イナズマイレブン 『王者雷門』のヴィクトリーロード   作:ヒラメもち

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第3話 雷門vs白恋(①)

 

 すでに南雲原中は決勝進出を決めていた。

 つまりあの帝国学園に勝ったということだ。

 

 複数の必殺タクティクスに対して、的確な必殺タクティクスをカウンターで用意していて、笹波雲明という司令塔の実力を見せつけた。

 

 他にもDFの古道飼などが見せている成長だとか。

 北陽との合併した直後なのに連携の完璧さとか。

 

 今年の4月初めにサッカー部がなかったなんて、信じられないほどだ。

 

 あの西條と屋城という化身使い2人が所属する中学にも勝っている。大番狂わせ、下剋上、ダークホース、今年度の南雲原中はそんな言葉が合っていた。

 

「そして(むか)えた準決勝では、暗黒寺修也という、かつての仲間が、我々の敵として立ちはだかったのであった」

 

「そうそう、絶対に勝ってみせるぞ」

「何かご用でしょうか、朱鞠(しゅまり)ほろかさん」

 

 左隣には、白髪の美少女がいて。

 右隣には、白髪の超絶美少女がいて。

 

「まつりさんに姉妹がいたの?」

「いませんよ」

「初対面ですねぇ」

 

 どうやら違ったらしい。

 というか思いっきり白恋(はくれん)中のユニフォームを着た女子が混じっていた。

 

「ドドンパッ!?」

「え、なに、鶴仙流の人?」

 

 そんな女子は驚いた様子を見せるけど、試合前に混じって何をしにきたんだろうか。

 

「朱鞠ほろか、白恋のキャプテンだな」

 

 蓮にも教えられて思い出した。

 キャプテンマークだって付けているし。

 

「気になるチームにこっそり混じるというフットワークの軽さ、噂には聞いていたが」

「すごく馴染(なじ)んでたね~」

「ナオさん、それな」

 

「えへへ、その通りです! ライモーンさん!」

 

 たぶん俺たちのことなんだろうな。

 天才となんとかは紙一重というか、高次元な行動をしてくるというか。

 

「なかなかよい空気は感じましたが、しかし分析が足りませんね。まあそれは試合で確認いたしましょう。ドドンパッ!」

「「ドドンパ~!」」

 

 朱鞠さんが離れていこうとしたから、俺とナオさんで手を振ってみたけど、その『そうじゃないんだよなぁ』って顔はなんだよ。

 

「なんやったんや、あいつ」

「なんか個性的な子だったね」

「ああいうタイプは読めないな」

 

「すごく強敵だと思います!」

 

 そういや、うちにもいたな。

 彼女と同等以上に個性的な女子な、木下さん、自称シグドママ。

 

 全国大会からサブGKとして、蓮が1年の中から選んだ。

 確かな実力があり、まだ公式試合の経験がないジョーカーでもある。シグド戦記が大好きだったり、サッカー棟を押す特訓をしたり、きっとこの子も天才肌な努力家なんだろう。

 

「あれでも相当の司令塔だ。注意しておけ」

「よしっ、みんなで白恋の鉄壁を破るぞ!」

 

「「「おう!」」」

 

 遠野先輩や蓮の言葉に頷いて、俺たちはポジションに付いた。

 もしかすると俺たちを油断させる目的だったのかもしれないな。

 

 

 お互いにFWの位置だから、目の前に暗黒寺のやつが立っている。

 

「久しぶりのストライカー対決か」

「……この日をずっと待っていた」

 

 だいぶ口数が減ったようだな。

 いや、その瞳はメラメラと熱く燃え(たぎ)滾ってる。

 

 なぜ雷門を離れたのか、その頬の古傷は何なのか、どういう特訓をしてきたのか。

 聞きたいことはたくさんあるけど。

 

 

 サッカーで語るとしようか。

 

 

****

 

 

【雷門中】

FW 野神 葉若

MF 嵐 月影 鬼門 星村

DF 紫雨 遠野 天宮司 赤袖

GK 暖冬屋

「まるで暗黒寺のワントップだな」

「やはり6人による守備陣形か」

「FW組を信用しとるっちゅうわけや」

 

【白恋中】

FW 北平 暗黒時 氷英坂

MF 村住 朱鞠 松香

DF 丸間 風蓮 熊森 戸望

GK 摩周

「……勝負だ」

「や~ この空気は熱いですねぇ」

「勝って甘いもの食べたいよね~」

 

 

 雷門がサイドからも攻撃できるように、お互いの位置を広めに取っているフォーメーションに対して。

 白恋は6人がゴール寄りに固まっていて、キャプテンである朱鞠と他選手が遠く離れていた。それは全国大会第1回戦でも見せていた通りのフォーメーションだ。

 

 だからこそ雷門も対策を用意してきている。

 

 ホイッスルが鳴り、雷門側のボールでキックオフとなる。

 野神や葉若は定石通りに、月影に一度ボールを託した。

 

 今の雷門イレブンのサッカーは、中盤のスピードや突破力を活かす。

 彼ら彼女らはあちこちに分散し、ドリブルとパスを使い分けながら攻め込む。

 

「ボールをよこせぇ!」

「早速きたか」

 

 そこに切り込むように暗黒寺は単騎で、速攻をしかけてきた。

 月影は嵐に向かってパスを出すが。

 

「おらぁ!」

「なにっ!?」

 

 暗黒寺は筋肉質な身体で勢いよく飛びつき、パスカットを行う。彼が出ていた公式試合の両方で、パワー方面はともかく、これほどまでのスピードは見せていなかった。

 

 中盤に戻ってきていた葉若と、暗黒寺が競り合う。

 

「どういう特訓してたんだか」

「雪山を走って登ったこと、ねぇだろ!」

 

 彼と競り合いを続けていた葉若は驚かされた。

 暗黒寺が、後方の朱鞠にパスを行ったからだ。

 

 雷門にいた時と違って、明らかにチームメンバーを信頼している証拠だった。

 

「とくとご覧あれ! 『絶対障壁』!」

 

 朱鞠が手を掲げれば、後方の6人が集団で動き始める。

 

 6人で陣形を組み、敵の進行を(はば)む。

 それが近年の白恋中が行う基本戦術であり、必殺タクティクスだ。

 

 DFや守備的MFたちの連携により、まさしく氷壁のようなディフェンス力を誇っているが。

 

「ライモーンさんには、ごり押しが1番!」

「「「いちば~ん!」」」

 

 今年度の白恋には、極寒の地で鍛えたフィジカルの強さ、優れた司令塔による連携、有能なエースストライカーがいる。

 試合開始早々、『絶対障壁』を攻撃として応用してきた。

 

「あのまま突っ込んでくる気か!?」

「あいつら、何を特訓してるかと思えば」

 

 笑顔を浮かべた暗黒寺は前線まで走っていき、葉若はそれを追いかけた。

 最終的にシュートを放つのはやはり白恋のFW組だろう。

 

 特に、化身使いである暗黒寺は、白恋で最も強力なシュートを持っている。

 

「側面から狙うぞ!」

「私たちで暗黒寺君をマークします!」

 

 雷門の予想に反して、白恋は全員攻撃を始めていた。

 個々の技術ならば雷門が上ではあるが、集団と集団のぶつかり合いとなれば、それは連携重視のサッカーをしてきた白恋が有利となる。

 

 『絶対障壁』の陣形は、少しずつゆっくりでありながら、着実にゴールに迫っていく。まるでボールが氷山に隠されているかのように、雷門の選手たちは攻めあぐねていた。

 

「向こうのキャプテンだけは自由に動き回ってそうやで!」

「わかった! 俺が仕掛ける!」

 

 フィールドを見渡していた暖冬屋に伝えられ、月影自身で朱鞠をマークに向かった。

 

「ドドンパッ! いい読みですねぇ」

 

 朱鞠は緩やかにパスを出したが。

 

「なぜ、このタイミングでこちらに向かってパスを?」

 

 月影は思わず、そのボールをパスカットの要領で取ってしまう。 

 だが、それこそがわずかな隙となる。

 

 朱鞠は範囲的に地面を凍らせてから、アイススケートの様に滑り始めた。

 それは歴代の白恋選手が使うブロック技であり。

 

「アイスグランド!」

 

「くっ…そういうことか」

 

 地面を踏んだ衝撃で氷が発生して、月影が一瞬とはいえ凍りづけとなってしまった。

 

「しかもゴール空いてますねぇ!」

 

 朱鞠は両足でボールを挟むように囲って回転し、冷気を注入することでボールは氷を纏う。

 

 白恋に伝統的に受け継がれ、伝説の必殺シュートの1つだ。

 彼女は回転しながら浮かんだボールに蹴りこんだ。

 

「エターナルブリザード!」

 

 そのシュートの速度が予想以上であり、『ゴッドハンド・タイガー』の発動は間に合わないが。

 

「正義の鉄拳G3!」

 

 ゴッドハンドのオーラを握りこみ、地面を強く踏み込んで、回転する拳で立ち向かった。

 ボールに触れた瞬間、ゴッドハンドのオーラが凍り付いていくが。

 

「なんぼのもんじゃい!」

 

 そのパンチング技は、ミサイルかのように、オーラが手元から離れていくものだ。

 それはこの展開におけるメリットでもあり。

 

「ドドンパリ~ンってわけです!」

 

 ボールが弾かれることは、デメリットでもあった。

 

「礼は言わねぇぞ!」

「決めちゃってください!」

 

 暗黒寺はそのチャンスを見逃さない。

 背中から紫のオーラが(あふ)れ出し、炎の魔神が姿を見せた。

 

「『炎魔ガザード』!!」

 

 その手のひらで天高く飛び、ファイアトルネードを超える威力の炎の必殺シュートを放つ。

 

爆熱ストーム!」

 

 本人のシュート力の向上も合わさって、『炎のエースストライカー』としての成長を見せていた。

 

 それに対して、全速力でゴール前に戻ってきた葉若は、地面を削りながら体勢を整える。

 

「勝負だ! メガトンヘッドG3!」

 

 ゴッドハンドのオーラを額に込めて、ヘディングの要領でシュートに立ち向かうが。

 

「ぐあぁ!?」

「どうだ!!」

 

 オーラは粉々に砕かれ、そのままシュートがゴールに向かっていく。

 暗黒寺は『勝った』と思い、彼に向かって拳を突き出した。

 

 だが、シュートの威力は弱まっている。

 

「ここは熱血パンチで……ッ!」

 

 再び暖冬屋が拳を構えるが、その前に少女たちが飛び込んでくる。

 

「うりゃああ!」

「えいっ!」

 

 両左右からボールを挟みこむようなツインシュートで、シュートを打ち返した。そのボールはイナズマを纏ったかのようだったが、それも一瞬のことでボールは転がっていく。

 

 そして、反動を受けた星村と赤袖も地面に伏せてしまう。

 

「3人とも! 助かったで!」

 

 そのボールをクリアするべく、暖冬屋がキックで遠くに飛ばした。

 葉若と星村と赤袖は、彼にグッジョブを見せて立ち上がる。

 

 その光景を一瞥した暗黒寺はボールの行方を追いながら、追撃をするべく動き始めるが。

 

 ボールは月影がキープしてから、オフサイドにならない位置にいる野神にパスを行っていた。

 

「やべっ!? みんなまもれぇ~!」

「あいつ考えなしかよ!?」

 

 DFすら前線に来る全員攻撃だ。

 朱鞠が率いる白恋は、化身シュートに対して、ここまで雷門に粘られるとは予想外だったからだ。

 

「暗黒寺のやつ、楽しそうだな」

「フォローが早いですね」

「私たちも行くよ!」

 

 葉若たちもカウンター攻撃に参加するべく、暗黒寺を追いかけた。

 

「考えなしの全員攻撃に思えて、厄介だな」

 

 ドリブルをしている野神から、ゴールまでまだ距離がある。

 バハムートクラッシュでは威力減衰が大きい。

 

 追いかけてくる白恋の選手たちのスピードはとても速く、このままドリブルで進んでいれば追いつかれるかもしれない。

 

 ならば、全国大会に向けて特訓していた連携必殺技を使う。

 去年度は野神にとっての先輩と使っていたが、それは次代に継承されている。

 

「あれをやるぞ」

「おう!」

 

 野神は、並走してきている嵐と頷き合った。

 

 彼らが同時にボールを蹴り上げてから、上下で挟み込むようにキックを行う。

 蹴りこむボールからは炎の翼が出現した。

 

「「炎の風見鶏!」」

 

「……やれる」

 

 そのシュートを前にしても、白恋GKの摩周は冷静だった。

 

「アイスブロック」

 

 氷を纏った手で、ボールをカチコチに凍らせる。

 シンプルな必殺技ではあるが確実に止めてみせた。

 

 ボールを持った彼はゆっくりと、白恋がフォーメーションを立て直す様子を見る。キャプテンたちは集団で破天荒なサッカーをするため、そんな時間稼ぎは有効であった。

 

「絶好のシュートチャンスだったが」

「ボールは運べたんだ。このまま攻め続けるぞ」

 

 嵐や野神も、カウンターを警戒してそれぞれ選手のマークについていく。

 

 

 暗黒寺というエースストライカー、朱鞠という司令塔が率いる集団サッカーは、非常に強敵だが。

 今の雷門は、それで諦めるようなメンバーではなかった。

 

 

 

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