イナズマイレブン 『王者雷門』のヴィクトリーロード   作:ヒラメもち

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第7話 南雲原中との試合(後編)

 

 

 結局、前半は3ー0で終了した。

 南雲原中のやつらも食らいついてきたけど、西ノ宮中9人による全力守備もあって、途中からはシュートチャンスすら得られていない。

 

 今は明らかに疲れた様子を見せながら、監督たちのところに戻っている。

 どうやら控え選手も、白いジャージの1人だけらしい。サッカーのルール自体を覚えたての選手もいたから、本当に作りたてのチームなんだろう。

 

 体力面もあって、ここからの逆転は絶望的なんだろうけど。

 でも、彼ら彼女らの瞳は決して諦めてなかった。

 

「いやぁ、すばらしい! さすがは雷門サッカー部! ありがとうございます!」

 

「どうも?」

「えーと、今の時間に、選手たちと話しておきたいんですけど」

 

 でも、すっごい満面の笑みな西ノ宮中監督は、俺たちをベンチに座らせてきた。

 マネージャーの子に手渡されたの、新品の高級タオルだしさ。

 

「我が校の勝ちは、これにて確定しました! あとはゆっくり休んでおいていただいて!」

「たった3点差で?」

「ハルの言う通りですよ。もしも同点まで……」

 

 いやダメだ、これも西ノ宮中の選手たちは聞いている。

 

「えー、じゃあポジションチェンジだけ、とかでは?」

「いえいえ! はるばる東京からお越しくださって、お疲れでしょうし!」

 

 くそっ、こんなことならせめて5点差くらい。

 それだと永遠に和解することは無理そうだけどさ。

 

「でも監督、おかしくなかったですか。南雲原は、わざと抵抗していなかったように思うんです」

 

「えぇ? わざと? どこの世界にみすみす得点させるチームがあるんですか?」

 

 そうだ、マネージャーの子、もっと言ってやってくれ。

 FWの桜咲だっけな、明らかなシュートチャンスで、一度迷ってベンチを見てたしな。

 

「ここにいるお二人の活躍に、戦意を喪失(そうしつ)したってことでしょう」

 

「そう、なんでしょうか……?」

 

 俺はブンブンと首を横に振る。

 どうだ、これで伝わってくれ。

 

「さすがにここまでやっていただければ、我が校の選手たちもなかなかに優秀ですので」

 

 ダメだった。

 

「何も、皆さんの実力を疑っているわけでは、なくてですね?」

 

「パワプロさん、いいんじゃないですか。南雲原は平凡なチームです。このまま後半も俺たちが出たら、弱い者いじめってやつですよ」

 

 おい、ハルから相当の悪送球が来たぞ。

 そりゃこのままどう説明しても、西ノ宮中監督の考えは変えられなかっただろうけどさ。

 

「向こうの監督さんも、選手たちも、俺たちの交代をご希望なようですし」

 

 ハルはベンチにもたれて、くつろぐような様子を見せた。

 

 さてはこいつ、もしも負けた時には、西ノ宮中側に責任を全て押しつける気だな。図太いというか、賢いというか、あの理事長の影響をだいぶ受けてそうだ。

 

「ありがとうございます。我々、西ノ宮中のサッカーをご覧になっていてください」

 

「……よしっ、お前たち、後半の準備だ!」

「「「はい!!」」」

 

 身体が急に軽くなったかのように、西ノ宮中の選手たちの動きがよくなったな。

 

 

「まさか!?」

「あの2人を下げさせるためか!?」

 

 南雲原中の選手たちは驚きながらも、表情が明るくなっていく。

 

 桜咲ってFWも、隣にいる女子に、何かを説明している。

 さては、『一度ベンチに下がった選手はフィールドに戻れないこと』を。

 

 

****

 

 

【南雲原中】

FW 忍原 桜咲

MF 妖士乃 柳生 木曽路 古手打

DF 牛島 古道飼 幕下 雨道

GK 四川堂

 

(必殺シュート解禁です。 存分(ぞんぶん)に戦ってください。)

「雲明からの指示は……わかったぜ!」

「みんな! 私たちに任せて!」

 

【西ノ宮中】

FW 学舎 糸居 鹿知

MF 元部鳴 駆乗 金星 真地米

DF 丸目 寺路 白石

GK 好街

 

「観客の声……誰も僕たちに期待してない……」

「ここから存在感を示せばいいさ」

 

 状況は3ー0で西ノ宮中がリードしている。

 前半とは違って、助っ人2人とFW2人を交代し、ポジションまで変えた。

 

 雷門中の円堂ハルたちがベンチにいることを、残念がっている観客が多いようだった。

 

 

 ホイッスルが鳴ると、後半が開始する。

 南雲原側のボールからスタートし、忍原と桜咲を中心に攻め上がる。

 

 西ノ宮中の選手たちは、前半と動きも異なっていた。

 攻撃陣と守備陣で半分ずつ分かれるように散らばっていく。

 

「キャプテンたちはいつも通りに」

「ああ。そっちは任せたぞ」

 

 司令塔である金星は、全体に指示を出しながら、自分自身も守備に回った。

 

「よっと」

 

 しかし忍原に次々と突破されてしまう。

 女子特有の柔軟性があり、まるでダンスを踊っているかのようだった。

 

「決めちゃって!」

「ああ!」

 

 パスを受け取った桜咲は、パワーシュートを放つ体勢に入った。

 

「食らいやがれ! 剛の一閃!」

 

 まるでレーザー光線であり、花びらが舞っているかのように、ゴールに突き進んでいく。 

 西ノ宮中GKの好街は慌てて止めようとするが。

 

「必殺シュートだって!?」

 

 一定難度以上の必殺技の習得自体が難しい。

 南雲原中はデータ通りの素人チームであり、ここまでの必殺シュートを持っているなんて予想していなかった。

 

「ぬわぁ~!?」

 

 好街は吹き飛ばされ、そのままゴールを貫いた。

 これで、南雲原に1点が入ったことになる。

 

 いまだ、3ー1で不利な状況ではあるが。 

 

「公式試合の初得点か」

「なんか気持ちいいね!」

 

 忍原と桜咲はハイタッチを交わし、南雲原中の選手は笑顔で駆け寄る。

 

 対する西ノ宮中選手たちはまだ2点差もあると声を掛け合って、自分のポジションに戻っていった。

 西ノ宮中のボールで再開したが。

 

「1点取ったくらいで浮かれんなよ」

「浮かれてないし」

 

 すぐに柳生が持ち前のフィジカルでボールを奪い、前線を走っている忍原にロングパスを行った。

 

「止めろぉ!」

「わかってます!」

 

 西ノ宮中の選手たちは焦ったように守備に回る。

 先ほど得点した桜咲に3人もマークがかけられた。

 

「私を甘く見ないでよね! ひっさつぅ!」

 

 再びドリブルで突き進んでいた忍原自身が、今度はシュート体勢に入った。

 新体操でボールを扱うように身体の回りでコントロールして、ほとんどボールに触れることなく、風を纏ったシュートが放たれる。

 

「ぐるぐるシュート!」

 

「今度は止めるよ! スウェットスティルネス!」

 

 GKの好街は爽やかな笑顔を浮かべながら、両手でガッシリと掴みにいった。

 しかし、つるりとグローブについた汗でボールが滑ってしまう。

 

「風が汗をぬわぁ!?」

 

 緩やかにボールがネットに当たり、これで3ー2まで追いついた。

 

「なんかラッキー?」

「ビギナーズラックのようだな」

 

 そんな会話をきっかけに、忍原と桜咲は笑顔で言い合いを始めた。

 

 

*****

 

 

 後半が始まって、南雲原中の流れに変わっていた。

 西ノ宮中の監督は青い表情を浮かべている。

 

「パワプロさん、南雲原はできたばかりのチームなんですよね?」

「らしいな。でも、全員が強みを発揮しやすいフォーメーションで並べている」

 

 桜咲のパワー

 忍原のスピード

 柳生のフィジカル

 木曽路のテクニック

 四川堂の反射速度

 古道飼は、意外性か?

 

 各メンバーが個性に溢れていて、近年のサッカーにしては、必殺技もオリジナルなものが多い。

 

「西ノ宮中も、もう決して油断してない。あのMFの金星、FW3人組との連携は見事だけど」

「それを南雲原は完璧に防いでいますね。いつ誰をマークするか、攻守の切り替え……でも少しタイムラグはあるか」

 

 とっくにハルも気づいていたようだ。

 白いジャージを着ていて、たった1人の控え選手が、司令塔なんだ。

 

「アイコンタクトで指示をやってるのか。よっぽど信頼されているというか」

「怪我…してるのかな……?」

 

 蓮と同等以上の司令塔かもしれない。

 もしも前半から選手として出場していれば、もっと違う展開になっていただろう。

 

 まあそれはもう過ぎたことだ。

 

「あいつが気になるのか?」

「さあ、俺にもわかりません」

 

 ハルはそう言いながらも。

 白ジャージ君の目の動きと、選手たちが動く盤面、それらを交互にしっかり観察していた。

 

 わざわざ九州まで遠征に来た収穫はあったな。

 

 あの白ジャージ君以外にも。

 『行けそうじゃねぇか!』『このまま押し押しで行こ!』って、南雲原中の選手たちは声を掛け合う。

 

 たとえ前半であれだけ体力を消耗しても、そして後半30分が過ぎたとしても、みんなが笑顔でサッカーを楽しんでいる。

 こういうチームのサッカーを見ていると、こっちまで楽しくなってくる。

 

「EXTENDED V GOAL、延長戦になるのではなく、どちらが先に1点を取るかどうかですね」

「西ノ宮中は残り3人も交代で投入した。状況だけ見れば、南雲原中が不利だけど」

 

 というかさっきの英語の発音、かっけぇな。

 俺もそのうち真似しよっと。

 

「ドッカントレイン! どりゃああ!」

「セカンドライフフープ! お願いします!」

 

 この試合で南雲原中は11人全員が明らかに成長した。

 今まで見せていなかった必殺技を次々と繰り出している。

 

「柳生先輩! 決めちゃってください!」

「おう! こいつでいく! 天空サンダー!!」

 

 オーバーヘッドキックによる必殺技により、まるで落雷のようにボールが突き進んでいく。

 オリジナル技なんだろうけど、ファイアトルネード相当の威力は出ているんじゃないか。

 

「ぬわぁぁぁあ!?」

 

 これで3ー4だ。

 同点で後半30分を迎えてから、先に1点を取ったことにより、南雲原中の勝利が確定した。

 

 

「決まりましたね」

「ああ。俺たちの負けだな」

 

 西ノ宮中の助っ人としては失敗だな。

 でもハルが『楽しかった』って顔してることは、1つの成功なんだよな。

 

「南雲原中、面白いですね」

「本戦まで勝ち上がってくるといいな」

 

 さーて、西ノ宮中の監督は泡を吹いたように真っ青だし。

 俺は蓮たちに連絡をするべく、控え室に一度戻ることにした。

 

 『ハルにライバルができた。あと怪我なく元気に帰るから』ってな。

 

 俺も燃えてきたぞ。

 もっともっと強くなって、全国大会でリベンジがしたいな。

 

 そのためには、南雲原中のことも(かげ)ながら応援することになる。

 

 

「いっただき~!!」

「ふぅ、初戦突破か!」

「お前ら、後半から無失点だぞ!」

「はいぃ~!」

「4点もよく取ってくれた」

「雲明、やったな!」

「ん! グッジョブ!」

 

 

 次に彼ら彼女らと会う時は、俺たち雷門中との試合だろう。

 王者として待ち受けるためにも、まずは関東ブロックで全国出場だな。

 

 

 

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