20000突破からそんなに間が空いていないのに...
これも皆さんのおかげです!ありがとうございます!
「ここが、さっきのウタハ先輩が部長をしてるエンジニア部の部室だよ。」
ヴェリタスの部室から移動してきた一行は、巨大な金属扉の前で足を止めた。
部室というより工房のような音が中から響いている。
(サテ……どんなモノを作ってるンダロウ……?)
「失礼します!!」
アリスが勢いよく扉を開けると、扉の近くにいたウタハがこちらに振り向く。
白衣の袖で額の汗をぬぐい、少し疲れてはいるが目は生き生きしている。
「おや皆。さっきぶりだね。」
「ウタハ先輩こんにちは!」
「こんにちは。」
「こんにちは!!」
「こ、こんにちは...」
それぞれがそれぞれの挨拶をする。
「どうしたんだい?武器の調子でも悪くなったかい?」
「今、私達でマホロアに学校案内をしてあげてるんです!!」
アリスの腕の中から、マホロアが小さく手を振る。
「なるほど、そういうことか。ちょうど良かったよ。今、新しいものを作っててね。よかったら見ていくかい?」
「アリスも気になります!!」
ウタハが後ろのガレージに手を向ける。
「これが今作っている試作品だよ。」
そこに並んでいたのは――
星型のひらべったいプレート。
一つ目のライトがついた奇妙なバイクのようなもの。
羽を広げた鳥のような板状のプレート。
重心が常識外れの逆ピラミッド型の機体。
見慣れない形状のものがガレージに整然と並んでいた。
「ウタハ先輩、なんですかこれ……?」
ミドリが思わず口を開く。
「ああ、それはね――」
ウタハが説明を始めようとしたその時。
(ワ、ワープスター……ウィリーバイク……ウィングスター……ルインズスター!?
コレ、全部ホンモノの……エアライドマシン!?)
マホロアは思わず言葉を失った。
サイズは元より少し大きく見えるが、形状は間違いなく自分の知る機体たちだ。
かつて自分が書いたメモと同じか確認しようと、ポケットに手を入れる。
(……アレ?)
だが、指先に紙の感触がない。
焦って別のポケットも探すが、どこにもない。
「このメモに載ってあったものなんだよ。」
ウタハの口からその言葉が出た瞬間、マホロアの手が止まった。
(メモ……!?)
見ると、ウタハの手の中に一枚の紙。
そこに書かれた文字――自分の字。
「チョ、チョット!! そのメモ、ドコで手に入れタノ!?」
「これかい?」
ウタハが軽く紙を振る。
「さっきのメカワニ君の残骸のところに落ちていてね。もしかして君のものだったのかい?」
そこでふと、少し前の出来事がよぎる。
モモイが焦って自分を抱え上げた時――
何かがひらりと落ちた感触が、かすかにあったような気がした。
(ア、アノ時カ……!)
「ソ、ソウダケド……! アレを形にしたのカイ!?」
マホロアは信じられないという表情で機体群を見渡した。
ポップスターに突如現れたエアライドマシン。
それを調査して書き残した単なる構造考察のメモ。
(アレは……本当にラフ程度で書いたんダケド……ソレで実物を作れるヤツがいるなナンテ……)
胸の内側がびりっと震える。
「マホロア? これが何か知ってるの?」
モモイが覗き込む。
「ウ、ウン。コレはエアライドマシンって言ッテネ……ボクが住んデル星にアル乗リ物ナンダ。乗ることで移動が便利ニナッタリ、レースをシタリするモノナンダ。」
「へぇ〜! これ乗り物なんだ!」
そこへ――
ガレージのシャッターがガラガラと開き、コトリとヒビキが入ってくる。
「部長、パイロンの設置が終わったよ。」
「スピードメーターも設置終わりました!」
「二人ともありがとう。……よし、これで準備完了だ。」
ウタハがチェックシートに最後の〇をつけると、顔を上げた。
「そうだ。ちょうど調整が終わったところでね。良かったら皆、試運転を頼めるかい?」
「良いんですか!?」
「乗りたいです!」
「私も!」「わ、私も……!」
ゲーム開発部の面子が色めき立つ中、マホロアが少し不安そうに声を漏らす。
「ダイジョウブ? 初めて乗る人ナラ事故リそうダケド……」
「そ、それもそうか……」
ウタハは腕を組み、しばし考えた後、マホロアへ視線を向ける。
「マホロアは操縦したことはあるのかい?」
「結構あるケド……」
「ではまず君が乗ってくれないかい? 本来ならお客さんに頼むことじゃないんだが……安全確認には一番確実だ。」
「ボクが!?……マァ、ボクも気にはナッテはいたカラ……イッカ。」
「助かるよ。」
マホロアがワープスターへ近づき、そのふちを軽く撫でるように確認してからひょいと乗り込む。
「では、ケーブルを外してくれ!」
ウタハの声にヒビキが素早く反応し、ワープスターに刺さっていたケーブルを引き抜いた。
「よし、電源を入れるぞ!」
ウタハがスイッチを押すと、スターの縁が淡く光り――
ふわり、と地面から浮かび上がった。
「すごい! 浮かんだ!!」
モモイが目を丸くし、アリスは目を輝かせる。
「出力良好!問題ありません!」
モニターを見ていたコトリも報告する。
ウタハが満足げにうなずく。
「よし、マホロア。そのまま外のコースを一周してみてくれ。」
「オーケー。」
マホロアが操縦姿勢に入り、ワープスターがゆるりと前に進み出す。
「走りました!」
「私達も外に行こう!」
ゲーム開発部とウタハが後ろを追ってガレージの外へと向かう。
ガレージの外には、即席ながらカーブが複数ある簡易コースが作られていた。
「でも……あれってハンドル無いですよね?曲がれないんじゃ…」
ミドリが不安そうに言う。
「問題ないヨ。」
マホロアはそう言うと地面にワープスターの先端を押し付け、速度を落とした。
そのまま機体を右へぐいっと傾ける。
「そう曲がるんだ……!」
ミドリが驚きの声をあげる。
「メモに“曲がる際は傾けながら接地”って書いてあったが、こうやるのか……」
ウタハはメモに追加で何か書き込んでいる。
マホロアはカーブを曲がり終えると接地を解除し、再び加速する。
「コレが“チャージダッシュ”ってヤツダネ。曲がる時はこうスルンダ。」
「すごいです!」
「ドリフトだ!!」
皆が食い入るように見つめる。
そのままマホロアは滑らかな動きでコースを回り、ガレージに戻ってきた。
ウタハがスイッチを押すと光が収まり、ワープスターは静かに着地する。
その後、マホロアがふわりと降りた。
「すごい!すごいよマホロア!!」
モモイが駆け寄る。
「イヤイヤ、スゴいのは彼女ノ方サ。ボクはメモ程度しか残してナカッタのに……ココマデ再現できるナンテ……。電動トカ速さノ違イはアルケド、完成度は高いヨ。」
「まだ完成じゃないからね。もっと良くしてみせるさ。」
ウタハが胸を張る。
「さて、一応安全性は確保できたわけだし…次は皆、乗ってみるかい?」
「「「「乗ります!!」」」」
ゲーム開発部の面々は一斉にマシンへ駆け寄った。
「私これにしようかな!」
「じゃあ私はこれ。」
「アリスはこれです!」
「これにしようかな……」
モモイはワープスター、
ミドリはウィングスター、
アリスはウィリーバイク、
ユズはルインズスターにそれぞれ搭乗した。
「これがマニュアルだ。」
ウタハが薄い冊子を配ると、ゲーム開発部の4人は一斉にページをめくり始めた。
普段は賑やかなのに、この時ばかりは目が真剣だ。
「ホントによく作れたネ……コレ。」
マホロアが感心したようにウタハへ声をかける。
「ふふ、そう言ってもらえると嬉しいね。」
ウタハは工具を置き、白衣の袖で軽く手を拭った。
「あのメモを見た瞬間、私の“マイスター”としての本能がね、『これは作らなきゃいけない』ってスイッチが入ったんだ。メカワニ君が暴走してちょっと落ち込んでたんだが……良い励みになったよ。ありがとう。」
「ソ、ソンナ……ボクはただメモを書いテただけダシ……。」
マホロアは照れくさそうに頭をかく。
その時――
「マニュアル読み終わったよー!!」
元気いっぱいの声がガレージに響き、ウタハとマホロアが振り向くと、
モモイたちはすでに各マシンの上でスタンバイしていた。
「仕事が早いね……!」
ウタハは少し笑って言うと、手を叩く。
「よし、では――ヒビキ!ケーブルを外してくれ!」
「了解!」
ヒビキが器用な手つきで三機の補助ケーブルを一本ずつ引き抜いていく。
カチリとロック解除の音が響く。
「では皆! 電源を入れるよ!」
ウタハがスイッチを押すと同時に――
ワープスターとウィングスターは柔らかい光を放ちながら浮上し、ウィリーバイクはエンジンを震わせて低い排気音を響かせる。ルインズスターは機体の隙間から淡い緑の光が漏れ、重々しく浮き上がった。
「「「発進!!」です!!」」
-----------------------
ここはミレニアム自治区郊外の「廃墟」と呼ばれる立ち入り禁止区域。
かつてゲーム開発部と先生がアリスが発見した場所でもある。
朽ちたビル群はコンクリートがむき出しになり、ひび割れた外壁が今にも崩れ落ちそうに歪んでいる。
空は厚い雲に覆われ、灰色の光が廃墟の影をさらに濃くしていた。
セミナーのもとに「廃墟区で頻繁に黒煙発生している」という報告が相次いだため、ネルたちC&Cは原因調査のため現場に投入されていた。
轟音が響くたび、煙が弾けるように空へ散り、
そこからドローンや警備ロボットが次々と飛び出してくる。
「……んだよ、まだいんのか。」
普段なら戦闘を楽しむネルですら、こうも終わりなく湧く手応えゼロの相手にため息を漏らしていた。
ネルの両手のサブマシンガンが火を噴く。
正確な射撃で次々と爆ぜていくが――すぐに煙の奥から同じ警備ロボットが湧き出してくる。
「一体なぜこんなに……」
アカネの冷静な声が通信越しに届く。
「廃墟区にこんな新品みてぇな奴らが自然にあるワケがねぇ。エキスポの時みたいに裏でなんかやってる奴がいるはずだ。」
ネルがドローンを撃ちながら言ったその時――
「……アレは……?」
通信でカリンが震えた声を上げた。
「どうした?」
「今……廃墟区の奥から、小さな影が空に飛び出していくのが見えた気がして……」
「影?」
ネルは反射的に空を仰ぐ。
灰色の雲。
散った煙。
そして先程と何も変わっていない空。
「気のせいじゃねぇか?」
「……そうだと、良いんだけど。」
カリンの不安げな声のあと、通信が静かになる。
短い沈黙。
廃墟区の風だけが、冷たく頬を撫でた。
「んーーー……」
「んだよ。何かあったか?」
ネルが隣で首をかしげているアスナに声をかける。
「いや……カリンの言ってた“影”、あれ……本当にあった気がして。」
「……」
アスナの“勘”はよく当たる。
一番付き合いの長いネルは、その一言に思わず口をつぐむ。
「……チッ。しょうがねぇ。念のためだ。」
片手で銃を撃ちながら、もう片方でスマホを取り出す。
モモトークを開き、表示された“ユウカ”のアイコンをタップする。
そのとき――
廃墟区の奥から、
耳障りな金属音とともに、異様な振動が地面を走った。
ネルが目を細める。
「……やっと手ごたえのありそうなやつのお出ましか」
アスナもアカネも、ドローンの群れ越しに廃墟の闇を睨む。
爆煙の中に、一つだけ強く光る赤い光が浮かんでいた。
ワープスター
走りも滑空もばっちりこなす。
弱点がなく、運転しやすい。
ウィングスター
地上ではにぶいが、空中では
優れた飛行性能で宙に舞う。
ウィリーバイク
一輪バイク。スターとは
ひとあじちがう面白さがある。
ルインズスター
走る! 止まる! 走る! 止まる!
止まっては走り止まっては走り。