桃色の軌跡   作:逆襲

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総合UA110000突破!
ありがとうございます!

双方の作品にあんまり関係無いんですけどストーリーズ3のキャラクリしてたら髪型におかっぱあって正実モブちゃんにしか見えませんでした。


染まりし二対の羽

「キ"ャ"ハハハァ"ッ!!!」

 

振り下ろされた拳が、コンクリートごとダークマターを叩き砕く。

砕けた闇は黒煙となって弾け、周囲に漂った。

 

ツルギはそのまま体を捻る。

遠心力を乗せた回し蹴りが唸り、群がっていたダークマターをまとめて薙ぎ払った。

 

闇の塊が次々と弾き飛ばされ、空中で爆ぜて黒煙へと変わっていく。

 

それでもまだ、空からは新たな影が降りてくる。

 

ツルギは狂気じみた笑みを浮かべたまま、地面を蹴った。

次の瞬間にはもう、次のダークマターの懐へと飛び込んでいる。

 

拳。蹴り。叩きつけ。

一撃ごとに闇が砕け、煙となって消えていった。

 

その様子を少し離れた場所から見ていたイチカが、思わず肩をすくめる。

 

「ツルギ委員長……なんか、いつもよりすごいっすね……」

 

その横でハスミは、視線を戦場へ向けたまま答える。

 

「最近あまり体を動かせていなかったからかもしれませんね……」

 

一拍置き、淡々と続ける。

 

(――いえ。恐らく、手加減をする必要がない相手だからでしょうか)

 

イチカは無残にも砕け散っていくダークマターを見て「うわぁ……」と小さく呟いた。

目の前ではツルギがダークマターの群れに突っ込み、まるで嵐のように蹴散らしている。

もはや戦闘というより、一方的な蹂躙に近かった。

 

 

 

その時。

イチカのポケットの中で、スマートフォンが震えた。

 

「ん?」

 

取り出して画面を見ると、正義実現委員会の後輩からの着信だった。

 

「もしもし?どうしたんすか――」

 

電話の向こうから、慌てた声が飛び込んでくる。

 

『イチカ先輩!? 今大丈夫ですか!?』

 

「大丈夫っすけど……何かあったんすか?」

 

『玄関方面が大変です! ダークマターが一気に集まってきて……何人か洗脳されちゃって…! それに――』

 

一瞬、言葉が詰まる。

 

『なんか……大きい影も見えて……!』

 

「……大きい影?」

 

イチカは思わず眉をひそめた。

 

「と、とりあえず落ち着くっす。今そっちに…」

 

『きゃっ!?――』

 

通信の向こうで爆発音のようなものが響く。

そして通信が途切れてしまった。

イチカの表情が一気に真剣なものへと変わった。

 

「大丈夫っすか!?」

 

イチカが問うがその返答は返ってこない。

隣にいたハスミが静かに尋ねた。

 

「イチカ、何かあったのですか?」

 

イチカはスマートフォンをポケットへ戻しながら答える。

 

「玄関方面がかなりまずいみたいっす。ダークマターが大量に集まってきてるらしくて……それに、なんか“でかい影”も見えたとか」

 

ハスミの目がわずかに細められる。

 

「……なるほど」

 

ハスミはすぐに判断を下した。

 

「イチカ。ここはツルギに任せましょう。私達は玄関方面へ向かいましょう」

 

「了解っす!」

 

そう言って二人が動き出そうとした、その時。

 

「ツルギ!」

 

ハスミが声を張る。

 

ツルギはちょうど一体のダークマターを叩き潰したところで、こちらへ首を向けた。

 

「ここは頼みました!」

 

ハスミの言葉に、ツルギは短くこくり、と頷いた。

 

そしてすぐに前を向き直る。

次の瞬間、ツルギは地面を蹴った。

 

向かってきたダークマターの群れへと、まるで獲物へ飛びかかる獣のように突っ込んでいく。

 

「キ"ャハハハハァッ!!」

 

拳が振り下ろされ、闇がまた一つ、黒煙となって弾けた。

 

ハスミとイチカはその背中を一瞬だけ見届けると、すぐに駆け出した。

 

校舎の廊下を抜け、外へと続く道を全速力で走る。

 

しかし――

 

先ほどまであれほど大量にいたはずのダークマターの姿が、ほとんど見当たらない。

 

いたとしても、ぽつぽつと数体いる程度。

 

銃を数発撃ち込めばすぐに黒煙となって消えてしまうような、取るに足らない数だった。

 

イチカは走りながら周囲を見回す。

 

「……さっきあんなにいたのに」

 

ぽつりと呟く。

 

「なんでここらへんには全然いないんすかね……?」

 

ハスミも同じ違和感を覚えていたが、静かに答えた。

 

「まずは――」

 

一瞬、言葉を切る。

 

「目の前の敵に集中しましょう、イチカ」

 

その言葉の意味を理解した瞬間、イチカの表情がわずかに引き締まった。

二人は速度をさらに上げ、正面玄関へと向かって走り続けた。

 

 

 

 

 

正面玄関へ辿り着いた瞬間、目に飛び込んできたのは混乱の光景だった。

 

地面には数人の正義実現委員会のメンバーが倒れている。

壁際に寄せられている者、仲間に肩を貸されている者――皆、少なからず負傷していた。

 

それでもまだ、残っているメンバー達は銃を構え、迫り来るダークマターを必死に迎え撃っている。

 

 

黒い影が玄関前の広場を覆うように蠢いていた。

 

「みんな、お待たせしたっす!」

 

イチカが声を張り上げながら駆け込む。

増援に気づいた委員会のメンバー達が一瞬振り返った。

 

「イチカ先輩!」

「ハスミ先輩も!」

 

安堵の声が上がる。

 

イチカはそのまま戦線へ飛び込み、銃を構えるとダークマターへ向けて引き金を引いた。

乾いた銃声が連続して響く。

弾丸が闇の塊を撃ち抜き、いくつものダークマターが黒煙となって弾けた。

 

 

一方、ハスミは数歩後ろで立ち止まり、冷静に銃を構える。

 

鋭い視線が戦場を走った。

正義実現委員会のメンバーへ飛びかかろうとしていたダークマターを見つける。

 

 

 

次の瞬間、そのダークマターの中心を弾丸が貫いた。

闇は空中で弾け、煙となって消える。

 

(確かに……ダークマターの数が多い……)

 

ハスミは戦況を冷静に見極めていた。

 

(ですが、ツルギの元に集まっていた数と比べれば、まだ――)

 

そこまで考えた、その時だった。

 

「ん……?」

 

近くで戦っていた委員会のメンバーの一人が、突然声を上げた。

 

「あ、あれは何でしょうか?」

 

その生徒が震える指で空を指差す。

ハスミとイチカ、そして周囲の生徒達の視線が一斉に上空へ向いた。

 

そこには――

 

空からゆっくりと降下してくる、二つの黒い球体があった。

 

ただのダークマターとは明らかに違う。

 

異様なほど大きく、そして濃い闇を纏っている。

 

まるで空間そのものを歪めているかのようだった。

 

「敵の増援っすか!?」

 

イチカが思わず叫ぶ。

 

ハスミはその光景を見据えたまま答える。

 

「……恐らく、そうでしょう」

 

そう言うと同時に、ハスミは銃を持ち上げた。

狙いを定め、一帯に乾いた銃声が響く。

 

放たれた弾丸は真っ直ぐ黒い球体へ向かって飛んでいく。

 

 

 

だが、弾丸が球体に触れた途端――

まるで闇に吸い込まれるかのように、弾丸は跡形もなく消え去った。

 

「……っ!」

 

ハスミの眉がわずかに動く。

しかしその間にも、二つの黒い球体はゆっくりと高度を下げ、地面へと降りてきていた。

 

まるで、何かを内側に包み込んでいるかのように。

 

 

やがて球体が地面に触れたとき、

その場にいた全員の背筋を、言いようのない悪寒が走り抜けた。

 

片方の球体の表面が不意に歪む。

次の瞬間、内側から腕が突き破るように飛び出した。

 

もう一方の球体には、無数の亀裂が走る。

亀裂は蜘蛛の巣のように広がり――

 

やがて、二つの球体は耐えきれなくなったかのように砕け散った。

 

黒い破片が霧のように散り、

その中心から、二つの人影が姿を現す。

 

「ミカ様!?」

 

思わず、イチカが声を上げる。

 

「……メタナイトさんまで……!」

 

ハスミまでもが目を疑う。

そこに立っていたのは、確かに見覚えのある二人だった。

 

だが――様子がおかしい。

 

制服や装備の所々は、黒い染みが滲むように広がっていた。

まるで闇そのものが絡みつき、侵食しているかのようだ。

 

その瞳も、いつもの輝きはない。

焦点は合っているのに、そこに意思が感じられない。

どこか遠くを見ているような、空虚な目。

 

まるで――

意思だけを抜き取られた操り人形のようだった。

 

周囲にいた正義実現委員会の生徒たちの間に、ざわめきが広がる。

ハスミは一歩前へ出ると、状況を整理するように静かに口を開いた。

 

 

「皆さん、ミネ団長から話は聞いていると思いますが」

 

一度、ミカとメタナイトへ視線を向ける。

 

「恐らく、お二人は現在、ダークマターに精神を支配されています」

 

その言葉に、近くにいた生徒たちの表情が固くなる。

イチカも苦い顔をしながら頭をかいた。

 

「ティーパーティーの皆さんがシャーレに行ったっきり戻ってこないと思ったら……」

 

小さく息を吐く。

 

「まぁ……ちょっとは予想してたっすけどね……」

 

軽く言っているようで、その声にはわずかな緊張が混じっていた。

 

 

ハスミの頬を、冷たい汗が一筋流れる。

 

 

目の前に立つのは、どちらか一人でも、まともに戦えば無事では済まない相手。

それが――二人同時。

 

(……勝てるのでしょうか)

 

そんな考えが、一瞬だけ頭をよぎる。

 

だがハスミはすぐにその思考を振り払った。

今は迷っている時間などない。

 

 

ゆっくりと息を吸い、後ろへ振り向く。

 

「イチカ!」

 

「はいっす!」

 

「動けるメンバーを集めてください」

 

ハスミは周囲で倒れている生徒たちへ視線を向ける。

 

「負傷者を寮へ。これ以上ここに残すのは危険です。それと、ミネ団長にも連絡をお願いします」

 

「了解っす!」

 

イチカはすぐに頷いたが、次の瞬間ふと動きを止めた。

そして、少し驚いたようにハスミを見る。

 

「……って、ハスミ先輩はどうするんすか!?」

 

その問いに、ハスミは再び前を向く。

視線の先には、静かにこちらを見据えているミカとメタナイト。

 

 

黒い気配をまとった二人は、まるで戦いの始まりを待っているかのようだった。

ハスミは銃を静かに構える。

 

 

そして、迷いのない声で言った。

 

 

「――私が、ここでお二人を足止めします」

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