イナズマイレブン 『王者雷門』のヴィクトリーロード   作:ヒラメもち

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第4章 フットボールフロンティア本戦
第1話 円堂ハルの特訓


 

 フットボールフロンティアの全国大会はすでに始まってしまっている。 

 山奥でもスマホが使えてよかった。

 

 雲明がいる南雲原は、あの京前嵐山に勝利した。

 休憩中に試合映像を見れば、2人も強力な化身使いがいたのにな。

 

 準決勝に進んだ南雲原が当たるのは、あの帝国学園だ。

 

 そこには蓮さん以上の司令塔がいるらしい。雷門と帝国の試合は記録映像で観たけど、帝国学園は1つしかタクティクスを使わなかった。たぶん全国大会まで温存しているんだろう。

 

 でも雲明たちなら、きっと決勝まで上がってくるはずだ。

 

「ハル~ おにぎり持ってきたよ~!」

 

「あっ、いつもすみません!」

 

 この淡路島で出会った堀江(ほりえ)さんが、俺の恩人だった。

 

 俺は長崎から帰る途中で、新幹線を途中で降りてバスに乗り換えて、思いつきのまま特訓場所に選んだ。少しでも早くサッカーに復帰しようと、とにかく無我夢中だった。小さなスーパーであれこれと買い込んで、そこからずっと山に籠ってる。

 

 そこまでは良かったんだけど、スマホの充電が切れちゃってた。

 つまり3日くらい音信不通な状態だったわけだ。当然のように(はは)様は超ブチギレて、とっちゃんにも『さすがに連絡は入れろよ』と強く叱られた。

 

 ナオさんや蓮さんたちからもSNSで大量のメッセージが来ていて、再会したら全力で謝らないといけない。

 

 俺も反省して、こうしてご飯を食べる時間を使って、みんなにメッセージを返信していく。

 雷門も偉仁銘文堂を相手に圧勝してからは、準決勝で当たる白恋(はくれん)との試合に向けて特訓しているらしい。

 

「毎日毎日、ほんとうに大丈夫なのかい?」

 

「大丈夫、これくらいの特訓、とっちゃんと一緒にやってたから!」

 

 ここにはタイヤは持ってきていない。

 でも大自然とボールがある。

 

 小さな滝がある崖を登ったり、冷たい水の中でキックしたり、岩を背負って筋トレしたり、複雑な森をドリブルしながら進んだり。

 

「次元が違うというか……若いからなのかねぇ」

 

「堀江さんも元気で若々しいですよ」

 

 玉ねぎ農家な堀江さんは、大量の玉ねぎの入ったカゴを背負って、ここまで歩いてきてた。なんなら石に座ってる今でさえカゴを背負ってる。

 

 畑が遠くて近道してるらしいけど、ここの山道は歩き回るだけでも足腰がすごく鍛えられるよな。

 

「えっと、また何か手伝うことがあったら言ってください」

「いいやぁ、だいぶ助かったよ。おかげで収穫もそろそろ終わる頃だよ」

 

 さすが淡路島だと思った。

 玉ねぎの量が異次元だったもんな。

 

「よしっ、俺は特訓に戻ります!」

「ウフフ、楽しそうだねぇ。がんばりな」

 

 楽しそう、か。

 サッカーを楽しんでいるって、こういう気持ちなんだな。

 

 楽しみにしていることもある。

 

 雲明と決勝でサッカー対決すること。

 またナオさんや蓮さんたちと一緒にサッカーすること。

 

 その2つを目指して。

 

「やるぞ~~!」

 

 靴が濡れることなんて気にしないで、川の中にバシャバシャと入っていく。

 

 水の冷たさは、怪我をした右足でも感じられる。

 もう今は走れないなんてことはない。

 

 残る目標は、全国大会の決勝までにシュート感覚を取り戻すだけだ。

 

「ひとつ! ひとつ!」

 

 気合を入れるべく声に出しながら、1つ1つのシュートを放つ。

 水をザブーンと滝に向かって飛ばしていく。

 

「ひとつ!ひとつ!」

 

 滝が噴き出ている場所まで届かせるよう飛ばす。

 あそこがゴールで、てっぺんだ。

 

「ひとつ!ひとつ!」

 

 『サッカーができない』と診断された。

 もう諦めようかと思った。

 

「ひとつ!ひとつ!」

 

 ナオさんに応援されて。

 雲明と約束して。

 

 1歩ずつ1歩ずつ進んできた。

 

「ひとつ!ひとつ!」

 

 骨のヒビだったかなんだか、もう忘れるくらいに特訓を続けてきた。

 

 そうか、淡路島の自然パワーが、俺に力を貸してくれているんだ。

 だからどんどん調子が戻ってきた。

 

 ナオさんが教えてくれて、パワプロさんが言っていたように『悩むよりまず特訓だ!』、まさしくそうだと思う。

 

「……ひとつ!……ひとつ!」

 

 汗まみれで、泥くさくて、必死で。

 

 リハビリの途中で転ぶこともたくさんあった。

 誰も見てないのにカッコわりぃなとも思った。

 

「……ひとつ!……ひとつ!」

 

 やっとわかってきた。

 昔の俺とアイルが、なんでサッカー楽しんでいたのかを。

 

―――ハル、お前がいたからサッカーやれたんだ。俺はサッカーできなくなったけど。お前に託していいか、俺のサッカーも!

 

 俺にとってサッカーは当たり前なものだ。

 

 ずっと側にあるようなものだった。

 でもそれは、『円堂守の息子』だからじゃない。

 

 サッカーってすごく熱血なやつらしいぞ。

 

「ひとつ!! ひとつ!!」

 

 たとえサッカーができなくなっても、サッカーは追いかけてくる。もしサッカーをつまらなく思っていても、サッカーが楽しませようとしてくる。

 

 もう自分でも何言ってるのか分からないけど。

 

 サッカーが俺をメラメラと燃え上がらせるんだ。

 アイルが側にいてくれたように、サッカーも側にいてくれる。

 

「ひとつ!! ひとつ!!」

 

 どうしてもサッカーがやりたい。

 やりたくって、やりたくって、たまらない。

 

 『サッカーやろうぜ』って、サッカーが誘ってくる。

 

「ひと~~~つ!!!」

 

 水しぶきを天高く上げる。

 絶対に、てっぺんまで届かせるんだ。

 

 この真っ暗闇から抜け出して、太陽まで飛び込んでいくように。

 

「スカイウォーク! そこから ファイアトルネード!」

 

 シュートを放ったはずだけど、ジュッという音がした。

 

 あれ?

 一瞬で水しぶきが全部消えてしまった。

 

「うわああああ!?」

 

 バシャ~~ンと滝壺に落ちてしまって、なんとか水中から慌てて顔を出す。

 

「ぷはぁ!」

 

 時間の許す限り特訓しすぎてるせいなのか。

 めちゃくちゃやってて、めちゃくちゃ楽しくなってきた。

 

 やっぱりサッカーって楽しいや。

 

 しかも。

 

「できるかも! 俺だけの、『円堂ハル』だけの新必殺技が!!」

 

 決勝までには戻ってくる。

 だから待ってて、雲明たち、そして雷門のみんな。

 

 

 

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