イナズマイレブン 『王者雷門』のヴィクトリーロード   作:ヒラメもち

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第6話 雷門イレブンの課題

 

 

 俺たちは雷門中サッカー部とはいえ、中学生でもあるし。

 とにかく数字がマトリックスで方程式な必殺技を受けていた。

 

「こんな問題、教えてもらったっけ?」

「やりましたよ。この解き方を使います」

 

 練習が始まるまでの限られた時間、まつりさんから宿題を教えてもらっている。言い訳かもしれないけど、1年の頃は入院だったり、リハビリだったり、特訓だったり、どうしても数学だけは苦手なんだよな。

 

 夜遅くになって数字や文字をたくさん見てると、どうしても寝落ちしてしまうし。

 

「ん、いいでしょう」

「今日も解けたぁ~」

 

 小さいプリントを解いただけ。

 たった15分程度だったのに、もう知恵熱が出そうだよ。

 

「……ではサッカー棟に向かいましょうか」

「よしっ、サッカーの時間だな!」

 

 今日も乗り越えることができた。

 サッカーがまさしくご褒美のように感じる。

 

「そういや、なんでみんな集まってきてるんだ? 部活は?」

「……サッカー部は目立ちますから」

 

 荷物を持って教室から廊下に出ても、女子グループがスマホ片手にヒソヒソと話して、こっちを見てきてる。

 少し集中して聞いてみるか。

 

 「カッコいいシュート決めてた子だ」

 「あの紅白帽子なに? 今のトレンド?」

 「赤袖さんと付き合ってるのかな?」

 

 なるほど、蓮たち人気者の仲間入りしたのか。

 今まで期待してなかったけど、意外と気分がいいものだな。

 

「……モテモテですね?」

「いやいや、俺が恋愛的な意味で好きなのは、まつりさんだけだから」

 

 まだハッキリと告白はしていないけど、付き合ってるという認識でいいんだろうか。まつりさんからの気持ちも伝えられてて両想いだし。

 恋愛が初めてだからわからないな。

 

「……火に油を注いでどうするんですか」

「え? だって本当のことだし」

 

 ガシッと腕を掴まれて、引っ張られながら走り始める。

 照れてると強引というか、なんだかかわいかった。

 

 

****

 

 

 というわけでサッカー棟にやってきた。

 

 まつりさんとは別行動になって、男子更衣室に入ったけどさ。

 今日もすごく空気がどんよりしてた。

 

「みんなどうした! そろそろ全体練習が始まるぞ!」

 

「葉若の言う通りだ。雷門の1軍がそんな覇気のない姿を見せてどうする」

 

 野神先輩はいつも通りのキレ味だな。

 そのおかげなのか、更衣室に残っているやつらは準備を再開した。

 

大佑(だいすけ)どうしたんだ? そんなにハルのことが心配なのか?」

 

「……なんでもねぇよ」

 

 それだけ言って、練習に向かっていってしまう。

 あいつも昨日までは『きっとハルのやつもサッカーに戻ってくる』と信じていたのに。

 

「……パワプロはまだ知らないんだ」

「さっきからこのニュースで大騒ぎだよ」

 

紫雨(しぐれ)、天宮司、どういうことだ?」

 

 天宮司がスマホを操作して、ニュース記事を見せてくる。

 その画像だけで誰に関することなのかわかった。

 

「暗黒寺! あいつもサッカー続けてたのか!」

 

 紫色のツンツンヘアーは変わっていない。

 でも頬に古傷ができていた。

 

 えーと白恋(はくれん)中の……ってまだ読んでた最中なんだが。

 

「……暑苦しいくらいポジティブ」

「それが強さの秘訣ってやつなのかねぇ」

 

 紫雨(しぐれ)と天宮司まで、さっさと練習に向かってしまうし。

 あいつらも一体どうしたんだ。

 

 先輩たちに聞いてみるか。

 

「あぁ、白恋のエースストライカーらしいな。北海道ブロックの予選決勝のみの出場だ」

「しかもその試合で6得点、確かに1年の頃のポテンシャルから考えれば、あり得ない話ではないが」

 

 態度はともかく、昔の仲間がサッカーを続けている。

 しかも北海道の白恋中は全国大会の常連校だぞ。喜ぶことだと思うんだけどな。

 

「あいつは魔神どころか……『化身』を扱えるようになっていたぞ」

「才能の面で、お前やハル以上の逸材だったのかもしれない」

 

 その話は、まるで北海道からこの雷門に挑戦状を叩きつけられたかのようだった。

 まあ気にするやつは、気にしそうな話だな。

 

「『円堂ハルの再起不能』、『化身使いとの実力差』、この2点を全国までに解決しなければ」

「俺たち雷門は高確率で、今年の全国優勝は厳しい」

 

 3年の先輩たちも多少は気にしてはいそうだけど。

 公式試合の経験が多いから冷静でいられる。

 

 

 でも2年の大半が、そう簡単に乗り越えられそうになかった。

 

 

****

 

 

 FW組・MF組・DF組・GK組と完全に分かれてから、個人練習の時間が終わった。

 

 監督やコーチからはFW組に参加するよう助言された。

 確かにチームとして1年もしくは2年のメインストライカーが欲しいのは分かるけど、まるでもうハルが幽霊部員扱いじゃないか。

 

 ハルも歩ける程度には良くなってきている。

 あいつも諦めなければ、サッカーに戻ってこれるはずだ。数日前に旅行に行ったきり、帰ってきてないことは心配だけどさ。

 

 そして暗黒寺のことを気にしてるのか、FW組の多くはだいぶミスが目立っていた。

 大佑なんて自由時間になってからも、『バハムートクラッシュ』を進化させたいのか、ひたすらシュート特訓を始めていたし。

 

「というわけで、MF組とDF組はどうだった?」

「鬼門や春日たち、全体的にいつも通りだが……やはり気になるのは星村だな」

 

 そう話す蓮自身も大丈夫なようだ。

 『化身』というメリットデメリットを把握してて、自分が司令塔としてどういうサッカーをしていくべきか、きっと理解してるんだろうな。

 

 ここ最近ずっとナオさんは、ハルのことが心配でサッカーに集中できていない。

 俺が大怪我した時も実際に見てたらしいしな。

 

 というかハルが悪い。

 長崎に弾丸旅行したどころか、その帰る途中に送ってきたメッセージを最後に、ここ数日は連絡が取れてなかった。

 

―――特訓に行きます、みんな心配しないでください。

 

 いや、心配するが?

 

「まあハルの捜索は、理事長たちに任せるしかないけどさ」

 

「それで赤袖、DF組はどうだ?」

 

「そうですね、パワプロ君がDFから抜けることになり、その穴を埋めようと……」

 

 ハルが抜けて俺がFWに戻るから、そういう影響も出てきたか。

 一気に問題が山積みで頭を抱えるしかない。

 

「近年の雷門中の強みは特に中盤であり、それと守護神の存在にあったが」

「GKに甘えてきたDF組のほとんどが、まだ体力がついていません」

「だよなぁ。半年くらいじゃ、さすがにな」

 

 もっと雷門中は、壁山塀吾郎さんの伝説を語り継ぐべきだろ。

 シュートブロックの基礎的な技『ザ・ウォール』の使い手はどこに行ったんだよ。

 

 いまだ様子を見にいく余裕がないけど、GK組も心配だ。

 暖冬屋のやつも、先輩たちも、サッカー棟で練習用機械を相手にキャッチ練習を続けていそうだな。

 

 そのうち蓮が確認をしにいくことになってるし、俺はFW組で、まつりさんはDF組、それぞれ何とかしなきゃな。

 

「そして、全体的に『化身』を使いたがっている者が増えているようだ」

 

「えっと、まつりさんが使えるからって理由だけじゃないと思うし」

 

 コクりと頷いた。

 まつりさんも大丈夫そうだな。

 

「パワプロの言う通りだ。少なからず影響はあると思うが、明らかな原因は暗黒寺の話題が広まってからだ」

 

「私たちは放課後に宿題をしていて気づきませんでしたが……広まるのが少々早すぎる気もします」

 

 んー、蓮とまつりさんが考えてわからないなら、俺にもわからん。

 みんな放課後にすぐSNSを見たのかってくらいに、情報が早いよなぁ。

 

「……『炎魔ガザード』、例えば豪炎寺修也さん、現役プロであれば黒裂(くろさき)真命(まこと)選手が扱う化身、そのものなようですね」

 

 ファイアトルネードを極めていって、炎の魔神を出せるようになり、そこからさらに正統進化させていった化身の極致みたいなものだな。豪炎寺修也さんへの憧れも強く影響してそうだ。

 暗黒寺のやつ、どれだけの猛特訓をしたんだろうな。

 

「ところで俺は、パワプロも焦るんじゃないかと心配していたが」

 

 蓮のやつ、挑発してきやがって。

 俺も大丈夫そうだと判断したからだろうな。

 

「悩んでいる暇があったら特訓だな。しかも焦って怪我なんてしたら」

「というわけで、1つ1つ解決していくしかありませんね」

 

 まつりさんを悲しませるわけにはいかないからな。

 

「そうだな。今は、俺たちが動くべき時だ」

「まつりさんを副キャプテン補佐にするのはどうよ」

「……その肩書きは何かと便利そうですね」

 

 とっくに蓮は知っていそうだぞ。

 まつりさんが照れてて今日もかわいい。

 

「よしっ、方針は決まったな。雷門のみんなで乗り越えて、全国に行くぞ」

「おう、キャプテン」

「はい、キャプテン」

 

 関東ブロック決勝、帝国学園との試合も近い。

 

 『ハルのリハビリ』、『ナオさんのフォロー』、『化身に固執することへの対策』、『守備陣の補強』、どうしていくべきかな。

 

 

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