごくポーヴィに似てる!!」

 

(((ポーヴィ……?)))

 

ユウカ、ノア、マホロアの頭に同時に謎の単語が刺さる。

 

 

「そ、それはありがたいけど……任せて大丈夫なの?」

 

ユウカが困惑しつつ4人を見る。

 

「ユウカちゃん、良いんじゃないでしょうか?エキスポの時も、無事セイアさんを満足させていましたし。それに…私達はやることが山積みですから」

 

ノアが机の上に山積みになった書類を見る。

 

「ノアまで……そうね、わかったわ」

 

 

ユウカは深く息をつき、立ち上がると4人の前に立つ。

 

 

「じゃあ、マホロアのことはあなた達にお願いするわ。案内とか、失礼のないようにね」

 

「任せて!!」

 

モモイが元気よく返事し、アリスも勢いよくうなずく。

 

「ほんとお願いよ? 騒ぎを増やさないでね」

 

「はーい!」

 

4人とマホロアは手を振りながら、そそくさと部屋を出ていった。

扉が閉まった瞬間、ユウカはそっと額を押さえる。

 

 

 

「……本当に大丈夫かしら」

 

 

 

 

 

 

場面は変わり、ゲーム開発部の部室前。

 

「さてと! マホロア! まずは私たちの部室を紹介するよ!」

 

モモイが勢いよくドアを開けた。

 

「オオ……」

 

マホロアの目に飛び込んできたのは――

散らかったお菓子の袋、床に積まれたゲームパッケージ、棚にずらりと並ぶゲーム機。

壁際には中古コントローラーの山。壁に立てかけられた銃。

 

カーテンの隙間から差し込む光が、部屋の中に舞うほこりをきらきらと輝かせていた。

 

「ちょっと散らかってるけどね……」

 

ミドリが申し訳なさそうに呟く。

 

「ゼンゼン大丈夫ダヨ。」

 

マホロアは部屋をぐるっと見回すと、どこか懐かしそうに目を細めた。

 

(ナンダカ……ハルカンドラでローアを発掘してた頃を思い出すネ……)

 

 

「私たちはここでゲームを作ってるんだよ」

 

 

「ゲーム……ってイウと、『ゲーム〇ーイ』とか『ス〇ッチ』みたいナ?」

 

「なにそれ? 最近の主役は『GS5』と『ゲームガール』だよ!」

 

「ヘェ……」

 

(ゲーム機の歴史も文化も、ボクの知ってるものトは全然違ウみたいダネ……)

 

 

「じゃあさ、とりあえずなんかやろうよ!」

 

モモイがモニターの前に座り、みんなを呼ぶ。

その時、さっきまで遊んでいた『森のポーヴィPiiDX』のパッケージが目に入った。

 

「そうだ、これなんか――」

 

と言いかけた瞬間、パッケージのトロロアが視界に飛び込み、作戦会議での出来事が脳裏をよぎる。

 

――“トロロアみたいなのが出てきた”――

 

「やっぱりこっちかな!?」

 

モモイは慌てて棚から別のゲームのパッケージを引っ張り出す。

 

 

「『大乱戦スマッシュシスターズ』? どういうゲームダイ?」

 

(なんかスマ〇ラみたいダネ…)

 

「これはね、いろんなゲームのキャラクターが出てきて戦う格ゲーなんだ!」

 

「格ゲーの中でも初心者向きなんだよ」

 

ミドリが補足する。

モモイがゲーム機の電源を入れる。そして画面には『大乱戦スマッシュシスターズ』の文字が並ぶ。

 

「8人までできるから一緒にやろう!!」

 

それぞれのカラーの座布団に座る。そして真ん中の濃い青の座布団へとマホロアが座った。

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと!? マホロア、うまくない!?」

 

モモイが叫ぶ。

 

画面の中では、マホロアが操作する渋いおじさんキャラが、流れるような動きでモモイのキャラを吹き飛ばしていた。

 

「え、えぇ!? マホロアって初めてだよね!?」

ミドリが慌ててコントローラーを握り直す。

 

「……まるで長年遊んでいたかのような精密操作です……!」

 

アリスが目を輝かせる。

 

 

「ンー…なんでダロウネ?」

 

マホロアは首を傾げつつコントローラーを操作する。

 

(まんまス〇ブラだネ……)

 

モモイが額に汗をにじませたその瞬間――

 

「ぎゃー!? また復帰阻止された!!」

 

モモイのキャラが画面外へ消える。

 

「アリスが行きます!」

 

アリスも果敢に挑むが、マホロアの奇妙な動きとフェイントに翻弄され――

 

「うわぁぁん!? やられちゃいました!!」

 

「ま、まだ私が……っ!!」

 

ミドリが操作する忍者のキャラもコンボを狙うが、

 

「ソレッ!」

 

とタイミングよく放たれた必殺技に巻き込まれ――

 

「私たち全員やられた!?」

「うっそ……ほんとに初見……?」

 

三人が呆然とする中、最後に残ったユズが静かにコントローラーを握り直す。

 

「……じゃあ次は、私だね」

 

「キミも倒しちゃうヨォ?」

 

ユズは微笑んだ。

 

「大丈夫。あなたのクセ、もう全部見えたから」

 

その言葉に、マホロアは小さく首を傾げる。

 

「クセ……?」

 

それと同時に、マホロアのキャラが勢いよく攻め込む。

しかしユズの操作する格闘家のキャラは、まるで未来を読んだかのようにすべての攻撃をいなしていく。

 

「ア、当たらナイ!?」

「流石UZQueen……!」

 

モモイが唸る。

 

「マホロアさんはね……攻撃する前に、いつも一瞬だけ左にスティックを入れるクセがあるんです」

 

ユズは淡々と説明しながら、冷静に反撃を重ねていく。

 

(バ、バレテタ!?)

 

 

マホロアが驚いたその瞬間――

 

 

ユズの的確な追撃がマホロアのキャラを大きく吹っ飛ばした。

 

「アアッ!?」

 

ユズが傷を受けることなく圧勝した。

 

「すごいです! 流石UZQueenです!!」

 

アリスがパチパチと拍手する。

 

「UZQueen?」

 

マホロアが聞き返す。

 

「そう。ユズは“UZQueen”って名前で、ミレニアム最強のゲーマーなんだよ!」

 

モモイが胸を張る。

マホロアはコントローラーをぽすんと置き、呆然とつぶやいた。

 

「道理で強いワケダ……」

 

ユズは少し照れくさそうに微笑む。

 

 

そして。

 

「よし! もう一回やろう!」

 

「「「「うん!!」」」」

 

賑やかな歓声とボタン音が、ゲーム開発部の部室に響き渡る。

 

こうして、ミレニアムのゲーム開発部にまたひとり、ゆかいな仲間が加わった。

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