イナズマイレブン 『王者雷門』のヴィクトリーロード   作:ヒラメもち

30 / 37
第5話 雷門vs白恋(終)

 

【雷門中】

FW 野神 葉若

MF 嵐 月影 鬼門 星村

DF 紫雨 遠野 天宮司 赤袖

GK 暖冬屋

 

【白恋中】

FW 北平 暗黒時 氷英坂

MF 村住 朱鞠 松香

DF 丸間 風蓮 熊森 戸望

GK 摩周

 

 後半も残り少なく、雷門が先制点を得て1-0という状況だ。

 

 試合再開となり、氷英坂からボールを受け取った暗黒寺は、ボールを前方向に勢いよく転がした。

 

「なんだ……? まさか!」

 

 そのボールを自然と取ってしまった月影は、前半で身をもってその戦術を受けたから気づけたが。

 

「『アブソリュートナイツ』いきますよぉ~!」

 

 その必殺タクティクスは、相手チームのボール所有者に素早く、次々と襲い掛かるものである。円堂守世代の頃は、海外チームが扱っていた戦術だ。

 

 月影が1人(かわ)したと思えば、その身体に隠れていた朱鞠が立ち塞がる。

 範囲的に凍らされていく地面から離れるようにドリブルで動くが、今度は氷を纏ったスライディングにボールを奪われてしまう。

 

 順番にディフェンスを仕掛けてくるのに、合計3人による連携は見事なものだった。先ほどまでとは違って、司令塔である朱鞠が大きく守備に関わっている。

 

 一瞬だが身体は凍りつき、月影が立ち上がることにも時間がかかっていた。

 

「俺が止めるよ! ってぇ!?」

 

「アイスグランド!」

「フローズンスティール!」

 

 2種類のブロック技に共通する点は、地面を凍らせることである。

 鬼門はあえてボールを渡された瞬間に、ペンギンのようにツルツルとスケート場を滑っていく。

 

 雷門の選手たちもあちこちから立ち向かっていくが、『アブソリュートナイツ』及び氷のブロック技に対応することができていなかった。

 

 ここに来て未知の戦術、しかも技の余波による気温低下だ。

 雷門の選手たちの動きは(にぶ)くなっていた。

 

 しかし雷門には、フィジカルが高く、体力モンスターがいる。

 

「冬の特訓が役に立つなんてな!」

 

 葉若が、炎を纏いながらスライディングを仕掛けていく。

 滑ることができないのであれば、溶かしてしまえばいいのだと。

 

 いまだ未完成ではあるが、フローズンスティールの(つい)となる『イグナイトスティール』のようだった。

 

「やべっ!?」

 

 朱鞠はボールを奪われ、さすがの彼女も焦りを見せた。

 

 だが、葉若は対応してくるだろうと予想できている。

 暗黒寺が、空中から化身を出しながら降り立った。

 

「『炎魔ガザード』!」

「ブロックに化身使うなんて贅沢だな!?」

 

 葉若は衝撃波に吹き飛ばされ、ボールを取り返されてしまう。

 

「さっきのやつで消耗しているな?」

 

「おう、そうだぞ!」

 

 葉若は立ち上がりながら、ニヤリと笑みを浮かべた。

 彼にもフォローしてくれる仲間がいるからだ。

 

「ヴァルキリーフラッグ」

「てめっ!? このやろ!!」

 

 背後から赤袖が化身を出して襲い掛かる。(なび)く旗のついた槍を振るい、それを突き立てることによる衝撃波でボールを奪った。

 

「名付けて、『アブソリュートナイツ返し』だ!」

「身体を張りすぎですよ、パワプロ君」

「自分を囮にするなんてねぇ」

 

 赤袖からボールを受け取って、星村を中心としてドリブルで駆けあがっていくが。

 

「ひゃぁ!? スカイウォーク!」

 

 陣形を組み直した朱鞠たちによって、再び地面が凍っていくため、空中に避難してドリブルを続ける。

 その最中に気づいたことがあった。

 

「なんか隊列みたいだね」

 

 そんな呟きを聞いて、月影は(ひらめ)いた。

 

「そうか! 俺と嵐で、星村に続くぞ!」

「わかった!」

 

 アブソリュートナイツは、直列繋ぎのような守備である。

 ならば、こちらも直列繋ぎの攻めをすればいい。

 

「星村! 後ろだ!」

「はいっ!」

 

 白恋選手が迫ってくるタイミングで、星村が嵐にパスをするよう指示し、更に月影自身がボールを受け取り、前に出る。

 もしあの作品を参考に名付けるのなら、『ジェットストリームアタック』である。

 

「ですが、それは3人目との真っ向勝負です!」

「いくよ~ フローズンスティール~」

 

 朱鞠の言う通り、このままでは熊森のスライディングを受けることになるが。

 

「アクロバットキープ!」

 

 月影は、敏捷で鋭い動きで空中回避し、氷のない地面に降り立った。

 そこから力強く踏み出すことで、一気に通り過ぎていく。

 

「このまま俺が仕掛ける! バハムートクラッシュ!」

 

 バハムートが翼を広げて、光線のようなパワーシュートを放った。

 

「……負けたくない」

 

 白恋GKの摩周は、これ以上は追加点を与えないため執念を見せた。

 

 闇の波動を放出して、ボールを制御するような橋を作りだす。その闇の力でパワーを相殺することでキャッチする。新たに完成させた必殺技は『キルブリッジ』である。

 

「……行け!」

 

「このボール、なんとしてでも繋げますよ!」

 

 残された時間はとても少ない。

 朱鞠たちは『フライングルートパス』を始めた。

 

 最後の体力を振り絞って、次々とパスは繋がるが、力尽きたかのように選手たちは地面に落ちていく。

 それでも、ボールは暗黒寺まで託された。

 

「そのルートは計算通りだ。ザ・タワーV2!」

 

「ぐぅ……ヒートタックル!」 

 

 遠野のブロック技による雷撃を空中で浴びることになるも。

 ドリブル技の応用で炎を纏って耐えながら、彼は地面にしっかりと降り立った。

 

 さすがの彼も、もう化身を出す余裕がないほどに消耗していたが。

 

「氷英坂、あれやるぞッ!」

「絶対に勝つぞッ!」

 

 空中に上がったボールに向かって、暗黒寺と氷英坂が同時にジャンプする。

 片方が右足に火炎、片方が左足に冷気を纏い、大きく振りかぶって同時にシュートする。

 

「「ファイアブリザード!!」」

 

 炎と氷の渦を放ちながら、ゴールに向かっていく。

 

「「スピニングカット!」」

 

 紫雨や天宮司のシュートブロックを、ものともせず。

 

「ディープミスト……きゃっ」

 

 化身を出した状態の赤袖のシュートブロックも超えたが。

 

「ゴッドハンド・タイガー」

 

 暖冬屋は、虎が咆哮したかのように、ゴッドハンドの拳を前に突き出した。

 気迫で噛み砕いて、全力で止めてみせる。

 

 

 そこで、試合終了のホイッスルが鳴った。

 1-0という拮抗状態のまま、試合終了となる。

 

 

 失点はまだいい。

 白恋の防御の硬さを見せつけられただろう。

 

 だが、チームメンバーから何度もシュートチャンスを貰ったのにだ。1点も取れなかったことは、ストライカーたちにとって悔しい結果だった。

 

「ちくしょぉぉぉ!!」

 

 暗黒寺もまた、力強く叫んだ。

 

 

***

 

 

 試合終了の直後、暗黒寺はとても悔しそうにしていた。

 あの涙は、ストライカーとしてのプライドもあるだろうけど、きっとエースとしての責任感からも来ていると思う。 

 

 それは仲間に信頼されている証拠だ。

 白恋中の選手たちに優しく声をかけられていたし、良いチームに出会えたようだ。

 

 

「うむ! 今のライモーンは熱くて心地よい空気でした!」

 

「暗黒寺君のこと~ SNSじゃ~ いろいろだったからね~」

 

 やっぱり、雷門を出ていった理由には、俺の怪我が関係しているんだろう。蓮たちから聞いた限りでは、結構酷い噂もあったようだからな。

 暗黒寺自身が選んだのか、親御さんたちが心配したのか、あれだけ憧れていた雷門中から転校になってしまったんだ。

 

「ちっ、こいつらが勝手に気にしただけだ。俺は白恋に入ってからも、パワプロに勝つことだけ考えてきた」

 

「白恋のみんなを勝たせるためだろ」

 

 俺がリハビリをしていた期間も特訓を続けていたはずだ。

 現時点のファイアトルネード対決では完敗ってほどに、すごく強かった。

 

「いいや、病院で見た時、お前の目は決して諦めていなかった。それだけだ」

 

「ドドンパリ~ン! 暗黒寺君、私たちのためじゃなかったのですかぁ!?」

「怪我をした俺のことまで、応援してくれただろ!?」

「ね~、氷英坂君~」

 

「うっせ、さっさと先に帰ってろ」

 

 しっしっと仕草で追い払ってるけど、素直じゃないやつだな。

 あれだけ仲間と連携するサッカーができていたのにな。

 

「あー、あの事故か? 何かあると思ってる」

「ん? というと?」

 

 暗黒寺によれば。

 俺を追いかけて倉庫に入る前だったらしい。自分よりも背が高い誰かが、廊下にいた気がするって。

 

「そんな人? いたかな?」

「音を聞きつけて向かった私たちは見てませんが……」

 

 倉庫の近くだと、それなりに部屋の数があったはずだ。そのどこかに隠れたんだろうか。

 というか倉庫の電灯が付かないなんてことも、ハイテクなサッカー棟だと、あの1度きりなんだよな。

 

「なんつーか、気をつけろよ」

 

 雷門中には何か危険があるかもしれないって、心配してくれてるんだな。

 

「ありがとうな」

 

「は? まあいい。お前ら絶対優勝しろよ。じゃないと許さねぇ」

 

 その激励に、俺たちは大きく頷いた。

 

「おう! また一緒にサッカーやろうぜ、暗黒寺!」

「次は勝つからな、パワプロ」

 

 俺たち2年は来年度のフットボールフロンティアで対決できる可能性があるし、世界だと仲間になるかもしれない。

 

 初対面はそんなことは思わなかったけど。

 いつからか、あんなシュートが打てて、サッカーが好きで、熱いやつだとわかってきた。

 

 お前は俺にとって、やっぱり最高のライバルだよ。

 ファイアトルネードの最強合体技なんてのもできるかもな。

 

 

 さあ、次は決勝でいよいよ南雲原中だ。

 ハルが戻ってくるのも、待ってるからな。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。