イナズマイレブン 『王者雷門』のヴィクトリーロード 作:ヒラメもち
まつりさんとのサッカー対決か。
2軍に入る前にやっていたから、だいぶ久しぶりだな。
今回はせっかくゴールが空いているということで、総合的な対決にした。
この位置から片方がボールをドリブルで進んで、もう片方がディフェンスをする。シュートして先にゴールしたほうの勝ちだ。
さすがに1つのボールに必殺シュートをぶつけ合うなんてことして、俺は怪我をするわけにもいかないし、させるわけにもいかないしな。
「じゃ、まつりさんからどうぞ」
「……いきますよ」
軽くリフティングをしてから、ドリブルを始めた頃には、まつりさんの雰囲気は真剣なものに変わる。たとえ女子といえど、全国クラスの選手だ。
ドリブルの必殺技『そよかぜステップ』には何度抜かれたことか。
だが、ナオさんの分と合わせて、何度も受けてきたんだ。そろそろ見切ってやるぞ。
「クロスドライブ」
「その位置からシュートを!?」
蹴ったボールはカーブをかけながら戻ってきて、再びシュートを行う。その軌跡をそのままに、十字を描いたような衝撃波を纏うボールが飛んでくる。
「なら、メガトンヘッドG2!」
こちらはゴッドハンドのオーラを頭に込めて、ヘディングの要領で打ち返した。
去年に足を怪我をした俺が少しでもできることを探して、シュートブロックのために覚えた。攻防一体の必殺技を進化させるためにも、タイヤ特訓は続けてる。
まつりさんもこの結果は予測していたようで『よっ』とボールを胸で受け止めた。
「よしっ、次は俺の番だな」
「そうですね」
ボールをその場に置いたまま、ポジションを交代した。
さて、ドリブルで抜くという手もあるけど、必殺シュートを最初に見せられたんだ。こちらもストライカーとして特訓の成果を見せてやる。
最近はコントロールを重点的に特訓して、怪我する前の調子までは取り戻してきてるからな。
俺は天高くボールを蹴り上げて、回転しながら空中でシュート体制に入った。
狙うのはゴールの真ん中、当然まつりさんには直撃しないように調整だ。
「ファイアトルネード改!」
どうだ、まつりさんにシュートブロックの必殺技はないはず。
「ディープミスト」
まさかの新必殺技だった。
ザ・ミストよりも更に深い霧に周囲は包まれる。炎の弾丸の勢いは確かに弱まっていった。
「習得してたんだな!」
「ええ、最近やっと」
技の進化どころか、発展版だな。
でもまさか、キーパー技でもないのに、完璧に止められるとは思ってなかった。
ナオさんが攻撃的MF、まつりさんが守備的MF、それぞれの強みを伸ばしてるよなぁ。
「ですが、まだ本気のシュートではない」
「そっちこそだろ? さあ、次まつりさんの番だな」
真正面からのクロスドライブは通用しない。
なら次はドリブルがメインになるだろうな。
だから俺は『クイックドロウ』で、すれ違いながらボールを奪う準備だ。
通用するかというより、気合と根性でなんとかしてやる。
「……」
「……」
スタートするタイミングを待っているけど、まつりさんは何かを考えていた。
「絶対に勝ちます」
そして、本気を感じさせる瞳でまっすぐ見つめてきた。
今回で決めにくるつもりか。
「ああ、来い!」
熱くなってきたぞ。
まつりさんはドリブルしながらこちらに向かってくる。
その途中でボールを軽く宙に浮かして、シュート体勢に入った。
『クロスドライブ』とは違うようだ。
いや、それよりあのオーラは、まさか!
「
背中側に黒いオーラが出たことを意識していたら、凄まじいスピードのノーマルシュートだった。まるでハルの疑似的必殺シュート
メガトンヘッドは間に合わない。
仕方なく身体で受け止めようと、どっしりと構えたけど。
「ぐぇっ!?」
俺の身体は吹き飛ばされてしまった。
ボールによってゴールネットが引っ張られる音もしてる。
「私の勝ちですね」
驚かされたのもあったけど、完全に負けたな。
必殺シュートなしであんな威力を出せるなんて。
「すごいじゃないか、まつりさん!」
「……ええ、まあ」
もしかすると、オーラを具現化させる『化身』を使えるようになるかもしれないぞ。どんな姿を見せるのか、どのポジションに適したものか、それは人によるんだけど、圧倒的なパワーを発揮できる。
最近だと体力消費が非効率的なのと、その気になれば『化身』は通常の必殺技でも止められる。だから習得する中学生は減ってきていた。
でも松風天馬選手のような現役プロに化身使いは多いし、憧れはするさ。
俺はファイアトルネードの応用技で、魔神を出すことにすら苦戦してるからなぁ。
「それでは、何か報酬でも貰いましょうか」
「まあ俺にできることなら」
仲間だからな。
ジュース奢るとか、そういう簡単な要求では済むはずだ。
「では質問です」
どこか物語かのような雰囲気で、まつりさんは話し始めた。
「これは友達の話なのですが」
「その子にとって、1人の親友は、まさしく星のような光だった」
「みんなの人気者で、かわいくて、明るくて」
「一緒に遊ぶようになって、一緒にサッカーを観にいって、一緒にサッカーをするようになって、一緒に必殺技を覚えた」
『ですが』と夜空を見上げながら呟いた。
明るい月も、雲がかかったなら輝けなくなる。
「すごいことができるようになりました」
「それは親友も憧れ、しかしできないことだった」
「だから、まだできないと嘘をついてきた」
「あなたは、隠し事をしている親友を、まだ親友だと思えますか?」
つまり、『化身』を使える兆候は昔からあった。
それを使えるかどうかは精神的なところもあるらしく、なぜ使える選手と使えない選手に分かれるのか、いまだ科学では証明できていないらしい。
もしも迷いがあるのなら、『化身』は難しい。
だから、遠慮の気持ちでずっと封じ込めてきたんだ。
「それに…あなたは……どうでしょうか……?」
すごいって気持ちも本音だけど。
うらやましいって気持ちも嘘じゃない。
いつも通り俺は、バカ正直に伝えるだけだ。
「怒るだろうな、なんで言ってくれなかったのって」
「そんで褒めてくれるだろ、すごいすごいって」
「うらやましいって思って、俺たちも特訓を頑張る」
「俺だって蓮のやつが1人で抱え込んでた時、とにかく腹が立った。だから蓮のやつに勝って、全部吐き出させようとした」
それが親友ってものだと思う。
遠慮なんてしないで、全部正直にぶつければいい。
「もちろん、まつりさんも俺の親友だ。だからそうやって、1人で抱え込んでいることが、俺はイヤだぞ」
「……友達の話だと最初に言いませんでしたか?」
そうだっけ。
なら、今はそういうことにしておこう。
「でも、ありがとうございます。おかげさまで、その友達は、少し勇気が出ると思います」
「あぁ、勇気ならいくらでもあげるよ。俺にできることがあれば何でも言ってくれ」
怪我をしていたリハビリ期間は、まつりさんとナオさんが一緒にサッカーやってくれた。だから、ここまで諦めないで戻ってこれたんだと思う。
まつりさんが悩んでいるなら、今度は俺が助ける番だ。
「いくつであっても、いいのですか?」
「親友の頼み事だからな」
むしろ今までが少なすぎた。
まつりさんも、もっと周りに甘えていいんだ。
「親友ですか……いえ、ではお言葉に甘えますね」
「おう、いつでもいいぞ」
まつりさんからのお願い事だ、
絶対覚えておくぞ。
「……怪我なく無事に帰ってきてください。できれば3日に1度は電話してください。……あとは、パワプロ君が帰ってきたときに取っておきます」
元気に帰ってくる。
心配させないよう毎日電話する。
これからも、ずっと親友でいる。
「よしっ、覚えた」
「その…もう1つ…… いいと言うまで、目を閉じていてください」
頬になにかが触れた。
これってまさか。
「いつかまた…勇気が出た時に…言葉にしますから…今は察してください……」
「……ん、伝わったし、期待して待つよ」
思わず目を開けちゃったけど。
かわいい