桃色の軌跡   作:逆襲

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FOX小隊ガチャは240連で決着しました


空を舞う一筋の光

「あれは……メタナイトか?」

 

デデデ大王が窓に近づく。

それは徐々に近づいてきて、校庭の付近まで来た。

 

カービィは窓を開け、手を振った。

 

「めたないとー!!」

 

その声に気が付いたのか、ゆっくりとこちらに近づいてくる。

近づくにつれて、はっきりとした姿が見えてきた。

 

やがて、それは窓の前で速度を緩める。

その腕に掴まっていた者の体が、ふわりと浮かぶ。

 

「ミカ殿。降りられるか」

 

「うん、大丈夫!」

 

軽く頷いたミカは、そのまま手を離し、音もなく床へと着地する。

わずかに遅れて、メタナイトも静かに室内へと降り立った。

 

 

 

 

「メタナイトも無事だったか」

 

「無事……とは言えんがな。ダークマターに操られてはいたが、戦うことに支障はない」

 

「ぽよ~!」

 

カービィがメタナイトに飛びつく。

 

「カービィも無事で何よりだ」

 

「ぽよ!」

 

 

 

 

「すっごい……もう着いちゃった……」

 

改めて周囲を見回しながら、ミカは信じられないという表情をしていた。

 

「まったく……念のため寝ておけと言ったのに……」

 

そこへ、セイアが近づいてくる。

 

「まぁ、今は猫の手も借りたい状況だ。来てくれて感謝するよ」

 

「……それって褒めてるの?」

 

わずかに眉をひそめながらミカが問い返す。

その声音には、半分は呆れ、半分は本気で気になっているような色が混じっていた。

 

「当たり前じゃないか」

 

間髪入れずに返されるセイアの言葉。

その口調はいつも通り淡々としているが、どこか楽しんでいるような余裕も感じられる。

 

短いやり取り。

だがその空気は、どこか張り詰めていた場をほんの少しだけ和らげた。

 

――しかし。

 

「ええと……今来られたお二人は……」

 

遠慮がちに口を開いたのはアコだった。

視線はミカとメタナイトを行き来し、状況を把握しきれていない様子がありありと伝わってくる。

 

その言葉に応じるように、メタナイトがゆっくりとアコの方へ向き直る。

仮面越しの視線は鋭く、それでいて無駄な威圧感はない。

 

「私達もダークマターとの戦いに参加する」

 

低く、迷いのない声。

 

「うん!先生を助ける!」

 

すぐさまミカも言葉を重ねる。

その瞳には、揺るぎない決意が宿っていた。

 

(…相変わらずすっごい服)

 

 

……宿っているはずだ。

 

 

 

場にいる面々が、一瞬だけ言葉を失う。

 

(うう……ティーパーティーが二人も……とか言ってる場合じゃないですね……)

 

アコは内心で頭を抱えかけるが、すぐにぶんぶんと首を横に振って雑念を振り払った。

こんな状況で考えるべきことは、もっと他にある。

 

改めて表情を引き締め、二人の方へ向き直る。

 

「わかりました。ご協力、感謝します。では――」

 

指示を出そうとした、その瞬間だった。

 

どたどたどた――!

 

廊下の奥から、明らかに慌ただしい足音が響いてくる。

次の瞬間――

 

「失礼します!!」

 

勢いよくドアが開け放たれた。

強い音とともに、空気が一気に流れ込む。

 

そこに立っていたのは――ゲーム開発部の三人だった。

 

つい先ほどまで深い傷を負っていたとは思えないほど、しっかりとした足取り。

だがよく見れば、無理を押して来たことは明らかだった。

 

「セイアさん!ほら!」

 

モモイが前へ一歩踏み出し、手に持っていたフラスコを高く掲げる。

中身はすでに空――一滴も残っていない。

 

「すっごい苦かったけど……ちゃんと飲みきれました!私達も、アリスちゃんと先生を助けに行きます!」

 

ミドリも同じように空のフラスコを見せる。

 

言い切るその声には、わずかな震えもない。

覚悟だけが、真っ直ぐに乗っていた。

 

隣でユズもこくこくと小さく首を動かした。

 

三人とも、言葉以上にその瞳が語っていた。

 

セイアはゆっくりと彼女達を見る。

その視線は鋭く、そしてどこか優しい。

 

(……問題なさそうだね)

 

心の中で小さく結論を出すと、セイアは静かにアコの方へ歩み寄った。

 

「彼女達も同行するよ」

 

あくまで自然に告げられたその一言に、アコの表情がわずかに揺れる。

 

「それは……大丈夫なのでしょうか……」

 

当然の懸念。

無理もない。ヒナやミカなどの実力がある生徒はまだしも、名すら聞いたことのない生徒を戦地へ駆り出すのだ。

 

 

だが――

 

「ああ。何かあったら、私が責任を取るさ」

 

その言葉は、一切の迷いもなく静かに言い切られ、余計な装飾もなく場に落ちた。

 

決して軽い響きではないどころか、むしろその重さを誰よりも理解している者だからこそ放てる声音であり、冗談や勢いでは到底出せない確かな覚悟が滲んでいる。

 

だからこそ――それ以上、アコは何も言えなかった。

 

「……分かりました」

 

短く息を整えたあと、アコは視線を壁の時計へと移す。

 

針はすでに六時を回っていた。

窓から差し込む光も、いつの間にか柔らかな橙へと変わり、夜の気配が静かに滲み始めている。

 

「いつ出発するんだ?」

 

間を置かずに、イオリが問いかける。

 

「……」

 

アコはすぐには答えなかった。

窓の外へと視線を向け、わずかに目を細める。

 

(ダークマターの姿が見えづらくなる夜は危険ですね…)

頭の中でいくつもの可能性を並べ、静かに取捨していく。

 

やがて、小さく息を吐いた。

 

「……明日です」

 

短く告げられたその一言に、イオリがすぐに眉をひそめる。

 

「明日? その間にまた攻め込まれるかもしれないぞ?」

 

「ええ、その可能性はあります」

 

アコは一度だけ頷き、言葉を選ぶように間を置く。

 

「ですが……今から動いても、有利になるとは思えません。視界の悪い夜では敵の動きを捉えづらく、こちらの消耗が増えるだけです」

 

静かに、しかし確実に言葉を重ねる。

 

「ただでさえ少数精鋭の状況です。ここで人員を欠くわけにはいきません」

 

一度言葉を切り、ゆっくりと全員を見渡した。

その視線を受け、場の空気が自然と引き締まる。

 

「出立は明朝!各員、厳戒態勢を維持しつつ、明日の出発に備えてください!」

 

「「「了解!!」」」「ぽよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

その夜、シロコは校舎の屋上に立ち、静かに空を見上げていた。

 

その視線が向けられているのは、ひときわ大きく輝く月でも、広がる満天の星でもない。

 

ただ――その向こうにあるはずの、敵の本拠地。

見えるはずもない場所を、まっすぐに見据えていた。

 

やがて、背後でドアの開く音がする。

金属が擦れる小さな音に気づき、シロコはゆっくりと振り返った。

 

「あ、や~っと見つけた~」

 

気の抜けた声とともに現れたのは、カービィを抱えたホシノだった。

 

「シロコちゃん探したよ~」

 

「ぽよ」

 

腕の中のカービィも、短く鳴いて同意するように揺れる。

 

「……ん?」

 

ホシノはいつもの制服ではなく、水玉模様のパジャマのようなものを着ていた。

 

「あ、これ?いや~制服がボロボロになっちゃって…ヒナちゃんに貸してもらったんだ~」

 

それだけ返すと、再び空へと視線を戻した。

それ以上言葉を交わすでもなく、ただ静かに空を見上げる。

 

 

「よいしょっと」

 

ホシノはそんな様子を気にした風もなく、軽く声を漏らしながらシロコの隣に腰を下ろした。

 

「……」

 

しばらくの間、二人は何も言わずに同じ空を見上げていた。

風の音だけが、静かに屋上を抜けていく。

 

「先生のこと、心配?」

 

ぽつりと落とされた問い。

 

「……ん」

 

シロコは空を見たまま、短く答える。

 

「おじさんもさ、すっごい心配なんだよね。でも――なんでか、大丈夫な気もするんだ」

 

どこか力の抜けた口調のまま、ホシノは続ける。

 

「……どうして?」

 

わずかに間を置いて、シロコが聞き返す。

 

「うーん……言葉にするの難しいんだけどさ」

 

ホシノは少しだけ視線を細め、記憶をなぞるように空を見上げた。

 

「ほら、もう一人のシロコちゃんと戦った時あったでしょ?私たちが脱出したあと、何があったのかは分からないけど……それでも先生はちゃんと戻ってきた」

 

一拍置いて、肩をすくめる。

 

「……まぁ、服はちょっと無事じゃなさそうだったけどね」

 

冗談めかしたその一言が、少しだけ空気を緩めた。

それでもホシノは、そのまま言葉を続ける。

 

「だからさ――今回も、きっと大丈夫な気がするんだ」

 

「……ん」

 

シロコは短く頷く。

 

その視線は変わらず空に向けられたままだったが、ほんのわずかに、その奥にあった硬さが和らいでいた。

 

「それに、頼れる仲間がいるしね」

 

そう言いながら、ホシノは腕の中に収まるカービィの頭を、ぽんぽんと軽く叩く。

 

「ぽよ?」

 

カービィは不思議そうに顔を上げ、ホシノの方へと視線を向けた。

 

「カービィちゃん、シロコちゃんに何かあったら、守ってあげてね」

 

「ぽよ!」

 

意味を理解しているのかどうかは分からない。

それでもカービィは、迷いなく元気に頷いた。

 

その様子に、ホシノは小さく笑みを浮かべる。

 

「さ、明日も早いし今日はもう寝よっか。このままじゃ体、冷えちゃうよ」

 

そう言って立ち上がると、軽く背筋を伸ばして空気を吐き出した。

シロコはその姿を見上げてから、ゆっくりと立ち上がる。

 

「……ん」

 

短く応じて、二人は並んで歩き出した。

屋上の静けさを背に、足音だけが小さく響く。

 

「今日は久しぶりに、子守歌でも歌ってあげようか?それとも絵本の読み聞かせ?」

 

どこかからかうような調子で、ホシノが横目に言う。

 

「……ん、両方大丈夫」

 

間を置かずに返された、いつも通りの返事。

 

「残念~。昔のシロコちゃんなら――」

 

軽口を続けながら、二人の距離はゆっくりと屋上の扉へと近づいていく。

やがて扉が開き、そして閉じられる。

 

 

その音を最後に、屋上にはただ――静寂だけが残った。

 

 

 

 

 

 

 

 

次の朝。

ゲヘナの寮、その空き部屋に、やけに元気な声が響き渡った。

 

「お姉ちゃん!起きて!もう朝だよ!」

 

「う~ん…あと5分……」

 

布団にくるまったまま、もぞもぞと顔だけ埋めるモモイは、まるで現実から逃げるように身を縮こませる。

 

「そんなベタなセリフ言ってないで!ユズちゃんも起きて!」

 

「ふぁああ……」

 

隣ではユズが大きくあくびをしながらのそりと上体を起こす。

そのままとぼとぼとした足取りで洗面所へと向かっていった。

 

その横で、ミドリは布団ごとモモイを掴み、ぐらぐらと容赦なく揺さぶり続けている。

 

「起きてってば!ほら、ほんとに時間ないんだから!」

 

「うぅ~……あとちょっとだけぇ……」

 

まるで起きる気配のない気の抜けた返事に、ミドリのこめかみにぴくりと青筋が浮かぶ。

 

「まったく……これからアリスちゃんと先生を助けに行くっていうのに……」

 

半ば呆れたようにため息をつきながらも、その手は一切の遠慮なく揺らし続けていた。

 

「アリス……はっ!」

 

その名前が耳に入った瞬間、モモイがばっと跳ね起きる。

 

「今何時!?」

 

「6時だよ!出発まであと1時間しかないよ!」

 

「やばっ!?」

 

その言葉を聞いた途端、モモイは布団を蹴飛ばすように飛び出し、そのまま慌ただしく洗面所へと駆け出していった。

 

 

 

「ふぁああ……」

 

朝の静けさをゆるやかに揺らすように、ここでも大きなあくびが一つ漏れた。まだ空気には若干の涼しさが残っていて、心地よい空気が廊下に流れている。

 

「ホシノ先輩、大丈夫?」

 

隣を歩くシロコが、少しだけ首を傾けながら様子を伺う。

 

「ん?だいじょぶだいじょぶ~、いつも通りだから」

 

気の抜けた声で答えながら、ホシノは軽く手を振る

 

「ん、いつも通りなら寝ちゃう」

 

間を置かずに返された一言は、いつも通り淡々としている。

 

「うへへ……アヤネちゃんに怒られちゃうねぇ」

 

苦笑を浮かべるホシノだったが、その表情にはどこか余裕も混じっていた。

 

二人は並んで食堂から廊下へと歩いていく。

朝日が差し込み始めた校舎の影が長く伸び、その中をゆっくりと抜けていくようだった。

 

シロコの腕の中では、カービィが心地よさそうに揺られながら、まだ半分夢の中にいるようだった。

小さな体が規則的に上下し、ときおり「ぽよ……」と寝言のような声が漏れた。

 

 

――その時。

角を曲がった先で、不意に別の気配が現れる。

朝の静けさに紛れるように、二つの足音がゆっくりと近づいてきた。

 

「あ、おはよう」「おはようございます」

 

落ち着いた声と丁寧な挨拶が重なり、姿を見せたのはヒナとアコだった。

ヒナの白い髪が朝の光を受けて淡く輝き、その隣でアコも静かに頭を下げる。

 

「ヒナちゃん、それにアコちゃんもおはよ~」

 

ホシノが気の抜けた調子で手を振る。

 

「昨日はよく眠れたかしら?」

 

「ん。大丈夫」

 

「そう、それなら良かったわ」

 

ヒナは安心したようにわずかに目を細める。

その横で、アコの視線が自然とシロコの腕の中へと落ちた。

ほんの一瞬、何かを確かめるように。

 

「カービィさんは……大丈夫でしょうか?」

 

控えめな声音で問いかける。

シロコは腕の中を見下ろし、小さく頷いた。

 

「多分大丈夫」

 

「おじさんみたいに朝は弱いのかな~?」

 

ホシノが冗談めかして言うと、カービィが小さく身じろぎし、「ぽよ……」と気の抜けた声を漏らす。

 

その反応に、わずかに空気が緩んだ。

張り詰めていた朝の空気に、ほんの少しだけ柔らかさが混じる。

 

自然と四人は横に並び、歩調を合わせて校庭へと向かっていく。

やがて玄関を抜けると、ひんやりとした朝の空気が肌を撫で、視界が一気に開けた。

 

朝日が差し込む校庭の中央には、静かに佇むドラグーンMk-Ⅱの姿がある。

光を受けた機体は鈍く輝き、どこか神々しさすら感じさせた。

 

そして、その傍にはすでに三つの影があった。

 

「おう!来たか!」

 

声を上げたのはデデデ大王で、その隣にはマントに身を包んだメタナイト、そしてセイアが静かに立っている。

 

「昨夜、見張りをしていたが……この近辺にダークマターの姿は確認できなかった」

 

メタナイトが低く告げる。

視線は今も周囲へと巡らされ、わずかな異変すら見逃すまいとしている。

 

「ミレニアムやトリニティでも同じらしい……妙に静かすぎる。何か企んでいるのだろうか?」

 

セイアが腕を組み、思案するように眉をひそめる。

 

「うむ……」

 

短く応じたメタナイトは、わずかに間を置き――

 

「だが、今が出発の好機であることに変わりはない」

 

そう言い切ると、ゆっくりと視線を空へと向けた。

澄み渡る青空。

だがその奥に、確かな戦いの気配が潜んでいるのを、誰もが感じ取っていた。

 

 

――その時だった。

背後から、静寂を破るようにドタドタと慌ただしい足音が響く。

 

全員が振り返ると、玄関の向こうから砂煙を上げる勢いで駆けてくる影が見えた。

 

その影は勢いのまま目前で急停止し――

 

「お待たせ~☆準備に時間がかかっちゃった」

 

ミカが軽く手を振りながら、いつもの調子で現れる。

 

「随分と遅かったじゃないか」

 

セイアが呆れたように言うと、ミカはむっと頬を膨らませた。

 

「セイアちゃんが起こしてくれないからでしょ?もー、大変だったんだから」

 

「私は何度も起こしたのだがね……」

 

やれやれといった様子で、セイアが首を横に振る。

そのやり取りの直後――

さらに背後から、今度は別の足音が重なって聞こえてきた。

 

「ごめんなさーい!!」

 

「ちょ、ちょっと待って……!」

 

「ひぃ…ひぃ…」

 

三つの影が必死に駆けてくる。

近づくにつれ、その足取りの重さと息遣いの荒さがはっきりと分かる。

ようやくその場に辿り着いた頃には、三人とも肩で大きく息をしていた。

 

「はぁ……はぁ……」

 

「何とか……間に合ったね……」

 

「もう…だめ…」

 

ミドリとモモイがその場で膝に手をつきながら息を整える中――

ユズはそのまま力尽きるように、ばたりと地面へ倒れ込んだ。

 

「……セイアちゃん、ほんとにこの子達連れてって大丈夫なの?」

 

ミカが半ば呆れたように視線を向けると、セイアはわずかに肩をすくめる。

 

「……まぁ、大丈夫だろう」

 

軽く言い切るその声には、妙な説得力があった。

 

 

やがて、荒かった呼吸も少しずつ落ち着いていく。

三人がようやく顔を上げた頃には――周囲の空気はすでに切り替わっていた。

 

シロコ、ヒナ、ミカ、デデデ大王、そしてメタナイト。

五人はそれぞれ左右のウィングへと分かれ、しっかりと取手を握っていた。

 

機体の上には、すでに出撃の準備が整いつつある。

 

「ほらお姉ちゃん、早く!」

 

ミドリはモモイの手を引き、収納部へと入る。

 

「またここかぁ……」

 

モモイがげんなりとした声を漏らす。

 

「け、結構揺れるから……怖い……」

 

ユズが不安そうに身を縮こまらせる中、ミドリは装備を確認していた。

 

 

一方――

機体の中央には、カービィがちょこんと立っていた。

眠そうな表情はいつの間にか消え、周囲をきょろきょろと見回している。

 

その様子を見て、アコがわずかに眉をひそめた。

 

「カービィさんはここでよろしいのでしょうか……」

 

慎重な問いかけ。

万一を考えれば、中央は最も目立つ場所でもある。

 

その疑問に答えたのは――デデデ大王だった。

 

「問題ねぇ!そいつはそこでいいんだよ」

 

「ぽよ!」

 

まるでそれに応えるように、カービィが元気よく声を上げる。

 

短い静寂。

全員の視線が、自然と前方へと揃った。

 

出撃の空気が、はっきりと形を成す。

 

 

 

 

「みんな、気を付けてね~」

 

「健闘を祈る」

 

「ヒナ委員長……いえ、皆さん。必ず、無事で戻ってきてください」

 

アコが一歩前へ出て、静かに言葉を重ねる。

その声音には揺るぎない真剣さが宿っており、場の空気を引き締めるように広がっていった。

 

それぞれの想いが、確かな重みを持って背中を押す。

受け取る側もまた、言葉は少なくとも、確かにそれを受け止め――全員が静かに頷いた。

 

「――では」

 

メタナイトが低く告げ、わずかに身を沈める。

 

「ドラグーンMk-Ⅱ……発進する!」

 

次の瞬間、操作部へと手が伸び――迷いなくボタンが押し込まれた。

 

直後、機体内部で低く唸るような駆動音が立ち上がる。

それは次第に音圧を増し、空気そのものを震わせるほどの振動となって周囲へ広がっていった。

 

地面の砂や小石がふわりと浮き上がり、足元でかすかに跳ねる。

 

やがて、ドラグーンMk-Ⅱの機体がゆっくりと浮上を始めた。

わずかに揺れながら高度を上げ、その場に張り付いていた重さを振り払うように空へと持ち上がっていく。

 

――一瞬の静止。

 

すべてが止まったかのような、張り詰めた刹那。

 

 

そして――

爆ぜるような加速とともに、機体は前方へと撃ち出された。

 

「うわっ!?」

 

遅れて襲いかかる風圧が校庭を一気に薙ぎ払い、見送る者たちの髪と衣服を大きく揺らす。

砂埃が舞い上がり、視界が一瞬白く霞んだ。

 

その中を突き抜けるように、ドラグーンの影は弧を描きながら一瞬で空へと駆け上がり――

 

気づいた時には、すでに遠く。

点のように小さくなったその姿は、やがて澄み渡る空の彼方へと溶け込むように消えていった。

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