イナズマイレブン 『王者雷門』のヴィクトリーロード   作:ヒラメもち

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第8話 雷門vs帝国(②)

 

【雷門中】

FW 野神 葉若

MF 嵐 月影 鬼門 星村

DF 紫雨 遠野 天宮司 赤袖

GK 暖冬屋

 

【帝国学園】

FW 西條 星見沢

MF 穂村 霊道 元屋敷 本能寺

DF 井野部 江流崎 盟帝央 屋城

GK 陣野

 

 前半0ー1という状況で、帝国の有利が続いていた。

 雷門側のボールで試合が再開となる。

 

 パスを受け取った月影は、野神や葉若が前線に向かうまでのわずかな間に、帝国の動きを観察する。

 

 先ほどまでの9人をかけた全力守備とは違って、帝国MFたちもこちらに向かってきている。つまり化身使いの西條による力押しは、雷門GKである暖冬屋を動揺させるための戦術だった。

 

「やはりパワプロには、重点的にマークがつけられるか」

 

 星見沢のスライディングを回避してから、鬼門へ、星村へ、順にパスを繋いでいこうとする。

 

「でもパワプロ君なら、なんとか!」

 

「円堂ハルのいない雷門はこの程度か」

 

 MFの穂村も同時にジャンプしながら、星村に向かってそんな言葉を呟いた。

 

「きゃっ」

 

 空中戦の最中に星村は明らかな動揺を見せて、ボールを奪われてしまったどころか、上手く着地できずに転んでしまう。

 

「ここは俺が止めてやるよ!」

「待て、天宮司!?」

「これでは西條君のマークが減ってしまいますね」

 

 天宮司がフォローをするつもりなのか、大きく持ち場を離れて、走っていってしまった。

 仕方なく赤袖が代わりに、その位置に動いたが。

 

「アリスからの命令があったぞ」

「各自、必殺タクティクス、『不思議の森』を発動せよ」

 

 帝国MFの穂村はボールをキープしたまま、命令を全体に伝えた。

 帝国の選手たちの大半が、怪しい動きを見せる。

 

「へぇ、これが噂のやつ」

 

 そう呟いた西條は、雷門守備陣をできる限りゴールから離れるよう引きつけた。

 

 煙幕か、霧なのか。

 誰がやっているのか、何人でやっているのか、原理は不明だった。

 

 わかっていることは、これで雷門側のパスは繋がりづらく、しかも連携が取りづらくなった。

 

「俺が止めるよ!」

 

「ジャッジスルー……なんてな」

 

 必殺技を発動したのではない。

 

 天宮司の腹に向かって、軽めにトンとボールを当てただけだった。

 そんなハッタリだけで抜き去ってドリブルを続ける。

 

「だまされた!?」

 

「よかったな、円堂ハルのように怪我しなくてよ」

 

 最近の審判だと、イエローカードになりやすい必殺技だ。

 よっぽどの強敵でなければ穂村も使用しない。

 

「フッ、なら、この鬼門(きど)が止めてやる」

 

「お前は……よくわからん!」

 

 ギリギリのラフプレーも混ぜながら、穂村はドリブルで進んでいく。

 化身使いの西條は警戒されているようで、重点的にマークされているが。

 

 それもアリスのシナリオ通りだった。

 

「決めろ、星見沢(ほしみざわ)

 

「やっとか。ペンギンがうずうずしてるぜ」

 

 パスを受け取った彼が指笛を吹けば、カラフルなペンギンたちが集まってきた。

 

「ペンギン・ザ・パレード」

 

 シュートを放てば、ペンギンたちは飛び回る。

 

 ペンギンたちが集まれば、1つに合体する。

 そう、キング・ペンギンとなる。

 

「正義の鉄拳を超える必殺技……ぶっつけ本番や!」

 

 暖冬屋はゴッドハンドのオーラを拳に貯めて、それを勢いよく地面に叩きつけた。

 

 シュートを真正面から止めるのではない。

 現れたドーム状のオーラによってシュートを受け流すという、ゴッドハンドの応用技『イジゲン・ザ・ハンド』を想定した。

 

 円堂守がU-15世界大会の中で開発した必殺技ではあるが。

 

「なんだそれ、パワーシールドか?」

 

「しまっ……!?」

 

 しかしオーラはとても薄く、地面を滑っていくキングペンギンは止められなかった。

 

 さらに今の暖冬屋は地面に手をついている状態だ。

 これでは身体でボールを受け止めることすらできない。

 

 間一髪といったところだった。

 

「ぐぁ……!?」

 

 ゴールとボールの間、そこへ割り込むように遠野が飛び込んできていた。

 

 必殺技も間に合わないため、彼は身体でボールを(はじ)き返す。

 そのボールは、赤袖が取って前方のタッチラインに向かって蹴り飛ばした。

 

「遠野先輩…すんません……」

 

「気にするな。勝手に身体が動いただけだ」

 

 ユニフォームの泥を気にする余裕もなく、立ち上がった遠野は、練習通りのポジションに向かっていった。

 しっかりと頭を下げてから、暖冬屋は悔しい表情を浮かべる。

 

 帝国側のスローインで試合が再開すると、再び不思議の森が展開された。

 あえて彼らはボールを中盤に戻す。

 

 さすがにスローインの直後では、雷門の守備陣は整っている。この予選試合では確実に、プライドが高い暖冬屋だけを狙い撃ちする戦術をとっていた。

 

 彼のGKとしての総合力はともかく、技術自体は厄介である。

 

「視界が悪く、それに身体も少し重く感じるな……これはなんだ?」

 

 司令塔である月影は、この間に『不思議の森』の攻略法を考えていた。

 

 フィールド全体に効果を及ぼしていて、原理も不明で、いまだ対策も見つからない。

 しかし帝国のメンバーの動きは、いつも通りなようだった。

 

 今は雷門守備陣の尽力と、帝国が葉若のマークに人数をかけていることもあり、0-1のまま耐えられているが。

 

「まさしく森に迷い込んでしまったようだな」

 

 なんとか打開しようと、各個人が動き回るため、雷門全体の陣形が乱れていっている。

 

 そんな今のチームの状況で連携ができるとも思えないが。

 空中を見ても『フライングルートパス』の範囲にまで、霧が展開されていた。

 

 しかし、それよりもっと上空は青空が見えている。

 

「仕方ない、か……」

 

 月影は、この判断ですら、手のひらの上に乗せられていると思えてしまうが。

 このまま時間が過ぎていけば悪循環だ。

 

 誰かがこの不安を吹き飛ばし、流れを変えなければならない。

 

 あれから葉若も更に特訓を積んでいる。

 前半と後半のインターバルもあれば、多少の体力は回復するだろう。

 

「ほい」

「ナイスだ!」

 

 赤袖から、地面を転がってくるようなパスだった。

 それを月影は受け取ってドリブルで進んでいく。

 

「プレストターンV2!」

 

 軽いリフティング、左右にフェイント、帝国の中盤を一気に抜き去る。

 

 そこからパワーシュートの体勢に入った。

 まだロングシュートの位置ではあるが、今の雷門の必勝法の1つではある。

 

「俺たちで仕掛けるぞ、パワプロ!」

 

 そう叫びながら、巨大な翼を広げたバハムートが放つ光線により、超パワーシュートを放つ。

 

「バハムートクラッシュ!」

 

 月影にはFW組ほどのキック力はない。

 だからこそ、そのシュートはパスの要領で放たれ、天高く飛んでいく。

 

「……化身で潰す」

「待て、アリスの命令を無視するな!」

 

 帝国GKの陣野が止めるが、京前嵐山中のDF屋城の背中からは紫色のオーラが(あふ)れ出した。

 城壁巨兵ウォーボーグがゴール前で待ち受ける。

 

 葉若はボールを鷲掴みするように空中からゴールに向かいながら、炎の剣でシュートを打ちこんだ。

 

「いっけぇぇぇ!! マキシマムファイア!!」

 

「ディスペア・フォートレス!」

 

 ゴーレムのような化身は、両腕それぞれの盾に化身のオーラを纏わせて、重ねることで巨大な盾を作り出した。

 

「……つぶれなあぁぁい!?」

 

 まるで城壁であったが、それをいとも簡単に炎のシュートは砕いて進む。

 葉若の扱っている能力は、いわば『化身キラー』だったからだ。

 

「アリスの推測通り、とはいえ!?」

 

 帝国GKの陣野は、咄嗟に『フルパワーシールド』で衝撃波シールドを作り出した。

 しかし必殺シュート自体の威力も高すぎて、燃え(たぎ)るシュートの威力が全く落ちきらない。

 

 ゴールを炎の剣が貫く。

 

 前半終了間近で、雷門中が1-1の同点に追いついた。

 

 

****

 

 

 前半と後半のインターバルのことだった。

 会議のような雰囲気で帝国の選手たちは、不破アリスの前に集まっていた。

 

「すみません。シナリオ以外の動きをしてしまって」

 

 葉若の全力シュートに対して、化身を使うことはコスパが悪い。

 実質的な守備の司令塔であるGKの陣野自身の責任だと、頭を下げた。

 

 化身使いの屋城は必殺技まで使って消耗したことにより、地面に座り込んで休んでいる。

 西條も険しい顔をして、葉若がいる方向を見ていた。

 

「いや、おかげでデータが増えた。やはり、あれは『化身キラー』と言っていい」

 

「一体あれはなんですか。化身の弱点なんて、体力の消耗以外に聞いたことがない」

 

 思わず西條は尋ねてしまったが。

 不破アリスは目を見開いて興奮しているから、なんだか怖かった。

 

―――ソウル

 

「そう呼ばれているらしい。オーラを具現化することは魔神や化身と似ているが、もはや『ソウル』はオーラの実体化に近い」

『俺には本物のハクトウワシに見えたね』

 

 兎のパペットがそう補足した。

 頭部や羽根は白く、胴体は褐色で、(くちばし)は黄色、海外に分布している鳥の特徴そのものだ。

 

「化身以上のオーラの(かたまり)というわけか」

「だが、化身以上に消耗しているようだな」

 

 帝国の選手たちは、更にコスパの悪いものだと判断した。化身以上の威力はあれど、それよりも短い瞬間的なものでしかない。

 

 完璧な組織力による集団サッカーで勝ってきたからこそ、彼らは化身などを求めない。

 

「その通り。あれは圧倒的な()の力にすぎない。今の雷門にとってはまさしく、出る(くい)は打たれる」

 

 今の雷門の歯車はガタガタで、大きさもバラバラだ。

 ズレが大きいほど、自然と崩壊していくだろう。

 

 今日の試合は勝敗がどうなろうと、帝国も雷門も全国出場がすることが確定している。雷門が前年度優勝校としてか、関東ブロック代表校としてか、その違いだけだ。

 

 だからこそ、再び対決する全国大会決勝までには、もはや立て直せないような状態にしておく。

 そうすれば決勝までに雷門が敗北するという展開すらありえる。

 

「ふふふ……最後に勝つのは俺たち帝国だ」

「「「はいっ!!」」」

 

 この試合の前からすでに、計画は始まっていた。

 帝国学園は、今年で雷門を王者から引きずりおろすつもりである。

 

「ちっ、俺たちの化身共鳴でぶっ倒してやろうぜ、屋城さん」

「次こそ潰してやる…葉若風露……」

 

 西條たちもまた、自分たちの信じてきた化身によって、全国優勝を目指している。

 

 共通の敵を前に、彼らは手を結んでいた。

 

 

 

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