イナズマイレブン 『王者雷門』のヴィクトリーロード 作:ヒラメもち
僕たち南雲原はサッカー部を結成して、フットボールフロンティアに参加して、北陽学園と合併して。
急成長し続けて、全国出場まで果たすことができた。
しかも今はトーナメントの決勝まで勝ち残っている。
化身使いのいる京前嵐山中、天才監督の率いる帝国学園、どちらも凄く強敵だった。みんなが全力で立ち向かってくれて、ギリギリの勝利による突破だ。
決勝で当たるのは雷門か白恋かだけど、高確率で雷門だろう。
そう予想できてしまうほど、近年の雷門の強さは
だから僕たちは、あの帝国学園に勝利したことを、いつまでも喜んで浮かれている余裕はない。
幸いにも、このフットボールフロンティアにおいて、1試合ごとにある程度の期間が設けられている。それは少年少女サッカー大会が、休日にある大イベントだからだし、この期間の選手の成長を期待されているからだろう。
みんなには久しぶりの休息を取ってもらって、夕方には宿舎コテージのリビングに集めたけど。
あからさまにメンバー全員が緊張していた。
「知っての通り、明日には雷門と白恋の試合があります」
「あぁ、
そんな桜咲先輩の質問に、僕は頷いた。
最近は帝国学園の対策練習に集中していて、僕以外のメンバーは雷門対策のために動くことができていなかったからだ。
「雷門にリベンジするのは楽しみ、なんだけどさ……」
「1軍の再構成により、いまだ完成しきっていないタイミングですら、完璧に押し潰されてしまったからな」
「えっと、あの時とは違って、皆さんもいますし…」
北陽だったメンバーは、スプリング杯の第1回戦で雷門と戦ったことがあり。
「円堂ハルはともかく、葉若風露がいる」
「手加減されて、あのザマだったものな」
「そりゃ私たちだって、あの時より強くなってるけど…」
南雲原の初期メンも、怪物2人を相手したことがある。
力比べをして、僕たちが勝つ見込みはない。
これは猫が、虎と力比べをするようなものだろう。
猫には、猫の個性を活かして戦うしかない。
「予選の間、雷門を苦戦させた中学は、海王学園と帝国学園だけね」
「化身使いもいてムチャクチャ盛り上がってたべ!」
「しかも不破アリスの率いる帝国学園に助っ人で、京山嵐山の化身使い2人ですからね。単純な戦力だけで考えれば、最高クラスのものでした」
マネージャーたちがそんな話をしたことで、みんなが木曽路を見た。
「化身使い1人なんでしょ。俺が抑えてみせますよ」
「言うじゃねぇか」
以前までの木曽路なら、そんな自信満々な表情はしていなかっただろうな。
そんな成長は喜ばしいことだけど。
「いえ、実質的に2人以上と想定しておくべきです」
「マジかよ!?」
「誰か隠してやがるのか?」
「昨日、不破アリスの言っていた『ソウル』のこと?」
僕と木曽路と千乃先輩に、アリス君が教えてくれたヒントだ。
―――雷門に本気で勝つつもりなら、葉若風露には注意するといい。彼が使うのは『ソウル』と呼ばれ、化身以上のオーラの塊、そして化身キラーと言っていい。あれでいまだ未完成のようだけどね。
確かに雷門と帝国の試合において、DF型の化身をいとも簡単にシュートで貫いていた。
「雷門と白恋の試合でも、それを
「それ、相当の能力差がないと無理だって……」
「言ってたわよね……」
古道飼君や忍原先輩たち、他にも何人かが青い表情をする。
「というわけで、明日の観戦をする前に、雷門の主力メンバーのデータを共有しておきます。しかし、試合中にどれほど想定外の進化を見せるかはわかりません」
今年度の雷門イレブンは、たとえ完璧な分析ができていても倒すことは難しい。あの不破アリスが率いる帝国と助っ人がすでに試したことだ。
「怪物がまだ進化を残してるのかよ」
「まるでドラゴンボールのフリーザだべ」
僕たちも個性のあるメンバーが集まっているけど、雷門は同等くらいに個性的だ。全員のデータを頭に叩き込み、試合中の成長を事前予測して、対策を立てなければならない。
主力級のメンバーが多すぎて、『ブロック・ザ・キーマン』をする余裕がないだろう。というか体力モンスターな葉若風露を対象に、あの必殺タクティクスは相性が悪い。
例年までの雷門ならば分業制というか、もっと攻守それぞれの隙は多かったんだけどな。
月影蓮
ポジション:MF
必殺技:プレストターン、アクロバットキープ、バハムートクラッシュ
概要:雷門の中盤でまとめるキャプテンであり、攻撃陣の司令塔も担う。1人のプレイヤーとして、パス精度やボールキープ技術も高く、必殺シュートまでFW並みのパワーを持っている。
野神有
ポジション:FW
必殺技:ひとりワンツー、バハムートクラッシュ、炎の風見鶏
概要:数少ない3年メンバーであり、多くの経験を踏まえて冷静なプレイをするストライカーである。去年度には『ドラゴンスレイヤー』を使用して優勝に導いたが、現在は精度が安定しやすいバハムートクラッシュを多用しているようだ。
嵐大佑
ポジション:MF/FW
必殺技:ヒートタックル、ライトニングアクセル、バハムートクラッシュ
概要:筋肉質な体格により、正面からの突破力が凄まじい。ストライカーとしての実力も兼ね備えており、積極的にシュートも狙ってくる。『ワイバーンクラッシュ』を使って、葉若と連携技を使用することもある。
星村ナオ
ポジション:MF
必殺技:そよかぜステップ、疾風ダッシュ、スカイウォーク、風穴ドライブ、マッハウィンド
概要:女子選手であり、多種多様なドリブル技を使い分けながら、陸上部クラスのスピードも併せ持つ。葉若との連携技で『ゴッドウィンド』を使用できるため、彼女を起点とする攻撃も警戒しなければならない。
鬼門悟
ポジション:MF
必殺技:イリュージョンボール、皇帝ペンギン2号、エアーバレット
概要:あまり個人で目立つ選手ではないものの、必殺タクティクスなど連携には必ず関わってくる選手である。マイペースで調子をほとんど崩すことなく、そんな彼が中盤の安定を支えていることは確かだ。
遠野善弥
ポジション:DF
必殺技:ザ・タワー、フューチャーアイ、そよかぜステップ
概要:とことん理論で守るタイプの3年であり、相手メインストライカーの妨害は彼が指示をしているようだ。その反面、型破りな力押しには弱かったのだが、シュートブロックを積極的に行うなど、今年度は改善を見せてきた。
紫雨雄介
ポジション:DF
必殺技:コイルアッパー、ディメンションカット、スピニングカット
概要:ストライカー1人をマークする妨害が大得意なようで、ボール自体を遠隔操作して奪う必殺技は厄介である。指示されれば確実にこなそうとするため、守備に重要な存在となっている。
天宮寺嶺
ポジション:DF
必殺技:ツナミブースト、なみのりピエロ、スピニングカット
概要:身体能力が高く、必殺技なしのフィジカルによる守備も行う。シュートブロックでも身体を張って止めにくるガッツを見せる。彼のロングシュートを起点とするカウンター攻撃も要注意だ。
赤袖茉莉
ポジション:MF/DF
必殺技:そよかぜステップ、ディープミスト、クロスドライブ、『戦旗士ブリュンヒルデ』
概要:化身使いの女子選手であり、守備陣の司令塔も担う。冷静に化身を使うタイミングを見極めてくるため、意図的に体力を消耗させることは難しいだろう。彼女自身のボールキープ技術によって、前線にまでボールを繋ぐこともできる。
暖冬屋哉太
ポジション:GK
必殺技:熱血パンチ、ゴッドハンド、正義の鉄拳、ゴッドハンド・タイガー
概要:高身長かつ筋肉質な体格をしていて、今年度の雷門の守護神である。キャッチ技術が同年代で最高クラスに高く、飛距離が出るスローイングによるカウンター攻撃も警戒しなければならない。
葉若風露
ポジション:FW/DF
必殺技:ファイアトルネード、クイックドロウ、メガトンヘッド、マキシマムファイア、『ソウル』
概要:空中でも地上でも様々なシュートにチェインでき、エースストライカーとして優秀な実力がありながら、守備陣を支えるリベロとして動くこともできる。体力がモンスター級の彼をマークし続けたとすれば、鬼ごっこをするかのように逃げ回られるだろう。現時点で1試合に1度きりのようだが、不完全ながら『ソウル』を扱うこともでき、圧倒的な個人技によって不利な流れを変えてきた。
円堂ハル
ポジション:FW
必殺技:ファイアトルネード
概要:ノーマルシュートを放つだけで必殺技の威力になっていた。守備に関しても天才的な動きを見せていた。しかし現在は『再起不能』という噂もあって、試合にも出場していない…が……
「あの、どうして円堂ハルのことまで?」
「復帰など、何か情報はつかめたの?」
簡潔的にだけど、雷門の選手データを映像付きで見せ終わった。
この重ッ苦しい雰囲気の中で、千乃先輩たちがそんなことを尋ねてきた。
「円堂ハルの行方は雷門の生徒たちも把握していないらしいべ」
暇そうだった万部先輩に調べてもらっていたけど、やっぱり雷門には登校もしていないようだ。ハルとは連絡先の交換なんてしていなかったし、一体どこで特訓をしているんだろうな。
「再起不能どころか…」
「行方不明というわけか…」
「これは決勝戦にも出てこない可能性大! 今年はチャンスだべ!」
途中から協力してくれている万部先輩は、大はしゃぎだけど。
決勝で起こるサプライズだってありえるんだ。
それに無警戒だったなら、南雲原は大敗してしまうだろう。
―――雲明、約束する。俺は、必ず戻る。
ハルは約束したんだ。
諦めずに戻ってくる、絶対。
「いえ、偉仁銘文堂の試合、ベンチは4人だけだったらしいですよ」
僕がこの事実を伝えれば、どう思うか心配だったけど。
みんな複雑そうな表情だな。
「
「それもう、復帰予告じゃない?」
「えっと、順調に快復かもしれませんね」
「見ろ、うちのキャプテンは笑ってやがるぞ」
「だな。葉若風露と円堂ハルが揃った雷門こそ」
「ラスボスって感じだよな」
「あっ、やば、興奮と恐怖で、泣けてきた」
「雷門には、全員でリベンジしなければならないな」
南雲原は、まず技術やフィジカルで雷門に負けている。
気持ちでは同等くらいだろうか。
でも、僕たちのチームワークは日本一だって信じたい。
ゼロから立ち上がって。
てっぺんを目指して団結して。
一緒にサッカーをやってきたんだ。
「『春雷』を超える新しい連携技が必要か?」
「むっ、帝国にも通用したシュートなんですけど?」
「新しいタクティクスも必要だろう」
「帝国に使ったやつは研究されそうだからなぁ」
「サイドからの攻撃も予測してフォーメーションを立て直さないとね」
「いや、それでは1点集中で来る攻撃を防ぎきれないだろう」
ラスボスを前にして、みんな焦りはある。
でも『勝ちたい』って気持ちはそれほどまでに強い。
だからこそ、監督として僕がやるべきことは。
「みんな、聞いてください」
バラバラな話し合いを中断して、こちらを向いてくれる。
それはとても重い信頼の瞳だった。
「残りの練習期間ですが、合間を見つけて、みんなにはちょっとしたレクリエーションをやってもらいます」
「「「レクリエーション?」」」
みんなは『そんな場合じゃない』、『もっと練習だ』って思うかもしれないけど。
「せっかくコテージに泊まっているんです。外食や軽食は飽きてきました。そうですね、今日のところは、カレーを作ってもらいましょうか」
「カレーだと?」
「そういや、なんか合宿してるみたいだよな」
「カレーくらいレトルトで食えばいいだろ」
「でもルー買って、ちゃっちゃっとできない?」
「先輩の手料理……じゅるり……」
「何を言う。スパイスから吟味すべきだ」
そんな日常的なテーマに、味や具材など、議論が始まる。
さっきまでバラバラな議論だったのに。
みんなで1つの料理を作り上げる、それってサッカーにも通じるものがあるんじゃないだろうか。
「では、僕が美味しいと思えるカレーを作り上げておいてください。僕は千乃先輩たちと、明日からの特訓メニューを考えておきますから」
僕の言葉には素直に頷いてくれたけど。
まだメンバーで完璧な団結をするには時間がかかりそうだ。
まさしく王者雷門は、究極のラスボスだろう。
ベンチにいる僕の指示でタイムラグがあれば、必ず隙になる。
南雲原イレブンの誰もが、最初から最後まで全力を発揮しきって。
チームでパーフェクトなハーモニーを見せて、やっと勝機が生まれるくらいだろう。
自分の身体ではもうサッカーができない僕をこんなところまで連れてきてくれた。
マジで感謝してるからこそ。
みんなで勝つんだ、絶対。
どこかでハルも諦めずに頑張っているはずだ。
負けてられないな。