イナズマイレブン 『王者雷門』のヴィクトリーロード   作:ヒラメもち

11 / 37
新作ストーリー、大きなネタバレを含みます



第3話 乙女仙次郎の計画!

 

 

 

 放課後の時間、選手たちは練習に(はげ)んでいる。

 しかし雷門中監督、乙女仙次郎(おとめせんじろう)は今日も自室にいた。

 

 彼が行うことは、AIに基づいたデータによる練習メニューの作成だ。

 すでに数十年前となった円堂守世代とは時代が変わり、選手の実力がある程度、数値によって示されるようになった。

 

 データサイエンスだけでなく、ロボット工学も進んだことで、選手レベルに応じた練習相手の開発すら進んでいる。

 

 だが、選手によってはデータを超えて想定外のプレイをする者がいる。

 

 例えば円堂ハル。

 昔から父親に付いていって、ハードな特訓をこなしてきたこともあり、全体的に高水準の能力値ではあるが。

 

 それよりも彼の強みは、スポンジのように吸収するサッカーセンスにある。もし急にゴールキーパーを任せたとしても、感覚だけで全国クラスになるだろう。彼の天賦の才は、どちらかというと母親譲りなのだと思われる。

 

 そして葉若風露(はわかふうろ)だ。

 あの"事故"から不死鳥のごとく蘇ってきた選手である。

 後遺症によって、シュートの際のコントロールが著しく低下し、FWとしての復帰は絶望的だとAIに判断された。

 

 だが、2軍メンバーを全体的に急成長させたことといい。

 自分自身も急激にストライカー技術すら取り戻していったことといい。

 

 選手のオーラを具現化された『化身』、それとは別種の可能性を秘めていることといい。

 

「……ふざけるな」

 

 他に誰もいないため、乙女仙次郎(おとめせんじろう)(いきどお)りを隠さなかった。

 

 まず第一に、彼の立てた計画が破綻(はたん)していること。

 『ぬくぬくとサッカーの英才教育を受けて甘えたガキの集まり』で実績を積み上げ、なんとか雷門中サッカー部監督に就任できた。そこから彼が監督であるべき期間は、たった2年でよかった。FW組の不調を引き起こすよう練習メニューをバレない程度に改悪した。

 そうすれば、新1年の円堂ハルには嫉妬による悪意が向けられるはずだった。

 

「だが、円堂ハルが向けられるのは、期待や羨望(せんぼう)ばかり」

 

 更には確実な実行犯となるべき者を用意するべく、とりあえず1人、"事故"に遭ってもらったのに。

 

「なぜアイルが……! なぜ葉若風露(はわかふうろ)は……サッカーに戻ってこれた!」

 

 乙女仙次郎(おとめせんじろう)は、円堂ハルへの復讐のために生きている。

 なぜなら彼の息子が、円堂ハルを恨んで死んだからだ。

 ある試合中の大怪我により、アイルは選手として再起不能となった。そしてライバルであるハルとの実力差に悩み、ショックで車に飛び込んでしまった。

 

「いや、まだチャンスは1年もあるんだ……こうなれば直接、円堂ハルを……」

 

 そう言いかけた時、入室許可を求める音が鳴った。

 カメラを起動すればマネージャーの1人であるため、笑顔を作って、その女子を部屋に通した。

 

「やあ、どうしたのかね」

 

「先日の第1回戦のデータがまとまりましたので、ご報告にきました」

 

 2年の有海崎玲亜(あみさきれあ)、翻訳担当のマネージャーではあるが、選手のデータ分析が得意な女子である。サッカーの知識はあまりないというのに、彼女も天才の1人なのだろう。

 

「ハル君のおかげで、ただでさえ強い雷門が、さらに強くなっていますね」

 

「強いことは、悪いことではない」

 

 画面に映し出された円堂ハルの選手データは、試合前よりさらに高く評価されていた。

 乙女仙次郎(おとめせんじろう)は歯ぎしりしてしまいになるが、なんとか耐えた。

 

「だけど、あまりにも光が強いと、周りを焦がしてしまう可能性がある」

 

 このどこまでもドライなマネージャーにそう伝えれば、何か円堂ハルに対して動きを見せるかと思い、詩的にそう言ってみたが。

 彼女の表情は特に変わっていなかった。

 

「彼の動向には注意していこう...」

「はい、監督」

 

 続いて見せられたのは、葉若風露(はわかふうろ)のデータで。

 

「………やけに詳細に書いてるよね、彼のことだけ」

「いえ、これでもデータ不足です。あの練習試合で見せた現象ですが、あれは一体何なのか、過去の雷門中の選手データと照合しているところです」

 

 急に早口で話し始めたぞ。

 天才というのは、気になることに強いこだわりを見せるらしい。

 

 とにかく、円堂ハルへの復讐、その計画を立て直す必要がある。

 

 

*****

 

 

 花粉症ってわけじゃないけど、急に鼻がムズムズしてきたぞ。

 

「ぶぇっくしゅん!」

 

 まさかクラスメイトの女子が俺の噂を?

 いや、今日もハルの話題だらけだったわ。

 

 『ハル君とレン君のサイン貰ってきて!』と何人に頼まれたことか。

 やっぱこいつらアイドルかよ。

 

「パワプロさん、何かありました?」

 

 スプリング杯の優勝までしたけど、結局ハルが熱くなれるようなライバルは見つからなかった。

 だからナオさんが、休息のためにも、気分転換のためにも、こうして遊びにハルを連れ出していた。

 

 ついでに、放っておいたら特訓を始めそうな俺もな。

 

「あー、稲妻町の観光、そういえばしてなかったなってさ」

 

 さすが東京と言うべきか。

 比較的落ち着いていそうなこの辺りですら、長崎出身の俺には都会に思える。円堂守伝説の聖地でもあるから、もはや歴史の偉人かのように、記念館の設立も計画されてるらしい。

 過去に宇宙人に誘拐された総理大臣をサッカーで救ったという噂もあって、スケールが異次元なんだよな。

 

「俺もですよ。とっちゃんは、よくサッカースタジアムに連れて行ってくれました」

 

「そう、なのか……」

 

 サッカーをまだ楽しめてないのに、退屈だったんだろうか。

 俺が暗い表情を気づいたのか、ハルは『えっと』と声を出した。

 

「つまらないわけじゃなかったですよ? おじさんたちのプレー見るのは好きですし」

「へぇ、あの世代の人たちか」

 

 そこにハルが熱くなれるようなヒントがあるのかもな。

 単純に実力が高い、しかしそれならチームに暖冬屋もいるしなぁ。

 

 よしっ、ハルの求めるサッカーに関係することとして覚えておこう。

 

「お待たせ~!」

「結局、何着か買ってしまいました」

 

 ナオさんは元気ハツラツって感じで、まつりさんはお嬢様って感じだ。

 制服とユニフォームとジャージ以外しか見てこなかったけど、私服姿も可愛いよなぁ。

 

 服屋でも試着して、俺たちにどれがいいか尋ねてきたけど、どれも似合ってて頷くことしかできなかった。

 

「どうする? ハル君やパワプロ君たちも服見に行く?」

「俺たちはいいですよ」

「だな。俺は着る機会も少なそうだし」

 

 朝の自主トレやって、学校行って、サッカーやって、あと食って寝る日々だからな。

 

 ハルだって昔から稲妻町に住んでいるからか、目立たないように黒いパーカーのフードを頭から被っている。父親が有名人だと、そういうことも大変そうだな。

 

「今後多くなると思うけどなぁ~」

 

 ナオさん、なんだそのニヤニヤ顔は。

 

「パワプロ君、あなたも試合で見せる姿と似ていれば、その...ファンの方々から声をかけられてしまうかもしれません」

 

「それもそうかぁ」

 

 確かに紅白帽子と紅白ジャージ姿なんて、ランニングしてても他に全く見かけなかった。

 目立ってそうだな。

 

「よし、俺もフードのついたパーカーを買うことにする。帽子を隠せるしな」

 

「やっぱりその帽子、こだわりなんだ!?」

「隠しきれるでしょうか……まあ行きましょうか」

 

 ハルもどこかで見たようなオレンジ色のネックウォーマーが、フードの中から見えてるよな。

 多少目立たなくなれば、なんとかなるさ。

 

「というわけでハル、それ売ってる店どこだ?」

「わかりました。じゃあ案内しますね!」

 

 なんだかキラキラと目を輝かせてた気がするけどさ。

 

 くっっそ高かった。

 そういや父親は円堂守だし、母親は雷門中理事長らしいし、ハルってお金持ちなんだよな。

 

 

 この日はまだ。

 そんな理事長に呼び出しくらって、あんな命令をされると思ってなかったけど。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。