イナズマイレブン 『王者雷門』のヴィクトリーロード 作:ヒラメもち
また、新作ストーリーのネタバレ注意。
第1話 入部テスト
俺は長崎の小学校からずっとサッカーをやってきた。
U-12の大会に出場だってしたことがある。そりゃ優勝ってわけにはいかなかったけどな。
とにかくサッカーが好きで、しかも全国レベルに上手い自信がある。
だってあの私立の雷門中にスカウトされた。
1000人以上の生徒を抱えるマンモス校で、様々なスポーツの分野で結果を残している。
その中心であるサッカー部なんて、フットボールフロンティアで10年以上も無敗なんだ。全国から選手を集めていて、設備は最先端で、有名な海外コーチだって呼んでいる。
かつてのプロで有名だった円堂守世代だったり。
現在プロで有名な松風天馬世代だったり。
彼らの選手の多くが雷門中サッカー部に所属していたらしい。
長崎から東京に連れてきてもらって、もし合格すれば俺1人で寮生活することになるけど、まあなんとかなるさ。
「すっげぇ~」
「確かにな」
本校舎も巨大だったし。
そして何よりサッカー好きとしては、外のグラウンドが凄かったし、サッカー棟だけで本校舎と同じくらい巨大だ。
というか思わず口に出てたみたいで、若草色って感じの男子が相づちを打ってくれた。
「急に話しかけてすまない。俺は
「俺は
『よろしくな、パワプロ』って蓮はイケメンスマイルを浮かべた。
この休みの日にサッカー棟に向かってるということは、こいつもサッカー部入部希望というわけだ。周囲を軽く見渡せば、着ている学校指定のジャージがバラバラなやつらがどんどん集まってきてる。
「パワプロ、緊張してるか?」
「いいや、お前こそ自信ないのか?」
俺が軽く挑発するも、蓮は涼しそうな笑みをこぼす。
そりゃ会うのは初めてだが、お互いU-12の選手として名前は知っていただろうからな。
「エースストライカー志望のパワプロとしては、あいつがライバルだろうな。
蓮が見た方向には、ガタイがよくて、紫色の髪をツンツンヘアーにしてるやつがいる。
「ああ。U-12の大会じゃ直接対決とはならなかったが、噂は聞いてた」
伝説の円堂守世代の最強ストライカー候補を語るなら、必ず出てくる名前が豪炎寺修也だ。
彼が中学1年の頃によく使っていたとされていて、様々な必殺シュートの基礎となる『ファイアトルネード』、あれに憧れている小学生は多い。
松風天馬選手と剣城京介選手など、プロにも使い手がいる。
「回転しながら空中に上昇し、炎を纏ったボールを放つ……言葉にしてみれば簡単そうだが、高難度の技だ」
「コーチに黙ってコッソリ練習して、怪我するやつが多いんだよな」
一定以上の難度の必殺技の会得自体が、そう簡単なことじゃない。
月影蓮と言えば確か『プレストターン』だっけな。プロで活躍してるMF神童拓人選手が使うドリブル技の1つで、しかもこいつはチームの司令塔としての役割もしていたと聞く。
「そろそろか。MFは集合場所が別だからな…… パワプロ、お前とは一緒にサッカーやってみたい。絶対に合格しよう」
「ああ。俺たちで雷門中の新しい黄金時代を作ってやろうぜ!」
『お互い1軍を目指そう』『なんなら世界でもコンビ組もうぜ』って言葉を交わして、蓮は他の会議室に歩いていった。
その背中を見ていると、2人ほど女子もその部屋に向かっていった。
「どうしよぉ~! 緊張するぅ~~!」
「目立ってますよ、ナオさん」
水色の髪の子と、白い髪の子、どっちも可愛い女子だったな。
最近じゃ、女子選手も希望次第でフットボールフロンティアに出場できるからな。
事前の審査を通っている以上、彼女たちも実力があるんだろう。雷門中サッカー部に入りたい人はとにかく多い。1軍や2軍に入るどころか、入部テストに合格しなければ入部すらできないんだ。
設備に莫大な資金をかけているし、公式戦は常に無敗でなければならない。本気でプロになろうとしてるやつが多く、そういった熱意のある選手だけが入部できる。
「けっ、どいつもこいつも弱そうなやつらだ」
「てめぇ、何か文句あるのか?」
おいおい、早速喧嘩かよ。
さすがはFW志望、プライド高いやつだらけか。
「や、やめませんか? そろそろ先生が来ますよ」
「あぁん? 別にもう誰が選ばれるか、決まってるようなものだろ」
赤髪でおとなしそうな男子が止めようとしてるけど、暗黒寺の威圧でビビっちゃってるな。
暗黒寺は彼の胸ぐらまで掴もうとしてて。
それを阻止するべく腕を掴んだのは、黒いヘアバンドで赤いツンツンヘアーのやつだ。
こりゃ本気で拳と拳のぶつかり合いになるな。
サッカープレイヤーなら、サッカーで喧嘩しろよ。
「お前が全国優勝の立役者だからか、暗黒寺?」
「その紅白帽子、さてはお前がパワプロだな」
バカにするような言い方だが。
いいだろ、怪我を隠すために使ってたら、トレードマークとして気に入ったんだから。
「もし試合中にそうやって問題を起こせば、イエロー通り越してレッドカードかもしれないぞ」
「はっ、お前はそんなビビりだったのか」
どうやら矛先がこちらに向けられたようだ。
「お前もファイアトルネードの使い手らしいが、俺のほうが威力は上だ」
「それはどうかな。今からストライカー対決でもやってみるか?」
もしこの挑発に乗ってきたとしたらお互い不合格になる。
だから今こいつは勝負に乗ることはできない。
「ちっ……」
最悪の場合、こいつと並んでツートップになるのか。
絶対に連携できる気がしないな。
「あなたたち、それ以上問題を起こすようなら、不合格にしますからね」
誰かがマネージャーの1人を呼んでくれたようだ。
暗黒寺は、俺たちをひと睨みしてから自分の席に向かっていった。
「その、ありがとうございました」
「助かった。つい、カッとなっちまった」
FW志望でライバルだというのに、赤髪コンビはお礼まで言って感謝してくる。なんか良いやつらだな。
「気にするな」
「そ、それにしても、あのパワプロ君かぁ~」
「だな。俺たちの世代でファイアトルネードの使い手、その1人」
そう言われると、ちょっと照れる。
試合で使えるようになるレベルまで、相当の特訓をしたからな。
「俺は
『分かるよな?』って表情を向けてくるけど、連携技はそう簡単じゃないんだぞ。
もし今から試したとしても、単なるシュートチェインになりそうだ。
「えっと、僕は
「必殺シュート覚えてるだけすげぇよ、自信を持てって」
「だな。応用技の基礎になる」
一之瀬一哉と言えば、主にアメリカで活躍していた『フィールドの魔術師』か。
その相棒とされる土門飛鳥も『ファンタジスタ』なDFでカッコいいんだよな。
「俺だって見てて憧れたさ、あの人たちのグランフェンリルとかな」
「ええ、マークやディランと放つシュートですよね。まあ西垣と組んでいた時のトライペガサスもいいですよ」
「へぇ、円堂守と組んでいた時のザ・フェニックスもいいんだけど、西垣守も知っているんだな」
連携技にも憧れるよな。
大佑は良い兄貴分な感じだし、夏生も珍しいことまで知っていて、2人ともサッカー好きということが伝わってくる。この2人と、何か連携技の練習してみたいと思えた。
「どうやら、今年も豊作なようだな」
その声に目を向ければ、濃い紫色の髪の人がいた。
何より注目すべきは、現在の雷門ユニフォームだ。
「ようこそ、雷門中へ。ファーストチーム所属、1年FWの
そう語りかけながら、前の教壇に向かっていく。
俺たちは慌てて各自の席に座った。
「ここにいる皆は、全国から集められたエリート中のエリートだ」
雷門1軍のストライカーからそう言われて、自然と頬が緩んでしまったけど。
「しかし、いい気にはなるなよ。雷門中サッカー部には、いわゆる1軍2軍、それ以外の枠があり、入部テストも存在する。だから他校との試合よりも、部員同士の競争が何よりも厳しいぞ」
その言葉で、俺たちの気が引き締まったけど。
なんだか寂しい気分にもなった。
「時間が惜しい。俺たちFW組は屋内グラウンドで行う。貴重品をロッカーにしまった者から集合だ」
ぶつかって転んでいるようなやつもいたが、俺はすでに手を貸せない状態だ。
味方からのパスという、チャンスを
「なかなか
「本当に全国クラスの実力があるなら、これくらいできるだろ」
マークされて、密集しているDFを抜くことより簡単だ。
しかもドリブルしてもいないしな。
スタートから早く、先頭を走っているのは俺と暗黒寺だけど。
フィジカルで飛び出してきたのは
まるですでにテストは始まっていて、FW志望が、ふるいにかけられたかのようだ。
現時点の実力で考えれば、俺たちの世代でエースストライカー候補は、この4人ってところか。
「お前たち慌てすぎだ! プロを目指すならもっと落ち着け!」
……どうやら違ったらしい。
憧れの雷門中、ちょっと心配になってきたぞ?
いや、俺は『王者雷門』のエースストライカーになって、新しい伝説を作ってみせるぞ。