イナズマイレブン 『王者雷門』のヴィクトリーロード   作:ヒラメもち

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第2話 雷門vs南雲原(①)

 

 真上には青空が広がるが、グルりと観客席で囲まれている。

 本物なのか、メッキなのか、スタジアムは金色に輝いている。

 

 フットボールフロンティア、その全国決勝ともなれば、スタジアムは満員御礼だった。溢れんばかりの声援は、サッカーに対する熱い思いがジンジン伝わってくる。

 弾幕をみれば、九州からも南雲原イレブンの応援に駆けつけていることがわかる。

 

 ここはアマノミカドスタジアム、あの松風天馬さんたちが日本一になった場所だ。その栄誉をたたえて残されている。

 本当の楽しいサッカーを取り戻したという、革命雷門の世代だとも聞くけど。俺たちでは想像できないほど、大きなものを背負っていたんだろう。

 

 でも、俺たちだって。

 

 両親とか

 観客席にいる部員たち

 暗黒寺のようなライバル

 雷門中の応援団

 サッカー部のOB

 ファンになってくれた人たち

 

 たくさんの人の思いを背負って、ここに立っている。

 

「みんな、よく聞いてくれ」

 

 プレッシャーだとか、武者震いだとか、そういうのを感じながら。

 円堂監督の周りに俺たちは集合していた。

 

「俺たち雷門は、今となっては常勝無敗で、無敵の王者となっているんだってな。勝って当然だとか、勝たなきゃいけないだとか、まあそういう理由も付いてくるだろうが」

 

―――大事なのは勝ちたいかどうかだ!

 

「「「勝ちたいです!」」」

 

「おう! 自分のやってきたサッカーに自信を持て! そして思いっきり楽しんでこい!」

 

「「「はい!」」」

 

 この信念の強さが円堂監督なんだ。

 でっかい安心感があって、すげぇ勇気をくれる。

 

 これに勝てば日本一になれる、それはまだ実感が湧かないけど。

 あの南雲原イレブンに勝ちたい気持ちは本物だ。

 

「よしっ、ここは円陣でも組んでおくか?」

「ナイスアイデアです!」

「頼むぞ、キャプテン」

「任せた、キャプテン」

「ごっつ気合入るやつ頼むで!」

「こういうのは、初めてなんだがな」

「ハル君にも届くくらい叫ぼうよ!」

 

「あいつも本気なんだろうが、ギリギリまで特訓してて遅刻なんて、どこの豪炎寺に似たんだか」

「さっき連絡があったわ。後半には間に合わせてみせるって」

 

 ハルの両親として、円堂監督や理事長が申し訳なさそうな表情だけど。

 

「ハルは、うちのジョーカーですから」

「一緒に笹波雲明にリベンジしないと」

「…もっとすごくなってそう」

「ハットトリックでどうだ?」

「特訓が順調すぎるくらい元気そうだし!」

「無事に戻ってきてくれるなら」

 

 ハルは絶対に来るって信じてる。

 あいつに頼りきりになるんじゃなくて、頼れる先輩だと思わせるくらいのプレイを見せるほうがカッコいいしな。

 

 だから、全員でハルに届くくらいに気合を入れるぞ。

 

 

―――絶対、優勝するぞ!!!

―――おうッ!!!

 

 

*****

 

 

【雷門中】

FW 嵐 野神 葉若

MF 鬼門 月影 星村

DF 紫雨 遠野 天宮司 赤袖

GK 暖冬屋

 

「南雲原は強敵だ。楽しんでいくぞ!」

 

【南雲原中】

FW 忍原 空宮 桜咲

MF 木曽路 品乃 柳生

DF 騎士部 幕下 古道飼 牛島

GK 四川堂

 

「みんなと一緒にサッカーをやる」

 

 

 ホイッスルが鳴り、雷門側のボールでキックオフとなった。

 

「お前たち、速攻を仕掛けるぞ!」

 

 今まではボールを、司令塔である月影に渡すことが多かったが。

 試合開始早々、野神と葉若と嵐の3人で攻め上がっていく。そんな彼らを追いかけるように、いきなり全員攻撃を始めた。

 

「最初から全力全開で攻め続ける!」

「ペースを作られる前に先制点を取るぞ!」

 

 まだ緊張していること、ベンチにいる司令塔の指示ではタイムラグがあること。

 南雲原イレブンは慌てて、各自で考えて守備に動き始めた。

 

「ライトニングアクセル!」

 

 ドリブルで攻め上がる嵐が、瞬間的に加速し、一筋の光を残すように駆け抜けていく。

 

「対策どころじゃねぇぞ!?」

「速すぎる!?」

 

 まず桜咲や柳生たちが突破された。

 

「牛島、古道飼、頼んだぞ!」

 

 南雲原MFの品乃は、葉若のマークに動いている。

 そのため牛島や古道飼に任せるしかないが。

 

「対策を練ってきたようだが!」

「このまま勝ちを取りにいくぞ!」

 

 そして、ボールを蹴り上げてから、野神と嵐で上下で挟み込むように、空中でシュート体勢に入った。

 蹴りこむボールからは炎の翼が出現する。

 

「「炎の風見鶏!」」

 

 そんなロングシュートが空中方向へ放たれた。

 

 あの高度に向かうパスに、競り合うことのできる選手は、空宮がギリギリといったところだが。

 まだ前線から戻ってきている最中であるし。

 

 青白い光のオーラを纏いながら、空中で葉若がシュート体勢に入った。

 

「シュートチェインを狙ってきたぞ!」

「お前ら! シュートブロックの準備だぁぁ!」

 

 あれは、ほぼ対策不能とされた攻撃パターンだ。

 体力を大幅に消耗するとはいえ、試合開始直後に『ソウル』を使ってきたサプライズに、笹波雲明も見上げることしかできなかった。

 

 幕下、古道飼、牛島で準備していたが。

 その守備陣すら、上空から越えられる。

 

「いっけぇぇぇ! マキシマムファイア!!」

 

 至近距離から、炎の剣によるシュートを打ちこんだ。

 

「くっ……近づくことすらッ……!?」

 

 南雲原GKの四川堂が使う必殺技は、雪や氷といった性質である。爆熱がゴール前を支配し、必殺技の発動どころではなかった。

 両手で抑え込もうとするが、後方に弾き飛ばされてしまい、ゴールネットをクッションにして倒れ込んだ。

 

 まだ試合開始3分のできごとだった。

 雷門の先制点が入り、その立役者となった葉若たちのところに仲間が駆け寄る。

 

「まだ走れるか、2人とも」

「いつまでもシュート1本でへばってちゃ、ストライカー失格ですよ」

「ドリブル技の1つでもな」

 

 葉若や嵐、それぞれまだ負担が大きい必殺技の連発はできないが、通常のプレイに支障が出ないほどには、特訓を重ねてきていた。

 

 南雲原側も、葉若が化身以上に消耗しているだろうと予想している。

 諦めることなく、試合再開して集団で攻め上がっていくが。

 

「流れは雷門のものだ!」

「防御型タクティクスを仕掛けるぞ!」

 

 野神と月影と鬼門で、縦の陣形を取って守備を行ってきた。

 白恋も扱っていた『アブソリュートナイツ』のようなタクティクスだと、笹波雲明は瞬時に理解するが、それをフィールドに伝えるまでには時間がかかる。

 

「これならどうだ! エアーバレット!」

 

「次から次へとッ!?」

 

 すでに突破力のある柳生が、空気の弾丸によって吹き飛ばされていた。

 

 ボールを奪った鬼門が、前方向にパスをすれば。

 マークを振り切って走り続ける星村がそれを受け取る。

 

 付近にいた忍原がスライディングを仕掛けようとしても。

 

「そよかぜステップV2!」

 

 星村は更に加速して、くるりと1回転することで抜き去っていく。

 

「うそっ!?」

「テクニックもスピードも一級品かよ!?」

「警戒すべき選手が! 多すぎる!」

 

 南雲原MFの木曽路や品乃も、守備に専念するために戻ることしかできなくて。

 

「さんざんデータを見て知ってはいたが……」

「現時点、勝ち筋が見えてこねぇな」

 

 FWの桜咲や柳生も、雷門DFのマークから逃げるように中盤で走り続けることしかできていない。

 

「でも、うちの監督さんは絶対まだ諦めてないよね」

「逆にこの状況にワクワクしちまってんじゃねぇか?」

 

 彼らに合流してきた忍原の言う通りだった。

 

「各自、必殺タクティクスを開始してください! 全力で食らいつきましょう!」

 

 ベンチから立ち上がっている笹波雲明は笑顔を浮かべている。

 ギリギリまでフィールドに近づいてから、タクトのように腕を振るって指示を始めた。

 

「笹波雲明が動いたか!」

「陣形は……分散しているだと……?」

 

 月影や遠野は走りながら、脳のリソースを分析に使い始める。

 だが、南雲原イレブンの動きにまとまりが見えてこない。

 

 守備型のタクティクスといったものではないようではあった。

 

 

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