ぽこあやったり病気にかかったり色々ありました...。
「ほ、頬張ったって……」
「この船って、私たちよりかなり大きかったよね……?」
「それを…あんな小さな体で…?」
困惑しながら、ミドリとモモイ、ユズが顔を見合わせる。
そんな三人の横で、バンダナワドルディは驚いた様子を見せながらも、何かに納得したように――
「あ!」
と声を上げた。
「バンダナ、何か分かるのか?」
デデデ大王が尋ねる。
「はい!カービィがやったのは、ほおばりヘンケイという技です!」
「「「ほおばりヘンケイ?」」」
その場にいた何人かが、一斉に聞き返す。
「カービィがモノを飲み込むんじゃなくて、頬張ることで使える能力です!」
「頬張る?口に入れるだけってこと?」
モモイが頭に「?」を浮かべながら尋ねる。
「はい!例えば、何か輪のようなものを頬張れば、空気を吸い込んで口から突風を起こせるようになったり、アーチのようなものを頬張れば、空をものすごい速さで滑空できるようになったりします!」
「何それ!すごい!」
モモイは興味津々に聞き入る。
デデデ大王は、何かを思い出すように目を細めた。
「そういえば……前にエフィリンから、そんなことを聞いたような……」
「マ、何にせヨ、状況ガ好転シタヨォ!」
マホロアは操作盤へ向き直る。
「カービィ! 聞こえるカイ?」
『ぽよ』
マホロアの声に反応するカービィ。
「ローアの操作は任せるヨォ!思いッキリやっちゃっテ!」
『ポヨ!!』
威勢のいい声と共に、ローアがグンッ、と加速する。
その衝撃のせいだろうか。
「ん……ん……」
ミドリの膝に横たわっていたアリスが、ゆっくりと目を覚ます。
「アリス!」
モモイがいち早くそれに気が付いた。
「アリス、大丈夫? 変な感じはしない?」
ローアに乗り込むなり、意識を失ってしまったアリス。
ミドリも心配そうに、その顔を覗き込む。
「はい、アリスは大丈夫です!それより……」
アリスは無理やり身体を起こそうとする。
だが、それをミドリの手が制した。
「アリスちゃん、まだ起きない方がいいよ」
「で、でも……」
ゼロと友達になりたい。
そう言った自分が、何もできない。
それが、アリスには嫌なのだろう。
「……あ、そうだ!」
その時、モモイが声を上げた。
「アリス、はいこれ!」
モモイはポケットから、一つのものを取り出す。
「これは……」
モモイはそっとアリスの手のひらに手渡す。
それは、小さなロボットのストラップだった。
アリスはモモイから受け取ったそれを、まじまじと見る。
「ケイ……」
「ゼロと戦う前に転んだ時、ポケットから出てきたんだけど……なんで入ってたのかは、今でも分かんない」
「……」
アリスは何も答えない。
ただ、手の中のストラップを見つめる。
「もしかしたら、ケイもアリスちゃんを助けに来てくれたのかもね」
ミドリがアリスの頭に手を置きながら、そう答える。
「……ありがとうございます、ケイ」
小さなそれを胸元へ抱き寄せる。
それだけで、不思議と力が湧いてくるような気がした。
《ゼロ様! あのピンク玉が……!》
《あのような技もあったとは……》
周囲のダークマターたちが、ざわめく。
ゼロは声色を変えず、その方向を見つめていた。
《速度が上がっています!このままでは……!》
《……仕方あるまい》
ゼロが、動きを止める。
《ゼ、ゼロ様……!?》
周囲のダークマターは思わず止まり切れずに少し過ぎてから戻ってくる。
すると、ゼロの周囲を漂っていたきらきらぼしが、ゆっくりとゼロの瞳へ集中していく。
その輝きは、光とも闇とも取れる、美しくも不気味な光を放っていた。
《潰えよ》
「うわっ!!」
ローアの機体が、再び大きく揺れる。
ガツンッ、と鈍い音を立てて、モモイが再び壁に頭をぶつけた。
「いったぁ……」
「な、ナニが起きたんだイ!?」
マホロアが慌てて問いかける。
『ん、飛んでくる攻撃の数がさっきより多くなった……あっ!』
その声と同時に、再びローアが大きく揺れる。
「くそっ……マホロア!何かないのか!?」
デデデ大王がモニターを見ながら、悔しそうに歯を食いしばる。
「……ローアノ大部分ヲカービィが覆っチャッテルカラ、コッチからデキルことハ……!」
マホロアも操作盤を忙しく叩く。
だが、操作できるものは、どれも今カービィが覆っている部分にあるものばかり。
下手に使用すれば、カービィを巻き込んでしまうだろう。
だが、今カービィを戻せば、さっきまで手一杯だった攻撃以上の弾幕が襲い掛かってくる。
「あっ、これ!」
バンダナワドルディが、懐からマキシムトマトを取り出す。
「これをカービィに食べてもらえば!……今は無理ですね……」
妙案を思いついた――そう思ったのだろう。
しかし、すぐに肩を落とす。
「何か……何かないのか……!」
「ここまでなの……!?」
「このままじゃ……!」
三度、ローアが大きく揺れる。
先程までの余裕は、もうどこにもなかった。
その場にいる誰もが、どうしようもなくなっていた。
たった一人を除いて。
「ア、アリスちゃん……?」
「アリス、ど、どうしたの?」
ミドリとモモイが、立ち上がったアリスを見て声を上げる。
アリスは何も答えない。
そのまま、マホロアのいる操作盤へ向かって歩いていく。
「マホロア、少し良いですか?」
「エ、ア、ウン……」
どこか得体の知れないオーラを感じ取ったマホロアは、思わず一歩(?)、後ずさる。
「ありがとうございます」
そうマホロアに告げると、アリスは操作盤の前に立つ。
「ふぅ……」
深く息を吐く。
そして――
(ケイ……もう一度アリスに……いえ、アリス達に力を貸してください)
小さなストラップを、両手で優しく――それでいて力強く、胸に当てる。
それは、ただのロボットのストラップ。
ケイのデータが入っているとはいえ、何の変哲もない小さなストラップ。
これだけで、この状況を打破できるわけがない。
だが――
アリスの手の中から淡い光が零れる。
「……」
アリスは両手を開き、その光を見つめる。
そして、その光はゆっくりとアリスの元から離れ、ローアの操作盤へと触れた。
次の瞬間。
「まぶしっ!!!」
その場にいる全員が思わず目を覆いたくなるほどの光が、部屋一帯を包み込んだ。
「これは……」
アリスは驚きながらも、目を開け続ける。
『お久しぶりです、王女』
この場の誰でもない声が、アリスの耳に届く。
その声は、どこか不満げで。
何かを言いたげで。
そして――どこか嬉しそうだった。
間違えるはずがない。
この声を、忘れるはずがなかった。
「ケイ!!!」
アリスの頬に、一筋の光が差す。
『……積もる話は後にしましょうか』
ケイは、静かにそう告げる。
『状況はある程度把握しています。私はどうすればよいですか?』
「アリスは、何としてもゼロさんの元に行きたいです!」
アリスは迷うことなく答える。
「ケイ、あの時のように……力を貸してください!」
『……あの時のように、ですか』
ケイの声が、僅かに曇る。
『……申し訳ありませんが、あの手は使えません』
「ええっ!」
『あの方法は、ウトナピシュティムの本船だったからこそ使えた方法です』
ケイは淡々と説明する。
名も無き神々が遺した構造を利用することによってバリアを突破できた。
だが、今はその構造自体が存在していない。
『私が再びデータへ戻ること自体は構いません。ですが……この、訳も分からない船では……』
そこまで言ったところで、ケイの言葉が途切れた。
『……なんですかあなたは?』
少しの沈黙。
『え? 代わりにこれを……?』
アリスは首を傾げる。
「ケ、ケイ?誰とお話してるんですか?」
『いえ、この船が――』
再び、ケイの言葉が途切れる。
『…………』
「ケイ?」
しばらくして。
『……はぁ』
ケイの声に、僅かな変化があった。
まるで、何かを理解したような。
『…………』
そして、もう一度。
『成程……そういうことですか』
ケイは、静かに言葉を続ける。
『王女』
「はい!」
「両手を操作盤へと近づけてください」
「両手ですね!分かりました!」
唐突に出された指示を、アリスは疑うことなく行う。
「ケイ!やりました!」
「ありがとうございます。……アリス、先ほどの言葉は撤回します」
その声には、先ほどまでの迷いがなかった。
「私に任せてください」
ケイがそう言った瞬間、自分の周りを包んでいた光が止み、元の景色が戻る。
「ア、アリス……?」
背後から声をかけられる。
アリスは操作盤に手を付けたまま、その声の方へ振り向く。
そこに立っていたのは、モモイ、ミドリ、ユズ、そしてマホロアの四人だった。
「さっきヨク聞こエなかったンダケド……誰ト話してたンダイ……?」
「ケイです!」
「「「ケイ!?!?」」」
部屋中に、三人の声が響き渡る。
「えっ!? な、なんで!?」
モモイが驚いたように声を上げる。
「そのストラップに入ってるはずじゃ……!」
ミドリも、信じられないといった様子でアリスの手元を見る。
ユズも困惑した表情を浮かべていた。
三人とも、アリスが言っていることを理解できていない。
「チョ、チョット待ってヨォ、ケイっテ……?」
マホロアが、訳が分からないといった様子で尋ねる。
「ケイは、アリスの友達です!」
「ソウナノカイ……?デモ、姿は見当たらナイヨォ?」
マホロアが周囲を見渡す。
「ケイは、この船の中にいるみたいです!」
「ローアノ中!?」
マホロアが驚いて飛び上がる。
「はい!でも、どうしてケイが中にいるのかは、アリスにもよく分かりません!」
アリスは、いつもの調子で答える。
「ですが、とにかくケイが力を貸してくれるみたいです!」
「は、ハァ……」
マホロアは、おおよそ理解できていないような反応で返す。
すると、アリスは再びモニターの方へ向き直った。
「ケイ! よろしくお願いします!」
『王女は鍵を手に入れ、依代は用意された』
『名も無き神々の王女に代わり、
『ここに、新たな
その直後。
ローアの船体が、淡く輝き始める。
「コ、コレハ……!」
マホロアが息を呑む。
内部から、ゴゴゴゴゴ……という駆動音が響き始めた。
ローアの側面から歯車の入った球体が、まるでダークマターのように現れる。
「あれは...エナジースフィア?」
現れたエナジースフィアは次々とその形を変えていく。
それらはやがて光の粒へと変わり、ローアの周囲を取り囲んでいった。
一つ。
また一つ。
光が重なり合い――
虹色の輝きを放ちながら、ローアの周囲に新たな形を形成していく。
「な、なにが起きるの……?」
モモイが呆然と呟く。
ミドリも目を見開く。
誰も、この現象が何なのか理解できない。
だがアリスだけは、疑いを持たずにその光景を見ていた。
そして――
「……来ます!」
アリスが叫ぶ。
正面から、再び極太のレーザーが向かってくる。
「うわっ!?」
「マズイヨォ!」
だが――
レーザーが虹色の光へ触れた、その瞬間。
まるで光に吸い込まれるように。
極太のレーザーは、跡形もなく掻き消された。
「こっ、これは……!」
「バリアだ!!!」
モモイが目を輝かせる。
『アリス、そう長くは持ちません。今の内に』
「はい!ケイ、ありがとうございます!」
アリスは操作盤へ向き直る。
「カービィさん! 全速力でお願いします!」
『ぽよぉ!!!』
その声に応えるように、ローアが更に加速する。
先ほどまでとは明らかに違う速度。
景色が、一瞬で後方へ流れていく。
まるで――このまま空間そのものを突き抜け、ワープしてしまいそうなほどに。
ローアは、ゼロとの距離を一気に詰めていく。
《なんだ、この力……!》
《我々が観測したものとは、また別の力だと……!?》
先ほどまで圧倒的に優勢だったダークマターたちが、次々と慌てふためく。
それを見つめながら、ゼロは静かに思考する。
(きらきらぼしの力をもってしても、落とせぬか……)
ならば――
ゼロは、ゆっくりと視線の向きを変えた。
(……ならば)
《落とせぬのであれば、もはやこれしかあるまい》
視線の先は、あの星と同じほどに輝くキヴォトス。
きらきらぼしが、ぐるりとゼロの周囲を回る。
《ゼロ様! もうすぐそこまで奴らが!》
《……きらきらぼしよ》
ゼロは、キヴォトスへ視線を向けたまま呟く。
《このキヴォトスを――》
口(?)を開いたその時だった。
『ゼロさーーーーーーーーーーーーん!!!!!!!!!!!』
《……!》
耳をつんざくような大声。
ダークマター達は、思わずその方向を振り向いた。
(アリス……)
《ゼロ様! お早く!》
《………》
ゼロは再び、きらきらぼしへと視線を戻す。
だが――
『ゼロさん!』
再びアリスの声が響く。
《ゼロ様!あの小娘の声など、気にする必要はありません!》
周囲のダークマターが叫ぶ。
《あなたは闇の王!何物も、あなたに並ぶことなどあり得ないのです!》
しかし、ゼロの視界にローアの姿がはっきりと映る。
もうすぐそこまで迫っている。
《あのような言葉に耳を貸す必要などありません!》
《闇こそが、あなたの力!》
《あなたこそが、この世界を――》
ゼロは、目の前のきらきらぼしを見つめる。
(これが……私のしたいこと…なのか…)
自分の責務。これが自分の行うべき事。
周囲のダークマターを見る。
全員が、自分を待望の瞳で見つめている。
そして――
《きらきらぼしよ!!》
ゼロが叫ぶ。
《このキヴォトスを……!》
きらきらぼしが、ゼロの周囲を舞う。
《この世界を――!》
その輝きが、徐々に強くなっていく。
《闇に染めろ!!!!!》
《ゼロ様!!》
ゼロが願いを叫んだ途端、周囲のダークマターが歓喜する。
だが――
きらきらぼしは、動かなかった。
ただ静かに。
その場で輝きながら、ゼロの周囲を漂い続けている。
ゼロの表情が、僅かに歪む。
《…な、何故、だ?》
きらきらぼしは、何も答えない。
《きらきらぼし!何故、願いを叶えない!!》
傍にいたダークマターの声が、宇宙に響き渡る。
《あの者のカードの力か!?》
《ゼロ様! もう一度……!もう一度、行えば……!》
《そうだ!もっと強く願えられば上手く行くはず…!》
先ほどまで歓喜していたダークマターたちも、次第に慌て始める。
だが、それでも――
きらきらぼしは動かない。
ローアが、ゼロの目の前へ止まる。
そして――
カービィとゼロの視線が、交わった。
《……!》
『ゼロさん!』
その声が、ダークマターたちの叫びを遮った。
一帯に静寂が満ちる。
『アリスは、まだゼロさんのお返事を聞けていません!』
「ぽよ!」
アリスの声に、カービィの声が重なる。
『ゼロさんは、何をしたいですか?』
『何が好きですか?』
『もっとアリスに教えてください!』
「ぽよ!!」
《アリスよ……あの時も伝えたが、我は……》
『それは聞きました!ですが、ゼロさんの本心を聞けていません!』
《なっ………》
ゼロの言葉が、そこで止まる。
『……いえ』
アリスは、一度だけ言葉を飲み込む。
『本当にゼロさんが嫌なら、アリスは諦めます』
『ですが、その前に一つだけ、アリスに言わせてください』
『アリスと……いえ、』
きらきらぼしが、更に強く光り輝く。
『アリス達と――』
まるで――
今までその言葉を待ち続けていたかのように。
『友達になりましょう!!!!!』
その瞬間。
黒で染まった宇宙の一帯が、一瞬だけ光に包まれた。
朧げな意識の中で、光の中に浮かぶ面影を見る。
あぁ……私が欲していたのは……願っていたのは――
力でもない
地位でもない
世界を闇に染めることでもない
ただ――
『友』が欲しかったのだな…
あの者のように…笑い合い…時に喧嘩をして…互いを思い合う…
感謝するぞ……
アリス……
次回、最終話です。