イナズマイレブン 『王者雷門』のヴィクトリーロード 作:ヒラメもち
第1話 決勝に向けて
円堂監督の指導で、俺たち雷門中サッカー部は再スタートした。
今までの練習メニューのままで、絶妙な難易度と量を保つこともできる。
そして希望者は、過酷な特訓を追加することもできた。
この雷門中には、伝説の地下施設があった。
それは円堂監督が中学生だった頃から更に40年前には作られていたらしく、エイリア学園の襲撃を受けた時に使用不可となり、それを松風天馬世代のうちに蘇らせたんだって。
『夏未のやつがリフォームしてくれて、いろいろあったなぁ~』って円堂監督が懐かしんでいたけど、こんなにハードな特訓をしてたんだ。彼自身が伝説の存在で、松風天馬さんたちが黄金世代扱いされていることも頷けるぞ。
GKやDF特訓に使われるシュートマシンは、もはやガトリングだ。
巨大ルーレットだとか、動く床だとか、とにかく走り続けた。
ちょっと痺れるほどの威力だけど、レーザー光線の回避もした。
泥くさくて、きつくて、毎日ボロボロになって帰宅する。
サッカーが大好きだから、そんな特訓も続けられる。
『フットボールフロンティアが終われば無人島特訓もしたいところだな!』って、円堂監督は本気で世界に通用するための特訓をさせてくれていた。きっとハルの強さも天賦の才能だけじゃなくて、こういう特訓の日々を過ごしてきたからなんだろう。
「決勝をどう戦っていくかも考えなきゃな。みんな、どう思う?」
「はい。俺は南雲原の全ての試合を見てきましたが、帝国の技術、白恋のフィジカル、それらと比較しても、南雲原の総合的な能力は遠く及ばないと思います」
代表して蓮が答えると、円堂監督は『だろうな』と頷いた。
「ですが、司令塔対決となれば、今の俺では笹波雲明どころか、不破アリスにも遠く及ばないでしょう」
「我々雷門が見せた必殺技や戦術は、ほとんど対策されると考えられます」
「選手の長所を重点的に伸ばすような特訓もしてきたのでしょうね」
「ああ、ベンチにいながら天才ゲームメーカーと呼ばれ、中学生ですでに監督としても一流だろうな。もはやあいつは『怪物』だ」
蓮や遠野先輩やまつりさんの言う通りで、笹波雲明の力量がすごいし、彼を信頼して付いてきたメンバーだ。
圧倒的な実力差によるごり押しか、分析を超えた進化か、そういうのが必要になるだろうな。
「聞いた話だと、サッカーができない身体なんだってな。それでもサッカーが好きで、サッカーがよくて、サッカーの道を行ってる。お前たちの『敵』はそういうやつだ」
究極のサッカーバカというわけだ。
俺らからすれば、そんな笹波雲明はラスボスで大魔王であり、南雲原イレブンがまるで魔界軍団のように思える。
「南雲原は
でも監督対決としては、雷門中が圧倒的に有利だな。
これほどまでに勇気が湧いてくるんだ。
「我々も敵を分析し続けますよ」
「練習通りのサッカー、いやそれ以上で戦う」
「分析を超えるほどの力を、特訓で手に入れる」
「最初から最後まで全力全開で!」
「気合と根性で立ち向かう!」
「……諦めないこと」
「みんなで力を合わせること」
「仲間を信じること!」
「フッ、チームワークだな」
「ゴールは任せて得点決めにいったれや」
「ああ! それでこそ雷門魂を受け継いだ、雷門イレブンだな。絶対に倒せない相手なんて
「「「はいっ!!」」」
「それに、ハル君もきっと来ますよね!」
そして雷門イレブンには、ハルというジョーカーがいるんだ。
ギリギリまで特訓を続けて、再びサッカーができるようになって、数倍に強くなって、絶対に無事に帰ってきてくれる。
「……ありがとな」
円堂監督は、父親として感謝してくれた。
「お前たちに改めて言う必要はなさそうだが……ハルを信じて、待ってやってくれないか。あいつならきっと、答えを見つけると思うからさ」
「「「もちろん!」」」
****
決勝がどんどん近づけば、最後の追い込みでチーム特訓もハードだ。
最近はみんな帰宅する時間が夜遅くなっている。寮暮らしの俺とか、門限が緩いらしい蓮や暖冬屋とか、円堂監督の家でご飯を食べさせてもらうこともある。
その度に、なぜか記憶が飛ぶんだよな。
確かな満腹感はあるから、成長期の俺としては助かる。
それで、俺は寮に戻っていたんだけど、その前に雷門ジャージを着た白髪美少女がいたわけだ。
「まつりさん、本当に泊まるつもりなんだよな?」
「その……」
緊張した様子で、もじもじとしている姿がかわいい。
自分の部屋に女子を入れるなんて初めてのことだ。それなりに掃除や片付けしてきたのはよかったけど、机の上がプリントの山なのバレてしまったぞ。読んでいるとよく寝落ちてしまうんだよ。
「どうしても眠れそうになくて……顔を見たくなって……」
決勝を前に緊張してるらしく、かわいい。
「ほぼ毎日学校で会ってるのに、ワガママを言っているのはわかってます」
ワガママを言ってくれて、かわいい。
「…風露君が……ご迷惑でなければ、ですが……」
おぉ、名前呼びされたぞ。
これは好感度15上がるぞ。
「ご迷惑はないんだけど、その、ご家族? 大丈夫?」
「友達の……彼氏のところに泊まると伝えましたので」
ナオさんのところだって嘘をつかないのが、正直でいい子なんだよな。それはそれとして、まだ会ったこともない保護者様がどういう反応を見せたのか心配になってきたぞ。
稲妻町は都会だし、箱入り娘って感じのお嬢様たちも雷門中に通っているんだよな。
「……だめ、でしょうか?」
「ないない! むしろ嬉しい! まつりさんが来てくれて!」
まつりさんは、ほっぺを赤くして、壁際に寄っていって、ちょこんとしてるけど。
「えと、いつも通り過ごしてくれて、構いませんから」
「まつりさんがお客様なんだから、ベッドだって使ってくれていいぞ。俺は椅子で寝ることもあるし」
今度は、むぅって頬をプクッとさせて、かわいいぞ。
「もっと身体を大事にしてください」
「わ、わ~」
背中を優しく押してくるので、勢いのままにベッドに倒れ込む。
こうして じゃれあってると、小学生みたいなノリだな。
「きゃっ」
「おぅ……」
大胆な行動というか、たぶん何かにつまずいたんだろうけど。
まつりさんに押し倒されたみたいになったぞ。
ぷるぷると、真っ赤に恥ずかしがっててかわいい。
「す、すぐ! どきますから!」
「もう、このまま寝ればいいんじゃないかな?」
反応がちょっと面白くて、こっちまでドキドキさせられて、ノリと勢いで、まつりさんを逃がさないように抱きしめてみる。
抵抗されることもなくて、すげぇ柔らかい。
「重くないですか、私」
「軽すぎる」
というか細くて、繊細なガラスかのように思えた。
そんな大切な抱き枕を隣に移動させれば、添い寝の完成だな。
「これなら、お互いしっかり眠れるだろ?」
「別の意味で、眠れなくなりそうですけどね」
おでこを身体に当てて、小さな身体で縮こまってきた。
「安心はできます」
「よかった」
もうそれなりの数の公式試合でサッカーしてきたけど、まつりさんも本当は緊張していたのかもしれないな。守備の司令塔として、唯一の化身使いとして、そんな期待も背負うようになっている。
出会った頃なんて、もっと感情が表情に出ていなかった。でも嬉しがっている時もあるし、悩んでいる時もあるし。
そんなまつりさんの笑顔を見たくなったのは、いつだっただろうか。
リハビリの時まで、一緒にサッカーをやってくれて。
復帰してからも、隣で同じ道を歩いてくれて。
試合の時も、すっげぇ信頼できる女の子なんだぞ。
「絶対に勝って、世界に行こう」
「はい。南雲原は強敵で、笹波雲明は怪物で、まるで物語の主人公のようですけど」
「サッカーができなくなって、絶対に諦めなくて、フィールドに蘇った人なら、ここにもいるのですから」
「しかも、相棒なヒロインまでいるしな」
「好きです、本当に」