イナズマイレブン 『王者雷門』のヴィクトリーロード   作:ヒラメもち

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第5話 前に進める理由

 

 

 まつりさんとのサッカー対決か。

 2軍に入る前にやっていたから、だいぶ久しぶりだな。

 

 今回はせっかくゴールが空いているということで、総合的な対決にした。

 

 この位置から片方がボールをドリブルで進んで、もう片方がディフェンスをする。シュートして先にゴールしたほうの勝ちだ。

 

 さすがに1つのボールに必殺シュートをぶつけ合うなんてことして、俺は怪我をするわけにもいかないし、させるわけにもいかないしな。

 

「じゃ、まつりさんからどうぞ」

「……いきますよ」

 

 軽くリフティングをしてから、ドリブルを始めた頃には、まつりさんの雰囲気は真剣なものに変わる。たとえ女子といえど、全国クラスの選手だ。

 

 ドリブルの必殺技『そよかぜステップ』には何度抜かれたことか。

 だが、ナオさんの分と合わせて、何度も受けてきたんだ。そろそろ見切ってやるぞ。

 

「クロスドライブ」

「その位置からシュートを!?」

 

 蹴ったボールはカーブをかけながら戻ってきて、再びシュートを行う。その軌跡をそのままに、十字を描いたような衝撃波を纏うボールが飛んでくる。

 

「なら、メガトンヘッドG2!」

 

 こちらはゴッドハンドのオーラを頭に込めて、ヘディングの要領で打ち返した。

 去年に足を怪我をした俺が少しでもできることを探して、シュートブロックのために覚えた。攻防一体の必殺技を進化させるためにも、タイヤ特訓は続けてる。

 

 まつりさんもこの結果は予測していたようで『よっ』とボールを胸で受け止めた。

 

「よしっ、次は俺の番だな」

「そうですね」

 

 ボールをその場に置いたまま、ポジションを交代した。

 

 さて、ドリブルで抜くという手もあるけど、必殺シュートを最初に見せられたんだ。こちらもストライカーとして特訓の成果を見せてやる。

 最近はコントロールを重点的に特訓して、怪我する前の調子までは取り戻してきてるからな。

 

 俺は天高くボールを蹴り上げて、回転しながら空中でシュート体制に入った。

 狙うのはゴールの真ん中、当然まつりさんには直撃しないように調整だ。

 

「ファイアトルネード改!」

 

 どうだ、まつりさんにシュートブロックの必殺技はないはず。

 

「ディープミスト」

 

 まさかの新必殺技だった。

 ザ・ミストよりも更に深い霧に周囲は包まれる。炎の弾丸の勢いは確かに弱まっていった。

 

「習得してたんだな!」

「ええ、最近やっと」

 

 技の進化どころか、発展版だな。

 でもまさか、キーパー技でもないのに、完璧に止められるとは思ってなかった。

 

 ナオさんが攻撃的MF、まつりさんが守備的MF、それぞれの強みを伸ばしてるよなぁ。

 

「ですが、まだ本気のシュートではない」

「そっちこそだろ? さあ、次まつりさんの番だな」

 

 真正面からのクロスドライブは通用しない。

 なら次はドリブルがメインになるだろうな。

 

 だから俺は『クイックドロウ』で、すれ違いながらボールを奪う準備だ。

 通用するかというより、気合と根性でなんとかしてやる。

 

「……」

「……」

 

 スタートするタイミングを待っているけど、まつりさんは何かを考えていた。

 

「絶対に勝ちます」

 

 そして、本気を感じさせる瞳でまっすぐ見つめてきた。

 今回で決めにくるつもりか。

 

「ああ、来い!」

 

 熱くなってきたぞ。

 

 まつりさんはドリブルしながらこちらに向かってくる。

 その途中でボールを軽く宙に浮かして、シュート体勢に入った。

 

 『クロスドライブ』とは違うようだ。

 いや、それよりあのオーラは、まさか!

 

(はや)っ!?」

 

 背中側に黒いオーラが出たことを意識していたら、凄まじいスピードのノーマルシュートだった。まるでハルの疑似的必殺シュート仮称(かしょう)『ひとつ』くらいの威力じゃないか。

 

 メガトンヘッドは間に合わない。

 仕方なく身体で受け止めようと、どっしりと構えたけど。

 

「ぐぇっ!?」

 

 俺の身体は吹き飛ばされてしまった。

 ボールによってゴールネットが引っ張られる音もしてる。

 

「私の勝ちですね」

 

 驚かされたのもあったけど、完全に負けたな。

 必殺シュートなしであんな威力を出せるなんて。

 

「すごいじゃないか、まつりさん!」

「……ええ、まあ」

 

 もしかすると、オーラを具現化させる『化身』を使えるようになるかもしれないぞ。どんな姿を見せるのか、どのポジションに適したものか、それは人によるんだけど、圧倒的なパワーを発揮できる。

 

 最近だと体力消費が非効率的なのと、その気になれば『化身』は通常の必殺技でも止められる。だから習得する中学生は減ってきていた。

 

 でも松風天馬選手のような現役プロに化身使いは多いし、憧れはするさ。

 俺はファイアトルネードの応用技で、魔神を出すことにすら苦戦してるからなぁ。

 

「それでは、何か報酬でも貰いましょうか」

「まあ俺にできることなら」

 

 仲間だからな。

 ジュース奢るとか、そういう簡単な要求では済むはずだ。

 

「では質問です」

 

 どこか物語かのような雰囲気で、まつりさんは話し始めた。

 

 

「これは友達の話なのですが」

 

「その子にとって、1人の親友は、まさしく星のような光だった」

 

「みんなの人気者で、かわいくて、明るくて」

 

「一緒に遊ぶようになって、一緒にサッカーを観にいって、一緒にサッカーをするようになって、一緒に必殺技を覚えた」

 

 

 『ですが』と夜空を見上げながら呟いた。

 明るい月も、雲がかかったなら輝けなくなる。

 

 

「すごいことができるようになりました」

 

「それは親友も憧れ、しかしできないことだった」

 

「だから、まだできないと嘘をついてきた」

 

「あなたは、隠し事をしている親友を、まだ親友だと思えますか?」

 

 

 つまり、『化身』を使える兆候は昔からあった。

 それを使えるかどうかは精神的なところもあるらしく、なぜ使える選手と使えない選手に分かれるのか、いまだ科学では証明できていないらしい。

 

 もしも迷いがあるのなら、『化身』は難しい。

 だから、遠慮の気持ちでずっと封じ込めてきたんだ。

 

「それに…あなたは……どうでしょうか……?」

 

 すごいって気持ちも本音だけど。

 うらやましいって気持ちも嘘じゃない。 

 

 いつも通り俺は、バカ正直に伝えるだけだ。

 

「怒るだろうな、なんで言ってくれなかったのって」

 

「そんで褒めてくれるだろ、すごいすごいって」

 

「うらやましいって思って、俺たちも特訓を頑張る」

 

「俺だって蓮のやつが1人で抱え込んでた時、とにかく腹が立った。だから蓮のやつに勝って、全部吐き出させようとした」

 

 それが親友ってものだと思う。

 遠慮なんてしないで、全部正直にぶつければいい。

 

「もちろん、まつりさんも俺の親友だ。だからそうやって、1人で抱え込んでいることが、俺はイヤだぞ」

「……友達の話だと最初に言いませんでしたか?」

 

 そうだっけ。

 なら、今はそういうことにしておこう。

 

「でも、ありがとうございます。おかげさまで、その友達は、少し勇気が出ると思います」

「あぁ、勇気ならいくらでもあげるよ。俺にできることがあれば何でも言ってくれ」

 

 怪我をしていたリハビリ期間は、まつりさんとナオさんが一緒にサッカーやってくれた。だから、ここまで諦めないで戻ってこれたんだと思う。

 

 まつりさんが悩んでいるなら、今度は俺が助ける番だ。

 

「いくつであっても、いいのですか?」

「親友の頼み事だからな」

 

 むしろ今までが少なすぎた。

 まつりさんも、もっと周りに甘えていいんだ。

 

「親友ですか……いえ、ではお言葉に甘えますね」

 

「おう、いつでもいいぞ」

 

 まつりさんからのお願い事だ、

 絶対覚えておくぞ。

 

「……怪我なく無事に帰ってきてください。できれば3日に1度は電話してください。……あとは、パワプロ君が帰ってきたときに取っておきます」

 

 元気に帰ってくる。

 心配させないよう毎日電話する。

 これからも、ずっと親友でいる。

 

「よしっ、覚えた」

 

「その…もう1つ…… いいと言うまで、目を閉じていてください」

 

 

 頬になにかが触れた。

 これってまさか。

 

 

「いつかまた…勇気が出た時に…言葉にしますから…今は察してください……」

 

「……ん、伝わったし、期待して待つよ」

 

 思わず目を開けちゃったけど。

 かわいい()っぺた、ピンク色に染まってたな。

 

 

 

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