イナズマイレブン 『王者雷門』のヴィクトリーロード 作:ヒラメもち
フットボールフロンティアが近づいていた頃のことだ。
1軍を中心にメンバーを適宜入れ替えながら、俺たちはまず予選を勝ち抜いていくことになる。
この雷門中とは数十年のライバル関係、そんな全国クラスの帝国学園も、この関東ブロックに所属している。でも今年は予選決勝まで当たらないようだな。
第1回戦に向けて、俺たちスタメンは最終調整をしていたんだけど。
「フットボールフロンティア九州地区予選のため、あなたたちに西ノ宮中への遠征を命じます」
「はい! わかりました!」
美人なんだけど、圧を感じる笑みだ。
試合で全く緊張しないハルもビシッと姿勢を正してるし、この人で普段から精神修行してるからだろうか。
「あの、なんで九州に、でしょうか?」
「あら、副キャプテンともあろう者が、大会規定を読んでいないのかしら?」
俺は営業スマイルで恐る恐る質問したけど、笑顔を浮かべながら質問で返されてしまった。
やべぇ、蓮から貰ったプリント、読んでいたら寝落ちして、そのまま机の上に置いてある。
まだ数行しか読んでないと言ったら
「まあ、あの無駄に長い文章を読むくらいなら、あなたたちは特訓に
よかった、許してくれた。
円堂守さんの奥さん、心が広そうだ。
「フットボールフロンティアの地区予選には、『帰属校・助っ人システム』があるの」
「きぞくこぉ? 助っ人?」
「あぁ、だから西ノ宮中に」
すげぇよハル、もう理解したのか。
俺も助っ人の意味くらいなら分かるけど。
「簡単に言えば、仲の良い中学から、2人ほどストライカーを貸していただきたい、そう頼まれてしまったのよ」
えっ、なに、この雷門中って大手企業か何かだっけ?
これは派遣か?左遷か?
「2人分の枠、その両方をストライカーで希望しているんですね、
「自分たちでは点を取る自信もないのかしらと、私も思っているところね」
親子だからなのか、ハルの理解が早くて、俺どんどん話に置いていかれてる。
いや、だって、フットボールフロンティアって全国の中学校同士で1番を競い合うんだろ。部員の人数が足りない時の合同チームならまだ理解できるけどさ。
もし助っ人を入れたまま地区優勝したとして、それは本当にそのサッカー部の実力なんだろうか。
「というわけで、あなたたちを地区予選の間、貸し出すことにしたの」
「えぇ!? というわけでって、んな横暴な!?……いや、なんでもありまへん……」
驚いて、暖冬屋みたいな関西弁っぽくなってしまったぞ。
その間は雷門中でサッカーができなくなるじゃないか。
しかし完全に断れる雰囲気じゃないぞ。
「あそこは九州名門の進学校でもある。ついでに予選の間、勉強のほうも見てきてもらったらどうかしら?」
「はい! わかりました!」
「わかりました……」
ハルは勉強もできるらしいけど、俺だいぶギリギリなんだよなぁ。
まつりさんに丁寧に教えてもらって、なんとかテスト期間を乗り越えてきてる。
しかしなんで俺たちなんだろうな。
確かに俺は長崎出身だけど、ハルはまだ1年、しかもスプリング杯だとMVPで得点王だぞ。
雷門中にとってのメリットが圧倒的に少ないんだ。
何か理由があって、俺たちを雷門中から一度離れさせたいからなのかどうか。
「葉若君、あなたはチームのことが心配なようだけど」
「それはまあ」
せっかく世界に向けて、これから頑張ろうって時期だしな。
雷門イレブンとしてようやくまとまってきてるのに。
「たった2人抜けたくらいで、今の雷門中は予選を勝ち抜けないほどの実力なのかしら?」
「そんなことはありません」
理事長の挑発的な発言を、俺はきっぱりと否定した。
今の蓮たちなら、たとえ俺たちが一時的にチームを離れていても、勝つためにみんなで全力を尽くす。
そうか、俺とハルが、最近の試合では中心となって得点している。
他のメンバーだけで予選を勝ち抜くことで、攻撃陣の全体的なレベルアップを狙ってるんだな。
円堂守世代のマネージャーだったとも聞いているし。
さすがだ、雷門中の理事長。
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そういった感じの遠征の件を、次の日に蓮たちへ伝えた。
俺なりの推測も話せば、ほとんどのやつらが賛成って感じだったな。
野神先輩や
たとえパワーで勝てなくとも、
蓮や遠野先輩たちも、すでに予選のために戦術の立て直しを始めているようだし。
むしろ逆に、なぜだか乙女監督は知らされてなかったようだ。
何か考える素振りを見せながら、理事長へ確認に行っていたな。
そして反対してたというよりは、ナオさんが駄々をこねてたり。
『ハル君、いかないでぇ~!』とか。
俺のことは別にいいのかよ。
たえちゃんも帰り際に釘を指してきたり。
『パワプロ先輩、あっちの子たちと仲良くしすぎちゃダメですからね!』とか。
仲良くならないで、向こうの中学のチームでどう連携を取るんだよ。
「というわけで、まつりさんも何か相談ない?」
「相変わらずの直球勝負ですね、副キャプテンさん」
地区予選の第1回戦がある時にはもう九州だからな。
いくら電話できるとしても、もし悩み事があるなら、すぐに聞いておくべきかなと思った。
誰が見てもわかりやすく、ビックリしてたからな。
「……まあ月影さんや遠野先輩たちのところへ、本来は集合するべき立場ですのにね」
「あぁ、守備の司令塔としても評価されて、指導を受けることになったんだろ」
遠野先輩も今年度で引退だ。
そして2年DF組って、例えば俺とか天宮司とか
ごめんなさい、まず引き継ぐのは無理です。
「彼らも、気を使ってくれているのでしょうかね」
「それで? 俺やハルがチームを一時的に離れること、不安?」
まつりさんは正直に頷いてくれる。
よかった、聞いておいてよかった。
「パワプロ君が、幸せになれそうな草を拾って食べて、お腹を壊さないかと心配で、夜も眠れないかもしれません」
「さすがに食べないからな。そんなヤバそうな野草の知識なんて1つもないからな」
思わずツッコミを入れると、『冗談です』と言ってくれた。
でも、夜も眠れないくらいの心配ごとというわけか。
「……」
「……」
どうしよう、無表情でジッと見つめてくるだけだ。
まつりさんは可愛いからな。
なんだかドキドキしてしまう。
「そうだ、久しぶりにサッカー対決しよう! そうしよう!」
「……はい、わかりました」
こういう時は、サッカーで語るべきだな。
たとえ海外の人とすら交流できるコミュニケーションツールだからな。サッカーをすれば、どんな宇宙人とだって仲良くできるかもしれないぞ。