イナズマイレブン 『王者雷門』のヴィクトリーロード 作:ヒラメもち
すでに南雲原中は決勝進出を決めていた。
つまりあの帝国学園に勝ったということだ。
複数の必殺タクティクスに対して、的確な必殺タクティクスをカウンターで用意していて、笹波雲明という司令塔の実力を見せつけた。
他にもDFの古道飼などが見せている成長だとか。
北陽との合併した直後なのに連携の完璧さとか。
今年の4月初めにサッカー部がなかったなんて、信じられないほどだ。
あの西條と屋城という化身使い2人が所属する中学にも勝っている。大番狂わせ、下剋上、ダークホース、今年度の南雲原中はそんな言葉が合っていた。
「そして
「そうそう、絶対に勝ってみせるぞ」
「何かご用でしょうか、
左隣には、白髪の美少女がいて。
右隣には、白髪の超絶美少女がいて。
「まつりさんに姉妹がいたの?」
「いませんよ」
「初対面ですねぇ」
どうやら違ったらしい。
というか思いっきり
「ドドンパッ!?」
「え、なに、鶴仙流の人?」
そんな女子は驚いた様子を見せるけど、試合前に混じって何をしにきたんだろうか。
「朱鞠ほろか、白恋のキャプテンだな」
蓮にも教えられて思い出した。
キャプテンマークだって付けているし。
「気になるチームにこっそり混じるというフットワークの軽さ、噂には聞いていたが」
「すごく
「ナオさん、それな」
「えへへ、その通りです! ライモーンさん!」
たぶん俺たちのことなんだろうな。
天才となんとかは紙一重というか、高次元な行動をしてくるというか。
「なかなかよい空気は感じましたが、しかし分析が足りませんね。まあそれは試合で確認いたしましょう。ドドンパッ!」
「「ドドンパ~!」」
朱鞠さんが離れていこうとしたから、俺とナオさんで手を振ってみたけど、その『そうじゃないんだよなぁ』って顔はなんだよ。
「なんやったんや、あいつ」
「なんか個性的な子だったね」
「ああいうタイプは読めないな」
「すごく強敵だと思います!」
そういや、うちにもいたな。
彼女と同等以上に個性的な女子な、木下さん、自称シグドママ。
全国大会からサブGKとして、蓮が1年の中から選んだ。
確かな実力があり、まだ公式試合の経験がないジョーカーでもある。シグド戦記が大好きだったり、サッカー棟を押す特訓をしたり、きっとこの子も天才肌な努力家なんだろう。
「あれでも相当の司令塔だ。注意しておけ」
「よしっ、みんなで白恋の鉄壁を破るぞ!」
「「「おう!」」」
遠野先輩や蓮の言葉に頷いて、俺たちはポジションに付いた。
もしかすると俺たちを油断させる目的だったのかもしれないな。
お互いにFWの位置だから、目の前に暗黒寺のやつが立っている。
「久しぶりのストライカー対決か」
「……この日をずっと待っていた」
だいぶ口数が減ったようだな。
いや、その瞳はメラメラと熱く燃え
なぜ雷門を離れたのか、その頬の古傷は何なのか、どういう特訓をしてきたのか。
聞きたいことはたくさんあるけど。
サッカーで語るとしようか。
****
【雷門中】
FW 野神 葉若
MF 嵐 月影 鬼門 星村
DF 紫雨 遠野 天宮司 赤袖
GK 暖冬屋
「まるで暗黒寺のワントップだな」
「やはり6人による守備陣形か」
「FW組を信用しとるっちゅうわけや」
【白恋中】
FW 北平 暗黒時 氷英坂
MF 村住 朱鞠 松香
DF 丸間 風蓮 熊森 戸望
GK 摩周
「……勝負だ」
「や~ この空気は熱いですねぇ」
「勝って甘いもの食べたいよね~」
雷門がサイドからも攻撃できるように、お互いの位置を広めに取っているフォーメーションに対して。
白恋は6人がゴール寄りに固まっていて、キャプテンである朱鞠と他選手が遠く離れていた。それは全国大会第1回戦でも見せていた通りのフォーメーションだ。
だからこそ雷門も対策を用意してきている。
ホイッスルが鳴り、雷門側のボールでキックオフとなる。
野神や葉若は定石通りに、月影に一度ボールを託した。
今の雷門イレブンのサッカーは、中盤のスピードや突破力を活かす。
彼ら彼女らはあちこちに分散し、ドリブルとパスを使い分けながら攻め込む。
「ボールをよこせぇ!」
「早速きたか」
そこに切り込むように暗黒寺は単騎で、速攻をしかけてきた。
月影は嵐に向かってパスを出すが。
「おらぁ!」
「なにっ!?」
暗黒寺は筋肉質な身体で勢いよく飛びつき、パスカットを行う。彼が出ていた公式試合の両方で、パワー方面はともかく、これほどまでのスピードは見せていなかった。
中盤に戻ってきていた葉若と、暗黒寺が競り合う。
「どういう特訓してたんだか」
「雪山を走って登ったこと、ねぇだろ!」
彼と競り合いを続けていた葉若は驚かされた。
暗黒寺が、後方の朱鞠にパスを行ったからだ。
雷門にいた時と違って、明らかにチームメンバーを信頼している証拠だった。
「とくとご覧あれ! 『絶対障壁』!」
朱鞠が手を掲げれば、後方の6人が集団で動き始める。
6人で陣形を組み、敵の進行を
それが近年の白恋中が行う基本戦術であり、必殺タクティクスだ。
DFや守備的MFたちの連携により、まさしく氷壁のようなディフェンス力を誇っているが。
「ライモーンさんには、ごり押しが1番!」
「「「いちば~ん!」」」
今年度の白恋には、極寒の地で鍛えたフィジカルの強さ、優れた司令塔による連携、有能なエースストライカーがいる。
試合開始早々、『絶対障壁』を攻撃として応用してきた。
「あのまま突っ込んでくる気か!?」
「あいつら、何を特訓してるかと思えば」
笑顔を浮かべた暗黒寺は前線まで走っていき、葉若はそれを追いかけた。
最終的にシュートを放つのはやはり白恋のFW組だろう。
特に、化身使いである暗黒寺は、白恋で最も強力なシュートを持っている。
「側面から狙うぞ!」
「私たちで暗黒寺君をマークします!」
雷門の予想に反して、白恋は全員攻撃を始めていた。
個々の技術ならば雷門が上ではあるが、集団と集団のぶつかり合いとなれば、それは連携重視のサッカーをしてきた白恋が有利となる。
『絶対障壁』の陣形は、少しずつゆっくりでありながら、着実にゴールに迫っていく。まるでボールが氷山に隠されているかのように、雷門の選手たちは攻めあぐねていた。
「向こうのキャプテンだけは自由に動き回ってそうやで!」
「わかった! 俺が仕掛ける!」
フィールドを見渡していた暖冬屋に伝えられ、月影自身で朱鞠をマークに向かった。
「ドドンパッ! いい読みですねぇ」
朱鞠は緩やかにパスを出したが。
「なぜ、このタイミングでこちらに向かってパスを?」
月影は思わず、そのボールをパスカットの要領で取ってしまう。
だが、それこそがわずかな隙となる。
朱鞠は範囲的に地面を凍らせてから、アイススケートの様に滑り始めた。
それは歴代の白恋選手が使うブロック技であり。
「アイスグランド!」
「くっ…そういうことか」
地面を踏んだ衝撃で氷が発生して、月影が一瞬とはいえ凍りづけとなってしまった。
「しかもゴール空いてますねぇ!」
朱鞠は両足でボールを挟むように囲って回転し、冷気を注入することでボールは氷を纏う。
白恋に伝統的に受け継がれ、伝説の必殺シュートの1つだ。
彼女は回転しながら浮かんだボールに蹴りこんだ。
「エターナルブリザード!」
そのシュートの速度が予想以上であり、『ゴッドハンド・タイガー』の発動は間に合わないが。
「正義の鉄拳G3!」
ゴッドハンドのオーラを握りこみ、地面を強く踏み込んで、回転する拳で立ち向かった。
ボールに触れた瞬間、ゴッドハンドのオーラが凍り付いていくが。
「なんぼのもんじゃい!」
そのパンチング技は、ミサイルかのように、オーラが手元から離れていくものだ。
それはこの展開におけるメリットでもあり。
「ドドンパリ~ンってわけです!」
ボールが弾かれることは、デメリットでもあった。
「礼は言わねぇぞ!」
「決めちゃってください!」
暗黒寺はそのチャンスを見逃さない。
背中から紫のオーラが
「『炎魔ガザード』!!」
その手のひらで天高く飛び、ファイアトルネードを超える威力の炎の必殺シュートを放つ。
「爆熱ストーム!」
本人のシュート力の向上も合わさって、『炎のエースストライカー』としての成長を見せていた。
それに対して、全速力でゴール前に戻ってきた葉若は、地面を削りながら体勢を整える。
「勝負だ! メガトンヘッドG3!」
ゴッドハンドのオーラを額に込めて、ヘディングの要領でシュートに立ち向かうが。
「ぐあぁ!?」
「どうだ!!」
オーラは粉々に砕かれ、そのままシュートがゴールに向かっていく。
暗黒寺は『勝った』と思い、彼に向かって拳を突き出した。
だが、シュートの威力は弱まっている。
「ここは熱血パンチで……ッ!」
再び暖冬屋が拳を構えるが、その前に少女たちが飛び込んでくる。
「うりゃああ!」
「えいっ!」
両左右からボールを挟みこむようなツインシュートで、シュートを打ち返した。そのボールはイナズマを纏ったかのようだったが、それも一瞬のことでボールは転がっていく。
そして、反動を受けた星村と赤袖も地面に伏せてしまう。
「3人とも! 助かったで!」
そのボールをクリアするべく、暖冬屋がキックで遠くに飛ばした。
葉若と星村と赤袖は、彼にグッジョブを見せて立ち上がる。
その光景を一瞥した暗黒寺はボールの行方を追いながら、追撃をするべく動き始めるが。
ボールは月影がキープしてから、オフサイドにならない位置にいる野神にパスを行っていた。
「やべっ!? みんなまもれぇ~!」
「あいつ考えなしかよ!?」
DFすら前線に来る全員攻撃だ。
朱鞠が率いる白恋は、化身シュートに対して、ここまで雷門に粘られるとは予想外だったからだ。
「暗黒寺のやつ、楽しそうだな」
「フォローが早いですね」
「私たちも行くよ!」
葉若たちもカウンター攻撃に参加するべく、暗黒寺を追いかけた。
「考えなしの全員攻撃に思えて、厄介だな」
ドリブルをしている野神から、ゴールまでまだ距離がある。
バハムートクラッシュでは威力減衰が大きい。
追いかけてくる白恋の選手たちのスピードはとても速く、このままドリブルで進んでいれば追いつかれるかもしれない。
ならば、全国大会に向けて特訓していた連携必殺技を使う。
去年度は野神にとっての先輩と使っていたが、それは次代に継承されている。
「あれをやるぞ」
「おう!」
野神は、並走してきている嵐と頷き合った。
彼らが同時にボールを蹴り上げてから、上下で挟み込むようにキックを行う。
蹴りこむボールからは炎の翼が出現した。
「「炎の風見鶏!」」
「……やれる」
そのシュートを前にしても、白恋GKの摩周は冷静だった。
「アイスブロック」
氷を纏った手で、ボールをカチコチに凍らせる。
シンプルな必殺技ではあるが確実に止めてみせた。
ボールを持った彼はゆっくりと、白恋がフォーメーションを立て直す様子を見る。キャプテンたちは集団で破天荒なサッカーをするため、そんな時間稼ぎは有効であった。
「絶好のシュートチャンスだったが」
「ボールは運べたんだ。このまま攻め続けるぞ」
嵐や野神も、カウンターを警戒してそれぞれ選手のマークについていく。
暗黒寺というエースストライカー、朱鞠という司令塔が率いる集団サッカーは、非常に強敵だが。
今の雷門は、それで諦めるようなメンバーではなかった。