イナズマイレブン 『王者雷門』のヴィクトリーロード   作:ヒラメもち

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第3話 大人たちからの応援

 

 

 月日は進み、今年のフットボールフロンティアに向けて、1軍や2軍と入れ替わるチャンスがやってきた。

 実力さえあれば1年の俺たちにだってチャンスがある。今は2年となっている野神(のがみ)先輩だって、先輩たちが卒業してからレギュラーに選ばれたらしいからな。

 

 1年の何人かで集まって、そういう話をしていたら。

 

「え、野神先輩がスランプだって?」

 

「ああ。伝説の必殺シュートの1つ、ドラゴンスレイヤー、あれを安定して放つことができなくなっているらしい」

 

 雷門中1軍と他校の練習試合は部員全員で観戦したけど、その時は相手の3年の『フルパワーシールド』を正面から粉々に破壊していた。

 

「ドラゴンクラッシュが進化したワイバーンクラッシュ、その更なる進化の必殺シュート、見せてもらおうと頼んだんだがな」

「その時は僕も見ていました」

 

 大佑(だいすけ)夏生(なつき)も、その場面に立ち会ったわけか。

 

「徹底されて個人に適した練習メニュー、怪我は起きないはずだが」

「それなら気持ちの問題か?」

 

 頭がいい蓮が原因を思いつかないようだし、情報も全く足りないし、あやふやなままだろうな。

 

 しかしこのまま暗い雰囲気でテストを受けるのも困るし。

 

「大量にコーチもいるし、2年の先輩に仲がいい友達でもいれば、まあなんとかなるさ」

 

「でも雷門中って個人練習が多いですよね」

「わかる~ 本格的なサッカー部はこういうものなの?」

 

 昔から仲良く練習してたらしい赤袖さんや星村さんに尋ねられるも、長崎は田舎だったからな。もっとハチャメチャに野生児のようにボールを追いかけていたぞ。

 

「いや、珍しいだろうな」

「帝国の話を聞いていても、こういう練習が最先端なサッカーなんじゃ?」

「そ、そうだったかも?」

 

 詳しそうな蓮もそう言うが、紫雨(しぐれ)は帝国もそうじゃないかと聞く。その視線の先には鬼門(きど)がいたけど、特に知らなそうだ。さては雷門時代からの鬼道有人しか知らないな。

 

 確かに最先端な練習って、数値的に自分の成長が見れるのはいいことなんだろうけど。

 

「そんなに先輩のこと心配すんなや。パワプロたちFW組なんて、1軍のチャンスまで見えてきてへんか?」

 

 暖冬屋はせめて1軍ベンチは狙うって、それが虚勢でもないのが凄いよなぁ。

 最近だとゴッドハンドの応用どころか、超高難度技の1つ『正義の鉄拳』の特訓までしている。

 

「それはそうだが」

「しかしですね」

「それで上がったところでなぁ」

 

 俺はまだファイアトルネードの応用技まで、ようやくたどり着けそうな段階だ。

 凄い必殺シュートを打つ2年や3年は他に大勢いるし、もし野神先輩がワイバーンクラッシュを打てるなら、エーストライカーとしては勝ち目がない。

 

「まっ、今の時期はこの中で何人かが、2軍行けばマシっしょ」

「この雷門中の練習を2年以上も……3年は強い……」

 

 天宮司はマイペースだし。

 春日君は、ちょっと心配になるから、もう少し元気を見せてほしい。

 

「なぁ、1ついいか?」

 

 暗黒寺がぶっきらぼうな態度でそう声を発すると、空気が引き締まったようだった。

 あいつのことを怖がってる1年は多いよな。

 

 誰かに話しかけてくること自体が珍しいが。

 

「ここ1年男子更衣室だろ?」

「「「それはそう」」」

 

 まだ制服姿の星村さんと赤袖さんがいるから、誰も着替えられないんだよな。

 

「え~ もっとおしゃべりしようよ~」

「だから言ったんですよ。早く出ますよ」

 

 まるで娘の腕を引っ張るように、赤袖さんが星村さんを連れていった。クール系美少女と元気系美少女、どっちも男子に壁を作らない性格というかなんというか。

 

 サッカー部以外のやつらからも人気な理由だろう。

 

「それじゃあ、着替えて会場準備に行くぞ」

 

 蓮の言葉にみんな頷いて、ユニフォームに着替え始める。

 まあ俺は最初から学ランの下に着てたけど。

 

「お前、いつの間に!」

「体育終わった後に着てた」

 

「まったくパワプロは、小学生みたいなことしてるな」

 

 先に行くことを手のひらで伝えつつ、先に更衣室から出る。

 確かFW組だと、倉庫からいろいろと準備しろと伝えられていたけど。

 

 星村さんと赤袖さんが仲良く廊下を歩いていく姿をちらっと見てから、倉庫に向かう。

 

「……ん?」

 

 おかしい、倉庫の電気がつかない。

 今日に限ってどこか故障だろうか。

 

「見えないわけじゃない」

 

 奥のほうにボールのカゴがあるはずだ。

 

「あれ、こんなところに壁があったか?」

 

「パワプロ! ……なぜ暗いんだ?」

 

 暗黒寺が追いついてきたようでだ。

 『俺が知るかよ』って思いながらその壁に触れた。

 

「……え?」

 

 

がらがらがらっっ!!

 

 

 走馬灯のように、ゆっくりと、何かが降ってくるのが見える。

 

 たぶんあれは壁じゃなくて棚で、想定した以上にぐらぐらしてたんだ。

 ということは、これはダンベルか何かだろうか。

 

 見えているのに身体は動かず、味わったことのない衝撃が身体中のあちこちを襲う。

 

 

「おい! 大丈夫か! パワプロ!」

「なに!? すごい音したけど……えぇ!?」

 

 誰かがしゃべっているけど、頭がボーっとする。

 

 こりゃ、やっちまったかもなぁ。

 

「動かさないで! たぶん頭も打ってる!……もしもし、病院ですか?」

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 

 

 病院暮らしもさすがに飽きてきた頃だ。

 サッカー部の1年のやつらもお見舞いに来てたが、どいつもこいつも足の包帯を見ると、暗い表情をする。

 

 こっちまで暗い気分になりそうだから困る。

 だから、さっさと復帰しなきゃな。

 

「パワプロ君、少しいいかな?」

「いいですよ」

 

 看護師さんが話しかけてきたので、リハビリを中断する。

 といっても追加の自主練みたいなものだし、また叱られるのかもしれないな。

 

「ふふっ、パワプロ君のことを見てると、昔を思い出すなぁ」

「俺もまさか病院で円堂守世代のマネージャーに会えるだなんて、なんというか感激です」

 

 すっげぇ美人なんだよな。

 忙しいだろうに、まだ俺がベッドから立ち上がれない時は、よく当時の思い出話をしてくれた。U-15の世界大会の話だなんて、もはや伝説だろ。

 

「大げさだよ。すごかったのは(まもる)君たちだもん」

「それで、何か用事ありました?」

 

 看護師さんは優しく両手を合わせて思いついたような表情をした。

 白衣の天使かな?

 

「そうそう。今日はお昼から監督さんが面会に来るんだって」

「ああ、乙女監督ですか」

 

 あまり話した記憶がない。

 実際の練習はコーチか、なんならAIだったしな。

 

「えっと、ちょっぴり怖かったり?」

「むしろ優しすぎますよ。でも2軍でもなかった俺は話したことがなくて」

 

 『あぁ~』って少し困った表情をして、頬に手を当てた。

 

「今の雷門中サッカー部、すごく大きくなってるみたいだよね。1軍2軍どころの人数じゃないって、お義父さんも言ってたなぁ」

 

 蓮たちの何人かは2軍として選ばれたらしい。

 たぶんFW組だと大佑が、俺たちの世代を引っ張っていくだろう。

 

 まあそれには追いつくからいいとして、2年のFW組がいろいろと悪い噂をされてスランプだとか、暗黒寺のやつが雷門中から出ていった話とか、気になることが多いんだよな。

 

 今回のこと、単なる事故なのに。

 レギュラー争いの結果だなんて、雷門中サッカー部でそんな根も葉もない噂を信じないでほしい。

 

「あ、ごめんね?」

「いえ、半年もすれば、サッカーはできると聞いてますから」

 

 両親から長崎に戻ってきたらどうかと心配な声もあった。

 

 確かにこのままサッカーを諦めるか悩んでいた時もあった。

 怪我の後遺症を背負って、決して安定した(ロード)じゃない。

 

俺、サッカーが好きなんですよ

 

「そっか」

 

 でもサッカーに関わらない人生なんて考えられなかった。周りと比べて成長が遅れるかもしれないが、それがなんだって話だ。

 あの円堂守だって、たった1年で無名の雷門中を、全国優勝まで導いたんだ。

 

「それじゃあ、俺もう少ししてから、部屋戻りますんで」

「なら、これは同じく『サッカー好き』として言うね」

 

 『がんばれ』って耳にこっそり伝えてくれた。

 やっぱり女神かな?

 

 

 応援されて、やる気が上がったこともあったのか、今日は軽く走れるようになってきた。シュート練習はまだ無理そうだけど、そろそろリフティングくらいは再開したいところだ。

 

 

 というわけで部屋に戻って休んでいれば、スーツ姿の男性が入ってきた。

 

「やあ、風露(ふうろ)君」

「あー、どうも、監督」

 

 優しそうな笑顔を浮かべていて、俺を暗い気持ちにさせないようにしてくれてるのかな。いや、いつもニコニコしてる気がするぞ。

 

「なかなか時間が取れなくてね。調子はどうだい?」

 

「リハビリは順調です。半年もすれば、部に戻れると思いますけど……」

 

 あれ、やべぇ、考えてなかった。

 この怪我で、今の雷門中サッカー部に入部したままでいられるのかどうか。

 

「……キミはサッカーを続ける気なんだね」

 

「はい、そのつもりですし、そうさせてください」

 

 ベッドの上とはいえ、できる限りの誠心誠意を込めて、俺は頭を下げた。

 

「でも、ずっと、試合に出られないかもしれないのに?」

 

 急にストレートな言葉でグサッと来たぞ。

 いや、たぶん俺の今後のことを心配してくれてるんだろう。

 

「1軍を目指して、全国優勝して、いつか世界にだって挑戦する。その決意は変わってません」

 

「……僕としては構わないよ」

 

 よかった、もし雷門中サッカー部をやめることになったら、蓮たちと一緒にサッカーを続けることができなくなってしまう。

 

「それじゃ、これで失礼するよ」

「はい、お忙しいところ、ありがとうございました!」

 

 部屋を出ていこうとする乙女監督は、軽くこちらを振り返って、優しい笑みを浮かべた。

 

 

「そうそう、キミもFW志望だったよね。来年度も優秀な子たちが来ると思うけど……キミには期待しているよ?」

 

 

「……はい!!」

 

 よしっ、復帰を目指して頑張るか。

 待ってろよ、雷門中のみんな。

 

 

 

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