イナズマイレブン 『王者雷門』のヴィクトリーロード   作:ヒラメもち

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第4話 助っ人で九州遠征?

 

 フットボールフロンティアが近づいていた頃のことだ。

 1軍を中心にメンバーを適宜入れ替えながら、俺たちはまず予選を勝ち抜いていくことになる。

 

 この雷門中とは数十年のライバル関係、そんな全国クラスの帝国学園も、この関東ブロックに所属している。でも今年は予選決勝まで当たらないようだな。

 

 第1回戦に向けて、俺たちスタメンは最終調整をしていたんだけど。

 

「フットボールフロンティア九州地区予選のため、あなたたちに西ノ宮中への遠征を命じます」

「はい! わかりました!」

 

 美人なんだけど、圧を感じる笑みだ。

 試合で全く緊張しないハルもビシッと姿勢を正してるし、この人で普段から精神修行してるからだろうか。

 

「あの、なんで九州に、でしょうか?」

「あら、副キャプテンともあろう者が、大会規定を読んでいないのかしら?」

 

 俺は営業スマイルで恐る恐る質問したけど、笑顔を浮かべながら質問で返されてしまった。

 

 やべぇ、蓮から貰ったプリント、読んでいたら寝落ちして、そのまま机の上に置いてある。

 まだ数行しか読んでないと言ったら(しか)られるだろうか。

 

「まあ、あの無駄に長い文章を読むくらいなら、あなたたちは特訓に(はげ)んでいなさい」

 

 よかった、許してくれた。

 円堂守さんの奥さん、心が広そうだ。

 

「フットボールフロンティアの地区予選には、『帰属校・助っ人システム』があるの」

 

「きぞくこぉ? 助っ人?」

「あぁ、だから西ノ宮中に」

 

 すげぇよハル、もう理解したのか。

 俺も助っ人の意味くらいなら分かるけど。

 

「簡単に言えば、仲の良い中学から、2人ほどストライカーを貸していただきたい、そう頼まれてしまったのよ」

 

 えっ、なに、この雷門中って大手企業か何かだっけ?

 これは派遣か?左遷か?

 

「2人分の枠、その両方をストライカーで希望しているんですね、(はは)様」

「自分たちでは点を取る自信もないのかしらと、私も思っているところね」

 

 親子だからなのか、ハルの理解が早くて、俺どんどん話に置いていかれてる。

 

 いや、だって、フットボールフロンティアって全国の中学校同士で1番を競い合うんだろ。部員の人数が足りない時の合同チームならまだ理解できるけどさ。

 もし助っ人を入れたまま地区優勝したとして、それは本当にそのサッカー部の実力なんだろうか。

 

「というわけで、あなたたちを地区予選の間、貸し出すことにしたの」

 

「えぇ!? というわけでって、んな横暴な!?……いや、なんでもありまへん……」

 

 驚いて、暖冬屋みたいな関西弁っぽくなってしまったぞ。

 

 その間は雷門中でサッカーができなくなるじゃないか。

 しかし完全に断れる雰囲気じゃないぞ。

 

「あそこは九州名門の進学校でもある。ついでに予選の間、勉強のほうも見てきてもらったらどうかしら?」

「はい! わかりました!」

「わかりました……」

 

 ハルは勉強もできるらしいけど、俺だいぶギリギリなんだよなぁ。

 まつりさんに丁寧に教えてもらって、なんとかテスト期間を乗り越えてきてる。

 

 しかしなんで俺たちなんだろうな。

 確かに俺は長崎出身だけど、ハルはまだ1年、しかもスプリング杯だとMVPで得点王だぞ。

 

 雷門中にとってのメリットが圧倒的に少ないんだ。

 何か理由があって、俺たちを雷門中から一度離れさせたいからなのかどうか。

 

「葉若君、あなたはチームのことが心配なようだけど」

「それはまあ」

 

 せっかく世界に向けて、これから頑張ろうって時期だしな。

 雷門イレブンとしてようやくまとまってきてるのに。

 

「たった2人抜けたくらいで、今の雷門中は予選を勝ち抜けないほどの実力なのかしら?」

 

「そんなことはありません」

 

 理事長の挑発的な発言を、俺はきっぱりと否定した。

 

 今の蓮たちなら、たとえ俺たちが一時的にチームを離れていても、勝つためにみんなで全力を尽くす。

 

 

 そうか、俺とハルが、最近の試合では中心となって得点している。

 他のメンバーだけで予選を勝ち抜くことで、攻撃陣の全体的なレベルアップを狙ってるんだな。

 

 円堂守世代のマネージャーだったとも聞いているし。

 さすがだ、雷門中の理事長。

 

 

****

 

 

 そういった感じの遠征の件を、次の日に蓮たちへ伝えた。

 

 俺なりの推測も話せば、ほとんどのやつらが賛成って感じだったな。

 野神先輩や大佑(だいすけ)は、俺やハルが雷門中を離れている間に、完全オリジナルな必殺シュートを開発させると意気込(いきご)んでいた。伝説の必殺シュート『ドラゴンスレイヤー』と同等、いやそれ以上の威力を目指すってさ。

 

 たとえパワーで勝てなくとも、鬼門(きど)たちも連携技を中心に、必殺シュートの特訓を始めていると話してくれた。

 蓮や遠野先輩たちも、すでに予選のために戦術の立て直しを始めているようだし。

 

 むしろ逆に、なぜだか乙女監督は知らされてなかったようだ。

 何か考える素振りを見せながら、理事長へ確認に行っていたな。

 

 

 そして反対してたというよりは、ナオさんが駄々をこねてたり。

 『ハル君、いかないでぇ~!』とか。

 俺のことは別にいいのかよ。

 

 たえちゃんも帰り際に釘を指してきたり。

 『パワプロ先輩、あっちの子たちと仲良くしすぎちゃダメですからね!』とか。

 仲良くならないで、向こうの中学のチームでどう連携を取るんだよ。

 

 

「というわけで、まつりさんも何か相談ない?」

 

「相変わらずの直球勝負ですね、副キャプテンさん」

 

 地区予選の第1回戦がある時にはもう九州だからな。

 いくら電話できるとしても、もし悩み事があるなら、すぐに聞いておくべきかなと思った。

 

 誰が見てもわかりやすく、ビックリしてたからな。

 

「……まあ月影さんや遠野先輩たちのところへ、本来は集合するべき立場ですのにね」

 

「あぁ、守備の司令塔としても評価されて、指導を受けることになったんだろ」

 

 遠野先輩も今年度で引退だ。

 

 そして2年DF組って、例えば俺とか天宮司とか紫雨(しぐれ)だろ。

 ごめんなさい、まず引き継ぐのは無理です。

 

「彼らも、気を使ってくれているのでしょうかね」

 

「それで? 俺やハルがチームを一時的に離れること、不安?」

 

 まつりさんは正直に頷いてくれる。

 よかった、聞いておいてよかった。

 

「パワプロ君が、幸せになれそうな草を拾って食べて、お腹を壊さないかと心配で、夜も眠れないかもしれません」

 

「さすがに食べないからな。そんなヤバそうな野草の知識なんて1つもないからな」

 

 思わずツッコミを入れると、『冗談です』と言ってくれた。

 でも、夜も眠れないくらいの心配ごとというわけか。

 

「……」

 

「……」

 

 どうしよう、無表情でジッと見つめてくるだけだ。

 

 まつりさんは可愛いからな。

 なんだかドキドキしてしまう。

 

 

「そうだ、久しぶりにサッカー対決しよう! そうしよう!」

 

「……はい、わかりました」

 

 こういう時は、サッカーで語るべきだな。

 たとえ海外の人とすら交流できるコミュニケーションツールだからな。サッカーをすれば、どんな宇宙人とだって仲良くできるかもしれないぞ。

 

 

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