イナズマイレブン 『王者雷門』のヴィクトリーロード 作:ヒラメもち
大事な事件だけは起こるし。
とても困りながらも気合で書きました。
まあこの世界、彼らにも親戚やら息子がいるでしょう。
俺とハルがチームに合流してからも雷門中は勝ち進み、地区予選の準決勝まで来た。
そして今日の相手は海王学園だ。
海の近くということもあって、砂浜での特訓が多く、身体能力の高い選手が多いらしい。
その中でも注目選手は、FWの
どちらも中学生では珍しい化身使いらしい。
「まつりさん、無理はしないでくれよ。俺や暖冬屋もいることだし」
「皆さんが本気で挑むのですから……私も勇気を出してみます」
化身の力は強大だけど、体力消費が大きいデメリットがある。
だから雷門中の先輩たちも、たとえ化身使いがいなくとも毎年全国優勝してきたんだ。
使うかどうか、まつりさんに任せるし。
もし使ったとしたら、頼りきりにならないようみんなに伝えないとな。
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この関東ブロックだと、すでに帝国学園は決勝進出を決めている。
前年度優勝チームは自動的に出場枠が与えられるのもあって、もし雷門中がこの試合に勝てば、実質的に帝国学園は全国出場枠を得られたようなものだ。
この関東でも戦い、全国でも戦う可能性がある。だから特徴的な軍服のような制服を着ているサッカー部生徒、数十人が揃って最前列から観戦していた。
現役の学生でありながら監督である不破アリスも、兎のパペットと共に観察していた。
【雷門中】
FW 野神 円堂
MF 嵐 月影 鬼門 星村
DF 天宮司 遠野 赤袖 葉若
GK 暖冬屋
「……来てないよな」
「今日も勝ってお祝いと誕生日パーティーだね!」
「化身使い、1度勝負してみたかったんや」
【海王学園】
FW 浪川 風烈
MF 魚吹 村上 船頭 海本
DF 論具 手魚 深淵 瑞鳥
GK 歌舞天寺
「海王の誇りにかけて勝つぞ!」
「王者雷門、強そうなやつらだな」
「俺様の化身が
海王学園、雷門中、すでに試合前から強豪チームだと観客たちは感じさせられていた。
王者雷門や帝国学園が特に目立っているが、関東ブロック予選の試合はいつもレベルが高い。今日もスタジアムは大歓声に包まれていた。
ホイッスルが鳴り、雷門中側のボールでキックオフとなる。
野神は円堂にボールを渡して、後方の月影に1度パスをした。
「技術ではこちらが上だ! 最初から必殺タクティクスで攻めるぞ!」
月影はまるでタクトのように腕を振るいながら、各選手に指示を出す。
「まどろっこしい! 正面からぶっ潰すぞ、野郎ども!」
身体能力だけなら、海王学園は同等レベルだ。
ならば雷門中は技術や連携で攻めることにしていた。
「仕掛けるぞ! 『フライングルートパス』!」
月影は鬼門へ、そこから星村へ、次々と前線にパスが繋がっていく。
ジャンプをした味方に合わせて的確にパスをする。
しかも選手自らは着地する前にそれを行っていた。
「あいつら! まるで
「お前たち海王学園の必殺技は、まさしく
浪川は驚きながら守備に走り、それを月影は追いかけていく。
そして、最前線ではハルから野神にパスが繋がれたところだった。
「フッ、まさか後輩たちにここまでお膳立てしてもらえるとはな」
これから彼が放とうとする必殺技は、新しい雷門中の武器だ。
ドラゴンクラッシュから発展した『ドラゴンスレイヤー』、その威力を多少下げる代わりに、特に安定性が
この必殺技の強みは、このように空中にいながら、シュート体勢に入ることもできる。
「決めるぞ! バハムートクラッシュ!」
巨大な翼を広げたバハムートが咆哮し、光線のような超パワーシュートが放たれた。
「ちぃ! ハイドロアンカー!」
海王学園GKの
ボールがネットを貫いた。
「ちくしょう、次は俺様の化身で止めてやる…」
先制点が入った。
みんなで練習していた必殺タクティクスが決まったこと、新たな必殺シュートが完成したこと、雷門中の選手たちは笑顔で集まって喜び合った。
海王学園の選手たちは、雷門イレブンの個人技の高さ、そしてその連携に驚かされていた。
1-0となり、試合開始からの流れは、たった数分で完全に雷門中のものとなっていた。
「だが、流れを変えてやる! 海王の誇りにかけて!」
浪川は試合前半にも関わらず、ここで切り札の1つを見せてきた。
紫色のオーラが背中から
「これが俺の化身、『海王ポセイドン』!」
巨大な
「来るぞ! 各自シュートブロックの準備だ!」
「みんな! 今は耐えるぞ!」
月影や葉若は守備を固めるように指示を出したが、勢いのままに浪川はドリブルで真っすぐに向かってくる。
「どけぇ!!」
「「「ぐわぁぁ!?」」」
なりふり構わず化身を使ってきたこともあって、雷門中の選手たちの身体は吹き飛ばされてしまう。化身のパワーを身をもって知ることとなっていた。
「これが化身使いとのサッカーなんだ」
円堂ハルでさえ、化身の衝撃波によって近づけなかった。
彼のとっちゃんたちの試合で見たこともあったが。
中学生の試合にしては、間近で感じるオーラの量が段違いだった。
「行くぜ! ヘヴィアクアランス!」
浪川がシュートを放つと同時に、化身が三叉槍を
「なんぼのもんじゃい! 正義の鉄拳G2!!」
ゴッドハンドのオーラを握りこみ、地面を強く踏み込んで、回転する拳で立ち向かう。
円堂守が使っていた究極奥義だ。
そう簡単には。
「俺は神を超える、海王だァ!!」
「んなアホな!?」
ゴッドハンドのオーラでできた拳が、粉々に破壊されてしまう。
公式試合でいまだ無失点だった暖冬屋が、いとも簡単にゴールを奪われた。
この1年間はチームメイトの葉若以外に、彼が点を奪われたことがないほどの実力者であるのに。
「ゼェ…ゼェ……野郎ども! 俺に付いてこい!!」
「「「おっす!!」」」
浪川はチームを勢いづかせるためとはいえ、かなりの無茶をしたようだ。
そんなキャプテンに海王学園の選手たちは声を出して頷いた。
「これが化身のパワーなんか……」
「そう何度も使えるものじゃない! 俺たちで追加点を取るぞ!」
「「「おう!!」」」
雷門中の選手たちも決して諦めることなく、試合再開に向けて声を出した。
雷門中側のボールから再開し、再びフライングルートパスによってボールを繋いでいく。
海王学園の選手たちも食らいつくようにジャンプしてくるが、空中戦であれば、雷門中に
「スカイウォーク!」
ここで星村は新必殺技を見せた。
この必殺タクティクスの特訓の成果があったからなのか、空中を飛びはねるように、海洋学園の守備陣を突破する。
「よく繋いでくれた! バハムートクラッシュ!」
パスを受け取った野神は、再びGKとの1vs1で必殺シュートを放つ。
歌舞天寺はそれを前にしても、笑みを浮かべている。
彼の背中から紫色のオーラが
「俺様の化身を見せてやる。『猛蛇ヴァリトラ』!」
今度は人型というよりは、4本腕を持つ鮫のような生き物だった。
渦を纏い、その口に大量の水が吸われていく。
「ギガバイトスクリュー!」
シュートの勢いを弱めながら、最後に鮫の牙でボールを砕く。
渦の勢いは消える頃には、彼の片手にボールが収まっていた。
攻守両方の化身が揃っていて、いくら使用に回数限界があるとはいえだ。
雷門中の選手たちは、真正面から自分たちの実力が通用していないと感じさせられていた。
「野郎ども! 行くぞ!!」
「「「おっす!!」」」
それに対して海王学園が、海を1つの船で進んでいくかのような陣形を組んだ。
素早くドリブルをする1年FWの風烈を守るように、選手たちは壁を作りながら攻め上がる。
「まあ上はガラ空きだし」
円堂ハルもまた、フライングルートパスの特訓の成果を得ていた。
『空中で起こした炎』を足場にしてその陣形のド真ん中に飛び込んでいく。
「ならこっちは、風神の舞!」
「なっ!?」
風烈が起こした竜巻に閉じ込められ、それを追い風とするように、船は加速して抜き去っていった。
残った竜巻によって吹き飛ばされた円堂ハルは背中から落ちてしまう。
「くっ……」
「ハル君!?」
「ナオさん、持ち場を離れるな!」
星村は心配して駆け寄ってしまい、パスのルートが1つ空いてしまう。
風烈からのパスを浪川は受け取った。
「よくやった、野郎ども!」
「なら、私が……ぇ…」
赤袖が立ち向かう途中でなぜか動きを止めてしまった。
紫色のオーラを背中に一瞬見せて、化身を出そうとした様子はあったが。
「……天宮司、葉若、準備はいいか」
「おうよ!」
「いけますよ!」
「今度こそ止めてみせるで!」
海王ポセイドンによる化身必殺シュート、次はそれを4人がかりで止めにいった。
『スピニングカット』『ザ・タワー』『メガトンヘッドG2』『正義の鉄拳G2』
必殺技を順に出しながら身体を張って、シュートから耐えきった。
「これでギリギリなんか…化身ってやつは……」
「ぐっ……」
「天宮司!?」
タッチラインからボールが超えていったので、ホイッスルが鳴る。
自分から1番目にシュートブロックに入ったこともあって、最もダメージが大きかったようだ。
遠野や葉若は立ち上がれたが。
万が一の治療のために天宮司は担架で運ばれていき、
「ご、ごめん、私が離れたから」
「反省は後だ。浪川が疲労を見せているうちに、追加点を取るぞ」
月影が星村に声をかけてから、急ぎ足でポジションに戻っていく。
次はこちらのチャンスだからだ。
試合再開となる。
最初のドリブル突破で消耗していたため、さすがの浪川も前半ではもう化身を使用できないほどには、スタミナが切れているようだった。
雷門中は攻め方を変えることはない。
フライングルートパス自体はいまだ通用している。チームの化身の有無によって、雷門中が劣勢のように思えてしまうだけだ。
いつも通りのサッカーをすれば、必ず勝てる。
選手たちはそう信じて海王学園からボールを奪い取った。
月影は冷静に指示を出していき、円堂ハルまでパスが繋がる。
「ハル! 化身だって無限じゃない! みんなで点を取るぞ!」
「わかってますよ。いつも通りのサッカーをやればいい、でしょ」
そう、スライディングが来ることも予測できている。
いつも通り本能のままに、回避するだけだ。
それがサッカーモンスター『円堂ハル』だから。
「あれ……?」
ドリブルしていた身体が、ガクンと下がって、まるで落ちていくような感覚がした。
なぜだかアイルが怪我をした時の光景が、頭をよぎった。
もうずっとずっと前のことなのに。
「う……いて……」
受け身を取ることもできず、勢いよく円堂ハルは地面に倒れてしまう。
審判からのホイッスルが鳴り、ラフプレーの判定となった。
これで雷門ボールではあるが。
「ハル君!? 大丈夫!?」
「だ、大丈夫ですよ。これくらい……」
焦った様子で星村たちが駆け寄ってくる。
心配させまいと立とうとするが。
全く足に力が入らなかった。
「あ……」
やっちゃったかもと思ってしまっていた。
とっちゃんも、
「すぐ、
「……選手交代だ。星村もハルに付き添え」
星村も両膝をついて泣いている。
その姿を見て、やっとハルは怪我をした自覚をする。
「怪我、かぁ……」
不思議と全く痛みは感じられない。
しかし立つことができない。
骨とか折っているのだろうか。
こういうのが怪我なんだって思った。
アイルやパワプロ先輩もそうだったんだろうかって思った。
担架に乗せられながら、スパイクを脱がされることになって。
「あっ、このスパイク、とっちゃんがくれた大切なものなんです。必ず取りに来るから、それまで保管しておいてもらえますか?」
それだけ伝えて、ハルは横になって曇り空を見上げる。
「怪我……ひどくないといいな……」
そう呟いて、やっとハルは気づく。
サッカーを続けたいと思った。
雷門のみんなとサッカーやりたいと思った。
「あぁ、これが『サッカーができない』気持ちなのか……」
最悪の誕生日になったと思った。