イナズマイレブン 『王者雷門』のヴィクトリーロード   作:ヒラメもち

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第4話 雷門vs白恋(②)

 

【雷門中】

FW 野神 葉若

MF 嵐 月影 鬼門 星村

DF 紫雨 遠野 天宮司 赤袖

GK 暖冬屋

 

【白恋中】

FW 北平 暗黒時 氷英坂

MF 村住 朱鞠 松香

DF 丸間 風蓮 熊森 戸望

GK 摩周

 

 0-0でお互い得点が入らないまま、後半が始まっていた。

 

 元々、近年の白恋は防御寄りのチームだからだ。

 6人で『絶対障壁』の陣形を組んでから左右に動き、一点集中で攻撃を(はば)む。

 

 その必殺タクティクスの対抗策は、松風天馬世代ですでに編み出されているものだが。

 

「『ダブルウィング』の模倣なのでしょうなぁ」

 

 朱鞠がそう呟いたように、一定以上のキック力と連携力があれば、可能な必殺タクティクスである。

 

 雷門は嵐と野神で2手に分かれ、3人ずつの陣形を組んで攻め込んでいる。

 ほぼシュート威力なパスを高速で出し合うことによって、どちらの攻撃陣がボールを持っているか判別しづらくなる。

 

 しかしそれは○×クイズを仕掛けるようなもので、博打のような戦術だ。

 それに3回目とも白恋は正解を選べていた。

 

 パスの速度が足りないことも原因となりうるが。

 

「……そうか、あれに守備の司令塔が参加しているわけじゃない」

 

 月影は、再び中央に立っている朱鞠に注目した。

 時折りゴール側を向いていて、腕を伸ばすジェスチャーをしている。

 

 白恋は『絶対障壁』に7人目の選手を組み入れることで、更に守備を強固なものにしていた。

 司令塔が遠くから判断するという、単純であるが重要な改善案だ。

 

 それに気づいたことで、月影は動き始める。

 

 身長差もあり、視界を(せば)められた朱鞠は、驚いたような様子を見せた。

 もし彼女が動いてしまえば、白恋の中盤が一気に人数不足となるが。

 

「ほう! それならば、ドドンパ!」

 

 焦っているのか、次なる手があるのか、朱鞠は逃げ始める。

 

「みんな! そのまま攻め続けるんだ!」

「「「おう!」」」

 

 月影が腕を振るい、雷門の選手は彼の判断を信じる。

 

「ん~? 作戦変更だってぇ~」

 

 のんびりとしたDFの熊森が周りに呼びかけるが、その隙を見逃さない選手がいた。

 葉若が『クイックドロウ』によって、瞬間的にボールを奪い去る。

 

 雷門も無策で『ダブルウィング』を続けていたわけではなかった。

 

 守備的必殺タクティクスは強力だが、多人数をそれに集中させることになる。

 そのため、ボールを奪った直後に死角から襲えば、陣形は一時的に混乱する。だからこそ、この試合で彼は自由に動かしていた。

 

「あれぇ~?」

 

「決めてやる、真ファイアトルネード!」

 

 すかさず葉若は、回転しながら空中に上昇し、炎を纏ったボールを放った。

 

 しかし、彼を追いかけていた暗黒寺もほぼ同時にジャンプしていた。

 本来はカウンターシュートの必殺技ではないが。

 

「潰してやるよ! 真ファイアトルネード!」

 

 互角以上の威力で、互角以上の速度で、シュートを撃ち返してみせた。

 

「どうだ、パワプロ!」

「お前が守備参加なんて驚いたな」

 

 もしも葉若が怪我をしなければ、この実力差ができることはなかったかもしれないが。

 現時点でメインストライカーとして(まさ)っていると、暗黒寺は実感していた。

 

 だが、楽しそうに笑って、守備に戻っていく背中を、彼は追いかけることとなっている。

 

「助かりましたよ! このまま『フライングルートパス』です!」

 

 朱鞠自身がジャンプして、空中にいる味方にボールをパスする。

 雷門も使うことのある必殺タクティクスであり、今度は空中戦を仕掛けてきた。カウンターをする際に、少人数でボール運びができるため取り入れられている。

 

 雪山のスノボやスキーで鍛えたフィジカルで、雷門の選手たちですらパスに追いつけない。

 今年度の白恋の動きは臨機応変だった。

 

 最後にパスを受け取った氷英坂(ひえいざか)が、ゴール付近に走り込んでいく。

 

「俺のブリザードは一味(ひとあじ)違うぞ……パンサーブリザード!」

 

 その技はエターナルブリザードの発展版だ。

 雪豹(ゆきひょう)が咆哮したかのような氷の弾丸を放った。

 

「速度重視のシュートやな。せやけど、シュートを放つまでに準備できてるで?」

 

 暖冬屋は、ゴッドハンドで使うようなオーラを『マジン・ザ・ハンド』ほどに右手に溜め込み、その拳でシュートを打ち返す。

 

「ゴッドハンド・タイガー!」

 

 虎が咆哮した。

 

 それは『正義の鉄拳』を超えたオリジナルの必殺技だ。

 先ほどとは違って、気迫で氷を噛み砕いてみせた。

 

 パンチングではなく、しっかりとボールは片手に握り込まれている。

 

「そろそろ、あれの出番やろ。いったれや!」

 

 すでに白恋中はカウンターを警戒して、ゴール前で『絶対障壁』を展開する準備をしていた。

 暗黒寺が前線に向かうまで、このまま攻撃を続けるメリットが薄いからだ。

 

 暖冬屋は、手前側にいる赤袖にボールを託した。

 

「そうですね。始めましょうか」

「全員でパスを繋いでいくぞ!」

 

 赤袖や月影が腕を振るい、攻撃陣と守備陣のメンバーを合わせて、陣形を組む。

 

 本来は帝国学園との再戦のために、特訓していた必殺タクティクスである。

 なぜなら中盤でドリブルやパスを使い分けながら攻める雷門サッカーは、相手の強固な守備陣には苦戦しやすかったからだ。

 

 絶対障壁が6人による『盾』ならば。

 この必殺タクティクスは5人による『矛』だ。

 

 赤袖から、鬼門へ、月影へ、星村へ、パスを繋いでいく。

 そんなキズナパワーによってボールにエネルギーが貯まる。

 

 このイナズマを纏ったボールを蹴る者は、相当のキック力が必要になるが。

 

「パワプロ! まさかお前はそのために?」

「お前をマークするのも目的だよ。でも一石二鳥だろ?」

 

 中盤まで戻ってきていた葉若と暗黒寺が、そのボールを追いかけるように走っていく。

 

「あれは『アルティメットサンダー』の構えなのでしょうねぇ」

 

 朱鞠は充分に防げると判断して、暗黒寺たちFW陣を前線に置いたままにした。

 たとえ完成させていたとはいえ、『絶対障壁』を破るほどのパワーはないだろう。

 

 葉若は、みんなから託されたボールを空中に蹴り上げて、自分自身もジャンプした。

 

 暗黒寺もそれを追いかけるようにジャンプする。

 この必殺タクティクスは諸刃の剣であり、もしもカウンターシュートができれば、簡単にゴールを決められるだろう。

 

「なんだ……化身なのか……?」

 

 葉若は青白いオーラを纏って、ボールを更に空中へ蹴り上げる。

 そんな光景を暗黒寺は見上げることしかできなかった。

 

「名付けて、『アルティメットサンダー落とし』!」

 

 空中から蹴り込んだボールは、まるで超強力な『イナズマ落とし』かのようにフィールドに落ちていく。

 それが氷山のような『絶対障壁』に直撃したところで、貯まったエネルギーが一気に爆発した。

 

「くらえぇぇぇ!!」

 

「無茶苦茶ドドンパり~んってわけですかぁ~!?」

 

 その衝撃によって、白恋のDF陣が吹き飛ばされていく。

 弾け飛んでいくボールは野神が確保し、空中でシュート体勢に入る。

 

「この距離ならバハムートクラッシュが有効だろう!」

 

 翼を広げたバハムートが光線を放つかのように、落下させるようにシュートを打った。

 

「……アイスブロック」

 

 冷や汗をかいている白恋GKの摩周が、氷を纏った手で立ち向かうが、至近距離で放たれた威力のシュートは止めきれない。

 

 後半でようやく雷門の先制点であり、1-0となる。

 あの絶対的な防御を真正面から打ち破ってみせたのだ。近年の雷門では使われることがなくなっていたが、高難度の必殺タクティクスをみんなで進化させたこともあり、喜び合っている。

 

 白恋も選手たちも諦めてはいない。残り15分以内に同点まで追いつかねばならなず、試合再開前に大幅にポジション変更をする。

 

「こうなれば、切り札で攻めますよ!」

「「「お~う」」」

 

「みんな! 空中のパスには警戒しておくんだ!」

「「「おう!」」」

 

 白恋が再び『フライングルートパス』ができるような配置になったと思い、月影は空中戦ができるように全体に向けて指示を出した。

 

 

 全国大会準決勝に集まった観客たちも、どんどんヒートアップしていく。

 

 

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