イナズマイレブン 『王者雷門』のヴィクトリーロード   作:ヒラメもち

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第9話 雷門vs帝国(③)

 

 まつりさんや遠野先輩たちDF組が頑張って、なんとか前半は1-1の同点だけど。

 それは帝国がまだ1つしか必殺タクティクスを使用してこないおかげもあった。

 

 たぶん全国までに温存しているんだ。

 化身使い2人組の助っ人もいて、最初から全力であれば、どうなっていたことか。

 

 しかもナオさん、大佑(だいすけ)紫雨(しぐれ)天宮司(てんぐうじ)、そして暖冬屋(だんとうや)、だいぶ空回(からまわ)っているような動きもしていた。

 

「どうするよ、蓮」

「あぁ、問題が山積みだ」

 

 雷門中の選手たちの多くは、いわばエリートである。

 2軍以上に選ばれていれば、もうすでに個人技の技量は全国クラスに高いと思うけど。

 

 だからこそ、挫折(ざせつ)を経験したことがない選手が多かった。

 でも化身という圧倒的な個人技に圧倒されたことによって、自分たちもそれクラスの実力を求めている。

 

 こういう時、監督がビシッと言ってほしいけどさ。

 最近は指示どころか、もはや試合中にベンチから離れている時が多い。放任主義なのか、自由にサッカーやらせてくれてるのか。

 

「というか、あの必殺タクティクスなんだよな」

 

 『不思議の森』だっけか。

 仲間の顔が見づらくなるし、パスしづらそうに見えた。

 まつりさんや蓮が試合中に対策できないほどだ。

 

「もし解決できないようであれば、回避すればいいのではないでしょうか。パワプロさん、本気のあなたならば、上空からの突破は可能ですよ」

 

 マネージャーの有海崎(あみさき)さんが話しかけてくるとは珍しい。

 いつもベンチでデータ入力してくれてるんだよな。

 

「ところで、あれを発動した際、どれほどのオーラを込めていますか? また、どういった原理で発動しておりますか?」

 

 こんなインタビューのようなことしてくる子だったっけ。

 

「えっ、いや、ごめん、なんとなくで……『ビューン!ズドーン!』っていうかさ」

 

 俺もこの感覚をいつ身に着けたのか覚えてない。

 怪我する前にはできなかったし、リハビリに近い猛特訓、それと『メガトンヘッド』の習得くらいで、たぶん特別な特訓したわけでもないんだよな。

 化身以上に体力を消耗するようだから、ぶっ倒れる覚悟で使って特訓するしかなかったし。

 

「あの、一瞬だけ霧が晴れた時があって、パワプロさんが飛び立つ時とか、もしくは化身シュートの発動直後でした。まあその後また出てましたけど」

 

 そういう情報は助かる。

 ベンチから見てくれてるからこそだな。

 

「そうか、たえちゃんありがとう」

「えへへ どういたしまして」

 

「突破口は、強力な衝撃波のようなものか…だが……」

 

 蓮も悩んでいる。

 俺が2回目なんて使えば完全にぶっ倒れるし、まつりさんもあまりゴール前を離れるわけにはいかないからな。

 

「それならナオさん、あなたが後半から鍵なようです」

「えっと、どういうこと?」

 

 まつりさんが、ナオさんの底力を信じるのなら、俺たちも信じるだけだな。

 

「でも私じゃ化身は……」

「誰が化身と言いましたか?」

 

 モヤモヤした霧を吹き飛ばすのは、確かにナオさんが得意そうだな。

 

 さて、あとはチーム全員に向けてビシッと言わないとな。

 どういう言葉を伝えるべきか。

 

「いいかみんな、よく聞け。かつてこの雷門は無名だった」

 

 悩んでいたら、蓮に先を越されていた。

 ここはキャプテンに任せるとするか。

 

「最初は部員すら足りなかったらしい。なんとか集めた11人で、帝国相手との練習試合では1ー20だった。本当のどん底からのスタートだ」

 

 今の王者となっている雷門からは想像できないようなことだろうな。

 

「だが彼らはどん底から這い上がるために、特訓を繰り返した。来る日も来る日も勝利を信じて特訓した。それは、仲間のために、自分自身のためにだ」

 

「雷門の『サッカー部・部訓』の『練習こそが力だ』、その当時からの伝統なのでしょうね」

 

 帝国に伝統があるように、俺たち雷門にも伝統がある。

 受け継いできたものが確かにある。

 

「嵐、紫雨、天宮司、暖冬屋、もう半年ほど前だが、1軍と2軍の試合を思い出すんだ」

 

「忘れられるわけないやろ。あれでワシは、井の中の(かわず)やったと思い知らされた」

 

 そうだろうか。

 今の暖冬屋からは、何度も俺に対決を挑んできたような熱意が感じられない。

 

「でも結局、パワプロみたいに強力な必殺技が必要ということだろ」

「……それか赤袖も使ってる化身」

「そうなんだよな、やっぱ才能っていうかさ……」

 

 嵐、紫雨、天宮司がそう話す。

 確かに必殺技などが、試合に勝つためには必要なことだけど。

 

「俺は決して実力や技術だけで、お前たちが強かったとは思わない」

「あの練習試合は体力配分など考えず、無茶苦茶に走り回ってきたな」

 

 遠野先輩や野神先輩たちは本当に強い。

 食らいつくためには、前半から全力全開しかなかった。

 

「体力、根性、気合、そして最後まで諦めない気持ちだ。だからこそ1軍と2軍は同点という結果で試合終了となった。いや、もはや負けたとすら思わされた」

 

 『学ばされたよ』と蓮は、一度こちらを向いて笑みを浮かべた。

 

「パワプロも諦めなかったからサッカーに戻ってこれた。諦めない気持ちこそが、こいつの最も得意な必殺技だ」

 

「まあそれもあるけど、みんながいたからだよ。俺に協力してくれたから、あの時の2軍はほぼ同等に戦えたんだぞ」

 

 決して俺だけの力じゃない。

 ここにいるメンバーだけでも大佑、紫雨、天宮司、夏生(なつき)、春日、ナオさん、まつりさんが一緒に、本気でサッカーやってくれたからだ。

 

「そういやそうだったな」

「……あの時は上手く乗せられた」

「1軍入り狙おうぜ、なんて言われるとなぁ」

 

「僕たち、いつの間にか追いかけられる立場ですね」

「強めなプレッシャーではありますが」

 

「雷門のみんなで全国どころか、世界を目指すのですよね」

「……そうだったよね。みんなでさ!」

 

 それが、みんなで共有している夢だ。

 日本代表メンバーの多くを雷門中のみんなで染めて、そして優勝するんだ。それは円堂守世代も、松風天馬世代も超えるってことだろ。そうすれば雷門中の新しい伝説を作れる。

 

 全員で互いに頷き合った。

 もう大丈夫そうだな。

 

「後半戦も、全力でいくぞ!」

「「「「「おう!!!」」」」」

 

 蓮の号令に、大きな声を出して頷いた。

 

 

*****

 

 

【雷門中】

FW 野神 葉若

MF 嵐 月影 鬼門 星村

DF 紫雨 遠野 天宮司 赤袖

GK 暖冬屋

 

【帝国学園】

FW 西條 星見沢

MF 穂村 霊道 元屋敷 本能寺

DF 井野部 江流崎 盟帝央 屋城

GK 陣野

 

 

 後半が再開してから1-1という状況が続き、いまだ雷門中は不利な状況が続いている。

 

「バハムートクラッシュ!」

 

 雷門の選手たちが使う必殺シュートの威力では、ゴールを奪うことができていないからだ。

 

「ザ・フォート」

 

 帝国の選手3人で鉄壁の巨大要塞を出現させ、砲弾を放つことでシュートブロックをする。

 本来は圧倒的な中盤制圧用のブロック技なのだが、守備陣を増やしている場面で必殺技の応用をしていた。

 

「マッハウィンド! うりゃあああ!」

「苦し紛れだな」

 

 星村など、それ以外の必殺シュートに対しては『フルパワーシールド』という衝撃波だけで対応してくる。

 

 それでもだ。

 前半と違って、雷門の選手たちは、シュートチャンスがあったなら積極的にゴールを狙い始めていた。

 

 そんな猛攻を、まるで帝国は要塞のように耐える展開となっていた。

 

「潰す……潰す……」

「こいつ、パスカットに化身を使ってきやがった!?」

 

 最も得点を狙える可能性のある葉若に対するマークには、背後霊のような屋城がついている。

 

 時には帝国からカウンターをして、シュートを放つ場面も多くあった。しかし暖冬屋による『正義の鉄拳G3』は『ペンギン・ザ・パレード』に対しては鉄壁を誇る。

 

 西條の出す化身には。

 

「魔槍剣聖クララバニー!」

戦旗士(せんきし)ブリュンヒルデ」

 

 化身同士のぶつかり合いをすることで、お互いに痛み分けのように体力を消耗させていた。

 

「ナオさん!」

 

 『不思議な森』の中で、雷門中の選手たちのパスが繋がりづらいことも不利な原因である。

 化身を出したまま勢いをつけて地面を転がすも。

 

「あと、ちょっとだったのに!」

 

 星村はそのパスに追いつけず、タッチラインから遠ざかっていってしまう。親友の底力を信じているからこそのパスであり、帝国の選手たちもパスカットすることができていなかった。

 

「なんなんだ、あいつのスピードは……」

 

 帝国MFの穂村は、何度か『キラースライド』によるスライディングで仕掛けることもあったが、星村という女子選手のドリブルに翻弄(ほんろう)されていた。

 

「ふぅ……」

「すまんな、本来ワシがすることまで……」

 

 肩で息をしている赤袖はポジションに戻りながら、そう暖冬屋に声をかけられた。

 

 西條と何度か化身同士でぶつかり合っていた。

 そしてボール運びどころか、守備の指示まで赤袖と遠野で出している。

 

「ワシはゴールを守ればいい……今までその考えだけやった……」

 

 帝国学園のサッカーは完璧なほどまでの統率力だ。

 GK陣野も、1番広くフィールドが見える位置から、次々と守備陣に指示を出している。

 

「いいんじゃないですか、それでも」

 

 赤袖は前を向いたまま、そう伝えた。

 

「んなこと……」

 

「ゴールを守る人がいる。雷門の守護神がいる。安心してパワプロ君は攻撃に専念できる時間が増えるのですから」

 

 この試合、常に誰かにマークされていることもあるが。

 それでも常にメインストライカーとして動いていた。

 

 今回の試合では、1度も守備陣に参加していない。

 

 彼はどうにか包囲網を抜け出そうと、パスルートを作ろうと、最前衛で走り続けている。まさしく雷門中の1軍と2軍の練習試合でやっていたタクティクス『鬼ごっこ』である。

 

「ずっと待ってくれてるんです、私たちからボールが届くのを」

 

「はぁ~~ ベタ惚れやんか」

 

 入学した頃の赤袖は、ここまで大きな声で話すような女子ではなかった。

 それが今では、遠野から習いながら、守備の司令塔までこなしている。

 

「くよくよ悩むんは、もうやめた! ワシらで、やったるで!」

 

 両手のグローブを叩き合わせて、暖冬屋は笑顔で叫ぶ。

 赤袖は『サッカーバカが増えましたね』と笑った。

 

 

 

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