イナズマイレブン 『王者雷門』のヴィクトリーロード   作:ヒラメもち

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第3話 雷門vs南雲原(②)

 

【雷門中】

FW 嵐 野神 葉若

MF 鬼門 月影 星村

DF 紫雨 遠野 天宮司 赤袖

GK 暖冬屋

 

【南雲原中】

FW 忍原 空宮 桜咲

MF 木曽路 品乃 柳生

DF 騎士部 幕下 古道飼 牛島

GK 四川堂

 

 前半10分で1-0である。

 雷門の猛攻を、南雲原は耐え続けている状況だった。 

 

 逆転するべく、笹波雲明が必殺タクティクスの開始を宣言した。

 それは『強者封じ』である。

 

 雷門イレブンの月影たちは、警戒のために分析を始めていた。

 

 そして、どんな罠が待ち受けているかわからないが、葉若が突き進む。

 自分が最前線で引っかかれば、何か糸口が見つかるかもしれない。

 

「ここは通さん。 ザ・マトリックス!」

 

 葉若の俊足のドリブルに対して、品乃が仕掛けた。

 無数の方程式により、ありとあらゆる可能性を予測し、ボールを奪う必殺技だが。

 

「数学? 英語? なんなんだこの文字は!?」

 

「効果覿面(てきめん)すぎるようだな」

 

 品乃がボールを奪い、前線にいる木曽路にパスを行った。

 南雲原の唯一の化身使いだからこそ、雷門からは赤袖がディフェンスに立ち塞がる。

 

「ここは通さない」

 

「よっと、来たな!」

 

 定石通りに、お互い化身を出す兆候を見せる。

 『エンターテイナー』と『戦旗士ブリュンヒルデ 』という化身対決に、観客は期待の声を上げた。

 

 化身というのは、圧倒的な個人技だからこそ。

 この場面でどちらが勝つか次第で、これからの流れが左右されるが。

 

「このままヴァルキリーフラッグで……え?」

 

「柳生先輩!」

 

 木曽路に、正面対決をする義務はない。相性は五分五分で、そこに実力差も含めれば、彼が勝つ確率は低かった。

 MFとして確実にボールを繋げばいいだけだ。

 

 化身を出した状態のパワーシュートかのようなパスを、柳生が飛びついて受け取った。

 

「……でも奪えばいい」

 

「ここはこいつだ! スーパーエラシコ!」

 

 彼が走っていく先には紫雨が立ち塞がり、ボール自体を操作する必殺技でブロックしようとする。

 柳生は空中でボールを操って回避してみせた。

 

「おいおい! 南雲原のペースじゃないか!」

「決めやがれ! お前ら!」

 

 天宮司の鋭いスライディングをジャンプして回避しながら、ロングパスを行った。

 

 できる限り気配を隠して、忍原がその場所に向かって走っていた。

 南雲原イレブンが真正面から得点を狙う方法は、数パターンしかないからである。

 

「キミがシュートの起点となることは、予測済みですよ」

 

 遠野が、その少女を常にマークをしていた。

 忍原が攻守に優れていて、連携シュートが得意なストライカーだからだ。

 

「でしょうねぇ、残像!」

 

 そのドリブル必殺技に対して、遠野の動きが一瞬止まる。

 本物の忍者かのように分身され、その2択を選べなかった。『ザ・タワーV2』の雷撃を撃つタイミングが完全に出遅れてしまう。

 

「しまったッ!?」

 

 あの雷門に対して、完全フリーで2vs1の状況まで持ち込めたのだ。

 

「なんぼのもんじゃい!」

 

 立ちはだかるのは、中学生最強と言っていい守護神である。

 しかし忍原と桜咲は、このチャンスで絶対に決めるつもりであった。

 

「こいつと磨き上げてきた」

「私たちの連携必殺シュート!」

 

 この日は、天が味方してくれているかのように、快晴でもあった。

 

 忍原が回転のかかるシュートをすれば、竜巻を描くように空中に向かっていく。

 桜咲が地面すれすれの軌道でパワーシュートを放つ。

 

「「真 春雷!!」」

 

 それはただ威力が高いわけではない。

 巻き上げられた粉塵により、GKの視界を奪う。

 

「警戒はしとったが、これほどの奥義なんかい!?」

 

 暖冬屋は『ゴッドハンド・タイガー』でなんとか反応してみせたが、タイミングが合っていたとは言えない。

 

 拳のオーラの端を破壊しながら、逸れていってしまう。

 頬を(かす)めるように、ゴールネットにボールが突き刺さった。

 

 これで1-1、南雲原が同点に追いついたのである。

 

「よっしゃ、あの雷門にも通用したぞ!」

「どんどん決めていくよ! みんなボールを回して!」

 

 南雲原イレブンは喜び、全体的に表情が明るくなる。

 真正面から、雷門の守護神から得点してみせた。彼ら彼女らにとって、この1点の価値は相当に大きいものだった。

 

「あのコンビ、良い連携シュートだったな」

「にしても、うちの守備陣がここまで抜かれるなんて」

「赤袖や遠野先輩も事前に警戒していたはずだが」

「まだまだ同点! 諦めずにいくよ!」

 

 雷門イレブンも、星村の声に当然だと頷いて、各自のポジションに戻っていく。

 

 雷門側のボールで再開し、月影に一度ボールを託した。

 まだ笹波雲明が考案したタクティクスが何であるか、解明されてはいない。

 

 だからこそ、『フライングルートパス』『アルティメットサンダー』『ダブルウィング』、どの戦術で攻めていくべきか、司令塔である彼が見極めなければならなかった。

 

「タクティクスを重ねる! 『トライダイブ』!」

 

 今度は空宮や品乃が中心となり、陣形を作り始める。

 

 元々、北陽学園で扱っていた必殺タクティクスだ。

 南雲原イレブンは3方向に分かれ、一気に攻め上がってくる。

 

「攻撃の手を緩めないつもりか?」

 

 ボールをキープしていた月影は、予定通りの守備につくよう雷門に指示を出した。

 だが、それが決定的な隙となる。

 

「しまった、あれは『アブソリュートナイツ』のように、縦の守備陣形にもなりうるのか!?」

 

「見える! スピード勝負に持ち込めば、勝てる!」

 

 空宮は、俊敏で臨機応変さが特徴なファンタジスタである。

 月影がテクニックを発揮する前にボールを奪ってみせた。

 

 フィールド外の司令塔を警戒しすぎたからこそ、彼は自分のプレイに集中できていなかった。

 そんなミスを責める気が全く起きないほど、笹波雲明には存在感があるのだ。

 

 遠野たち守備陣はフォローすべく、各自で動いた。

 

「引き続き忍原をマークする!」

「では、桜咲さんを私が!」

「単品シュートならワシが止めてみせるで!」

 

 ドリブルで駆けあがっていく空宮には、無理に人数をかけない選択をしたが。

 

「それも、うちの監督の手のひらの上なんだぜ?」

 

 走りながら空宮は、バックパスを行った。

 『トライダイブ』の陣形により、3人が縦に並んでいるからこそできる必殺連携シュートがある。

 

 騎士部から、品乃へ、空宮へ、全力のパワーシュートを重ねていく。

 

「「「トリプルブースト!!」」」

 

「なっ!? 空中からのシュートやないんかい!?」

 

 1度戦い、データで知っているからこそ、空宮の『サンシャインブレード』という必殺シュートを警戒してしまっていた。

 

「正義の鉄拳G3!」

 

 瞬時に発動したが、ゴッドハンドの拳のオーラが破壊されてしまう。

 3人のシュート力が重なっていたこともあり、再び暖冬屋が失点を許してしまった。

 

 得点した3人は仲間たちに囲まれる。

 観客席にいる元北陽メンバーにも激励を受けて、感極まって空宮は嬉し涙を流した。

 

 これで1ー2。

 前半20分の段階で、あの雷門が完全に押されている。

 

 自分たちのミスが目立ってしまっていることもあり、雷門の選手たちは明らかに動揺していた。

 

「ここまで南雲原は強くなったのかよ?」

「敵は、俺たち雷門を完全に分析してきたんだ」

「データで戦う北陽学園と合併したとはいえ」

「この短期間で、形にできるほどとは」

 

 鬼門たちが不安がり。

 月影、遠野、赤袖も表情を曇らせる。

 

 帝国学園で見せた戦術ならまだしも、白恋で使った戦術まで、笹波雲明に分析され尽くしている気がしていて。

 そしてこの短期間で、それを実践できる選手たちを称賛するしかなかった。

 

「みんなどうした! 諦めるなんて言わないよな!!」

「そんなわけないでしょ!」

「まだまだ1点差だぞ!」

 

 葉若、星村、嵐が声をかけると、持ち直して頷き合った。

 まだまだ試合時間は残っている。

 

 諦めないことによる強さを、彼ら彼女らは学んでいた。

 

「そうだぞ~! 難しく考えすぎず、全員でぶつかっていけ~!」

 

 円堂守が声をかければ、雷門イレブンは完全に勢いを取り戻すように頷く。

 

―――円堂さんにはもう気づかれてる

 笹波雲明は苦い表情を見せた。

 

 この必殺タクティクス『強者封じ』は、能力相殺訓練の成果により、互角以上の実力の勝負に持ち込むというものだ。それには相性のいい選手をぶつけていく必要があり、最も重要なのは、気づかせないことである。

 

 つまり既存データに基づいて、後出しジャンケンに勝っているようなものであり。

 某ゲームのように、炎タイプには水タイプを、電気タイプには地面タイプを、的確に弱点をついているようなものだ。

 

「全員でぶつかっていくぞ!」

「どんなに分析されようと!」

「俺たちは雷門サッカーを貫くだけだ!」

 

 再び雷門側ボールで試合再開すれば、今度は月影を中心として攻め上がる。

 陣形を組んで集団サッカーに持ち込む気でいた。

 

 野神と嵐のキック力によるパスを活かしながら、2つの陣形を同時に進ませる。

 『ダブルウィング』で攻め上がり、葉若と星村を遊撃として動かす。

 

 『強者封じ』のために、相性のいい選手を各自ぶつけていくどころではない。

 

 総合力では負けている南雲原イレブンは、大波に押されるように耐え続けることしかできなくなっていた。

 

「決めるぞ! バハムートクラッシュ!」

 

 片方の陣形がゴールチャンスを得たことで、野神がシュート体勢に入る。

 翼を広げたバハムートによる光線シュートがゴールに向かう。

 

「ゴッドフィンガーズ!」

 

 南雲原GKの四川堂が、氷山から作り上げた巨大な5本指を作り上げる。ボールを斬り裂き、威力を抑えることはできたが。

 

 光の軌跡を描きながら、上空にボールが向かっていてしまう。

 

「くっ……止めきれない、か……」

 

 彼は、1度対戦した葉若や円堂ハルを特に意識していたが、雷門3年のストライカーのシュートによる重みまで感じさせられていた。

 

 ボールは弾かれていき、葉若がそこに飛びつく。

 

「葉若を絡めとれ!」

「ザ・マトリックス!」

 

 今度は騎士部によるテクニック方面のディフェンスで、葉若を対策しようとしたが。

 

「2度も同じ手を食らうか!」

「任されました」

 

 葉若がバックパスすれば、その後ろには赤袖が前線まで来ていた。

 方程式による網に向かって、彼女は真っすぐ突き進む。

 

「そよかぜステップV2」

 

 解答を見せるかのように、クルりと通り抜けてみせた。

 

「DFがここまで上がってくるのかよ!」

 

「木曽路君がここまで守備に?……ほいっ」

「おう! 真ファイアトルネード!」

 

 空中から放たれたのは、凄まじい速度の炎の弾丸だった。

 

 必殺技を出す余裕がない。

 南雲原DFの幕下や牛島が身体を張ってシュートブロックをすることで、多少は威力が弱まった。

 

「真 氷結の舞!」

 

 オーラによって氷の防護幕を作り出し、ボールを凍りつかせて止めてみせたが。

 

 雷門のストライカーの重みに、四川堂は冷や汗をかく。

 単体シュートだけでこれほどの威力とスピードであり、どこまでこの猛攻を耐えれるだろうかと。

 

 南雲原イレブンは防戦一方となっていった。

 

 『強者封じ』が、前半の途中で通用しなくなっている。

 既存データでは測りきれないほどの、雷門イレブンの進化である。不破アリスたち帝国が敗北した理由を、実感させられていた。ラスボスのような強敵軍団が、更に強くなっていく。

 

 総合的には確かな実力差がある。勝つためには分析を重ね、戦術をアップデートしていくしかないが。

 笹波雲明からの指示のタイムラグを、雷門イレブンは許してはくれない。

 

 

 ここでホイッスルが鳴り、前半が終了した。

 1-2でスコアボードだけ見れば、南雲原が有利なようだが。

 

 

 この10分間は全力で食らいつくことで、追加点を取られなかっただけだ。

 南雲原イレブンの誰もが体力を消耗し、肩で息をしている。素直に喜べるような余裕はなかった。

 

 

 対する雷門イレブンは誰も諦めておらず、勝利を疑っていない。

 まだジョーカーが残っているからだ。

 

「ようやく来たか!」

「あの子ったら……」

 

「来たといっても?」

「円堂監督と理事長、空を見てるよな?」

 

「もしかして、あれがハルなのか!?」

「なんちゅう、登場の仕方なんや?」

 

「ヒヤヒヤさせやがる……」

「無茶苦茶な後輩ですね……」

 

「ハル君、こっちこっち~! ちゃんと安全に降りてきてよね~!?」

 

 円堂ハルが、天空からパラシュートを使って降り立った。

 

 

 

 

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