イナズマイレブン 『王者雷門』のヴィクトリーロード 作:ヒラメもち
【雷門中】
FW 野神 葉若
MF 嵐 月影 鬼門 星村
DF 紫雨 遠野 天宮司 赤袖
GK 暖冬屋
【白恋中】
FW 北平 暗黒時 氷英坂
MF 村住 朱鞠 松香
DF 丸間 風蓮 熊森 戸望
GK 摩周
後半も残り少なく、雷門が先制点を得て1-0という状況だ。
試合再開となり、氷英坂からボールを受け取った暗黒寺は、ボールを前方向に勢いよく転がした。
「なんだ……? まさか!」
そのボールを自然と取ってしまった月影は、前半で身をもってその戦術を受けたから気づけたが。
「『アブソリュートナイツ』いきますよぉ~!」
その必殺タクティクスは、相手チームのボール所有者に素早く、次々と襲い掛かるものである。円堂守世代の頃は、海外チームが扱っていた戦術だ。
月影が1人
範囲的に凍らされていく地面から離れるようにドリブルで動くが、今度は氷を纏ったスライディングにボールを奪われてしまう。
順番にディフェンスを仕掛けてくるのに、合計3人による連携は見事なものだった。先ほどまでとは違って、司令塔である朱鞠が大きく守備に関わっている。
一瞬だが身体は凍りつき、月影が立ち上がることにも時間がかかっていた。
「俺が止めるよ! ってぇ!?」
「アイスグランド!」
「フローズンスティール!」
2種類のブロック技に共通する点は、地面を凍らせることである。
鬼門はあえてボールを渡された瞬間に、ペンギンのようにツルツルとスケート場を滑っていく。
雷門の選手たちもあちこちから立ち向かっていくが、『アブソリュートナイツ』及び氷のブロック技に対応することができていなかった。
ここに来て未知の戦術、しかも技の余波による気温低下だ。
雷門の選手たちの動きは
しかし雷門には、フィジカルが高く、体力モンスターがいる。
「冬の特訓が役に立つなんてな!」
葉若が、炎を纏いながらスライディングを仕掛けていく。
滑ることができないのであれば、溶かしてしまえばいいのだと。
いまだ未完成ではあるが、フローズンスティールの
「やべっ!?」
朱鞠はボールを奪われ、さすがの彼女も焦りを見せた。
だが、葉若は対応してくるだろうと予想できている。
暗黒寺が、空中から化身を出しながら降り立った。
「『炎魔ガザード』!」
「ブロックに化身使うなんて贅沢だな!?」
葉若は衝撃波に吹き飛ばされ、ボールを取り返されてしまう。
「さっきのやつで消耗しているな?」
「おう、そうだぞ!」
葉若は立ち上がりながら、ニヤリと笑みを浮かべた。
彼にもフォローしてくれる仲間がいるからだ。
「ヴァルキリーフラッグ」
「てめっ!? このやろ!!」
背後から赤袖が化身を出して襲い掛かる。
「名付けて、『アブソリュートナイツ返し』だ!」
「身体を張りすぎですよ、パワプロ君」
「自分を囮にするなんてねぇ」
赤袖からボールを受け取って、星村を中心としてドリブルで駆けあがっていくが。
「ひゃぁ!? スカイウォーク!」
陣形を組み直した朱鞠たちによって、再び地面が凍っていくため、空中に避難してドリブルを続ける。
その最中に気づいたことがあった。
「なんか隊列みたいだね」
そんな呟きを聞いて、月影は
「そうか! 俺と嵐で、星村に続くぞ!」
「わかった!」
アブソリュートナイツは、直列繋ぎのような守備である。
ならば、こちらも直列繋ぎの攻めをすればいい。
「星村! 後ろだ!」
「はいっ!」
白恋選手が迫ってくるタイミングで、星村が嵐にパスをするよう指示し、更に月影自身がボールを受け取り、前に出る。
もしあの作品を参考に名付けるのなら、『ジェットストリームアタック』である。
「ですが、それは3人目との真っ向勝負です!」
「いくよ~ フローズンスティール~」
朱鞠の言う通り、このままでは熊森のスライディングを受けることになるが。
「アクロバットキープ!」
月影は、敏捷で鋭い動きで空中回避し、氷のない地面に降り立った。
そこから力強く踏み出すことで、一気に通り過ぎていく。
「このまま俺が仕掛ける! バハムートクラッシュ!」
バハムートが翼を広げて、光線のようなパワーシュートを放った。
「……負けたくない」
白恋GKの摩周は、これ以上は追加点を与えないため執念を見せた。
闇の波動を放出して、ボールを制御するような橋を作りだす。その闇の力でパワーを相殺することでキャッチする。新たに完成させた必殺技は『キルブリッジ』である。
「……行け!」
「このボール、なんとしてでも繋げますよ!」
残された時間はとても少ない。
朱鞠たちは『フライングルートパス』を始めた。
最後の体力を振り絞って、次々とパスは繋がるが、力尽きたかのように選手たちは地面に落ちていく。
それでも、ボールは暗黒寺まで託された。
「そのルートは計算通りだ。ザ・タワーV2!」
「ぐぅ……ヒートタックル!」
遠野のブロック技による雷撃を空中で浴びることになるも。
ドリブル技の応用で炎を纏って耐えながら、彼は地面にしっかりと降り立った。
さすがの彼も、もう化身を出す余裕がないほどに消耗していたが。
「氷英坂、あれやるぞッ!」
「絶対に勝つぞッ!」
空中に上がったボールに向かって、暗黒寺と氷英坂が同時にジャンプする。
片方が右足に火炎、片方が左足に冷気を纏い、大きく振りかぶって同時にシュートする。
「「ファイアブリザード!!」」
炎と氷の渦を放ちながら、ゴールに向かっていく。
「「スピニングカット!」」
紫雨や天宮司のシュートブロックを、ものともせず。
「ディープミスト……きゃっ」
化身を出した状態の赤袖のシュートブロックも超えたが。
「ゴッドハンド・タイガー」
暖冬屋は、虎が咆哮したかのように、ゴッドハンドの拳を前に突き出した。
気迫で噛み砕いて、全力で止めてみせる。
そこで、試合終了のホイッスルが鳴った。
1-0という拮抗状態のまま、試合終了となる。
失点はまだいい。
白恋の防御の硬さを見せつけられただろう。
だが、チームメンバーから何度もシュートチャンスを貰ったのにだ。1点も取れなかったことは、ストライカーたちにとって悔しい結果だった。
「ちくしょぉぉぉ!!」
暗黒寺もまた、力強く叫んだ。
***
試合終了の直後、暗黒寺はとても悔しそうにしていた。
あの涙は、ストライカーとしてのプライドもあるだろうけど、きっとエースとしての責任感からも来ていると思う。
それは仲間に信頼されている証拠だ。
白恋中の選手たちに優しく声をかけられていたし、良いチームに出会えたようだ。
「うむ! 今のライモーンは熱くて心地よい空気でした!」
「暗黒寺君のこと~ SNSじゃ~ いろいろだったからね~」
やっぱり、雷門を出ていった理由には、俺の怪我が関係しているんだろう。蓮たちから聞いた限りでは、結構酷い噂もあったようだからな。
暗黒寺自身が選んだのか、親御さんたちが心配したのか、あれだけ憧れていた雷門中から転校になってしまったんだ。
「ちっ、こいつらが勝手に気にしただけだ。俺は白恋に入ってからも、パワプロに勝つことだけ考えてきた」
「白恋のみんなを勝たせるためだろ」
俺がリハビリをしていた期間も特訓を続けていたはずだ。
現時点のファイアトルネード対決では完敗ってほどに、すごく強かった。
「いいや、病院で見た時、お前の目は決して諦めていなかった。それだけだ」
「ドドンパリ~ン! 暗黒寺君、私たちのためじゃなかったのですかぁ!?」
「怪我をした俺のことまで、応援してくれただろ!?」
「ね~、氷英坂君~」
「うっせ、さっさと先に帰ってろ」
しっしっと仕草で追い払ってるけど、素直じゃないやつだな。
あれだけ仲間と連携するサッカーができていたのにな。
「あー、あの事故か? 何かあると思ってる」
「ん? というと?」
暗黒寺によれば。
俺を追いかけて倉庫に入る前だったらしい。自分よりも背が高い誰かが、廊下にいた気がするって。
「そんな人? いたかな?」
「音を聞きつけて向かった私たちは見てませんが……」
倉庫の近くだと、それなりに部屋の数があったはずだ。そのどこかに隠れたんだろうか。
というか倉庫の電灯が付かないなんてことも、ハイテクなサッカー棟だと、あの1度きりなんだよな。
「なんつーか、気をつけろよ」
雷門中には何か危険があるかもしれないって、心配してくれてるんだな。
「ありがとうな」
「は? まあいい。お前ら絶対優勝しろよ。じゃないと許さねぇ」
その激励に、俺たちは大きく頷いた。
「おう! また一緒にサッカーやろうぜ、暗黒寺!」
「次は勝つからな、パワプロ」
俺たち2年は来年度のフットボールフロンティアで対決できる可能性があるし、世界だと仲間になるかもしれない。
初対面はそんなことは思わなかったけど。
いつからか、あんなシュートが打てて、サッカーが好きで、熱いやつだとわかってきた。
お前は俺にとって、やっぱり最高のライバルだよ。
ファイアトルネードの最強合体技なんてのもできるかもな。
さあ、次は決勝でいよいよ南雲原中だ。
ハルが戻ってくるのも、待ってるからな。