桃色の軌跡   作:逆襲

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記憶という名の過去と今

「ん……!」

 

シロコは小さな少女を見た瞬間、胸の奥がざわつくのを感じた。

 

(……この人)

 

言葉にする前に、直感が警鐘を鳴らす。

 

(ホシノ先輩と同じくらい強い……!)

 

「んぁ?ソイツがさっき言ってたやつか?」

 

「そうさ」

 

本能が勝負を仕掛けろと囁く。

だがシロコはその衝動を、ぐっと押し殺しセイアの隣へと並んだ。

 

「私はアビドス高校の砂狼シロコ。それで……これがカービィ」

 

腕の中の存在を示す。

 

「ぽよ!」

 

カービィが元気よく声を上げ、場の空気をわずかに和らげた。

 

「カービィっていうと……チビ共と一緒にいたマホロアって奴の仲間か」

 

「ん。カービィもその名前を言ってた。」

 

「私の方ではメタナイトから聞いている。各学園に散らばっていた所を先生がシャーレに集めた。だが……」

 

セイアの言葉が重くなる。

 

「私が車を止めシャーレに着いた時には、すでに瓦礫の山だった……だが、彼女はその原因を見たらしい」

 

「……うん」

 

その一言で、記憶が一気に引き戻される。

白く歪んだ存在。

空気が壊れた、あの瞬間。

 

リオは何も言わず、端末を操作する。

壁面のモニターに映像が投影された。

 

そこには――

シロコが目にした“それ”が、はっきりと映し出されていた。

 

「……んだよ、これ……」

 

ネルが、短く息を吐いた。

それ以上、言葉は続かなかった。

 

「周囲の監視カメラから取得できる情報で作ったのがこれよ。」

 

リオは再び端末を操作し、部屋の中に3Dモデルのような映像を映し出した。

 

 

白い体。

機械的な翼。

そして、ヘイローのような天使の輪。

 

どれもが噛み合わず、異様だった。

 

「デカグラマトンの預言者かと思ったけど……その反応は確認できなかったわ」

 

リオが淡々と分析する。

 

「そういや、ヒマリも似たようなこと言ってたな……」

 

ネルが腕を組み、低く唸る。

 

 

 

その時――

 

「……ぜろ……」

 

かすれるほど小さな声が、空気を揺らした。

 

シロコは思わず腕の中を見る。

カービィは、じっとモニターを見つめていた。

まるで、名前を思い出すように。

 

「……カービィ、知ってるの?」

 

問いかけに、カービィは迷いなく頷いた。

 

 

 

セイアはその白い姿を、改めて見上げる。

 

球体に近い体。

体の中心にある、ただ一つの大きな目。

 

色こそ違うが――

記憶の奥にあるメタナイトから聞いた“それ”と、あまりにも似すぎている。

 

「……ダークマター……?」

 

思わず、口から零れた言葉。

 

その一言に、シロコとカービィが即座に反応した。

 

「だーくまたー!」

「セイア、ダークマターについて何か知ってるの?」

 

「あ、ああ…」

 

セイアは小さく頷き、静かに語り始める。

 

「私はその場にはいなかった。だが、後からすべて聞いている」

 

トリニティで起きた、大雨の正体。

雨雲のような生物が、黒い霧に乗っ取られていたこと。

校舎への襲撃。

そして、生徒たちが一時的に操られていた事実。

 

知っている限りの情報を、簡潔に、しかし正確に伝えていく。

 

「……なるほど」

 

リオが小さく頷いた。

 

「ミレニアムで起きた機械の暴走とも、概ね一致するわね」

 

「あのデカブツもそいつらの仕業だったってわけか…」

 

ネルは舌打ち混じりに呟く。

 

「こっちだとゴリアテを使って攻撃してきた」

 

シロコがネルに続いて話す。

リオは再び端末を操作し、画面の情報を切り替えた。

 

「話を整理するわ」

 

淡々とした声が、場を引き締める。

 

「トリニティの雷雨、ミレニアムの機械暴走、アビドスの住民洗脳……これは確証は無いけど、ゲヘナの大雪。いずれも、発生時期がほぼ一致している。同一の存在が関与していると考えるのが、最も合理的ね」

 

そして、リオは視線を上げた。

 

モニターに浮かぶ、白い異形へと目を向ける。

 

「――この“ゼロ”が、それらのダークマターを束ねる中枢。そう見て間違いないでしょう」

 

 

 

 

重い沈黙が落ちた。

 

これで、敵の輪郭は見えた。

だが――それだけだ。

 

情報は、圧倒的に足りない。

 

リオの視線が、ゆっくりとカービィへ向く。

 

「……鍵は、やっぱりあなたね」

 

そう言って、彼女は机の引き出しを開けた。

 

金属音。

取り出されたのは、一見するとただのゴーグルだった。

だが、そのレンズはどこか異様に光を反射している。

そのゴーグルから伸びたケーブルは、何かに張り付けるような形をしている。

 

「これは……?」

 

「人の脳内を直接見るための道具よ」

 

リオは、ゴーグルを手にしたまま、しばらく黙っていた。

その指先が、ほんのわずかに強くフレームを掴む。

 

「……以前の私は、人の感情、思考も“管理すべき変数”だと考えていた」

 

淡々とした声だったが、どこか硬い。

 

「すべてを支配してしまえば、最適解が導き出せると本気で信じていたわ」

 

ゴーグルのレンズに、室内の光が歪んで映る。

 

「その過程で生まれたのがこれよ。脳の活動を直接読み取り、思考と感情の流れを“見る”ための装置」

 

リオは一度、視線を伏せた。

 

「……今思えば、随分と傲慢だったわね」

 

それを否定する言葉も、言い訳も、彼女は続けなかった。

 

 

短い沈黙。

 

 

その空気を、乱暴に切り裂くようにネルが口を開いた。

 

「でもよ」

 

リオを見もせず、壁にもたれたまま。

 

「今のお前は、そんなこと考えてねぇだろ?」

 

言葉はぶっきらぼうだったが、不思議と迷いはなかった。

 

「先生、あのチビ共やアタシらとやりあって、そうじゃねぇって気づけたんだ」

 

ネルはそのまま続ける。

 

「だったら、"どうだった"かなんて関係ねぇ。自分は"どうしたいか"、"何をしたいか"。それだけだ。先生もそう言うと思うぜ?」

 

そう言い終わり、ネルはリオの目を見る。

リオは一瞬だけ目を見開き、そして、ほんのわずかに口元を緩めた。

 

「……そうね」

 

その視線が、シロコへと移る。

 

シロコは、ゴーグルとリオを交互に見てから、腕の中の存在に目を落とした。

 

「カービィ」

 

小さく、優しい声。

 

「これを使えば、ゼロやダークマターのこと、もっと分かるかもしれない」

 

一拍置いて。

 

「……嫌なら、無理にはしない」

 

カービィは、シロコの顔をじっと見上げる。

 

「ぽよ!」

 

カービィはシロコの目を見て何か決意めいた表情をした。

 

「……ありがとう」

 

シロコは小さく息を吐き、決意を込めて顔を上げる。

 

「やろう。先生を見つけるために」

 

部屋の空気が、静かに引き締まった。

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、ゴーグルをかけて」

 

短い指示。

 

「ん」

 

シロコは抵抗なくゴーグルを被った。

カービィの体に取り付けられた装置から伸びるケーブルが、かちりと音を立ててゴーグルの側面へ接続される。

 

レンズの内側が、淡く発光した。

 

「準備は?」

 

「大丈夫」「ぽよ!」

 

二つの返事が、ほぼ同時に重なる。

 

「……起動するわ」

 

リオがリモコンのスイッチを押し込んだ。

 

 

 

――瞬間。

 

(……っ!)

 

視界が裏返る。

 

引きずられる、というより、落ちる感覚。

身体の輪郭が溶け、上下の感覚が消え、思考だけが細い糸のように引っ張られていく。

 

音が遠のき、光が潰れ――

 

 

 

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次に意識が浮かび上がった時。

 

シロコは、まず奇妙な違和感を覚えた。

 

 

足元に地面の感触がない。

だが、落下している感覚もなかった。

 

ゆっくりと視線を巡らせて、ようやく理解する。

――自分は、宙に浮いているのだと。

 

 

身体は驚くほど軽く、まるで水の中に身を預けているようだった。

しかし息苦しさはなく、むしろ心地よい。

手足を動かせば、空間そのものを泳ぐように、自然と前へ進める。

 

 

 

周囲を見渡した瞬間、言葉を失った。

 

そこは――

 

食べ物で埋め尽くされた世界だった。

 

巨大なケーキ。

山のように積まれたハンバーガー。

宙を漂うキャンディやドーナツ。

果物やパン、Mと書かれたトマトや見たこともない料理までが、無秩序に浮かんでいる。

 

甘く、温かい匂いが、空間そのものから滲み出しているかのようだった。

 

「……ここが……カービィの……」

 

言葉にするより早く、直感が答えを告げる。

 

――カービィの頭の中。

 

シロコは、ゆっくりと前へ進む。

泳ぐように、食べ物の海をすり抜けながら。

 

進むにつれて、景色は少しずつ変わっていった。

 

色は次第に淡くなり、

甘さに満ちていた空気が、静かに薄れていく。

 

そして――

 

食べ物の海の奥。

そこから、幾色もの光が溢れているのが見えた。

 

シロコは一度息を整え、その光へ向かって進み始めた。

 

 

 

 

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リオは、モニターに表示された数値を確認し、小さく安堵の息を吐いた。

 

「……無事、接続できたようね」

 

数字は安定している。

脳波も、想定範囲内。

 

 

「ゼロ……とやらの情報が、何か掴めればいいが……」

 

セイアはそう言いながら、

そっとカービィの顔を覗き込む。

 

「ぽよ?」

 

見つめ返す丸い瞳に、異変はない。

少なくとも、今は――

 

 

 

その瞬間だった。

――空気が、変わった。

 

「……ネル」

 

「言われなくてもわかってる」

 

彼女は寄りかかっていた壁を蹴るように離れ、無言で二丁の銃を手に取る。

 

何かが、扉に叩きつけられる。

金属が悲鳴を上げ、建物全体が震えた。

 

 

「敵のお出まし……というやつかな」

 

「お前らはそいつの周りを守ってな」

 

それだけ言うと、ネルは一歩前に出た。

 

 

頑丈だったはずの扉が、紙くずのように吹き飛ぶ。

流れ込んだ外気が部屋を駆け抜け、鎖が揺れ乾いた音を鳴らした。

 

その前に立ち、ネルは銃口を向ける。

 

「――てめぇらの相手は、アタシだ」

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