イナズマイレブン 『王者雷門』のヴィクトリーロード   作:ヒラメもち

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第6話 南雲原中との試合(前編)

 

 

 無事に第1回戦の会場に着いたので、まつりさんと蓮に個別メッセージを送っておいた。

 

 まさかの中学生2人で九州遠征だ。

 まあハルと話す時間が多く取れそうなのは良いことか。

 

 もし何かあれば俺の両親を頼れるしな。

 それがハル以外のメンバーとして、俺を選んだ理由かもしれない。

 

 西ノ宮中は、九州屈指の進学校の1つだ。

 しかしこの5年は常に1回戦敗退で、だから今年こそは成果を上げたいと、助っ人システムを利用したらしい。

 

 1年マネージャーに優秀な子が入ったこともあって、チームは急成長中みたいだけど。

 その段階でストライカーの助っ人を2人も呼ぶの、むしろダメだと思うんだよなぁ。

 

 しかも第1回戦の当日にチームに合流のスケジュールって、大丈夫なのかよ。

 

 対する南雲原中は公式大会への出場が5年ぶりだ。

 初戦にしては西ノ宮中の選手たち、だいぶ油断してる雰囲気だな。

 

「いやあ、ようこそいらっしゃいました、雷門のお二方!」

 

 中学生相手に、ごまスリスリしてきたぞ。

 この監督が今回の助っ人システムを申請したんだな。

 

「はい。今日から短い間ですが、よろしくお願いします。えーと、それで自己紹介とかしませんか?」

 

 そう提案してみるも、西ノ宮中の選手たちは明らかに歓迎ムードじゃない。ベンチに座っているたぶんFWのやつらなんて、とても睨んできているけどな。

 

「いえいえ、試合前にお時間を取らせるのも申し訳ありません。今日のところはお二人の力で勝てますでしょうし」

 

 いや、パスとか出す時、名前どう呼べばいいんだよ。

 

 選手たち自身も話す気がなさそうで、1年マネージャーの子が教えてくれたけどさ。こっちが監督かなと思ったほどに丁寧な説明だった。

 

 

*****

 

 

 南雲原中はチームを結成して、まだ半月も経過していない。各自得意なことはあれど、サッカー経験者も少なく、いわば寄せ集めのような集団だった。

 

(葉若風露、円堂ハル……雷門の助っ人はさすがに想定外だ)

 

 チームの実質的な監督でありキャプテンである笹波雲明は、公式試合初戦から厄介なサプライズだと、心の中だけで苦い表情を浮かべた。

 

【南雲原中】

FW 忍原 桜咲

MF 妖士乃 柳生 木曽路 古手打

DF 牛島 古道飼 幕下 雨道

GK 四川堂

 

(あいつらが王者雷門のストライカーか…)

(なんつーか、どっちもオーラがやべぇよ…)

(うぅ、僕なんかが守れるのかな…)

 

【西ノ宮中】

FW 葉若 円堂

MF 元部鳴 駆乗 糸居 金星 真地米

DF 丸目 寺路 白石

GK 好街

 

(まさかこんな形で、またFWに戻るなんてな)

(なんだか普段の試合とは雰囲気が違う…)

 

 葉若は入念に準備体操をしていて、それを円堂も真似して全く同じ動作をする。彼らが着ているユニフォームは黄色ではなく、緑色だった。

 

 炎のリベロプレイヤーと、スプリング杯のMVPであり円堂守の息子。

 雷門中のストライカー2人の登場に、会場は歓声に包まれている。

 

 西ノ宮中の選手たちは、まるで自分たちが引き立て役かのようで、つまらなさそうな表情を浮かべていた。試合に勝つために、それを自分たちで判断したならまだ納得できたが。

 しかし監督にすら、9人で守備に専念していればいいと指示されたからだ。

 

「前半はこのままやるしかない、か。とりあえずいつも通りのサッカーをやるぞ、ハル」

 

「はい、パワプロさん」

 

 ホイッスルが鳴り響き、西ノ宮側のボールからスタートした。

 葉若と円堂、そのたった2人だけが走り始めた。

 

 まさしく阿吽の呼吸だった。

 適宜(てきぎ)ドリブルとパスを切り替えながら、速攻で仕掛けていく。

 

「速い!?」

「止めろーーっ!」

 

 忍原や柳生など、南雲原側は次々と彼らを妨害しようとするも。

 

「軽すぎるな……ひとつ

 

 円堂のほぼロングシュートになる位置でパワーシュートを放った。

 それだけで突風を纏った必殺シュートのようだ。

 

「うわぁぁぁ!?」

「はぁ! ぐぅぅぅ!?」

 

 DF古道飼は素早い動きでシュートブロックに入ったが吹き飛ばされた。

 続いてGK四川堂も反応できていたとはいえ、キャッチすることはできない。

 

 ホイッスルが鳴る。

 西ノ宮中が得点し、これで0-1となる。

 

「この圧倒的な重み……これがサッカーなのか……」

 

 四川堂は何とか立ち上がりながら、焼け焦げたような跡があるグローブを見つめた。

 南雲原中の選手たちは焦ったように、自分たちの"司令塔"を見るが、彼は腕組みをしたまま動きを見せない。

 

「反応速度はよかったな、あの2人」

「ですが、軽すぎませんか」

 

 南雲原中の選手の多くが、可能性は確かに見せている。

 しかし、いまだサッカーを全く知らなかった素人集団から抜け出せていない。

 

「くっ…… この程度なら僕たちだけで勝てるのに……」

「そういう顔をするな。圧倒的な点差がつけば、僕たちに任せると監督も言っていたさ」

 

 簡単に先制点が入ったとはいえ、西ノ宮中の選手たちも表情は明るくなかった。司令塔である金星、キャプテンである糸居は、今は守備に専念することにした。

 

 南雲原側のボールで、試合再開となる。

 いまだ雲明からの指示は、『必殺シュートの禁止』のままだ。

 

 だから、とりあえず選手たちで考えて、円堂と葉若を避けて攻めることにした。

 

「まずは1点だ!」

「みんな、いくよっ!」

 

 声を出しながら、桜咲や忍原が先導者となって攻め上がる。

 

 西ノ宮中の守備陣は決して固いものでもなかった。

 熱意の違いもあり、突破力もある桜咲のドリブルなら、簡単にゴール前までたどり着きそうだった。

 

「だが……」

 

 GKの好街は必殺技を持っているらしい。

 真正面から打ち破るには、習得した必殺シュートが必要となるが。

 

 桜咲は迷いながらも、雲明の判断を信じることにする。

 

「オラァ!」

 

 必殺シュートはまだ使わない。

 できる限りの力を込めて、パワーシュートを放った。

 

「スウェットスティルネス!」

 

 GKの好街は、両手でガッシリと掴むような必殺技で、シュートを受け止める。

 汗がキラりと光り、爽やかな笑顔を浮かべた。

 

 彼はいつもの練習試合のように、まずMFの金星にボールを渡すが。

 

「くっ…勝つためなら……」

 

 司令塔である金星はいつもと違って、何も考えず雷門中の選手にパスをすればいいだけだった。

 

「隙あり!」

 

「しまった!?」

 

 南雲原中のFWである忍原が、独特な走り方をしながら足元のボールを奪った。スピードがあり、そして何より足音や気配がほとんどない。まさしく忍者のような動きだ。

 

「え~と、今あそこの桜咲にパスすると、オフサイドなんだっけ?」

 

 彼女はサッカーのルールを思い返しながら。

 練習したドリブルで進もうとしたとき。

 

「……っ!?」

 

 第六感か何かで、彼女は反射的にボールを置いたまま、その場から飛びのいてしまった。

 

「おぉ……すげぇスピードだったな」

 

「葉若風露!? FWじゃないの!?」

 

 彼が前線から戻ってきて、『クイックドロウ』によってボールを奪いにきていた。

 忍原は驚くが、サッカーにおいてはポジションを超えて動くプレイヤーもいる。

 

「あいつは雷門中だとDFでリベロだ! つまりフィールド全体を動き回るし、体力もモンスター級だぞ!」

「うっそぉ!? 」

 

 そう叫びながら、MFの柳生も合流して、忍原と2人がかりで葉若からボールを奪おうとする。

 

「パスは…… まあいいか」

 

 葉若は不利そうな状況を見て、西ノ宮中の守備陣のフォローに戻ってきたが。

 彼らの機嫌をむしろ損ねてしまったようだ。

 

「くっ、お前ら! 円堂ハルをそのままマークしておけ!」

「あいつは私たちで追いかけるから!」

 

 通常のドリブルでいとも簡単に2人を突破した。

 走りながら葉若は、6人にマークされながら暇そうに立っているハルを視界に入れる。

 

「やりづれぇ……」

 

 西ノ宮中の選手たちは攻める気が全くないようで、誰もパスを出す相手がいない。

 その気になればハルもなんとかするだろうけど、今はそれじゃダメだ。

 

 まるで2人だけで、11人の相手をさせられているかのようだった。

 葉若は仕方なく、まだ不慣れな南雲原守備陣の準備が整う前に、ジャンプしてシュート体勢に入る。

 

「ファイアトルネード改!」

 

「今度こそ!!」

 

 四川堂は反射的に飛びつくことはできるが、それでは炎の弾丸は止められない。

 再び得点が入った。

 

 伝説の必殺シュートの1つ、『ファイアトルネード』、それが見れたことにより、会場の盛り上がりは最高潮となっていく。

 

 

 

「マズいな……」

 

「何がマズいんです?」

 

 最初のポジションに戻りながら、葉若と円堂は話す。

 まさしく懸念していた通りで、いくらなんでも彼らの実力だけが飛び抜けていた。

 

 2人もそうだが、西ノ宮中の選手たちもまだ中学生だ。こういうサッカーをさせられるのは面白くなく、あからさまに表情に出ている。

 サッカーを通して中学同士で交流する『助っ人システム』、そのデメリットが浮き彫りになっていた。

 

「なるほど、そういうことですか」

「なんで俺がちょっと後ろを見てただけで、理解できるんだよ」

 

 せめて選手たちと和解することができれば、チームとして心を1つにして戦えるかもしれないが。

 

 前半と後半の間、インターバルの時だ。

 そこでチームの空気を変えるしかないと判断した。

 

 しかも葉若は試合の間にチラッと耳にしたが、『圧倒的な点差がつけば』交代させられる可能性がある。

 この不和(ふわ)を引きずったままでは、他の試合もずっとこういう試合展開になるだろう。それはお互いの成長のためにならない。

 

 この問題を解決しなければ、西ノ宮イレブンに待っているのは、(いつわ)りの全国大会出場だ。

 

 

「……前半で取るのはあと1点だけだ。残り時間はフォローに回るぞ」

「わかりました。つまんない試合になりそうですね」

 

 この判断が吉と出るか凶と出るか。

 葉若は、お正月の神社でおみくじを引いている気分になっていた。

 

 

 そして笹波雲明もまた、南雲原中サッカー部の運命を背負って、博打(ばくち)に出ていた。

 

 

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