イナズマイレブン 『王者雷門』のヴィクトリーロード   作:ヒラメもち

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第10話 雷門vs帝国(終)

 

【雷門中】

FW 野神 葉若

MF 嵐 月影 鬼門 星村

DF 紫雨 遠野 天宮司 赤袖

GK 暖冬屋

 

【帝国学園】

FW 西條 星見沢

MF 穂村 霊道 元屋敷 本能寺

DF 井野部 江流崎 盟帝央 屋城

GK 陣野

 

 後半も10分ほどが経過し、いまだ1-1で同点の状況が続いていた。

 お互いの選手全員が体力を大きく消耗しているが、勝ち越し点を得るべく、攻撃と守備に動き回っている。

 

 そして、帝国側のスローインから再開した。

 空中戦には雷門も応戦するが、必殺タクティクス『不思議の森』の霧により、優秀な選手たちがパスミスをしてしまうことすらある。

 

 帝国側の猛攻が続き、西條にボールが渡ってしまう。

 そこに、葉若を追いかけることを中断し、屋城が前線まで走ってきている。彼はニヤリと笑みを浮かべた。

 

「始めるぜ、屋城さん」

「いいよ」

 

 魔槍剣聖クララバニーと城壁巨兵ウォーボーグの連携による『化身共鳴』を発動する。

 共鳴現象の一種によって、2人の化身のオーラは高まっていく。

 

「お前たち、アリスのシナリオでは、まだ温存しておくはずだ!」

 

「別にいいだろ、これなら葉若風露も守りにくる!」

「葉若風露を潰すっ! 潰すぅ!」

 

 西條が天高く上げてボールに、2体分の化身のオーラを集めていく。

 そして自分自身はジャンプする。

 

「エンプレス・シャドウ!」

 

 オーバーヘッドキックでシュートを放ち、化身は巨大な槍を投擲(とうてき)した。

 

 対する暖冬屋はゴッドハンドを掲げて、オーラを溜め続ける。

 

「やったるで。まずはオーラの集約や……」

 

 彼はこの試合で『正義の鉄拳G3』を更に進化させるつもりだった。

 先に究極奥義を覚えてしまい、結局は習得できていないが、『マジン・ザ・ハンド』の要領でオーラを右手に込め続ける。

 

「くっ……」

 

 それには、いつも以上に時間がかかってしまっている。

 だからこそ、暖冬屋は大声で叫ぶ。

 

「手ぇ、貸してくれやぁぁ!」

 

 守備の司令塔として指示するのではなく。

 雷門イレブンの仲間を頼ること。

 

 彼のそんな成長に、すでにシュートブロックに動いていた3人は笑みを浮かべた。

 

「言われなくとも」

「お前が頼むなんてな」

「さっさと作っておけば」

 

 遠野は『ザ・タワ―』、天宮司と紫雨は『スピニングカット』だ。

 身体を張ってシュートブロックに入る。

 

 彼らの身体は吹き飛ばされてしまう。

 シュートの勢いはほとんど弱まっていないが、ある程度の時間稼ぎはできた。

 

「化身に勝てるわけねぇだろ! 来いよ、葉若風露!」

「潰すぅぅぅ!」

 

 この試合では、葉若がエースストライカーとして得点を狙わなければならない。

 

 『ずっと待ってくれてるんです、私たちからボールが届くのを』

 さっき赤袖がそう言っていたように。

 

 だから暖冬屋たちでゴールを守らなければならない。

 自分のために、仲間のために。

 

「パッと開かず、グッと握って、ダン!ギューン! ドカーン!!」

 

 彼の気迫により、虎が吠えたかのようだった。

 ここに来て『正義の鉄拳』を超えた新必殺技を見せる。

 

止まれやぁぁぁぁ!!

 

 握り潰す、噛み砕く、そういう表現が当てはまるだろう。

 もし名付けるのなら『ゴッドハンド・タイガー

 

 これはパンチングではない。

 勢いを完全に止め切ったボールは、暖冬屋がしっかりとキャッチしている。

 

「「なにぃぃぃ!?」」

 

 化身共鳴のシュートを、化身も使えない4人だけで止めきってみせたのだ。

 西條や屋城は目を見開いた。

 

 そんな光景に帝国の選手たちも驚いた。

 

 仲間の進化に、雷門の選手たちは喜ぶ。

 追い風を受けたかのように、彼ら彼女らは走り始める。

 

「いったれやァ!!」

 

 全力で腕を振りかぶって、ボールを前線へ投げる。

 それには嵐が飛びつくように受け取った。

 

「「「行かせるか!」」」

 

 彼の目の前には、帝国の選手3人による『ザ・フォート』の巨大要塞がそびえ立つ。

 『ヒートタックル』では突破ができないほどの圧力を感じた。

 

 この要塞の奥に、もっと先に、葉若は走り続けている。

 

「いいぜ! 俺が繋いでやるよ!」

 

 彼の長所である突破力、そこに加速力が合わさった。

 まるで稲光のように軌跡が残る。

 

 『ザ・フォート』の砲撃を回避して、巨大要塞を振りきってみせた。

 

「「「なにっ!?」」」

 

 そのドリブル必殺技は『ライトニングアクセル』、嵐は足にかかった負担を感じながらも、シュートを放つ要領でロングパスを出した。

 

「頼むぞ! パワプロ!」

 

「あぁ、届いたぞ!」

 

 葉若がオーラを込めて頭上に掲げたのは、ゴッドハンドの右手だ。

 その飛んできたボールにヘディングシュートを放った。

 

「メガトンヘッドG3!」

 

「くっ……! どうする……!」

 

 あれは『フルパワーシールド』で止められる威力ではないと予測した。

 そんな時に帝国GKの陣野は、必死な表情の仲間たちが見える。

 

 たとえこれが全国決勝でないとはいえ。

「なぜか負けたくないよな、お前たち!」

 

 渾身の力で地面を叩きつけ、魔法陣が地面に描かれる。

 この技は全国大会決勝のために隠していた必殺技だが。

 

「エンパイア・シールド!」

 

 強力なシュートを弾いてみせた衝撃波は、帝国の盾そのものだった。

 

「どうだ!」

「さすが帝国学園、すごいな!」

 

 葉若の笑顔に影響されたのか、陣野も笑みを浮かべる。

 勝ちか負けかの戦いで、いつのまにかサッカーを楽しんでいた。

 

 

「データにはない必殺技を隠していた……いや、この試合中に進化しているのか!?」

『どうするんだアリス!』

 

 『あわてるな、ブラザー』と兎に言いながら不破アリスも、この予想外な展開になぜだか頬が緩む。

 全国大会決勝で再び戦う時、あれらを打ち破る戦術を組み立てればいい、そう興奮しながら思った。

 

 

 そして飛んでいったボールは、守備に戻ってきている西條たちに渡りそうだったが。

 

「このボール、パワプロに繋ぐんだ!」

 

 野神が、空中で後方に飛ばす。

 根性を出した月影がそれに飛びついた。

 

「星村! 頼んだぞ!」

「はい!」

 

 彼女までのパスルートは完璧に空いていた。

 そのスピードで、完全に帝国MFの穂村を振りきってみせる。

 

「だがデータ通りなら、ザ・フォートであれば!」

「「止められる!」」

 

「ボールをよこせぇ!」

「葉若風露を潰すぅ!」

 

 目の前には巨大要塞、2体の化身が揃った。

 5人がかりで星村の行く手を(はば)んでくる。

 

「ナオさん、お願いします!」

 

 赤袖に大きな声で頼まれ、星村は笑顔で頷いた。

 

 彼女にとって、幼馴染で、親友で、ずっと仲良くしたい子だ。

 その信頼に(こた)えるのは当然だった。

 

「うりゃぁぁぁ!」

 

 星村が両腕を振るえば、まるで台風かのような竜巻が引き起こされる。

 それは彼女のドリブルの道であり、そこに立ち入ることは決してできない。

 

風穴ドライブ!

 

 一気にくぐり抜けて、何もかも突破する。

 

「「化身が!?」」

「「「たった1人の必殺技に!?」」」

 

 瞬間的な爆風により、一瞬『不思議の森』の霧が吹き飛ばされていく。

 

 その勢いのまま突風を生み出しながら、星村は全速力で駆け始める。

 彼女が放ったシュートは、風を纏う。

 

「マッハウィンド改! とどけぇぇ! 」

 

「今度こそ任せろ! メガトンヘッドG3」

 

 葉若は、ゴッドハンドのオーラによるヘディングシュートでシュートチェインを行った。

 

 それは爆風を起こしながら、フィールド上を暴れ回るように突き進んでいく。

 

 偶然できた2人の連携技であり、単なるシュートチェインではない。

 オーバーライドした結果『ゴッドウィンド』という必殺シュートに近いものとなっていた。

 

「エンパイア・シールド! ……バカな!?」

 

 その勢いは全く止まることはない。

 魔法陣から噴き出る衝撃波を突き破り、追加点が入る。

 

 

 これで2-1だ。

 残り10分を切ったところで雷門中が勝利に近づいた。

 

 

「何かの冗談だろ……これが王者雷門なのか……?」

「化身が…つぶれた……」

 

 西條や屋城が体力を完全に消耗してしまったようで、2人とも交代することとなった。

 帝国の選手たちも、この戦いの勝敗に関係なく全国大会に出られるのだと、頭では理解していたが。

 

「くっ、残り10分、追いついてみせるぞ!」

「「「はいっ!!」」」

 

 勝つためには、まず同点にまで持ち込む必要がある。

 そうすればEXTENDED V GOAL、延長戦になるのではなく、どちらが先に1点を取るかどうかの勝負となる。

 

 雷門の選手たちに、『負けたくない』という気持ちでいっぱいだった。

 不思議と笑顔を浮かべながら、完全な帝国イレブンとして挑む。

 

「みんな油断するな! 帝国はまだ諦めていない!」

「なら、追加点でも狙いにいくか!」

「「「おう!!」」」

 

 雷門の選手たちもまた、海老原(えびはら)梅雨咲(つゆさき)安福(あぶく)春日(かすが)の4人を投入し、残り時間も隙があれば攻め続けるつもりだった。

 

 

 22人がサッカーを楽しむ光景に、スタジアムには歓声が響く。

 

 

『おいアリス、いいのかよ?』

「いや、この予選の段階でデータを取得できたんだ……」

 

「全国大会決勝までに戦術を修正すればいい、か?」

 

 実質的な監督ではあるが、あくまでアリスは学生の身だ。

 話しかけてきたこの男が、臨時のサッカー部顧問である。

 

「お前はまだ予選だからこそ、雷門の選手の分析、及び弱体化を狙っていたようだが」

「……それが何か?」

 

 顧問であっても、選手にアドバイスをしたことはほとんどない。

 アリス自身が求めていないし、これが父からの試練であるからだ。

 

「勝つための手段ではある。だが今年度の雷門中……雷門イレブンは、不完全であるからこそ、進化し続ける」

 

 そう話す男自身も、中学時代に最も進化し続けた。

 今年度の雷門中の彼ら彼女らも、世界に通用するほどの成長をしていくことだろう。

 

「……全国決勝では帝国が勝ちます。俺のシナリオで勝たせるだけです」

 

 進化するのであれば、その進化さえ予測して戦術を組み立てればいい。

 

 帝国学園を優勝させるという野望は変わっていない。

 リベンジに向けてデータを集めるべく、彼はフィールドを真剣に観察し続ける。

 

「そうか。お前自身のサッカーを歩み、そして極めていけばいい」

 

 息子の不破アリスも良い世代に生まれたものだと、その男は笑みを浮かべた。

 

 

 

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