桃色の軌跡   作:逆襲

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べつジゲンからの来訪者

大きな腕が振り下ろされ、周囲のビルがまとめて崩れ落ちる。

 

攻撃を回避したネルが地面に転がり込みつつ、素早く銃を構え直す。

 

「……硬ってぇなコイツ……!」

 

煙の中から現れた巨大ロボットは、動きこそ鈍いものの、耐久だけは異様に高い。

アカネの爆弾も、カリンの狙撃も、表面をわずかに凹ませるのが精一杯だった。

 

「部長、このままじゃジリ貧です……!」

 

しかもロボットが延々と湧いてくるせいで、リソースをこのロボットだけに削くことができない。

 

「クッソ……」

 

撤退の二文字が脳裏をよぎる。

だがネルの性格がそれを許さない。

 

 

 

「ん……あれは……?」

 

カリンの視線が上空へ向き、細められた。

 

「部長!なにかこちらに向かって飛んでくる!」

 

「何だと!?」

 

「黒い……ロボット? 煙が上がってるけど……壊れかけてるのか?」

 

スコープ越しに確認する。

 

「そのロボットの後ろに……あれはトキか?エリドゥで部長と戦った時の装備をしている…。」

 

ネルは少し考え口を開いた。

 

「成程……カリンが言ってた“影”ってのが校舎の方へ行ったが、新人に追い詰められて逃げてきたってわけか――っと!!」

 

ネルの立っていた場所に、巨大な拳が叩きつけられた。

 

「アタシも負けてらんねぇな!!」

 

ネルは振り下ろされた拳の上を素早く駆け上がり、巨体の懐へ飛び込んでいく。

 

 

----------------

 

「あれは……」

 

トキたちの目にはビルと同じぐらいの高さを持つ巨大ロボットが入り込む。

その装甲はメタルジェネラルと同じように黒く染まっていた。

 

「アレハ……!HR-D3!?」

 

「何それ?」

 

「メタルジェネラルが操縦スルロボットみたいナモノだヨ…。ダケド……メタルジェネラルがココにいるノニ、なんであいつダケ動イテルノカナ?」

 

「えっ…ロボットがロボットを操縦するの?」

 

「あのロボットが元凶じゃない可能性もある……ということですか」

 

「ウン……。本来、メタルジェネラルはセキュリティロボとして作ラレタはずナンダ。ダケド今の行動は――侵略行為をシテルように見エル……」

 

 

 

 

「……なんか、あそこで誰か戦ってない?」

 

エイミが目を凝らす。

ビルの合間で暴れる巨体の足元に、小さな影が複数。

 

「メイド服……?あれ、C&Cじゃない?」

 

「成程。先程部室にいなかったのはこういう事でしたか……」

 

バイザーに赤い警告が点滅する。

 

《ENERGY LOW 5%》

 

「…タイミングが悪いですね…」

 

トキは仕方なくどんどんと高度を下げていく。

すると、エイミは下の方で爆速で走っている何かを見つけた。

 

「あれ...なに?」

 

 

 

 

 

 

「うわわわわわぁぁぁあああ!!!???」

 

「は、速すぎます!!」

 

リミッター外したエアライドマシンは、空も地上もお構いなく超加速。

障害物にぶつかろうが、そのまま粉砕して進んでいく。

 

 

「でもちょっと慣れてきたかも……って、うわあああああ!!?」

 

油断をしたその時、前方には警備ロボットの壁。

だが“車は急に止まれない”。

 

「ぶ、ぶつかります!!!」

 

 

モモイとアリスはそのまま群れに突っ込み――

 

 

ロボットたちはボウリングのピンのように一掃された。

 

 

「……あれ? 思ったより大丈夫だった……って!!」

 

 

次に視界へ飛び込んできたのは、トキ達と同じもの。

 

「何あれ!?でかいロボット!?」

 

「アバンギャルド君より大きい……」

 

 

「わっ──!?」

 

次の瞬間、アリスとモモイの体がふわりと浮き、前方へ投げ出される。

気付けばエアライドマシンは段差に激突し、その衝撃で二人を跳ね上げていた。

 

「お姉ちゃん!」「アリスちゃん!」

 

慌ててミドリとユズが急降下し、滑り込むように地面へ着地する。

 

「だ、大丈夫!?」

「う、うん……びっくりしただけ……」

 

「アリスちゃんは?」

「はい!無傷です!」

「アリスちゃんも無事?」

 

「はい!大丈夫です!」

 

幸い大きな怪我はなく、ゲーム開発部の四人は巨大ロボットの目前までたどり着いた。

しかし、いざ立ち止まってみると、その存在感に思わず息を呑む。

 

 

自分らを平然と踏み潰せるほどの巨体が、ゆっくりとこちらに影を落とす。

 

「……でっか……」

 

モモイが思わず後ずさる。

足元から響く振動が、胸の奥までズンと突き上げてくる。

 

 

 

そこへ――

 

一足遅れてトキたちが降り立った。

 

「やはり、ゲーム開発部の皆さんでしたか。」

 

トキが周りを見渡すと、

 

ミドリとユズは膝に手をつき、荒い息を吐いている。

モモイもその場にしゃがみ込みそうになるが、必死で踏みとどまる。

アリスだけが元気いっぱいだった。

 

「……大丈夫ですか?」

 

「はい!」

 

「私達は大丈夫じゃないかも……」

 

そのやり取りを横目に、トキは淡々と確認する。

 

「さて……行きましょうか。」

 

見ると、いつの間にかアビ・エシュフを外し、

普段のメイド服姿に戻っていた。

 

巨大ロボが唸りをあげる。

戦場の空気が締め直されるように、全員が顔を上げた。

 

 

 

 

-----------

 

 

 

振り下ろされた巨拳を足場に、ネルは一気に腕を駆け上がる。

そしてその勢いのまま巨大ロボの頭部へ肉薄し、銃弾を叩き込む。

 

しかし――

 

「……効かねぇな、どこ撃っても同じかよ!!」

 

叫びながら頭部の外殻を蹴りつけた、その瞬間だった。

 

 

 

頭部の装甲が突然開き、中から黒い霧が渦を巻く操縦席のような空洞が現れる。

 

「んだこれ、操縦席か?ってことは、ここブッ壊しゃ――」

 

ネルが銃口を向けた刹那、

上空から重い気配が落ちてくる。

 

「なんだっ!?」

 

反射的に飛びのく。

 

直後に、ボロボロのロボットが空から墜落してきた。

全身から黒煙を上げ、目の光は断続的に点滅している。

 

「はっ! 随分とボロボロじゃねぇか。派手にやったな新人!!」

 

≪テ.敵ヲ発見 セ 接続ヲ優先≫

 

そのロボットは機械的な音声を漏らしながら、ふらついた動きで頭部の操縦席へ向かう。

 

「妙なことしてんじゃねぇ!!」

 

ネルが射撃しようとした時――

頭部がガシャッと閉まり、そのロボットの姿は完全に見えなくなった。

 

「おい!? 隠れてんじゃねぇぞ!!」

 

 

ネルは頭部の隙間へ銃弾を撃ち込むが、十分な角度が取れず内部へ届かない。

そのとき、巨大ロボのスピーカーから低い電子音声が響いた。

 

 

≪ヘビーラリアット≫

 

 

「――ッ!? おわっ!!」

 

巨体が急に腕を水平に広げ、そのまま狂ったように高速回転を始めた。

ネルは慌てて頭部から飛び降り、地面に着地する。

 

砂煙が巻き上がる。

 

「っとと……。なんだよ、あいつが乗り込んだ途端に動きが変わりやがった……!」

 

 

背後から小走りで声が飛ぶ。

 

「ネル先輩!」

 

ゲーム開発部とマホロア、トキ、エイミが近づく。

その直後、巨腕が地面を抉り、揺れが走る。

 

「ちょうどいいとこ来たな!..ってお前らまで来たのか!」

 

 

「ネル先輩!さっきここに黒いロボット来ませんでしたか!?」

 

「あ? あの黒いのなら――あのデカブツの頭ん中だ!」

 

ネルが顎で巨大ロボットの頭部を示した瞬間、

HR-D3が低く唸るような駆動音を鳴らし、巨大な影を落とす。

 

ネルは即座に続けた。

 

「手を貸せ! あたしらの攻撃じゃ、かすり傷すらつかねぇ!」

 

「そんな……!ネル先輩でダメなら、私たちじゃ何も……!」

 

モモイが後ずさり、ミドリは青ざめて唇を震わせる。

 

「ど、どこか弱点は……!」

 

「無ぇ!さっきから撃ってっけどどこもガチガチだ!」

 

「そんなぁ……!」

 

絶望の空気が広がり、空気が一瞬重くなる。

 

 

すると、視界が黒い影に覆われ、全員がはっと顔を上げた。

 

 

HR-D3の右腕――

巨大なドリルがこちらへとゆっくり角度を合わせてくる。

 

全員が散り、砂煙の中を必死で避ける。

 

胸がドクンと鳴る。

逃げ場のない轟音の中で、頭の奥に過去の記憶がよぎった。

 

 

 

デデデとバンダナワドルディが吹き飛ばされかけたあの瞬間――

カービィとメタナイトが、とっさに“頭部”を狙ってアイツを倒した。

 

……そうだ。

あの時と同じなら、あの技の瞬間だけ無防備になる、と。

 

 

 

「イヤ……一つダケ……一つダケ“賭ケ”がアル!!」

 

 

「賭け!?」

 

「賭けって何!?」

 

巨大ドリルの駆動音だけが耳を震わせた。

 

モモイがごくりと唾を飲む。

ミドリは不安そうにマホロアを見つめる。

 

トキとエイミも、じっとマホロアの次の言葉を待っていた。

 

ほんの刹那、場に緊迫した静寂が落ちる。

 

だが――

 

「はっ、良いじゃねぇか!どうせ手の打ちようが無ぇんだ!乗ってやらぁ!!」

 

ネルがその場の空気を切り裂くように豪快に笑い、ドリルの風圧すら意に介さず前へ踏み出した。

 

 

即座にネルが他のメンバーに通信を入れる。

 

『お前ら!このデカブツはアタシらに任せろ!周りの雑魚共を蹴散らせ!』

 

『『『了解!!!』』』

 

仲間の返事を聞いた瞬間、ネルは通信を切り、振り返りざまにこちらへ向いた。

 

「アタシが時間を稼ぐ!!いいか、なんでもいい!!その“賭け”とやら、絶対に通せ!!」

 

 

そう言い捨てるや否や――

 

 

ネルは地面を蹴った。

足場が爆発したような勢いで前へ進む。

巨体の影に真っ向から飛び込み、瓦礫を足場にし腕部へ飛び乗った。

 

 

「こっちはこっちで暴れさせてもらうぜ!!」

 

 

機械音の咆哮とネルの叫びがぶつかり合い、衝撃波が周囲を震わせた。

 

 

 

 

 

 

 

「皆、聞イテ!!」

 

マホロアが声を張る。

背後ではネルが敵を引きつけ続け、地面が揺れるたび砂埃が舞った。

 

「アイツ……必殺技ヲ使ウ時だけ、本体ガ頭部カラ露出スルンダ!その瞬間ニ叩き込メバ倒ダメージを与えられるハズダヨォ!」

 

 

「本体が出るの!?」

「で、でも……どうやって必殺技を使わせるの……?」

 

 

「ボクの技と、アリスの攻撃デ強制的ニ引き出ス!!」

 

 

それを聞いたアリスはレールガンを構え、目を鋭くする。

 

「アリス、やります!あの暴走ロボットを止めます!」

 

 

「そしてソノ露出シタところヲ攻撃シテほしいンダ!」

 

「そちらは私に任せてください。」

「私もいくよ!」

 

トキとエイミが迷いなく前に出る。

 

 

「わ、私達は何すればいいの!?」

 

モモイが焦りながらマホロアを見る。

 

「ボク達ガ攻撃する直前ニ、ヘイトをボク達の方ニ向けテ!」

 

 

「わ、わかった!」

「よしっ、やる!!」

「……こ、怖いけど……が、頑張る!」

 

マホロアが大きくうなずく。

 

「ヨシ!じゃあ行クヨ!!」

 

「「「「おーー!!」」」」

 

「おー」

「おー…って乗った方が良いのかなこれ……」

 

不安を抱えつつも、

全員の視線はただ一点――暴れる巨大ロボットへと向けられていた。




HR-D3

異空間ロードをぬけ、ココとはちがう
別ジゲンより、キカイのエネルギーに ひかれて
迷い込んできた 古の戦闘マシーン。
ジゲンや パラレルをこえ ついに今、未知なる
鋼の巨兵との… 夢のバトルが はじまる!




明日は諸事情により投稿ができません...。
すっごいキリが悪い所で伸ばしてしまい申し訳ございません。
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