「ここをこうして……」
「そこに罠あるよ!」
「宝箱ありました!」
ここは、ゲーム開発部の部室。
画面の前には、三つの小さな影が集まっていた。
「こっちに鍵あったよ!」
「じゃあ、それで宝箱を――」
そう言いかけた、その瞬間。
部室のドアが、勢いよく開いた。
「やーーっと終わったぜ……」
「つ……疲れたぁ……」
ネルとユズが、見るからに消耗した様子で部室に入ってくる。
「あ、お疲れ様。」
「お説教終わった?」
モモイの問いに、ネルは肩をすくめる。
「なーにが“お客様に何かあったらどうするんですか”だよ。アタシらはセミナーの指示で戦ってただけだっつーの。」
愚痴をこぼしながら、ネルはどさっと座布団に腰を下ろす。
「う、うん……長かった……」
ユズもふらふらとした足取りで、隣に座り込んだ。
「……あれ?」
ふと、モモイが首を傾げる。
「マホロアは?」
一緒に戻ってくるはずだった姿が見当たらない。
「あ……マホロアなら、ウタハ先輩とエンジニア部の部室に行ったよ。」
ユズが思い出したように答える。
「エンジニア部?」
「たぶん……あのエアライドマシンのこと、色々聞かれてるんじゃないかな……」
ネルがコントローラを握る。
「おい、チビ。格ゲーやんぞ」
「は、はい!」
「ちょっと待っててよネル先輩今いいとこなんだから~」
「チッ...」
部室には、再びゲーム音とコントローラの音が戻っていく。
一方、その頃。
エンジニア部の部室では、工具とモニターに囲まれた一角で――
「それで……私に話、とは……なんだい?」
ウタハが腕を組み、興味深そうに首を傾げる。
「アノマシン達を作っタ君に、少シ提案があるンダ。」
「提案……?」
「エアライドマシンは、アレ以外ニもマダ種類があるンダ。攻撃ニ特化シタ物、速さニ特化シタ物……色々ネ。」
「ほう……。では、それを?」
「ソレもあるンダケド……今回は、チョット別ナ物を作っテほしくテネ。」
マホロアはそう言って、ウタハの方へと振り向いた。
「――“伝説”のエアライドマシンヲ、作っテみるつもりは……あるカイ?」
「で……伝説……!?」
その一言で、ウタハの瞳が一気に輝きを帯びる。
「ソウ……伝説ノエアライドマシン……。マダ情報ハまとめキレテないケド、アレを作っタ君ナラ……」
言い終わる前に、ウタハが動いた。
「是非、聞かせてくれないかい!特徴だけでもいい、設計思想でもいい!」
興奮のあまり、マホロアの体をがしっと掴み、持ち上げる。
「ウ、ウン!!わかっタカラ……いったん降ろしテ……!!」
マホロアの抗議もどこ吹く風で、
ウタハの脳内ではすでに、新たな設計図が組み上がり始めていた。
「部長、ちょっといい?」
ガレージの方から、ヒビキがひょこっと顔を出す。
「あ、ああ。どうしたんだ?」
「“アレ”、外装の修復が終わったよ。」
「おお、もう終わったのか!」
ウタハはぱっと表情を輝かせる。
「アレ?」
マホロアが首を傾げると、ウタハは思い出したように振り返った。
「そうだ、君にも見てもらおうか。」
そう言って、マホロアをそっと地面に降ろし、ガレージの奥へと歩き出す。
「アレって……なんダロ……?」
不安と好奇心が入り混じる中、マホロアも後に続いた。
ガレージの中へ足を踏み入れた瞬間――
マホロアの視線が、ある一点で完全に止まる。
「メ……メタルジェネラル……!?」
そこに立っていたのは、確かにメタルジェネラルそのものだった。
だが――
青でもない。
赤でもない。
ましてや、あの不気味な黒でもない。
落ち着いた真っ白な金属色の装甲に、補修の痕跡が丁寧に残されている。
「そう……!言うなれば――」
ウタハが胸を張る。
「メタルジェネラルMk-2、だね。」
マホロアは言葉を失ったまま、機体をぐるりと見回す。
「よく、ココマデ原型が残っテタネ……」
思わず漏れたその一言に、ウタハは誇らしげに笑った。
「ふふ。あの跡地を捜索したらね、
ボロボロになってはいたけど、瓦礫の下にしっかり埋まっていたんだ。」
ヒビキが横から頷き、淡々と補足する。
「内部の危険なコードは全部抜いたよ。
暴走の原因だった部分も、完全に隔離済み。」
「これからは――」
ウタハは両腕を広げ、堂々と宣言する。
「アバンギャルド君と共に、ミレニアムを危機から守ってくれるだろう!」
ウタハが振り向く。
「コトリ!」
「はい!電源、入れます!」
コトリが元気よくボタンを押した、その瞬間――
「ウタハ先輩、ちょっといいかしら。」
ガレージのシャッターが開き、ユウカが中へと足を踏み入れる。
……だが。
「……アレ?」
次の瞬間、
青白いスパークが機体の各所を走った。
「各数値異常確認!」
「まずい! すぐに電源を――」
ウタハの声が、途中で掻き消える。
鈍い爆発音。
火花と煙、金属片が弾け飛び――
その中の一つが、一直線に飛んでいく。
――そして。
「ア……」
ユウカの声が、間の抜けた音で途切れた。
「……ユ、ユウカ……」
一拍の沈黙。
「コラーーーー!!!!」
怒号がガレージ中に響き渡る。
こうして、ミレニアムには今日もいつも通りの、騒がしい日常が戻っていくのだった。
----------------
≪……ようやく……ようやく集まったぞ……≫
神殿のような空間。
崩れかけた柱の合間で、黒い霧がゆっくりと蠢き、形を成した。
「ここにいましたか。」
背後から、低く落ち着いた声が響く。
振り向くことなく、黒い霧は気配を察していた。
そこに立っていたのは――黒服の男。
≪……お前か……≫
「ええ。…………それが、あなたの求めていたモノですか?」
男の視線の先。
神殿の最奥、宙に浮かぶ白い球体。
その表面には、ヘイローのような輪。
そして機械で構成された天使の羽が、静かに展開していた。
「なるほど……なるほど……」
男は小さく息を漏らす。
「実に興味深い。神秘と機構が、ここまで歪に融合しているとは……」
黒い霧が揺らぎ、その中心から剣がゆっくりと姿を現した。
≪貴様のおかげで、ここまで辿り着けたことには感謝する……だが、邪魔をするつもりなら――容赦はせんぞ。≫
男は肩をすくめ、愉快そうに笑う。
「そんな野暮はしませんよ。」
くるりと踵を返し、出口へ向かいながら言葉を投げる。
「では――あなたたちの“輝き”を、存分に見せていただきましょう。クックック……」
足音が遠ざかり、扉が閉じられる。
≪……フン。≫
剣は再び霧へと溶け、空間は静寂に包まれた。
白い球体が、かすかに脈打つ。
≪もうしばらく……お待ちください……≫
≪――「ゼロ」様……≫
――ミレニアム編 完
ミレニアム編が終了しました。
次はバンダナを巻いてるあの子がでます。