桃色の軌跡   作:逆襲

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飛べ!無敵にHELLO NEW FRIENDS!

「……とはいっても、アイツのもとまでどうやって行くか……」

 

デデデ大王は空を見上げる。

 

きらきらぼしの光はとうに見えなくなっていた。

その光が、既に遠くへ行ってしまったことを示しているようだった。

 

「このままだと、先にアイツに願いを叶えさせられかねん……何かいい手は……」

 

「そうだ! マホロア!」

 

バンダナワドルディが、マホロアへ振り向く。

 

「ローアを呼べない? ローアだったら、ワープ機能を使ってここまで来れるんじゃないかな?」

 

「おお、そりゃあいい案だ!」

 

そう尋ねると、マホロアは困ったように顔をしかめた。

 

「ソレガ……コノ世界ニ来タ時ニ何回カ試したンダケド、ローアに連絡スル事自体ができないンダ……ボクの方カラゲートも開ケナイみたいダシ……」

 

「そうか……」

 

「うーん……」

 

その場に沈黙が訪れる。

 

方針は決まった。

だが、それを実行するための手段がない。

 

早くしなければ、世界中が闇に染まってしまう。

 

「カービィと俺様でホバリングするにも無理があるし……ワープスターでもありゃあ……」

 

デデデ大王がそう呟いた――その瞬間。

皆がいる空間に、突然、稲妻のような光が走る。

 

「エッ!?」

 

「何々!?」

 

「敵…!?」

 

その場にいた者たちが一斉に身構え、光の走った方向へ振り向く。

 

やがて、稲妻が収まる。

その中心に――星型のゲートが開いた。

 

「「「あっ!!」」」

 

デデデ大王、マホロア、バンダナワドルディ。

そしてナギサやゲーム開発部の何人かも、思わず声を上げる。

 

かつて見たことのある、星型のゲート。

それはバリバリとエネルギーを放ちながら、みるみるうちにその大きさを増していく。

 

敵襲かもしれない。

そう考えた者たちは、すぐさま銃を構えた。

 

 

 

だが――。

ゲートの向こうから現れたのは、「船」。

青い船が、ゲートを突き抜けるようにして姿を現す。

何を漕いでいるのか分からないオールや、どこから風を受けているのか分からない帆。

船体には至る所に星の装飾がちりばめられている。

 

「ローア!!!」

 

マホロアが、誰よりも早く声を上げた。

青い船――ローアは、マホロアのすぐそばまでゆっくりと進み、その場で静かに停止する。

 

「うおおお!」

 

「カッコいいです!」

 

モモイと、背負われたままのアリスが、驚きと興奮の入り混じった声を上げた。

 

「…す、すっごいトロロアの船に似てる……」

 

「う、うん…」

 

ミドリとユズの二人も、感情をあまり出していなかったが、驚きを隠せていないようだった。

 

 

 

やがてローアの船体にある丸い部分が開き、足場がせり出した。

 

「キミノ方カラ助ケニ来テくれルナンテ! 助カッタヨォ!」

 

マホロアは嬉しそうにローアの船体を撫でる。

 

すると――。

船体を、一筋の青い光が静かに走った。

 

 

 

「何コレ、マホロアの!?」

 

ゲーム開発部が興味津々そうにマホロアに駆け寄る。

 

「ウン!ボクのアイボウのローアサ!!」

 

マホロアが嬉しそうにニッコリと笑顔を見せる。

 

 

 

 

「ロ、ローア?」

 

ヒナが、不思議そうにその船を見つめる。

 

「さっきあなた達が言ってた…?」

 

「あぁ、そうだ。言うなれば、宇宙を舞う箱舟だな」

 

デデデ大王が答える。

 

「宇宙を……?」

 

「ああ」

 

デデデ大王はローアを見上げる。

 

「あれなら……」

 

そして、空の彼方へ視線を向ける。

 

「……あいつのところまで行けるぞ!」

 

 

 

 

 

その時。

 

「……ん?」

 

地面が、微かに揺れた。

 

「何々!?」

 

モモイが周囲を見回す。

だが、揺れは収まらない。

むしろ、時間が経つほどに激しくなっていく。

 

「うわっ!?」

 

壁に次々と亀裂が走る。

まるで、この星そのものが悲鳴を上げているかのように、建物が大きく軋み始めた。

 

「まさか……」

 

デデデ大王が、崩れ始めた壁を見上げる。

 

「アイツの仕業か!?」

 

そう言っている最中にも、壁から瓦礫が崩れ落ち、土煙を立てていく。

 

「ミンナ! ハヤクローアニ乗ッテ!」

 

その声に押されるように、一行は次々とローアへ駆け込んでいく。

 

「ミドリ!早く入って!」

 

「お姉ちゃん!入口狭いんだから押さないでよ!」

 

「大王様も早く!」

 

「あ、ああ!」

 

デデデ大王もローアへ向かって走り出した。

 

――だが。

 

「……!」

 

その足が、ぴたりと止まる。

デデデ大王は、ゆっくりと後ろを振り返る。

 

「大王様!?」

 

その一方で、同じようにシグレもまた足を止めていた。

 

「シグレ!?」

 

崩れ落ちる瓦礫の向こう。

そこには、まだ戻ってきていない者達がいる。

 

「何ヲシテルノ!?」

 

バンダナワドルディの後ろからマホロアが叫ぶ。

 

「早ク乗ッテ!モウ時間ガナイヨォ!」

 

 

それでも、デデデ大王もシグレも動かない。

 

「メタナイトとノドカの嬢ちゃんが、まだ来てねぇんだ!置いていけるか!」

 

デデデ大王が、静かに口を開く。

その間にも、崩壊は止まらない。

 

天井から瓦礫が次々と落下し、地面には大きな亀裂が走る。

その亀裂は、まるでローアを追いかけるように、少しずつこちらへ近づいてきていた。

 

「モウ崩レルヨォ!」

 

マホロアの声が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間――。

 

「ぅ…ぁ……」

 

通路の奥から、小さな悲鳴のような声が響き渡った。

シグレが振り向く。

 

 

 

崩れかけた通路の向こうから、小さな影が見えた。

 

「あっ!!!」

 

シグレがあげた声にデデデ大王も振り向く。

 

 

小柄な少女が、何かを抱えながら、全速力でこちらに走ってきている。

 

「ノドカ!!」

 

その姿がハッキリと見えたその時、シグレが叫んだ。

 

「シグレちゃあぁぁぁぁん!!!」

 

ノドカもまた、涙声で叫び返す。

 

メタナイトをしっかりと抱えたまま、落ちてくる瓦礫を必死に避け、こちらへ向かって全力で走ってくる。

 

「急いで!こっち!」

 

「うわぁぁあん!!」

 

あと少し。

あと数メートル。

 

ノドカがローアへ向かって走る。

 

 

 

 

 

 

――その瞬間だった。

 

「……えっ!?」

 

ノドカの目の前。

地面に一本の亀裂が走った。

 

それは一瞬で大きく広がり――。

 

「きゃあああああっ!?」

 

地面が崩れ落ちる。

 

「ノドカ!!」

 

走り出した勢いは、急には止まらない。

 

ノドカの身体が、崩れた地面の中へと投げ出された。

 

「うわぁぁあっ!!」

 

「ノドカ!」

 

シグレが咄嗟に手を伸ばす。

ノドカも必死に手を伸ばす。

 

 

だが――。

あと少し。

 

指先がぶつかり、両者は離れていく。

 

「くっ……!」

 

シグレがさらに身体を伸ばす。

その時だった。

 

ぐいっと。

 

突然、左腕を掴まれた感触を覚える。

振り返ると、デデデ大王は何も言わずにシグレの腕を掴んでいた。

 

「……!」

 

デデデ大王は何も言わない。

ただ、シグレの腕を掴んだまま――。

 

ぐっ!!

 

その身体を、谷の方へ押し出した。

 

「……!」

 

その意図を、シグレは一瞬で理解した。

 

「……分かった!」

 

シグレは身体を乗り出す。

この間、およそ0.5秒。

 

 

 

そして――。

 

今度こそ、ノドカの手をしっかりと掴んだ。

 

「ノドカ!!」

 

「シグレちゃあぁぁぁん!!!!」

 

ノドカの手を、決して離さない。

だが、シグレの身体も谷へ半分以上乗り出している。

 

「よし……!」

 

デデデ大王が、シグレの身体をしっかりと支える。

 

「引っ張るぞ!」

 

デデデ大王はシグレの身体ごと、まるで一本釣りでもするかのような勢いで、一気に引きずり上げた。

 

「た、助かったぁぁ……!」

 

ノドカはへなへなとその場に座り込む。

 

「ほら、ノドカ!行くよ!」

 

シグレがノドカを抱え起こす。

デデデ大王はノドカからメタナイトを受け取ると、四人はそのままローアへ駆け込んだ。

 

それを確認したマホロアが操作盤をダダダダッ!と叩く。

 

「出発スルヨォ!!!」

 

それに応えるように、ローアの船体が大きく唸り、ゆっくりと宙へ浮かび上がった。

 

「マホロア!もっと上へ!早く!」

 

「今ヤッテルヨォ!!」

 

ローアはそのまま、一気に高度を上げていく。

 

 

 

 

 

 

 

そして――。

 

凄まじい速度で上昇した、まさにその直後。

眼下に広がっていた星が――。

 

 

地面から亀裂が走り、星全体が崩れ始める。

 

「……!」

 

次の瞬間。

巨大な爆発が起こった。

 

星は大量の煙を吐き出しながら、跡形もなく崩壊していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ゼロ様!》

 

一匹のダークマターが声を上げる。

 

《……分かっている》

 

目前に広がる巨大な地球。

ゼロは、ここまで進んできた方向へ振り返る。

 

そこには、一筋の青い光が見えていた。

 

(これ以上移動しても……追いつかれるだけ、か)

 

ゼロは静かに翼を広げる。

 

《奴らを、ここで迎撃する》

 

()()()()()()

 

ゼロの言葉に応じ、周囲のダークマターたちも一斉に動き出す。

ゼロを中心に、青い光が向かってくる方向へと隊列を組んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわっ!!」

 

ローアの機体が大きく揺れる。

 

「きゃっ!」

 

モモイの身体が壁へ叩きつけられた。

 

「いたた……」

 

頭を押さえながら、モモイが顔を上げる。

 

「敵の攻撃ダヨォ! ミンナ、衝撃ニ備エテ!」

 

マホロアが叫んだ直後――。

再び、機体が大きく揺れた。

 

「わっ!?」

 

ローアのモニターに映し出されているのは、どこまでも続く黒い宇宙。

だが、その闇の彼方には、確かな光があった。

 

 

そして――。

その光の方向から、無数の黒い光線が飛来してくる。

 

「来るヨォ!!」

 

ローアが防御用のバリアを展開する。

 

一発。

二発。

三発。

 

次々と光線がバリアへ着弾し、あっという間に表面へ亀裂が走る。

 

「まずい、バリアが持たない!」

 

バンダナワドルディが叫ぶ。

 

「クッ……!」

 

マホロアが操作盤を叩く。

 

ローアの船体が大きく旋回し、直撃を避ける。

同時に、船体から星型の弾が次々と発射された。

星型弾が黒い光線へぶつかり、その一部を相殺していく。

 

 

それでも――。

 

「数が多すぎるヨォ!」

 

避けても避けても、次々とレーザーが飛んでくる。

このままでは、いずれ直撃を受けてしまうだろう。

 

 

 

「モモイ、大丈夫?」

 

ユズが、壁際で頭を押さえているモモイへ駆け寄る。

 

「う、うん……ちょっとぶつけただけだから……」

 

「そう……」

 

モモイの無事を確認すると、ユズは何かを探すように周囲へ視線を走らせた。

 

 

まず、目に入ったのは、力なく倒れているアリス。

その傍には、ミドリが心配そうに付き添っている。

 

先ほどアリスは薬を飲んでいた。

それでも、未だに立ち上がることすらできず、ぐったりとしている。

 

「アリスちゃん……」

 

 

そして、さらに視線を動かす。

少し離れたところに見える、人だかり。

 

その中心にいるのは――おそらく先生だ。

 

先ほど見た光景が脳裏をよぎる。

先生も、明らかに普通の状態ではなかった。

 

「先生…………」

 

ユズは小さく息を呑む。

 

アリスの為。

先生の為。

そして、今こうしてローアに乗っている仲間たちの為。

 

今自分ができることはなんだろう。

 

「……」

 

そしてユズはもう一度、モニターへ視線を向ける。

 

黒い宇宙。

無数の光線。

ローアの動き。

星型弾の軌道。

 

 

それを見ると、ユズは一歩踏み出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マズい……! コノママジャ……!」

 

マホロアの操作する手に次第に余裕が無くなっていく。

 

「……マ、マホロア!」

 

背後から声が聞こえた。

だが、マホロアは振り返る余裕すらない。

 

「ユズ!?ゴメンダケド、後ニ……!」

 

 

その時。

ユズの手が、操作盤へ伸びた。

 

「アッ!?」

 

マホロアが驚きの声を上げる。

 

 

次の瞬間――。

ユズが発射した星型弾が、こちらへ向かっていた黒いレーザーを正確に撃ち抜いた。

 

二つの攻撃がぶつかり合い、目の前で大きな爆発が起こる。

 

「ヨ……ヨク、今ノ見エテタネ……」

 

マホロアが思わず呟く。

 

「こ、こっちは……任せて!」

 

ユズはそう言うと、操作盤へ向き直った。

 

 

いつものおどおどした様子。

だが、その手とその瞳には、もう迷いがなかった。

 

「……!」

 

ユズが操作盤を叩く。

星型弾が一発。

続けて二発、三発。

 

放たれた弾丸は、宇宙の闇に紛れて迫り来る黒いレーザーを、一つずつ正確に撃ち抜いていく。

 

「……っ!」

 

避けきれない攻撃が迫る。

ユズは即座にバリアを展開。

 

すでにヒビの入った防壁がレーザーを受け止め、激しい光を散らしながら、それをかき消していく。

 

間髪入れず、再び操作盤を叩き、星型弾が放たれる。

次のレーザーを撃ち落とす。

 

さらに次。

そのまた次。

 

動きに一切の無駄がない。

 

一つ一つの操作に迷いがなく、まるでこの状況を最初から知っていたかのように、正確に星型弾を発射していく。

 

「UZQueen」の名を冠する彼女に、相応しいほどに。

 

マホロアもローアの操縦に集中でき、幾分か被弾も少なくなっていっている。

 

 

 

 

 

 

そして――。

 

「……見えタ!」

 

マホロアが声を上げる。

 

モニターの先。

黒い宇宙の彼方に、無数のダークマターを従えた白い姿が見えていた。

 

「ゼロ……!」

 

デデデ大王が息を呑む。

 

あと少し。

あと少しで、ゼロの元へ辿り着ける。

 

 

 

 

その時だった。

 

「――ッ!?」

 

視界の彼方から、今までとは明らかに違う光が走った。

 

「マホロア!!」

 

「マズイッ!!」

 

マホロアが操作盤を即座に叩く。

 

 

その直後――。

 

極太のレーザーがローアのすぐ隣を通り抜けた。

 

「うわぁぁぁっ!?」

 

船体が大きく揺れる。

 

 

 

直撃は避けた。

 

だが――。

機体の側面から、嫌な音が響いた。

 

「左ノオール損傷……!」

 

ローアの左側に取り付けられたオールが大きく損傷し、火花を散らしている。

 

「マズイ……!」

 

マホロアが操作盤を動かす。

 

だが、先ほどまでとは明らかに反応が違う。

 

「機動力が落ちてる……!」

 

ユズが呟く。

 

ほんの僅かな差が生まれる。

その瞬間。

 

無数のレーザーが、こちらへ向かってくる。

 

 

まるで――。

 

ローアの動きが鈍ることを、最初から狙っていたかのように。

 

「来る……!」

 

「マズイヨォ!!」

 

マホロアとユズが操作盤を叩く。

星型弾が次々と放たれ、迫り来るレーザーを撃ち落としていく。

 

しかし――。

 

「多すぎる……!」

 

「コノ数ハ……!」

 

一つを撃ち落とせば、別のレーザーが迫る。

 

避けようとしても、オールが片方損傷したことでローアは思うように動けない。

 

「右へ!」

 

「分かってル!」

 

ローアが大きく旋回する。

だが、間に合わない。

 

 

レーザーが船体を掠める。

 

「きゃあっ!」「うおっ!?」

 

船内でドタドタと音が聞こえる。

 

続けて、今度は船体の後部へ直撃する。

 

「だ、大丈夫なのこれ…!?」

 

モモイが声を上げる。

船体が大きく揺れ、内部から警告音が鳴り響く。

 

「マホロア!」

 

デデデ大王が思わず駆け付ける。

 

「分かッテル!分かッテルケド……!」

 

マホロアの額に汗が浮かぶ。

 

ユズも必死に操作盤を叩き続ける。

それでも、全てを捌ききることはできない。

 

一つ。

また一つ。

 

レーザーがローアの船体を掠め、装甲を削り、機体へダメージを蓄積させていく。

 

「……っ!」

 

ユズの手は止まらない。

マホロアも操作盤から手を離さない。

 

だが、二人とローアには、もう限界が近づいていた。

 

 

 

「畜生……! 何か、何か無いのか!?」

 

デデデ大王が拳を握りしめる。

目の前で仲間たちが戦っている。

 

それなのに、自分には何もできない。

その無力感に、歯を食いしばる。

 

その時だった。

 

「ぽよ!」

 

カービィが突然、声を上げた。

 

「カービィ!どこに行くんだ!?」

 

デデデ大王が声を上げる。

カービィは答えない。

 

そのまま、何かを決めたように走っていく。

 

「ん……!」

 

先生の傍にいたシロコもその姿に気付いた。

 

「……あ、おい! お前さんまで!」

 

デデデ大王の声を背に、シロコもカービィの後を追う。

 

 

 

 

カービィが扉を開ける。

その先にあったのは――ローアの甲板だった。

そこは既に傷だらけになっており、あちこちから煙が上がっている。

 

「ぽよ! ぽよ!」

 

カービィは甲板へ駆け寄る。

 

そして――。

 

ぽん。

ぽん。

小さな手で、甲板を叩いた。

 

すると。

ローアの船体が、それに呼応するように淡い光を放った。

 

「……?」

 

少し遅れて甲板へ出てきたシロコが、その光景を見つめる。

 

何をしているのか。

何をするつもりなのか。

シロコには、まだ分からなかった。

 

 

その直後、カービィが跳んだ。

 

「えっ……?」

 

空中で身体を反転させる。

 

そして――。

口を、大きく開いた。

 

次の瞬間。

凄まじい勢いで、吸い込みが始めた。

 

「……!?」

 

シロコは咄嗟に扉の縁を掴む。

 

「ん……!」

 

身体が引っ張られる。

髪が激しくなびく。

 

「何これ……!」

 

いつもの吸い込み。

最初は、そう思った。

 

だが――。

違う。

 

敵の攻撃を吸っているわけでもない。

そもそも、吸い込もうとしている方向がおかしい。

 

「……まさか」

 

シロコが目を見開く。

吸い込みの中心にあるのは――。

 

ローアそのものだった。

 

「カービィ……この船を……!?」

 

ありえない。

いくらカービィでも、この巨大な箱舟を吸い込めるはずがない。

 

 

そう思ったその時。

ローアの船体が、少しずつ。

ほんの少しずつ――。

 

カービィの口へ向かって、ローアの船体が少しずつ引き寄せられていく。

 

「……!」

 

シロコは言葉を失う。

あまりにも予想外の光景に、思わず手に込めていた力が緩んだ。

 

「しまっ……!」

 

その瞬間、身体がふわりと宙へ浮く。

 

「っ……!」

 

慌てて手を伸ばし、カービィを掴んだ。

 

 

そして――。

カービィの口が、ローアの船体へ触れた瞬間。

 

一瞬にして、シロコの視界がピンク色に染まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナッ!?」

 

マホロアが叫ぶ。

モニターが突然、真っ暗になる。

 

映像が消えた。

外の景色どころか、光さえも何一つ映らない。

 

「カ、カメラが壊れた……!?」

 

ユズが慌てて操作盤を確認する。

だが、計器の値は元のままで、記されているカメラの状態も元のままだ。

 

 

「……エ?」

 

 

次の瞬間。

 

ローアの船体を照らしていた光が、白からピンクへと変わった。

 

「えっ!? 何、何!?」

 

ミカが声を上げる。

船内が一瞬にしてピンク色の光に包まれる。

 

それだけではない。

先ほどまでとは比べ物にならないほど、ローアそのものが強い光を放ち始めていた。

 

「エッ!?」

 

マホロアも驚きの声を上げる。

 

操作盤へ目を落とす。

計器に表示されていた数値が、次々と変化していく。

 

「……コレハ……!?」

 

壊れかけていたマスト。

ボロボロになっていた右のオール。

ヒビが入りかけていたウィング。

 

その全てが、まるで何事もなかったかのように修復されていく。

 

「損傷率……ゼロ!?」

 

ユズが目を見開く。

しかも、それだけではない。

 

各部の状態を示す数値は、戦闘前の状態へ戻っただけではなかった。

 

「エ…エエッ…?」

 

マホロアが呆然と呟く。

 

 

 

 

 

 

そして――。

 

困惑の中。

船内へ、一つの声が響き渡った。

 

『ぽよ!』

 

カービィの声だった。

 

「おい!こ、こりゃ一体どうなったんだ!?」

 

その声に対し、デデデ大王が叫ぶ。

 

『あ、声が聞こえる……でも、私からの声は中に聞こえるのかな…?』

 

シロコの声が返ってくる。

 

「シロコ!一体どうなって……!」

 

ヒナが問い掛ける。

 

『えっ…どうなってるかって……』

 

 

少しの沈黙。

 

そして――。

 

『ええっと……カービィが……この船を頬張っちゃった……』

 

「…………」

 

船内に、静寂が訪れる。

 

誰も言葉を発しない。

その意味を理解するまで、ほんの数秒。

 

 

 

 

 

 

「「「「ええええっ!?」」」」

 

驚愕の声が、船内へ一斉に響き渡った。

 

そして、その声に答えるように――。

 

『ぽよぉ!!!』

 

と大きな声が船内に再び響いた。




ローアほおばり

楽園へ いざなうはずが、クラウンだっかんの
手先となった ローアは だれかに止めて
もらいたく、本来の力を かくして いたという。

だが、ゼロとトモダチになる為に 頑張るカービィと
心を 通じさせ ローアは今、860%の力を ときはなつ!
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天童アリスにはケイの他にもう一人従者がいた▼全然騎士っぽくない主人公が自分の目的のために誠心誠意頑張り続けたそんな話▼この小説は本気と書いてマジと読むほど自分のために書いた作品で▼メインストーリーやイベントをある程度知っていること前提で書いています▼


総合評価:5294/評価:8.85/連載:72話/更新日時:2026年06月24日(水) 13:14 小説情報


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