イナズマイレブン 『王者雷門』のヴィクトリーロード   作:ヒラメもち

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第4話 サッカーを続けること

 

 運悪く起きた事故によって、半年間もサッカーができなかっただけじゃない。

 FW適正なし、それがAIによって判断された俺の結末だった。

 

 先輩たちの何人かは陰口を叩いてるみたいだし。

 蓮たちだって暗い表情をして同情してくる。

 

 俺がいなかった間にフットボールフロンティアは当然のごとく優勝し、他の各種大会に向けて練習したり、3年はプロに向けて最終調整したり。

 蓮たちも次の1軍候補として期待され、何人ものコーチに囲まれて指導してもらっていたり。

 

 だから、あいつらと一緒にサッカーをできる時間はどんどん減っていった。

 

「よしっ、今日も特訓だ!」

 

 放課後、気合を入れるように1人で声を出す。

 半袖のユニフォームに着替えてから、準備体操を始めた。

 

 もう冬が近づくような時期で、次のフットボールフロンティアまで半年ほどだ。

 今の雷門中サッカー部で、俺の扱いはもはや幽霊部員のようなもの。

 

 運営陣はもう壊れた機械より、新品のスカウトに夢中なんだろう。

 練習メニューも作られなければ、スポーツドリンクだって自腹で、当然試合になんて出れるわけがない。

 

「今日は鉄塔広場に行ってみるか」

 

 筋トレをこなしてから、荷物を持って学校の外に出る。

 

 だから今は新しい校舎に囲まれ、ポツンとあった体育倉庫を勝手に拠点にしている。手入れすればまだ使えるボールが残されていたり、すごい字で書かれたノートだって残されていたり、たぶん円堂守世代の部室だったんだと思う。

 

 今の雷門の必殺技のデータは、松風天馬世代の人たちが残していったものらしい。ならばあの特訓ノートは円堂守世代が残した原典のようなものだ。

 

 部室もある。ボールもある。タイヤだってある。

 走る場所なんて町全体にあるし、河川敷でシュート練習だってできる。公園でドリブル練習だってできる。山の上の鉄塔広場に行けばブロック練習だってできる。

 

「今日もやるかッ!」

 

 タイヤを背負い、木にロープで吊るしたタイヤを投げて、戻ってくるタイヤを身体全体で受け止める。

 たぶんこれキーパー練習なんだけど、サッカーを一緒にやる相手がいないから仕方ない。

 

 それに、今の俺にはあの必殺技の習得が必要だと思った。

 

「出ろ! ゴッドハン……ぎゃあ!?」

 

 吹き飛ばされ、背中に衝撃がくるけど、もう一度立ち上がる。

 

 映像だって何度も見た。

 オーラだって出るようになってきた。

 

 努力は必ず結果に繋がってる。

 

「お~い!」

「ん?」

 

 ほとんど草の手入れだってされてなかった。万が一タイヤがぶっ飛ぶと危険かなと選んでいる場所だ。

 

 女子中学生が気軽に訪れるような場所じゃない。

 

「パワプロ君、走るの速すぎだよ~」

「星村さんと赤袖さん、どうしてここに? 練習は?」

 

 ジャージ姿なことはともかく、雷門中にいるような時間だと思う。

 

「今日は全体練習ないから、2人で走ってたの! そしたらパワプロ君が見えてさ!」

「この曜日は基本オフの日ですよ」

 

 そうだったか。

 もうすっかり忘れていた。

 

「サッカー続けてるんだね。しかもこの鉄塔広場で、聖地の1つで!」

「聖地にしては草だらけですね」

「草刈りからしたな。いい体力作りにはなったけどさ」

 

 夏にやって暑いどころか、虫の数だってすごかった。

 

「あれだけ走れてたなら、えっと、もうだいぶ治ってるの?」

「ナオさん。」

「いや、もう自分で納得してることだから」

 

 赤袖さんが俺のことを心配してくれたのか、ナオさんを止めようとしてくれたけど。

 

 持ってきていたボールを空中に蹴り上げてから。

 土が盛られている場所に向かって、俺は全力のファイアトルネードを放つ。

 

「ファイア…トルネード!」

 

 勢いは鋭く、確かに地面にめり込んだ。

 だが、目標にしていた場所よりだいぶ斜めなんだよな。

 

「なるほど」

「そうか、コントロールが……」

 

 映像を何度見返しても、修正しようとしても、どうしてもパワーシュートの瞬間に足がブレる。

 AIも同じ判断だった。

 

 ループシュートとか、そういうテクニック方面の必殺シュートを身に着けることもできなさそうだった。

 やはり精度よく足で蹴るには、普段のパスが限界だ。

 

「残念ながら、今はファイアトルネードを使えない。ごめん」

 

 暗黒寺も雷門中から出ていったし、星村さんは楽しみにしてたかもしれないのにな。

 

「……あの、ナオさんは気にしてませんよ」

「……そ、そう! 見たいとか今は全然思ってないから!」

 

 『誤解させちゃってたらゴメン!』って勢いよく謝ってくるから、俺はタジタジになりながらも、なんとか頭を上げてもらう。

 

「そ、そっちはどうなんだ? 順調か?」

 

 話題を変えるべく、星村さんと赤袖さんたちのことを尋ねた。

 

「うー、あんまりかなぁ」

「2年のFW組が次々とスランプになっていまして、来年度はエースストライカーが不足するかもしれません」

 

「……そうか」

 

 暗黒寺のやつも雷門中をやめていて、2年FW組は悪質な噂の影響もあるのかスランプとは聞いていた。あれは俺の不注意による事故だってのに、レギュラー争いにおける妨害行為なんてあるはずがない。

 

「ちなみに大佑(だいすけ)君も、練習試合中の怪我でリハビリ中です」

「FW組の今後を心配して、焦ってるみたいなんだよね」

 

「……そう、か」

 

 あいつも優しいところがあるからな。俺や暗黒寺が抜けて、1年FW組を自分が引っ張っていこうと思っているんだろう。

 

「今は野神(のがみ)先輩が、MF組やDF組の希望者にも必殺シュートを教えてるの。蓮君とかね」

「ドラゴンクラッシュ及びワイバーンクラッシュというパワーシュートの王道、だから私とナオさんには合いませんがね」

 

 蓮のやつ、司令塔も担当するのに負担は大丈夫かよ。

 あいつのことだから『フォルテシモ』のような技の特訓してると思ってた。

 

「でも大丈夫! 私たちもシュートを特訓してるから!」

「ナオさんがマッハウィンド、私がクロスドライブですね」

 

 どちらも戦術として組み込みやすい技だな。

 もし1人の力が足りなくとも、仲間とのシュートチェインを狙うとか、連携技だとか、そういうのもサッカーの醍醐味ってやつだよな。

 

 しかし今の雷門中ってFW組、MF組、DF組、GK組で別々の練習が多い気がしてたんだよな。しかも個人技をひたすら練習するって感じ。

 

 まあ俺自身も数ヶ月はそんな状態なんだよな。

 

「こういうオフの日、一緒にサッカーやりませんか?」

「まつりちゃんに同意!」

 

「え? でも2人の自由時間だろ?」

 

 提案は確かに嬉しかった。

 でも普段ハードだから休みたかったり、自分たちが望んでいる特訓をしたり、俺に構っている時間はなさそうだけど。

 

「見たところ、DFもしくはGK方面の練習でしょう。今なら全国クラスのMFが2人、しかも美少女が付いてきてお得ですよ」

「パワプロ君ったら、私たちが美少女だなんて、そんな、えへへ」

 

「俺は言ってないからな? オフサイドトラップかけられたようなものだからな?」

 

 そりゃ内心では、2人とも美少女だと思っているけどさ。

 

「なら、お願いしようか。時間がある時、一緒に特訓してほしい」

「決定ね! そだ、別クラスだし、連絡先交換しようよ」

「そういえばしていませんでしたね。サッカー棟に行けば会えてましたし」

 

 サッカー女子の連絡先を同時に2つも入手した。

 しかも一緒に特訓までできるなんて、ますますモチベが上がりそうだぞ。

 

「なんというか……一緒にサッカーできるの……すごく嬉しいな……」

 

「ごめんね、もっと早く声かければよかったよね」

「観察結果その3、意外と涙もろい」

 

 観察結果その1とその2はどこだよ。

 心の中でそんなツッコミを入れながら、優しい仲間たちの手を取った。

 

 

 気持ちがあって、ボールと場所があって、仲間がいれば、サッカーは続けられる。

 でも俺はそれで満足できるようなやつじゃない。

 

 必ずフィールドに戻って、頂点を目指して登ってやるんだ。

 

 

 

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