イナズマイレブン 『王者雷門』のヴィクトリーロード 作:ヒラメもち
【雷門中】
FW 野神 葉若
MF 嵐 月影 鬼門 星村
DF 紫雨 遠野 天宮司 赤袖
GK 暖冬屋
【帝国学園】
FW 西條 星見沢
MF 穂村 霊道 元屋敷 本能寺
DF 井野部 江流崎 盟帝央 屋城
GK 陣野
後半も10分ほどが経過し、いまだ1-1で同点の状況が続いていた。
お互いの選手全員が体力を大きく消耗しているが、勝ち越し点を得るべく、攻撃と守備に動き回っている。
そして、帝国側のスローインから再開した。
空中戦には雷門も応戦するが、必殺タクティクス『不思議の森』の霧により、優秀な選手たちがパスミスをしてしまうことすらある。
帝国側の猛攻が続き、西條にボールが渡ってしまう。
そこに、葉若を追いかけることを中断し、屋城が前線まで走ってきている。彼はニヤリと笑みを浮かべた。
「始めるぜ、屋城さん」
「いいよ」
魔槍剣聖クララバニーと城壁巨兵ウォーボーグの連携による『化身共鳴』を発動する。
共鳴現象の一種によって、2人の化身のオーラは高まっていく。
「お前たち、アリスのシナリオでは、まだ温存しておくはずだ!」
「別にいいだろ、これなら葉若風露も守りにくる!」
「葉若風露を潰すっ! 潰すぅ!」
西條が天高く上げてボールに、2体分の化身のオーラを集めていく。
そして自分自身はジャンプする。
「エンプレス・シャドウ!」
オーバーヘッドキックでシュートを放ち、化身は巨大な槍を
対する暖冬屋はゴッドハンドを掲げて、オーラを溜め続ける。
「やったるで。まずはオーラの集約や……」
彼はこの試合で『正義の鉄拳G3』を更に進化させるつもりだった。
先に究極奥義を覚えてしまい、結局は習得できていないが、『マジン・ザ・ハンド』の要領でオーラを右手に込め続ける。
「くっ……」
それには、いつも以上に時間がかかってしまっている。
だからこそ、暖冬屋は大声で叫ぶ。
「手ぇ、貸してくれやぁぁ!」
守備の司令塔として指示するのではなく。
雷門イレブンの仲間を頼ること。
彼のそんな成長に、すでにシュートブロックに動いていた3人は笑みを浮かべた。
「言われなくとも」
「お前が頼むなんてな」
「さっさと作っておけば」
遠野は『ザ・タワ―』、天宮司と紫雨は『スピニングカット』だ。
身体を張ってシュートブロックに入る。
彼らの身体は吹き飛ばされてしまう。
シュートの勢いはほとんど弱まっていないが、ある程度の時間稼ぎはできた。
「化身に勝てるわけねぇだろ! 来いよ、葉若風露!」
「潰すぅぅぅ!」
この試合では、葉若がエースストライカーとして得点を狙わなければならない。
『ずっと待ってくれてるんです、私たちからボールが届くのを』
さっき赤袖がそう言っていたように。
だから暖冬屋たちでゴールを守らなければならない。
自分のために、仲間のために。
「パッと開かず、グッと握って、ダン!ギューン! ドカーン!!」
彼の気迫により、虎が吠えたかのようだった。
ここに来て『正義の鉄拳』を超えた新必殺技を見せる。
「止まれやぁぁぁぁ!!」
握り潰す、噛み砕く、そういう表現が当てはまるだろう。
もし名付けるのなら『ゴッドハンド・タイガー』
これはパンチングではない。
勢いを完全に止め切ったボールは、暖冬屋がしっかりとキャッチしている。
「「なにぃぃぃ!?」」
化身共鳴のシュートを、化身も使えない4人だけで止めきってみせたのだ。
西條や屋城は目を見開いた。
そんな光景に帝国の選手たちも驚いた。
仲間の進化に、雷門の選手たちは喜ぶ。
追い風を受けたかのように、彼ら彼女らは走り始める。
「いったれやァ!!」
全力で腕を振りかぶって、ボールを前線へ投げる。
それには嵐が飛びつくように受け取った。
「「「行かせるか!」」」
彼の目の前には、帝国の選手3人による『ザ・フォート』の巨大要塞がそびえ立つ。
『ヒートタックル』では突破ができないほどの圧力を感じた。
この要塞の奥に、もっと先に、葉若は走り続けている。
「いいぜ! 俺が繋いでやるよ!」
彼の長所である突破力、そこに加速力が合わさった。
まるで稲光のように軌跡が残る。
『ザ・フォート』の砲撃を回避して、巨大要塞を振りきってみせた。
「「「なにっ!?」」」
そのドリブル必殺技は『ライトニングアクセル』、嵐は足にかかった負担を感じながらも、シュートを放つ要領でロングパスを出した。
「頼むぞ! パワプロ!」
「あぁ、届いたぞ!」
葉若がオーラを込めて頭上に掲げたのは、ゴッドハンドの右手だ。
その飛んできたボールにヘディングシュートを放った。
「メガトンヘッドG3!」
「くっ……! どうする……!」
あれは『フルパワーシールド』で止められる威力ではないと予測した。
そんな時に帝国GKの陣野は、必死な表情の仲間たちが見える。
たとえこれが全国決勝でないとはいえ。
「なぜか負けたくないよな、お前たち!」
渾身の力で地面を叩きつけ、魔法陣が地面に描かれる。
この技は全国大会決勝のために隠していた必殺技だが。
「エンパイア・シールド!」
強力なシュートを弾いてみせた衝撃波は、帝国の盾そのものだった。
「どうだ!」
「さすが帝国学園、すごいな!」
葉若の笑顔に影響されたのか、陣野も笑みを浮かべる。
勝ちか負けかの戦いで、いつのまにかサッカーを楽しんでいた。
「データにはない必殺技を隠していた……いや、この試合中に進化しているのか!?」
『どうするんだアリス!』
『あわてるな、ブラザー』と兎に言いながら不破アリスも、この予想外な展開になぜだか頬が緩む。
全国大会決勝で再び戦う時、あれらを打ち破る戦術を組み立てればいい、そう興奮しながら思った。
そして飛んでいったボールは、守備に戻ってきている西條たちに渡りそうだったが。
「このボール、パワプロに繋ぐんだ!」
野神が、空中で後方に飛ばす。
根性を出した月影がそれに飛びついた。
「星村! 頼んだぞ!」
「はい!」
彼女までのパスルートは完璧に空いていた。
そのスピードで、完全に帝国MFの穂村を振りきってみせる。
「だがデータ通りなら、ザ・フォートであれば!」
「「止められる!」」
「ボールをよこせぇ!」
「葉若風露を潰すぅ!」
目の前には巨大要塞、2体の化身が揃った。
5人がかりで星村の行く手を
「ナオさん、お願いします!」
赤袖に大きな声で頼まれ、星村は笑顔で頷いた。
彼女にとって、幼馴染で、親友で、ずっと仲良くしたい子だ。
その信頼に
「うりゃぁぁぁ!」
星村が両腕を振るえば、まるで台風かのような竜巻が引き起こされる。
それは彼女のドリブルの道であり、そこに立ち入ることは決してできない。
「風穴ドライブ!」
一気にくぐり抜けて、何もかも突破する。
「「化身が!?」」
「「「たった1人の必殺技に!?」」」
瞬間的な爆風により、一瞬『不思議の森』の霧が吹き飛ばされていく。
その勢いのまま突風を生み出しながら、星村は全速力で駆け始める。
彼女が放ったシュートは、風を纏う。
「マッハウィンド改! とどけぇぇ! 」
「今度こそ任せろ! メガトンヘッドG3」
葉若は、ゴッドハンドのオーラによるヘディングシュートでシュートチェインを行った。
それは爆風を起こしながら、フィールド上を暴れ回るように突き進んでいく。
偶然できた2人の連携技であり、単なるシュートチェインではない。
オーバーライドした結果『ゴッドウィンド』という必殺シュートに近いものとなっていた。
「エンパイア・シールド! ……バカな!?」
その勢いは全く止まることはない。
魔法陣から噴き出る衝撃波を突き破り、追加点が入る。
これで2-1だ。
残り10分を切ったところで雷門中が勝利に近づいた。
「何かの冗談だろ……これが王者雷門なのか……?」
「化身が…つぶれた……」
西條や屋城が体力を完全に消耗してしまったようで、2人とも交代することとなった。
帝国の選手たちも、この戦いの勝敗に関係なく全国大会に出られるのだと、頭では理解していたが。
「くっ、残り10分、追いついてみせるぞ!」
「「「はいっ!!」」」
勝つためには、まず同点にまで持ち込む必要がある。
そうすればEXTENDED V GOAL、延長戦になるのではなく、どちらが先に1点を取るかどうかの勝負となる。
雷門の選手たちに、『負けたくない』という気持ちでいっぱいだった。
不思議と笑顔を浮かべながら、完全な帝国イレブンとして挑む。
「みんな油断するな! 帝国はまだ諦めていない!」
「なら、追加点でも狙いにいくか!」
「「「おう!!」」」
雷門の選手たちもまた、
22人がサッカーを楽しむ光景に、スタジアムには歓声が響く。
『おいアリス、いいのかよ?』
「いや、この予選の段階でデータを取得できたんだ……」
「全国大会決勝までに戦術を修正すればいい、か?」
実質的な監督ではあるが、あくまでアリスは学生の身だ。
話しかけてきたこの男が、臨時のサッカー部顧問である。
「お前はまだ予選だからこそ、雷門の選手の分析、及び弱体化を狙っていたようだが」
「……それが何か?」
顧問であっても、選手にアドバイスをしたことはほとんどない。
アリス自身が求めていないし、これが父からの試練であるからだ。
「勝つための手段ではある。だが今年度の雷門中……雷門イレブンは、不完全であるからこそ、進化し続ける」
そう話す男自身も、中学時代に最も進化し続けた。
今年度の雷門中の彼ら彼女らも、世界に通用するほどの成長をしていくことだろう。
「……全国決勝では帝国が勝ちます。俺のシナリオで勝たせるだけです」
進化するのであれば、その進化さえ予測して戦術を組み立てればいい。
帝国学園を優勝させるという野望は変わっていない。
リベンジに向けてデータを集めるべく、彼はフィールドを真剣に観察し続ける。
「そうか。お前自身のサッカーを歩み、そして極めていけばいい」
息子の不破アリスも良い世代に生まれたものだと、その男は笑みを浮かべた。