イナズマイレブン 『王者雷門』のヴィクトリーロード   作:ヒラメもち

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第5話 ポジション

 

 だんだんと雪の降るような季節になってきた。

 さすがに北海道でもなく東京だから、積もること自体が珍しい。

 

 校庭のあちこちには雪だるまが並んでいる。

 外でやってる運動部も今日は休みだから、逆に都合がいい。

 

 砂浜でやった特訓とはまただいぶ違う。芝生の上を雪が覆ったグラウンドを、ドリブルして進んでいく。スパイクの裏には氷ができて滑るし、ボールまで滑るし。

 

「わわっ!?」

 

 尻もちをつくことも多く、ツルツルしたスケート場を滑っていくペンギンのように見えてそうだ。

 吹雪士郎が使ってた『アイスグランド』みたいな氷のブロック技を耐える特訓にちょうどいいと思ってたけど、なかなか上手くいかないな。

 

「いてて……」

 

「お前、いつもこんな特訓してるんだな」

 

 濃い赤髪でガタイがよく、また身長が伸びた気がする。

 ジャージ姿の嵐大佑(あらしだいすけ)が、上から見ていた。

 

「いや? 雪なんて珍しいだろ?」

 

 地面に両手をついてバネのように起き上がり、大佑(だいすけ)の正面に立つ。

 

「それはそうだが、そういうんじゃねぇよ」

「なんてな……俺はメニューを自分で考えるしかないからな」

 

 『マジかよ』って目を見開いたけど、落ちこぼれ部員への対応、そうなんじゃないのか?

 

「乙女監督に限ってそれは……いや、サッカー続けてるんだな」

「そりゃあな。お前も怪我したみたいだけど、サッカー続けるだろ?」

 

 俺がそう問えば、少し視線を足元にそらした。

 

「怪我と言っても、お前ほどじゃねぇよ。もうすぐ復帰はできる」

「ならちょうどいい。対決してくれないか?」

 

 これだけ広いグラウンドが全部自由に使えて、ゴールまで空いてるんだ。

 サッカー部以外のやつらは遠慮してるのか、雪だるま作りや雪合戦すらしないし。

 

「今の2軍のエースストライカーに、実力が通用するか試しておきたい」

 

「……本気なんだな?」

 

 俺は頷きながら、使いこんでいるボールを持たせる。

 

 そして俺はゴールを守るように立った。

 半袖のユニフォームだし、グローブだって身に着けていない。

 

 でもこれでいい。

 

「さあ、来い!」

 

「まさかお前、ストライカーやめるのか、よ!!

 

 必殺技を使っていないノーマルシュートだが。

 星村さんや赤袖さんの必殺シュートに匹敵するほどの球威だな。

 

オラァ!!

 

 ヘディングの要領でそのボールにぶつかっていく。

 後方に弾かれるような感覚もあるけど、身体全体で前面に押し込む。

 

「頭で止めやがった……」

「まだ手加減してるのか? 必殺シュート出してきていいぞ?」

 

 ボールまで軽く近づいて、パスを出す。

 ストンと落ちてくるボールを大佑は足元に置いた。

 

「なら、お望み通り」

 

 あのパワーシュートの構えは、何度も見たやつだな。

 

「ドラゴンクラッシュ!!」

 

 大佑の背後にドラゴンが見え、そいつがビームを放ったかのような鋭いシュートだ。

 

「いくぞ!」

 

 俺は全身でオーラを高め、それを頭に集める要領で。

 これがゴッドハンドの応用技の1つだ。

 

メガトンヘッド!!

 

 オーラでできた拳を頭から繰り出して、シュートを真正面から受け止める。

 

 元々エースストライカーとしてヘディングの練習はしてたんだ。たとえファイアトルネードは使えなくなったとしても、別に怪我によって全てのサッカー経験を失ったわけじゃない。

 

「パワプロすげぇよ、お前ってやつは」

 

「お前こそ、まだ他の必殺シュートを隠してるんだろ?」

 

 さっきのシュートだと春頃の実力と同じで、まだ手加減してる。

 

 俺が相手をしたいのは雷門中2軍のエースストライカーだ。それを軽く見積もっても、それでやっと全国大会レベルくらいだ。

 俺が目指すのは、世界だからな。

 

「いいぜ、とことんやってやる」

 

 ボールを空中に一度蹴り上げる。

 ファイアトルネードの動作にも似ているが、それは地面からのパワーシュートを貯めるまでの時間稼ぎだ。

 

 空中を舞うのは、さきほどまでのドラゴンから進化したワイバーンで。

 

「いけぇ! ワイバーンクラッシュ!!」

 

「メガトンヘッド!!」

 

 俺は再び同じ必殺技で真正面から突っ込んだ。

 さっきまでのドラゴンクラッシュとは数倍の威力だ。大佑のやつ、ドラゴンクラッシュも本気では打ってなかったな。

 

「くっ………ぐわぁ!?!?」

 

 拳のオーラが砕かれて身体が弾かれる。

 当然ガラ空きのゴールは許してしまう。

 

 ちくしょう、1vs1としては俺の負けか。

 でも、確かな手ごたえはあった。

 

「シュートブロックとしては充分だろうよ。あとはキーパーが簡単に止められる」

「さすがだな! 俺が言わなくても分かるなんて」

 

 DFの役割の1つは、ゴッドハンドの応用で身に着けられた。

 あとはこれを進化させていけば、必ず強力な武器になる。

 

「お前の嬉しそうな顔を見てたらな。ストライカーとして自信なくしそうだぜ」

「心配されてた割には、大佑もメキメキ実力を上げてるじゃないか。そういう嬉しさもあるぞ」

 

 『どうかな』と身体を横に向けた。

 

「お前や暗黒寺は、ファイアトルネードのその先、それを春には習得しそうだった。だが俺はどうだ、冬でようやくワイバーンクラッシュだ。俺じゃあ野神先輩にも勝てる気がしない」

 

 言い訳なのか知らないが、ひたすら自分語りが長かったな。

 

「大佑、お前は出会った時に話していたことを忘れてるぞ」

 

 近づき、拾ったボールを手渡してから。

 

「一緒に特訓するぞ、連携技を」

「だが、お前はもうストライカーを……」

 

 何言ってるんだこいつ、そんな表情を思わず浮かべてしまったぞ。

 

「そりゃコントロールが安定しないから、メインストライカーになるのは諦めたけど、攻撃参加もするし、シュートも打つ気だぞ」

 

「リベロってことか」

「そういうこと。むしろ今の雷門中は、分業制かよって思うほどだ」

 

 FWとMFの半数が攻撃参加して、それ以外のやつが守る。

 

 今までは個人技でなんとかなっていたが、相手次第でその限界は来る。もし試合中にFW組がガタガタな状況になれば、得点が入らないまま時間が過ぎていくかもしれない。

 

「メインストライカーはどんなチャンスも(のが)さない。1回目は少し外すように、2回目は真正面にシュートを打ってきた、それが大佑、お前の強みだ」

 

「へっ、パワプロ、お前さてはキーパーの素質まであったんじゃないか?」

 

 ちょっと褒めただけで、嬉しそうな顔しやがって。

 

「さあな。もしそうだったとしても、ゴール空けて攻撃参加するキーパーになってたかもよ」

 

「それも、円堂守がやってたサッカーじゃねぇか」

 

 サッカーは11人で試合をやるからな。

 俺のシュートのコントロールが悪いなら、大佑がシュートの威力に自信がまだ持てないのなら、それならば協力して連携技をすれば補い合えるさ。

 

 

 

*****

 

 

 

 とある冬休みのことだ。

 

「あれ、星村さんだけか。今日は赤袖さんいないのか?」

「ん、家族とお出かけなんだってさ」

 

 なるほどなぁ。

 確か2人は雷門町に昔から住んでいるんだったな。

 

 あれ、そういや俺は帰省することを今まで考えてなかったぞ。

 東京から長崎までの交通手段、何も予約してねぇ。

 

 毎年行ってるんだけど、今年はこっちでボッチで神社の屋台を回ることになりそうだ。

 

「きょ、今日は2人で練習だね?」

「そうなるな。大佑のやつも今日は来ないらしいし」

 

 1月になれば、3年生引退してからの1軍2軍決めもあるからな。

 そこでまずは2軍に入っておかなければ、フットボールフロンティアに出場なんてできない。

 

「じゃあ星村さん、まずはランニングから始めようか。」

「はい!! あっ、そうだね! 」

 

 なんで緊張してるんだろう。

 普段は男子と2人きりの機会がないからだろうか。

 

「そだ、パワプロ君って、私たちのこと、名前で呼ばないの?」

「ナオさん、まつりさん、ということか?」

 

 4人で走りながら会話をすることも多くて、いつも星村さんが話題を振ってくる。今日は名前呼びに関してらしい。

 

「そうそう。まつりちゃんの好感度もグイグイアップすると思うんだよ!」

「そういうものなのか?」

 

 赤袖さんの表情が変化してるところを見たことがないぞ。

 いくつか顔を思い返していたら、星村さんが急に『って、さっき名前呼びしてなかった!?』と驚いていたけど。

 

「女子から許可出たなら、下の名前で呼ぶぞ?」

「あー、んー、そうだね、そういう顔だもんね」

 

 どういう顔だからなんだよ。

 もはやサッカーが恋人なんじゃないかと思ってる俺でも、女子からの評価がどうなのか少し気になってしまうぞ。

 

「ほら、もっとナオって呼んでみて! 好感度アップするか試してみて!」

 

 ナオさんはニコニコしてて、ちょっと照れるけど。

 

「ナオさん」

「えっと……その……私の好感度が15アップしたよ……」

 

 その数字はなんだろう。

 雷門中のサイエンス練習のしすぎじゃないか。

 

「でもな、赤袖さんは赤袖さんって雰囲気なんだよな。特別っていうか」

 

「ブブーー! 私の好感度が10下がりました! パワプロ君はもっと精進してください」

 

 どうやら下がってしまったらしい。

 さすがに仲間同士の冗談だと思うけどな。

 

 

 まあ今度、まつりさんって呼んでみるか。

 女子とはいえ、一緒に特訓する仲間だもんな。

 

 さあ、年明けに2軍目指して今日も頑張るぞ。

 

 

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