桃色の軌跡   作:逆襲

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メカニック・ロマン

「痛ーーっ!?」

 

「うわーーん! また転びました!!」

 

「ちょっ、落ちる落ちる落ちる!!?」

 

「うぅ……酔ってきた……」

 

ガレージの外では試運転中の四人が、悲鳴と叫びを上げながらコースをぐるぐる回っていた。

慣れない機体に振り回され、運転はまだまだ不安定だ。

 

 

 

「……少し気になったんだが、あのマシンにシートベルトは無いのかい?」

 

ウタハが腕を組んだままマホロアを見る。

 

「シートベルト? アトラクションとかニ付いてるアレ?」

 

「いや……普通の車についてるやつだよ」

 

「生憎ボク達の世界ノ車にはシートベルトは着いてナイヨ。エアライドマシンも同ジ。」

 

「なるほど……こっちで使うなら改良が必要そうだね…。」

 

ウタハはメモに追記をする。

マホロアは四人の光景を見ていたが、あまりに何度も転ぶので見ていられなくなった。

 

 

「ショウガナイナァ……」

 

マホロアはふわっと浮かび、四人の方へ飛んでいく。

 

まずモモイの前に降り立つ。

 

「モモイ。エアライドマシンはネ、自分が向いてる方向に自然に進んでクレルンダ。無理にハンドルみたいに機体をこじ曲ゲなくてイイんだヨ。」

 

「えっ、そうなの!?」

 

「マニュアル、ちゃんと読ンデなかったデショ……」

 

「アハハ……ゲームの説明書は読まない派だからさ……」

 

 

次にアリスのバイクの横へ移動する。

 

「アリス。ウィリーバイクは常に接地してる分、他のマシンと違うヨ。ドリフトする時はネ、体を曲がる方向に“ちょっとだけ”倒すンダ。そうスルト転ばないヨ。」

 

「やってみます!!」

 

そしてミドリ、ユズにも同じように丁寧にコツを伝えていく。

 

 

 

――すると。

 

さっきまでコケまくっていた四人の動きが、みるみる滑らかになっていった。

カーブの曲がり方が安定し、加速もスムーズになり、転倒回数もぐっと減る。

 

 

「スゴイネ……ちょっとコツを教えただけナノニ……」

 

「彼女たちは飲み込みが早いからね。だからこうやって、試作段階の機械を試してもらうことも多いんだよ。」

 

「ナルホドネェ……」

 

マホロアは四人が楽しげに駆け抜ける姿を見ながら、小さく満足げにうなずく。

 

その横で、ウタハがガレージの外へ歩き出した。

 

「皆、操作には慣れてきたかい?」

 

「うん!」「楽しいです!」「空飛ぶの気持ちいい〜」「よ、ようやく操作できてきた……」

 

 

「よしよし。とりあえず今日はここまでに――」

 

 

 

そう言いかけた瞬間、地面が突き上げるように揺れた。

 

「な、なに!?」

「え、また地震!?」

 

「皆ダイジョウブ!?」

 

マホロアが慌てて外へ顔を出したそのとき――

視界の端で、黒い“何か”が高速でこちらへ迫ってくるのが見えた。

 

「アレハ……!?」

 

「え、何?」「あれって?」

 

全員がマホロアの見ている方向へ目を向ける。

 

 

 

 

次の瞬間。

黒い閃光が火花を散らしながらガレージ前へ墜落した。

 

「うわっ!?」

 

爆風がコンクリートの破片と煙を巻き上げ、皆は反射的に尻もちをつく。

煙が晴れ、その中央に立っていたのは、ロケットを模したようなシャープな機体。

全身は漆黒。関節の隙間から黒煙が噴き出している。

 

 

「な、なにあれ……?」

「かっこいいです!!」

「なんか怖くもあるんだけど……」

 

「見たことのない型のロボットだね……ミレニアム製では無いようだが…」

 

興味と警戒が入り混じった視線が集まる。

しかし――マホロアだけは、青ざめた顔で固まっていた。

 

「メ、メタルジェネラル……!?!?」

 

 

聞き慣れない単語に、モモイ達が首を傾げる。

 

「メタルジェネラル?」

 

「マホロア、知ってるの?」

 

「ウ、ウン……。チョット前に……とある場所で戦ったコトがあるンダ……。ダケド……コノ色ハ……。」

 

普通のメタルジェネラルなら青、強化された機体は赤色の装甲なのだが、ここまで黒に染まった機体をマホロアは見たことが無かった。

 

「戦った…ってことは敵……?」

「でも動かないね…」

「壊れてるんでしょうか?」

 

「少し調べてみよう。」

 

ウタハが動かないメタルジェネラルへと近づいていく。

 

 

 

その瞬間――

メタルジェネラルの目が不気味に赤く光った。

 

≪生命体ヲ検知 排除シマス≫

 

 

「ッ!?」

 

突如として喋り出した声にウタハが少し後ずさる。

 

メタルジェネラルは駆動音を立てながら体勢を起こした。

そして、右腕が変形し始め、ビームサーベルが音を立てて展開されていく。

 

 

「すごっ!!」「変形!?」「ビームサーベル……!ロマンだ…!」

 

ゲーム開発部とウタハの目が煌めく。

 

「ソンナ事言ってる場合ジャないデショ!!」

 

≪攻撃開始≫

 

マホロアが叫んだ瞬間、近くのウタハに向けてメタルジェネラルが跳ぶ。

ビームサーベルが唸りを上げて振り下ろされる。

 

「危ナイっ!!」

 

マホロアはウタハの前に立つと即座にリフバリアを展開する――

しかし衝撃でバリアの端が砕け、両者とも後ろへ弾かれた。

 

マホロアは背後に立っていたウタハに受け止められた。

 

「本当に……そう言ってる場合じゃなかったね……」

 

マホロアの様子を見たウタハが顔色を変える。

 

 

「コトリ、ヒビキ!すぐユウカに報告を!」

 

「「了解!!」」

 

「私達は増援が来るまで持ちこたえるんだ!」

 

「は、はい!」

「やります!」

「よーしやるぞー!!」

「レイドバトルです!!」

 

それぞれが銃を構えたその時――

 

近くのミレニアム警備ドローンが、騒音に反応して飛来してきた。

 

「あ、警備ドローンだ。」

「援軍です!」

 

だがメタルジェネラルがドローンの方に手を向けた瞬間――

ドローンたちの動きがピタリと止まった。

 

≪CPUジャック完了≫

 

 

「ど、どうしたんだ……?」

 

 

 

次の瞬間。

 

ドローンが一斉にモモイ達へ銃口を向ける。

そしてそのまま発砲を始めた。

 

 

「え、ちょっ、こっち!? 痛っ!!」

 

 

「敵はあっちです!!」

 

 

反射的に物陰へ飛び込み、身を低くする。

 

 

「メタルジェネラルは周囲ノロボットを乗っ取れるンダ!気ヲ付ケテ!!」

 

マホロアはリフバリアを展開し放たれる弾丸を防いでいた。

 

「そういうのは早く言ってぇ!!」

 

状況は一瞬で最悪へ傾く。

 

 

(マズイ……メタルジェネラルだけナラ何トカできたカモしれないノニ……!)

 

あっという間に、無数の警備ドローンがマホロアとゲーム開発部を取り囲む。

 

 

「やばいやばい!」

 

一機ずつ撃破はしているが、ぞろぞろと現れ身動きもまともに取れない。

 

「アリス!お願い!」

 

「はい!光よ!!」

 

アリスのレールガンから放たれた光が直線状にドローンを薙ぎ払い、破片が雨のように散る。

 

だが破壊した分の隙間は、すぐに新たなドローンで埋まっていく。

 

「ダメです! キリがありません!」

 

「このままじゃ……!」

 

 

そのとき――

メタルジェネラルがドローンの護衛を割って、空へと跳び上がった。

 

≪対象ノ殲滅ヲ優先 デストラクションミサイル起動≫

 

右腕のビームサーベルが消え、機械的な音を立てながら変形していく。

 

 

 

「ちょっ!? 何あれ!?」

 

展開された右腕に装着されていたのは、大型のミサイルポッド。

そこから次々と巨大ミサイルが生み出され、空へ向けて撃ち放たれる。

 

「アリス! 撃ち落とせない!?」

 

「まだチャージ中です!! 無理です!!」

 

ミサイルは上空で弧を描きながら反転し、音を引き裂きつつこちらへ降下してくる。

 

直撃すればこの一帯は跡形もなく吹き飛ぶだろう。

 

 

「くっ……!」

 

ウタハは歯を食いしばった。

エンジニア部のロボットはあるが起動すれば乗っ取られてしまうだろう。

アリスの光の剣も使用できない。今、ミサイルを防ぐ手段が一つも無い。

 

 

 

 

絶望が全員の脳裏を支配する。

 

 

 

 

 

その瞬間――

 

天から一筋の光が輝く。

その光はミサイル群を一気に貫いた。

 

「えっ!?」

 

そして空中で連鎖的に大爆発が起き、熱風が地面の自分たちにも届く。

 

「あつっ!」

 

 

眩しい光が晴れた時。

 

現れた二つの影が、爆風を切り裂くように地へ降り立った。

着地と同時に、周囲のドローンが次々と撃ち抜かれ、火花と煙だけを残して倒れていく。

 

 

「ナ、ナニナニ!?」

「何が起こってるの!?」

 

パニックになるゲーム開発部とマホロア。

 

 

 

爆風が晴れ二人の影が露わになっていく。

 

そのとき。

落ち着いた、しかしどこか聞き覚えのある通信の声が彼女たちの耳に届く。

 

『皆さん、怪我はありませんか?』




メタルジェネラル

あるじなき後も はたらく セキュリティ。
自らをメンテナンス するなど、エッガー
エンジンズに残る キカイを あやつるほどの
AIがとうさい されている。ただ まだ、
ココロだけは りかい できていない もよう。
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