イナズマイレブン 『王者雷門』のヴィクトリーロード   作:ヒラメもち

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第6話 革命の風

 

 コンバート、つまりFWからDFにポジション変更は、監督に(こころよ)く認めてもらえた。

 

 3年の引退をきっかけに、全員が総合的な実力を見せる機会もあった。

 それで俺も無事に2軍入りは果たしたんだけども。

 

 なんというか不完全燃焼だった。

 

「なんだこの……異世界のような空間は……」

 

 FW組もしくは2軍未満だけで集まっていた頃は、もっと活気があったのに。

 DF組の練習機会になれば驚いた。

 

 「パスの角度を予測して―――」

 「タクティクスの発動時間を―――」

 「相手選手をデータ化して入力すれば―――」

 

 いつからサッカーは数学の勉強になったんだ。

 脳トレだけじゃなくて、もっと筋トレしろよ。

 

 2年の先輩たちに、1年の何人かも釣られてるし。

 もしかしてこれが最先端な特訓だというのか。

 

天宮司(てんぐうじ)紫雨(しぐれ)、どういうことだ」

「パワプロ、気持ちは分かるぜ」

「……俺たちはハブられてる」

 

 天宮司と紫雨も無事に2軍入り、そりゃ普通に特訓してたら遠野善弥(とおのぜんや)先輩たちに身体能力はすぐに追いつくだろうな。

 

「今の雷門はキーパーがみんな優秀だからな。シュートに関しては大抵なんとかなるんだとさ」

「……円堂守に対する憧れ」

 

「な、なるほど……いや、それならDF組は壁山塀吾郎に憧れろよ。あの人の安心感すげぇだろ」

 

 海外コーチなのか知らないけど、白衣の人が部員に解説してるぞ。

 

 そして、あの緑髪のマネージャーの女子はずっと翻訳してるのかな。

 さっきからずっと口を動かしていてすごいな。

 

 でもたとえ外国語が話せなくとも、サッカーしてれば雰囲気で通じ合えるものだろ。え、サッカー言語はグローバルツールだよな?

 

「このままじゃダメだ! 俺たちはディフェンスの基本からやり直すぞ!」

 

 俺は天宮司や紫雨、残っている1年DF組に声をかけた。

 

 ナオさん、まつりさんみたいな優秀なMFの協力が欲しくなるな。

 まあそれは休みの日とか2軍練習の時に優先して練習させてもらおう。

 

 だから今は、必要かと思って準備していた『シュート自動発射装置』が、すぐ役立ちそうだ。

 

「……それキーパー用のやつ」

「おっ、もしかしてシュートブロックってやつか?」

 

 そうそう、天城大地選手とか、狩屋マサキ選手とか、相手の化身にすら立ち向かうからな。

 

「……そういう必殺技は練習してない」

「俺なんてブロック技自体よくわかってないな」

 

 紫雨(しぐれ)天宮司(てんぐうじ)も、マジかよ。

 ビックリしすぎて、思わず目が飛び出るかと思ったぞ。

 

 とりあえず2人に聞いてみれば。

 紫雨が使える必殺技は『コイルアッパー』や『ディメンションカット』で、相手が持つボールを操作して奪うことらしく。

 天宮司に至っては、『ツナミブースト』や『なみのりピエロ』で、ロングシュート技とドリブル技じゃないか。フィジカルでなんとかしてるらしいが、現状の適正MFなんじゃないか。

 

「ええい、とにかく特訓だ! 特訓! 特訓特訓特訓!!」

 

「……暑苦しい」

「まっ、パワプロがいると面白くなりそうだ」

 

 紫雨も立ち上がってやる気だし、天宮司も上のユニフォームを脱いで本気モードだし。

 俺たちでDF組に、根性ってものを見せつけてやろうぜ。

 

 

*****

 

 

 今日は雷門中1軍と、木戸川清修中との練習試合を部員全員で観戦した。

 雷門と帝国に匹敵するほどには名門校で、お互い総合的な実力は拮抗している。

 

 それで気になったことがあって、居ても立っても居られなくなった。

 

「よう蓮、お疲れのようだな」

 

「……ああ、パワプロか」

 

 フィールドだとイケメンスマイルを浮かべていたのに、休憩室で疲れきった表情を見せていた。3-0という結果の勝利は、間違いなく蓮のおかげだろうけど。

 

「司令塔をやりながら2得点も、さすが次期キャプテン候補だな」

「……俺が引っ張っていかないといけないだろ、今は」

 

 相変わらず(あわ)れむような瞳で同情してきやがる。

 

「聞いたよ、DFとして2軍入りしたんだろう。おめでとうパワプロ」

「1軍の中心選手から言ってもらえるなんて、偉くなったものだな」

 

 こういう挑発に乗ってくることもなく、深くため息をつくだけだ。

 

「偉いわけあるか。1年も上の先輩たちに指示する身にもなってくれ……」

「あぁ、それは見てて思った」

 

 発言力を高めるには、シュートで得点という分かりやすい形で、チームに貢献しなければならない。チームメンバーを納得させるべくサッカーをやっている。

 

 だからこそ、ますます決意は固まった。

 

「最初は意表をつく作戦だったんだけど、フェアにするために、あらかじめ伝えようと思う」

―――2軍チームは1軍に下剋上する

 

「……こちらには暖冬屋(だんとうや)もいるぞ」

「知ってるさ。そのための特訓はしてきたつもりだ」

 

 あいつの『正義の鉄拳』はすでに完成していた。1年ながら正ゴールキーパーを勝ち取っていて、才能と努力は本物だ。

 俺と大佑(だいすけ)夏生(なつき)を総動員して、やっと真正面から互角かどうか。

 

 しかも1軍の攻撃面には野神先輩、蓮の2トップを想定しなければならない。

 

「雷門1軍の名に()けて、どのチームにも負けるわけにはいかない。たとえ雷門中2軍であろうとな」

 

「まあ俺たちは勝つつもりでやるからいいけどさ」

 

 それにしてもまだ一緒に試合すらやってないのに、こうして蓮と対立するなんて思ってなかったな。

 

「なぁ蓮、サッカー楽しめてるか?」

「……どうだろうな」

 

 蓮、お前のためにも。

 俺たちは絶対勝つからな。

 

 

****

 

 

 昼休みも練習しようと思って、部室にボールを取りに行ってた時のことだ。

 すでに白髪の美少女が静かに立っていた。

 

「まつりさん、もしかして待ってた?」

「はい。そしてナオさんは日直の仕事です」

 

 そういや名前呼びの許可を貰ったけど、表情が変わったように思えなかったな。ナオさんの言っていた好感度アップはしてなさそうだ。

 

「パワプロ君はまだここを使っているんですね」

「旧体育倉庫を使ってはいけないという校則もないからな。それに、雷門中サッカー部の原典って感じでいいだろ」

 

 部室から使いこんだボールを取って見せれば。

 まつりさんも、こくりと頷いた。

 

「それで、俺はリフティングとかやるけど、まつりさんはどうする?」

 

 今は女子制服でスカートだもんな。

 冬なのに、足は寒くないのだろうか。

 

「……それは考えてませんでした」

「いつも冷静な、まつりさんにしては珍しいな」

 

 俺はリフティングを中断して、手でボールを持った。

 

「なら、ボールを下投げしてくれないか」

「わかりました。守備を想定した練習ですね。パワプロ君のポジションを考えれば」

 

 まつりさんも理論派と思うんだけど、いろいろと理解してくれてやりやすいんだよな。特訓中の俺たちにしてくれるアドバイスも丁寧だしさ。

 

 そうしてボールのやり取りをしてると、会話が途切れた。

 まつりさんと2人きりで話す機会って珍しいな。

 

「えっと、まつりさんの好きな選手って聞いたことあったっけ?」

「霧野蘭丸さんですよ」

 

 おぉ、あのDFとして有名な人か。

 『ザ・ミスト』もその影響で習得したのかもしれないな。

 

「んー」

 

 まつりさんも大きくなったら、ああいう綺麗な人になりそうだ。

 いや、霧野蘭丸選手は男性だけどさ。

 

「おっ」

「……?」

 

 それに、あの人のプレイを思い返してて、良いことを思いついたぞ。

 

「なあ、今度の1軍との試合さ。守備の司令塔を任せてもいいか?」

「……どうしてですか?」

 

 ほんの少し目を見開いたし、ボールを投げる手が止まった。だいぶ分かりづらいけど、驚いてるんだろうな。

 

「まつりさんが適任だと思ってさ」

「2軍キャプテンはパワプロ君だと思いますよ。攻撃と守備で的確な指示ができていて、それに……周囲に良い影響を与えています」

 

 他にやれる1年がいないし、蓮ほど上手くできてるとは思えないし。

 

「どうだろうな。事故の噂もあってだいぶ疫病神扱いなんだけど」

「いえ、良い影響を与えている、そういう風に私には見えてます」

 

 『譲りません』って顔で真っすぐ見てくる。

 まつりさん、実は頑固なところもあるみたいだ。

 

「えっと、ありがとな。それで1軍の試合なんだけど、戦術や守りのことを考える余裕がないと思うんだ」

「もし暖冬屋君から得点を取れるとすれば、そうなるでしょうね」

 

 やっぱりすでに理解してるじゃないか。

 それに、周りのことだっていつもよく見てる。

 

「だから俺の意見なんだけどさ。まつりさんは、今の蓮より司令塔として信頼できるほどなんだ」

 

「……わかりました、引き受けます。天宮司君と紫雨君たち、それにナオさんをまとめ上げることは大変でしょうけど」

 

 いや、ナオさんまでかよ。

 俺も気づかないほどに、いいところに走り回ってくれるけどさ。

 

「そろそろ教室に戻りましょうか」

「ああ。そうしようか」

 

 ボールを受け取って部室に戻そうとした時、小さな声で『風露(ふうろ)』君って呼ばれたはずだ。

 

「私のことを評価してくださり、ありがとうございます」

「おう。こちらこそ褒めてくれてありがとう、まつりさん」

 

 確かに下の名前呼びって、好感度が15くらいアップしそうだな。

 

 






【1軍ネームド】
月影蓮:MF(神童?)
暖冬屋哉太:GK(井吹)
鬼門悟:MF(浜野?)
遠野善弥:3年DF(真名部陣一郎)
野神有:3年FW(南沢?)

【2軍ネームド】
パワプロ:DF(パワポケ13主)
天宮寺嶺:DF(綱波)
紫雨雄介:DF(宍戸?)
嵐大佑:現FW(染岡)
海老原夏生:FW(少林?)
春日玲央:MF(影野)

(女子)
星村ナオ:MF
赤袖茉莉:MF

ところで……原作の赤袖さんのセリフ少なぎませんか???

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