うちの子達がダンジョンに行くのは間違っているだろうか 作:大豆製品豆腐
馬車が走る音が鳴っている。
十分な舗装をされていない道を走っているため、馬車の中はだいぶ揺れる。そんな中に8人組の男女が座っていた。
行者「おーい、あんちゃんたち。そろそろ見えてきたぜ〜。」
?「ん?おー!あそこかー!」
?「壁でかいっすねー!こっからでも相当大きいってわかりますよ!」
?「マジだな!話を聞く限り、中も面白れーもんがいっぱいあるみたいだぜ!」
?「…良き王には会えるだろうか…楽しみだ。」
?「おーいオメェら。楽しみなのは分かるが乗り出しすぎて馬車から落ちんなよ。」
?「早く素材が欲しい…ダンジョンには良いものがいっぱい、らしい。」
?「そんためにも、まずはファミリア探しからだな。いいとこありゃ嬉しいねぇ。」
?「…。」
?「…大丈夫か?酔ったんなら横になるか?」
?「…ううん。大丈夫、ありがとう。」
行者「しかし、あんちゃんたちも運がねぇな。」
?「?それってどういう意味?」
行者「なんだ、知らずにきたのか?今、オラリアは__」
暗黒期。ゼウスとヘラの眷属たちが黒竜討伐失敗から8年、闇派閥(イヴィルス)と呼ばれる邪神たちの眷属が幅を利かせていた時代。そんな最中に、8人は身を投じようとしていた。
?「てことは、今オラリオはめちゃ危ない時期と?」
行者「そーゆーことだ。どうする?やっぱやめんだったら、帰りも乗せてってやるぜ。もちろん、その分の料金はいただくけどな。」
?「お気遣いありがとう。でも大丈夫、アタシらも結構腕に自信あるから。」
行者「そうかい。ま、死なんように頑張りな。」
?「あんがとおっちゃん。」
?「…。」
?「…見つかるといいな。お前が納得する正義ってのが。」
?「…うん。」
数日後…
?「と、いうことで、やってきました!オラリオー!」
?「貴公、声が大きいぞ。公共の場では弁えろ。」
?「いやいや、オラリオって大きい街じゃん?多少大きい声出しても大丈夫…っていうつもりだったんだけどなぁ。」
?「雰囲気が暗い…。」
?「大通りでも露店が少なねぇな。他の街でももっとあったぞ。」
?「行者の親父が暗黒期だかなんだかって言ってたろ。そんだけ今がやべぇってこった。」
スリ「でぇっ!はぁ、はぁ…!テメェだ!」
?「!」
スリ「おい!テメェら武器捨てろ!でねぇと、この嬢ちゃんの顔に傷がつくぜ!」
?「待て!くっ、卑怯な真似を!」
?「リュー、武器を置きましょう。無関係の人を巻き込まないわ。」
リュー「.しかし…!」
?「へいへい兄ちゃん。アタシらの連れになんか用?」
?「だとしても感心しないっすねぇ。女の子ナンパすんなら物騒なもんは置かなきゃダメっすよ〜。」ナイフトッテポイ
スリ「なっ!?」
?「!…拘束。」
スリ「グエッ!」
男がナイフを持ち、少女に突きつけた。追ってきた少女たちが立ち止まる中、男3人が即座に動いた。
?「大丈夫か?はぁ、アンタも運がねぇな。」
?「なぁ、そこの嬢ちゃんたち。こいつ追ってたみてぇだが、どうするよ?」
?「おお!すごいわリオン!あの人たち、一瞬で捕まえちゃったわ。」
リュー「感心するのはあとです。そこの方々、協力感謝します。」
?「あれ?もう終わっちゃった?」
リュー「!アーディ!」
アーディ「あっはは…格好良く助けに入ろうと思ったら、一瞬で終わっちゃって出るタイミングを逃しちゃった、【ガネーシャ・ファミリア】のアーディ・ヴァルマだよー、じゃじゃーん!」
リュー「いったい誰に説明してるのですか、貴方は…。」
?「…これってあたしらも自己紹介する感じか?」
?「いや、明らかタイミング違うだろ。」
アーディ「さーて、それじゃあ改めまして、その人を捕まえてくれて感謝します!さ、おじさん。盗んだものは返してね。」
スリ「くうぅ…!あぁちくしょう!詰んだ!俺の人生完全に詰んだ!さっさと牢屋にぶち込みやがれちくしょう!」
?「すごい、清々しいまでに開き直ったわ!」
スリ「お前らみてぇな強い連中にはわかんねーだろうな!こんな惨めな真似をして、食い扶持稼ぐ浮浪者のことなんかよぉ!」
スリ「仕事場も奪われ店も開けねぇ!いつもいつも時間ばっかで、どこもかしこも余裕がねぇ!!」
スリ「職に溢れたヤツなんてごまんといる!それもこれも、お前らがさっさと悪党どもを追い出さねぇからだ!」
リュー「…」
?「…」
アーディ「それが貴方の言い分?」
スリ「えっ?」
アーディ「でも、悪いことは悪いことだよね?貴方が奪われた分だけ何かを奪えば、誰かが貴方と同じ思いをしちゃうよ?」
スリ「そ、それは…」
アーディ「だからさ、誓って?」
スリ「は?」
アーディ「もう二度と、悪事に手を染めないって。約束してくれたら、今回は見逃してあげる。」
リュー「なっ…!アーディ、それは駄目だ!」
アーディ「然るべき報いを受けさせなければ、周囲に示しがつかない!その時々で裁き方を変えては秩序が乱れます!」
アーディ「うーん、私は情状酌量の余地があると思ったけど…。」
リュー「それに、その男はそこの少女を傷つけようとした!見ず知らずの子を傷つけようとするものを許すなど、言語道断です!」
アーディ「あっ、それはその…。」
?「…僕は許します。」
アーディ「へっ?」
リュー「!?」
?「僕は、許すべきだと思います。」
アリーゼ「それは、何故?」
?「…許すことも、きっと正しいことをだから。」
リュー「…。」
アリーゼ「…うん、決めた。私もアーディとその子の言うことに賛成するわ!」
リュー「アリーゼ!?」
アリーゼ「ただし、二度目はないわよ?それだけは肝に銘じておいてね。」
スリ「い、いいのかよ?」
アーディ「うん、私が後でいっぱい怒られるからいいよ。…あとおじさん、これ。」
アーディ「お金は渡せないけど、私のジャガ丸くん、あげる。あ、まだ一口も食べてないから安心してね?あったかくて、ホクホクだよ?」
スリ「…慈善家気取りかよ…。ふざけんな、バーカ!」
アーディ「意訳すると『感謝なんてしないんだから!勘違いしないでよね!』___と言いつつ、しっかりジャガ丸くんを待っていたわね!これであの人は五臓六腑に油が染み込んで、改心するに違いないわ!」
リュー「その理論は謎すぎる…あとそんな気持ち悪い言葉遣いをあの男はしていない、…!そこの子、大丈夫でしたか!怪我などは…。」
?「大丈夫です、お気遣いありがとうございます。」
リュー「そうですか、よかった…。…しかし、こんな子供まで巻き込んで、これではやはり、秩序が…。」
?「…それは、きっと貴方が『強い人』だから、言えるんだと思います。」
リュー「えっ?」
?「さっきの人が言ってたことは、きっと間違いじゃない。『正しいこと』ができるのは、力のある人だけだから。」
リュー「__!!」
?「だから…貴方達が誰かを許す事は、『正しいこと』をなると、思う。」
リュー「…。」
?「いや〜、お見事お見事!」
リュー「貴方は…。」
アリーゼ「さっきの神様…?」
?「すごいねぇ、正義の冒険者は。」
?「いやぁ、急に後ろからタックルされてさぁ〜。びっくりしちゃったよ。」
そこには、一柱の男神が立っていた。目は細く、口元に浮かんでいるのは気弱そうな笑み。男にしては多い黒髪は全くと言っていいほどまとまりがなく、あちこちに飛び跳ねている。そして、その男神は__
?「なんか覇気無いし胡散臭いな…政治とかで上立たせると碌な事なさそう。」
?「って急な悪口ぃ!?初対面の神に対して失礼じゃない!?これでも俺神様なんだけど!?」
?「あ〜いや、すみません。これまでの経験上、貴方みたいなのにしてやられた事多くて…。」
?「だとしてもでしょ…もうちょっと敬意持って敬意!」
?「はい!いつも力をお貸しくださりありがとうございます!」
?「うむ、よろしい。」
?「それで、その神様は何してんだ?」
?「さっきのスリに財布盗まれちゃったんだよ、それでその子達に追っかけてもらってたってわけ。俺の全財産444ヴァリスがなくなるとこだったぜ。」
?「ショボい。」
?「だからさっきも言ったけど俺神様ぁ!?こんな時代に金なんか残るわけないって!」
?「すみません。」
アーディ「あー、えーと…大丈夫ですか、神様?お怪我は?」
?「あーありがとう、擦り傷ひとつないよ、可愛い女の子。サイフを取り戻してくれて、ありがとね。」
エレン「俺の名前はエレン。君たちは?そっちの子は、さっき【ガネーシャ・ファミリア】って聞こえたけど…。」
アリーゼ「私はアリーゼ・ローヴァル!【アストレア・ファミリア】の団長よ!】
リュー「…リオンと名乗らせてもらっています。アリーゼと同じく、【アストレア・ファミリア】です。そっちの方々は…。」
そう言って、リオンはスリに絡まれた8人に目を向ける。
シヨ「はーい、アタシはシヨ・ウミハラって言います〜。謝ったけど、さっきは悪口言ってすみませんね。」
1人目は男、エレンと同じく男にしては多い黒髪、これも同じくあちこちに飛び跳ねている。しかし、何より違うのは体格だ。180セルチ半ばはある長身に、がっしりとした体格、立ち居振る舞いから何か武芸の心得があるのが分かる。そして、それらとは違い言葉遣いや声色、醸し出す雰囲気は穏やかなものだ。それらが他人に与える印象といえば__
エレン「なんていうか、ミスマッチだね。」
シヨ「はっはっはっ!ええ、よく言われますよ〜。」
アーディ「たまにいるよね、ああいう見た目だけだと人ヤッてそうだけど、性格がめちゃくちゃ穏やかな人。」ヒソヒソ
リュー「こらアーディ!初対面の人に失礼ですよ!」ヒソヒソ
シヨ「聞こえてますよ〜。」
アーディ「!?あっはは、ごめんなさい。」
シヨ「いえいえ、構いませんよ。」
2人目は、金髪碧眼の男。背中に体の中ほどまである剣を背負っている。身長は190セルチ以上はあるだろうか。シヨよりも大きい。同じく体もがっちりしている。どこかの国の騎士を思わせるその立ち姿は、シヨと同じく何かしらの武芸をしていると分かる。
ロウガ「私の名はロウガ・ナイトフレアだ。」
エレン「うーん、どこかの国の騎士様かな?」
ロウガ「ああ、我が王の命により、人助けの旅をしている。私の出来ることは少ないが、やれることをして回っている。」
エレン「.…へぇ。」
3人目は焦茶色の髪、他の2人よりは小さい170セルチほどの身長。体格は中肉。目を引くのは背に背負っている大きなバッグだ。彼の体格以上の大きさで、それを背負っているためか背筋が伸びている。
ヴィア「自分はヴィア・ビジターって言うっす!旅が好きで、世界中いろんなとこ旅してます!んで、最近みんなとたまたま会って、オラリオに行くことにしたんす!」
アリーゼ「みんな知り合いなの?」
ヴィア「ええ、だいぶ前の旅で一緒に行かせてもらったから、結構高頻度で会ってます。」
アーディ「意外と世間は狭いね。」
ヴィア「すね!」
4人目は黒髪の男。身長は180セルチあるかないかほど。ヴィアと同じように中肉だ。しかし、エレンやシヨのような黒髪とは少し違う。光を乱反射しているのか、髪の毛が若干テカッて玉蟲色のようになっている。見る角度によっても髪色が変わる。
ロクロ「初めまして。ロクロ・フミヤと言います。さっきは俺らの連れがすんませんね悪口言って。」
エレン「いやいや、もう気にしてないから大丈夫だよ。それにしても、変な髪色してるね。」
ロクロ「…アンタもさっきから割と失礼なこと言うなw」
エレン「あぁ、ごめん。気に障ったかい?」
ロクロ「いや、まぁ気にしてねぇから大丈夫なんだが。」
残りの4人は女だ。うち1人は子供のようだ。
コン「俺の名前はコンだ。」
エレン「?苗字はないの?」
コン「親がいねぇからな。苗字も何もわからん。名前も適当につけたヤツだしな。」
エレン「…これは無神経なことを言ったね。すまない。」
コン「気にすんな。いねぇんだから触られる神経もないと同じだ。」
エレン「それにしても、中々に奇抜な髪色してるね。」
コン「生まれつきだ。…多分な。」
1人目の少女は、エレンの言った通り奇抜な髪色をしている。顔面を正面に左側が白色、右側が黒色なのだ。髪は癖っ毛で、所々跳ねている。口調や雰囲気からも勝気なところが見て取れる。身長は170セルチちょっと。
アン「アン・ドールズ。」
エレン「…あぁ名前ね。唐突に話したから反応遅れちゃったよ。さっきから聞こうと思ってたんだけど、喋る時口動かしてないのはなんで?」
アン「…」
エレン「…え無視?」
?「すまん、こいつちょっと人見知りでな。初対面のやつと喋んの苦手でさ。」
エレン「あーそういう、それはすまなかった。それで、君は?」
キャシー「あたしはキャシー・ミスティ。気軽にキャシーって呼んでいいぜ。」
ヴィア「ちょい、キャシーの姉さん。流石に神様相手に失礼っすよ。」
キャシー「あぁん?いいだろこんくらいよー。」
アンは170セルチあるかないかくらいの身長、名前のように人形のように綺麗だ。真っ白な髪はきめ細かく、長い。両目が赤く、真っ白な見た目に2つ、浮かび上がっているようだ。キャシーは180セルチ以上はあるだろう長身、真っ赤な髪が腰ほどまで伸びている。口調と相まってとても力強い。あと見て分かる通り色々とデカい。
エレン「自己紹介ありがとね。それじゃ最後に、そこの君の名前は?」
ヒイロ「あ、はい。ヒイロ・ヒロノのと言います。」
見た目は完全に子供だ。140セルチ後半の身長。丸みのある見た目。髪は黒いが、淡く赤色だ。その髪を上の方で一つにまとめている。街中で子供達と遊んでいても、さほど違和感はないだろうその見た目。腰にある剣を考慮しても子供がごっこ遊びをしているようだ。
エレン「さっきは大丈夫だったかい?怖かったろう?」
ヒイロ「いいえ、みんながすぐに助けてくれたので、怪我もなかったですし。」
エレン「そうかい、それはよかった。…君はさっき、『許すことも、きっと正しいこと』って言っていたよね?」
ヒイロ「?はい。」
エレン「何故、そう思ったんだい?自分を傷つけようとしたんだ。そう易々と許せるものじゃない。それに、罰を与えることも正しいことじゃないかい?」
ヒイロ「…それが、僕の理想だから。」
エレン「…」
ヒイロ「まだ、完璧に定まったわけじゃないけど、許すことも、僕の理想に近づく。」
エレン「…そうか。」
リュー「…」
エレン「おっと、そろそろ時間だ。もっと君たちと騒ぎたいところだけど、俺も用事があるんでね。そろそろ行かせてもらうよ。」
リュー「…お一人で大丈夫ですか?お付きの眷属もいらっしゃらないようですし、せめて送迎を…」
リューの申し出に「そこまでしてもらっちゃ悪いよ」と笑みが返ってくる
エレン「じゃあ___またね。」
そう言って、エレンは一同の前から去っていった。
アリーゼ「神々は一柱で行動するな、ってギルドが行ってるのに。ま、自由神ばっかりだから、他の神々もほっつき歩いてるけど。」
リュー「神々など、えてしてそのような存在だとはわかっていますが…捉え所のない神だった。」
ヒイロ「…あの。」
アリーゼ「?何かしら?私たちに用?」
ヒイロ「さっき、【アストレア・ファミリア】と言っていましたよね?アストレア様といえば、正義を司る神の…」
アリーゼ「ええ、そうよ!私たちは正義の神アストレア様の眷属なの!つまり、私は正義の使徒であり、星の乙女ということよ!」
リュー「アリーゼ、前半はともかく後半の方は繋がりがありませんよ。それと、子供相手に大きな動きは控えてください。怖がられてしまいますよ」
ヒイロ「…お願いがあります。」
アリーゼ「うん、聞きましょう、この星の乙女が!」
ヒイロ「僕を、【アストレア・ファミリア】に入れてください。」
と言うことで、前回投稿したやつで言ってた別作品だぜ。今回から地の文も頑張ってみます。この話だとオリキャラは最初から勢揃いです。見た目の説明いるか?自己紹介で丸々1話使ったぞ。楽しかったしいいか。読んでくれる方も楽しんでくれたら幸いです。そんじゃ、もう言うことないんで。お暇します〜。
追記 アリーゼがリオンのことリューって呼んでました。不覚。直したんでご容赦を。