桃色の軌跡   作:逆襲

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最初からお読みいただく人に対してネタバレをしないよう、ここで説明をしますと、オリジナル設定で「ゼロ」=「0²」という設定を取っています。

こちらは公式設定ではなく、あくまでこの小説におけるオリジナル設定だということを留意してご覧ください。


桃球発進!

食べ物の世界を抜けたその先。

 

甘く柔らかな匂いが、ふっと途切れる。

空間の温度がわずかに下がり、景色も一段落ち着いたものへと変わっていった。

 

そこには、大小さまざまな球体が静かに宙に浮かんでいた。

 

赤、青、緑、紫。

淡く光るものもあれば、ほとんど透明に近いものもある。

まるで夜空に散らばる星を、そのまま閉じ込めたかのようだった。

 

一つひとつが、確かな「重み」を持って存在している。

 

 

 

シロコは最も近くにあった球体へ、そっと近づく。

 

すると、球体の表面が水面のように揺らぎ、内側から光が溢れ出した。

次の瞬間、球体いっぱいに映像が広がる。

 

「……これが……カービィの、記憶……」

 

奪われた食べ物を巡る戦い。

 

空を飛ぶ戦艦との正面衝突。

 

星を支配しようとした者たちとの激しい戦闘。

 

宝箱を巡って争う、ネズミのような盗賊との追いかけっこ。

 

空間そのものが歪むほどの力と力のぶつかり合い。

 

異世界に飛ばされて仲間を助ける姿。

 

 

どの映像も、あまりにも鮮明で、綺麗で、暖かかった。

音も匂いも人物の感情までもが、そのまま頭に流れ込んでくる。

 

思わずその場に留まりそうになる。

だが、シロコは小さく首を振った。

 

「……違う」

 

目的は、これじゃない。

 

「…これでもない」

 

シロコは球体から離れ、次へ、さらに次へと泳ぐように進んでいく。

 

 

 

 

そして――数分後。

 

「……!」

 

隣り合う、二つの球体。

どちらからも、異様な圧迫感が伝わってくる。

 

映し出された瞬間、心臓が強く跳ねた。

 

 

一つは、翼を持たない姿。

ただ球体に近い体と、中央に浮かぶ一つの大きな目。

 

もう一つは、あの時、シロコが見たものと酷似した姿。

あの時とは違い赤い翼を持ち、より禍々しく感じる異形。

 

「……ゼロ……」

 

喉の奥から、自然とその名がこぼれ落ちた。

 

どちらの映像にも、カービィがいる。

片方では、ハートのついたステッキを手に。

もう片方では、結晶でできた銃のような武器を構えている。

 

シロコは迷いながらも、その球体に手を伸ばした。

 

「……っ!?」

 

それに触れた瞬間。

 

 

何かが脳に焼き付くような感覚。

膨大な情報が、一気に押し寄せてくる。

先程の流れ込んできた情報の比ではない。

 

(なに……これ……!?)

 

映像だけじゃない。

知識。理解。雰囲気。心情。

認識そのものが、直接頭に叩き込まれてくる。

 

――ゼロは、ダークマターという種族の長。

――一度ならず、二度、カービィと対峙した存在。

――形態によって異なるが確かな弱点が存在すること。

――強力な洗脳能力を持ちながらも他のダークマターと違い、洗脳した際の違和感がほとんど無いこと。

――肉体を失い目玉だけになっても、なお戦いを続けたこと。

 

次々と、途切れなく流れ込んでくる。

 

「……っ、はぁ……はぁ……」

 

思わず息が荒くなる。

情報量があまりにも多く、既に頭が限界を訴えていた。

 

シロコは必死に呼吸を整え、流れ込んだ記憶を整理する。

 

(これが……カービィが、見てきたもの……)

 

その時だった。

 

「……?」

 

ふと気づくと、目の前に、新しい球体が一つ浮かんでいる。

 

他とは違う。

どこか、現実に近い質感。

 

映し出されていたのは――見覚えのある光景。

 

先生が、いなくなったあの日。

瓦礫の山を、必死にかき分ける自分。

それを、苦しそうな表情で見つめるセイア。

 

胸の奥が、きゅっと締め付けられる。

 

だが、映像はそこで終わっていなかった。

 

視点が、ゆっくりと上へ…夜空と引き上げられる。

夜空に浮かんでいたのは――黒い星。

 

「星…?」

 

他の星々が淡く輝く中、それだけが光を拒むように黒く染まっていた。

 

よく見なければ気づけなかっただろう。

だが確かに、そこにそれは在る。

 

「……もしかして……ここに……?」

 

言葉を発した、その瞬間。

意識が、急激に遠のき始めた。

 

「えっ……!?」

 

視界が歪む。

思考が、霧に包まれる。

 

 

 

それに抵抗する間もなく――

シロコの意識は、そのまま闇へと沈んでいった。

 

 

-------------------------------------

 

 

乱暴に発射された弾丸が、唸りを上げて空気を裂く。

銃声が重なり合い、室内に反響した。

 

直撃したダークマターは、悲鳴のような音を残し、

黒い体を保てなくなって霧散する。

 

「……ったく!」

 

ネルは舌打ちしながら、次の標的へと銃口を振る。

 

「対して強くねぇくせに、数だけは一丁前かよ……!!」

 

前方から、次々と迫る黒い影。

 

ネルはそれを、蹴り飛ばし、殴り潰し、引き金を引いて撃ち落とす。

 

動きに一切の無駄はない。

だが、それでも数が多すぎた。

 

撃ち漏らした数体が、ネルの横をすり抜ける。

 

 

 

だが、その先へと向かうダークマターの影は無かった。

抜けてきたダークマターは、光の線に切り裂かれるように分断され、消えていく。

 

兵隊のように整然と並んだ、リオのAMAS。

無機質な銃口が一斉に火を吹き、侵入を許さない。

 

 

 

――だが。

 

状況が好転したわけではなかった。

 

敵の波は止まらない。

倒しても倒しても、黒い影は湧き続け目の前へと迫ってくる。

 

 

 

「くそっ……まだ起きねぇのか!?」

 

ネルが叫ぶ。

 

「ええ……まだ、明確な反応は――」

 

リオが手元の端末を見てそう答えかけた、その瞬間。

 

「……っ!」

 

彼女の目が、端末に釘付けになる。

波形が乱れ、規則正しかった脳波が急激に跳ね上がる。

 

「脳波の数値が……!」

 

警告音が短く鳴る。

 

 

 

 

 

部屋の内部。

リオの端末に警告が届いたのと同時に、シロコの表情がわずかに歪む。

 

 

眉が寄り、唇が苦しげに震える。

まるで、何かを耐えるように。

 

(何か……あったのだろうか?)

 

「ぽよ……」

 

カービィが、不安そうに小さく鳴いた。

その丸い体を寄せ、シロコの顔をじっと見つめる。

セイアも同じようにシロコの表情を伺っていた。

 

次の瞬間――

突如として、シロコの腕が動いた。

機械的な音を立ててゴーグルが外される。

 

「うわっ!?」

 

思わず声を上げたのはセイアだった。

 

苦悶に歪んでいたはずの表情。

だが今、シロコの顔には――いつもの、静かな無表情が戻っている。

 

「だ、大丈夫なのかい? 何かにうなされているような表情だったが……」

 

心配を隠さない視線を向けるセイアに、シロコは短く頷いた。

 

「ん。問題ない」

 

あまりにもあっさりした返答。

だが、そういった直後にシロコの視線が一瞬で鋭くなる。

 

室内の奥――

銃声と衝撃音が絶え間なく響く方向へ。

 

「…色々分かったことがあるんだけど……敵襲?」

 

「あ、ああ……」

 

セイアが答える。

 

「今はネルが前線を抑えているが……数がどうにも――」

 

言葉が終わる前だった。

 

シロコは椅子から滑るように降り、テーブルに置いてあった銃を手に取る。

 

その動きに、一切の躊躇はない。

 

「カービィ、行こう」

 

短い一言。

 

「ぽよ!」

 

カービィは即座に応え、軽やかにシロコの肩へと飛び乗る。

風を切るような速さで、二人はそのまま部屋の外へと駆け出していった。

 

 

 

 

 

 

 

(……まずいわね)

 

リオは、内心でそう呟いた。

 

ネルの猛攻によって、前線は辛うじて保たれている。

銃声と衝撃音が絶え間なく響き、ダークマターは次々と霧へと消えていく。

 

だが、ネルの攻撃の“隙間”を縫うように、こちらへ向かってくるダークマターの数が、確実に増え始めていた。

 

さらに、AMASが張り巡らせた射線をかいくぐり、防衛ラインの内側へと踏み込んでくる影も、もはや珍しくない。

弾幕は機能している。判断も配置も、全て合理的に計算されたものだった。

 

 

しかし、純粋な物量と、終わりの見えない消耗が、確実にAMAS部隊を削っていた。

限界が近いと判断した、次の瞬間。

 

「……っ!!」

 

視界の端。

黒い影が、異様な速度で迫ってくる。

 

気づいた時には、すでに目の前へと迫っていた。

距離が詰まる速さが、他の個体とは明らかに違う。

 

AMASは他の目標で手一杯。

射線を切り替える余裕はない。

こちらをカバーできる者はいない。

 

 

リオは即座にホルスターへ手を伸ばそうとする。

 

持ち手に手をかけたその時。

乾いた銃声が、背後から連続して響いた。

 

 

一発。二発。三発。

 

 

迷いのない、寸分狂わぬ射線。

 

 

放たれた弾丸は正確無比にダークマターを貫き、黒い体は悲鳴のような音を立てながら霧となって霧散した。

 

 

 

 

 

一瞬の静寂が訪れる。

 

「ごめん、遅くなった」

 

「目覚めたのね…」

 

リオが振り向くと、そこには銃を構えたシロコと、肩に乗ったカービィの姿があった。

 

静かな声。

だが、二人の目は確かに戦場を見据えていた。

 

 

 

 

直後、鋭い金属音が響く。

 

AMASの一機が、ダークマターの猛攻に耐えきれず、ついに破壊された。

装甲が引き裂かれ、内部のパーツが火花を散らしながら地面へと崩れ落ちる。

かつて整然とした陣形を保っていた機体は、もはや原型を留めていなかった。

 

 

 

 

だが、シロコはその光景を見ても、表情を変えなかった。

絶望するどころか、何かを思いついたように、ちらりとカービィへ視線を向ける。

 

 

 

「カービィ」

 

 

シロコは、床に散らばったAMASの残骸を指さした。

 

 

「あれ、吸い込んでみない?」

 

「ぽよ!」

 

その一言で、シロコの意図は伝わった。

カービィは大きく口を開き、吸い込みを始める。

 

「ちょ、ちょっと……あなたたち、何を――」

 

リオが言い切る前に、金属片が軋む音を立てて引き寄せられた。

砕けた装甲、歪んだフレーム、発熱の名残を残すパーツが、宙を舞い――

次々と、カービィの口の中へと消えていく。

 

「そ、それは食べ物じゃ……!」

 

「ん。大丈夫」

 

シロコは、止めようとしたリオに声をかける。

 

そして残骸が全てカービィの口の中へ消え、それらを飲み込むように体を低くした瞬間。

カービィの体が白く輝き始める。

 

光は脈打つように広がり、次々と形を作っていく。

まぶしい光にリオは思わず目をそむけてしまった。

 

 

 

 

 

 

やがて光が収まり、そこに立っていたのは、機械の鎧を纏ったカービィだった。

 

丸い体を包み込むように展開された、重厚な装甲。

顔の前には淡いオレンジ色のバイザーが浮かび、無垢だった表情をどこか戦闘的に引き締めている。

肩口には、左右一対の砲身が自然に収まり、微かな駆動音とともに青白い光が脈打っていた。

 

「こ、これは……」

 

リオは言葉を失い、ただ目を見開いたままその姿を見つめる。

 

「ん。大成功」

 

シロコは、短くそう言って頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

視界の端で爆発が起きる。

リオのAMASが、耐えきれず破壊されたのだろうか。

 

だが、そちらに意識を割けば、この防衛線は一気に崩れる。

ネルは歯を食いしばり、視線を前に固定したまま、引き金を引き続けた。

「おらおらおらおらおらぁ!!」

 

ネルのツイン・ドラゴンが咆哮する。

まるで弾切れという概念が存在しないかのように、弾丸が撃ち出される。

 

それでも、撃ち抜かれた影の向こうから、まるで学習したかのように攻撃をかわしながら迫ってくるダークマターは増えていく。

 

「くそがっ……!」

 

奥歯を噛み締めた、その時。

 

 

 

 

「――伏せて!!」

 

背後から、鋭い声が飛んだ。

反射的にネルは身を低くする。

 

 

 

 

 

「フルチャージブラスターー!!」

 

 

次の瞬間――

背後から、誰のものともわからない声と共に青色の光が迸った。

 

 

一直線に空間を切り裂き、薄暗い路地裏を貫く閃光。

それはまるで、かつて見たアリスの光の剣の一撃を思わせる軌跡だった。

 

光の通り道にいたダークマターは抵抗する間もなく霧散し、そこには抉り取られたかのような空白が生まれる。

 

「……っ!?」

 

思わずネルは振り返る。

 

そこにいたのは――

先ほどまでとは、明らかに姿の違うカービィ。

肩に装備されたキャノンからは廃熱の煙を上げている。

 

何があったのか、その姿はどうなっているのか。

ツッコミたいことはいくらでもあったがネルは――

 

 

 

 

 

 

 

(カ……カッッケェェッッッ…!!)

 

 

 

 

 

 

カービィの姿に見惚れていた……

 

その隙を突くように、数匹のダークマターが視界に滑り込む。

 

「邪魔だっ!よく見えねぇだろうがっ!!」

 

怒りの籠った銃声が響き、火花とともにダークマターは一瞬で消し炭になる。

 

 

ネルが再び前を向くと、その両隣にカービィとシロコが並んでいた。

高鳴る気持ちを必死に抑え込み、ネルはわざとぶっきらぼうに口を開く。

 

「やっとお目覚めかよ」

 

「ん。待たせてごめん」

 

気のせいか、ダークマターたちの動きが鈍い。

先ほどまでの猛攻は影を潜め、どこか様子を窺うような挙動を見せている。

 

「んだよ。せっかく楽しくなりそうだったってのに。もう逃げる気か?」

 

「一匹たりとも逃がさない」

 

「ぽよ!」

 

短く声を合わせ、三人は同時に踏み出した。

崩れかけた敵陣へと、迷いなく。




コピー能力:アーマー
コピー元:リオのAMASの残骸

はっしん! ロボのアーマーだ!
デンキに 炎も あやつって
キャノンでドン! アームでバン!
チャージかんりょう ロックオンで
フルチャージブラスタァァー!!
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