イナズマイレブン 『王者雷門』のヴィクトリーロード   作:ヒラメもち

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第2章 春のできごと
第1話 次の目標はフットボールフロンティア


 

 今年も春を(むか)えた。

 

 俺たちは新2年生となり、今年度もたくさんの後輩たちが雷門中サッカー部に入ってきた。

 

 同時に少年少女サッカー大会の『フットボールフロンティア』の時期も近い。だから1軍の最終メンバーを決めているような段階だ。

 去年はギクシャクした雰囲気もあって、俺たちと先輩たちの交流は少なかったんだよな。

 

 しかし今年はナオさんが歓迎会を主催したり、他にも監督やキャプテンで話し合って練習体制を見直そうとなったり。

 

 各個人に定められた練習メニュー以外だと、だいぶ自由時間が多くなっていた。

 

 自主練をするもよし、仲間と一緒にミニサッカーバトルをするもよし、学校内をうろつくもよし、なんなら校外に遊びにいくもよし。

 俺たちには選択の自由が与えられ、そして自分で考える必要が出ていた。

 

「パワプロせんぱ~い! 今日もいろいろ教えてください!」

 

「おおう……たえちゃん、今日もみんなと来たのか」

 

 先頭に立っている子は梅雨咲多恵(つゆさきたえ)、小柄ながらDF組のため、よくなつかれていた。

 

「俺、だいぶ自己流というか、自称リベロだし、基礎的なディフェンス技術すら怪しいぞ?」

「構いませんよ! シュートブロック技術とか、盗ませてもらいますから!」

 

 あざといというか、小悪魔的というか。

 この子たちも雷門中サッカー部の入部テストに合格してる。向上心があって、そして何よりサッカーが好きだ。1年後輩でありながらも、1軍を目指して本気なんだろうな。

 

 先輩として、ちゃんとその熱意に(こた)えてやらないといけないよな。

 

「それに私、パワプロ先輩のプレイには憧れてるというか……」

 

「俺たちも混ぜてもらおうか」

「えっ、今日も遠野先輩たち、俺たちと?」

 

 そして、新3年もまだ1軍の座を諦めていないようだ。

 去年はプライド高そうな人たちだったんだけどな。

 

「俺の理論に急ぎ修正が必要でな。可能な限り、シュートが打てるやつが欲しい」

「あぁ、俺を利用するつもりですか……でも、自信なくさないといいですけどね?」

 

 俺が挑発するも、涼しい顔で準備するよう(うなが)してくる。

 遠野先輩も『ザ・タワー』を進化させていて、積極的にシュートブロックもするようになっていた。ディフェンスとしての基本技術は、むしろこちらが盗ませてもらう側だしな。

 

「なんや、今日もパワプロは先約済みかいな」

「おっ、暖冬屋も勝負するか? 俺は最近ストライカーとしても調子がいいぞ?」

 

 こいつも『正義の鉄拳』はすでに1段階進化させていて、あの練習試合から、俺をライバル意識してきてる。といっても全身全霊で放つ『マキシマムファイア』くらいでしか破れず、負け越してるのは俺なんだよな。

 

「え~、先輩は私たちとサッカーするんですよ~」

 

 たえちゃんたち1年組も、腕を引っ張ってくるし。

 

「人気者で嬉しそうですね、パワプロ君」

「私たちも混ぜてよね!」

 

 まつりさんとナオさんたち2年組も、圧をかけてくるし。

 

 怪我をした時は、またこんな風にみんなとサッカーができるとは思ってなかったな。

 さて、時間は限られているし。

 

「ええい、まとめてかかってこい! 特訓を始めるぞ!」

「「「おう!!!」」」

 

 フットボールフロンティアに向けて、みんなで特訓だ。

 

 

*****

 

 

 だんだんと暗くなって、今日はそれぞれ帰り始める時間になっていた。

 俺は学校近くの寮だからもう少し特訓を続けているけどな。

 

「こんな夜遅くまで特訓か、パワプロ」

「蓮はまだ帰ってなかったのか?」

 

 まつりさんやナオさんのように、この雷門町出身らしいけど。

 

「キャプテン……いや部長としての会議があってな」

「うへぇ……そりゃ大変だな」

 

 部員を(まと)めるだけじゃなくて、予算とか、今後のスケジュールとかも決めるんだろ。それで自分の特訓したり、戦術の勉強したり、相変わらず蓮はすごいな。

 

「まっ、副キャプテンがいるおかげで、だいぶ楽させてもらってるよ」

「あいつらが自分で考えて集まってくるだけだよ。俺はいつも通り特訓のつもりだ」

 

 他校だけじゃなく、仲間に切磋琢磨するライバルが多いからな。

 世界を目指して、俺自身も頑張らないと。

 

「どうだか、サッカー部の女子たちにモテモテなくせに」

 

 なんだよ、そのニヤニヤした表情は。

 

「蓮が言うかよ。バレンタインデーなんて凄かったじゃないか」

 

 俺は知ってるんだぞ、学校全体で蓮のファンクラブなんてものができてることを。

 そりゃ、まつりさんやナオさん、マネージャーたちからは、俺もチョコを貰ったけどさ。どれも市販の友チョコだったし、他のやつらにも渡してたし。

 

 それにだ。

 

「さすがに……全員のことまで、見てあげられてないさ」

「それはお互い様だな」

 

 いざチームを(まと)めるという立場になると、考えるべきことが増えるらしい。

 

「いかんな。お前とこうして顔を合わせると、つい相談を考えてしまう」

「まあ1人で抱え込むよりいいと思うぞ」

 

 去年度の蓮は無理してたしな。

 最近は俺以外にも、よく相談するようになってる。

 

「ハルのことだ。今度のU-15スプリング杯に出すことになった」

「あー、成績だけ見てても、凄いの一言しか出ないものな」

 

 円堂ハルは、円堂守の実の息子だ。

 U-12とか公式試合に出た経験はないらしいけど、父親のサッカーセンスを受け継いだ『天才』だと思う。

 

 最近だとノーマルシュートで、2軍キーパーの先輩の『フェンス・オブ・ガイア』を粉々にしてた。そして何よりメインストライカーとしての技術について、俺が思いつくその全てを、感覚だけでやってる。

 

「何度か練習には付き合ったけどさ。ファイアトルネードは見てただけで使えるようになったらしいぞ」

 

「さすがだな。しかしハルが必殺シュートを打つ必要のあるGK、日本にどれだけいるだろうか」

 

 蓮もあいつを高く評価してるが、なんだか俺は心配なんだよな。

 

「だが公式大会は早くないか? 試合経験あまりないようだし、まだチームにも馴染めてないだろ」

 

「監督たちも早いうちに経験を積ませておきたいと言っていたし、ハルなら乗り越えてくれるさ」

 

 乙女監督が部員1人のことを気にするなんて。

 珍しいな、あの人もハルのことを高く評価してるんだろうか。

 

「あいつは父親と同じく、必ず日本のサッカーを強くする。全サッカープレイヤーを魅了し、みんながハルの背中を追いかける」

 

「それに関してはどうだろうな。あいつ、だいぶ()めてるじゃないか」

 

 ハルのファイアトルネードも、さすがに暖冬屋の『正義の鉄拳』には通用しなかった。

 しかし表情は変わらない。

 

 ああいうとき、悔しがるのがメインストライカーだと思うんだけどな。

 

「真面目なやつではある。でもその理由は教えてくれないだろうな」

 

「……パワプロの言う通りかもな。ハルが本気でサッカーに向き合うような、もっと熱くなるような、そんなきっかけが必要か」

 

 一度はストライカーをしていた蓮も、天才なハルのことを特別視する気持ちも分からないでもないさ。

 もし俺も怪我で半年もサッカーできない苦しみを知らなければ、そして努力の大切さを実感していなければ、あいつの才能に嫉妬していたかもな。

 

 今はそれより、ハルにサッカー楽しんでほしい気持ちが強い。

 

 

*****

 

 

 さすがに昼休みに、サッカー棟まで行く時間がもったいない。

 巨大で綺麗で便利とは思うが、あそこは教室から遠いことが難点だ。

 

 それもあって、昼休みは旧サッカー部室で過ごすことが多くなっていた。

 ここで軽いトレーニングをするというよりは、ここに来れば友達と会える時が多い。

 

 数少ない連絡先から、前日に集まるかどうか電話でよく尋ねている。

 

「今日も、まつりさんと2人きりなんだな」

「……ナオさんが来なくて残念ですか?」

 

 ちょっとムッとしてるか?

 確かにこの言い方だと、まつりさんに失礼だったかも。

 

「いや、いつも一緒だからなぁって」

「ええ。まあナオさんとは親友ですからね」

 

 可愛らしいピンクのお弁当箱から食べ始めている。

 なんというか、おしとやかだよなと思いつつ。

 

 俺も、おにぎりとプロテインバーを胃につめていく。

 

「……まあナオさんは可愛いですから人気者です」

「みたいだなぁ」

 

 学校内だと、蓮とナオさんのファンクラブの話をよく聞く。

 まるでアイドルみたいだな。

 

「そんなナオさんも、今は追っかけしてますけど」

「追っかけ?」

 

 もしや好きな人でもできたのだろうか。

 とりあえずサッカー部2年で、仲がよさそうなやつを頭に浮かべてみるけど。

 

「『ハル君かわいいよね! サッカー部のスターだよね!』と言っていました」

 

「お、おう、ハルのことか」

 

 無表情なまま、ナオさんの声真似するのは温度差がすごかった。

 

「サッカーサラブレッド、そして円堂守の息子か」

 

 サッカー部で比較的プライドが高い人たち。

 野神先輩とか、遠野先輩とか、暖冬屋とかまで、よくハルのことを褒めてるんだよな。

 

「パワプロ君はどうですか。ハル君のことをかわいいと思いませんか」

「そりゃ後輩の1人だからかわいいさ。たえちゃんたちもいるし、ハルだけ贔屓(ひいき)はしないけど」

 

 何かしら事情がありそうで、後輩の中でも1番心配はしてる。

 

「あれだけ凄いシュートを打てるんだ。どうすればサッカーを心の底から楽しんでもらえるか、もっと話すというか」

 

 『えーと』と呟いて、いろいろと考えてしまうことをまとめる。

 俺じゃ具体的なやり方は1つしか思いつかないし。

 

「ハルともっと一緒にサッカーやるべきだな、俺たち」

 

「ほんと、ポジティブで、サッカーバカですね」

 

 いいだろ、雷門中サッカー部らしくて。

 

 よしっ、決意は固まったぞ。

 

 雷門中でサッカーやってる間に、いつかハルを楽しませてやる。

 『円堂守の息子』だとかそういう肩書きより先に、俺たちの後輩だからな。

 

 

「……もしナオさんが狙わないのなら」

 

「……ん?」

 

 『なんでもありません』と言われたからには、詳しく聞かないけどさ。

 さっきのはどういう意味だったんだろう。

 

 

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