学園仮面ライダー ~融汽 スターターサイクロン〜 作:大島海峡
「……ほう、未知の仮面ライダーか。ディサイダーズに対抗し得るその素養こそが、君たちの切り札といったところかな。久しぶりに、ゾクゾクするねぇ」
道化じみた所作で小首を傾けながら、来人は呟く。その言葉と共に切先が前傾し、それに合わせてガジェット達が前進を開始した。
風を纏い、渦巻くその流れに従い、数々の攻勢を受け流していく。
その過程で、膝を砂地で擦るほどに腰を低めて沈める。そして絞るように我が身を撚り、十字の手裏剣を回し、最後尾の砲台に叩きつける。
〈フルチャージ〉
爆炎を余勢の回転にて消し飛ばして後、片手でパスを読み取らせ、もう一方の手より十字を投げ放つ。
宙を舞うそれは、急転して戻ってくる小型のガジェット達を引き裂いていく。
その火の華の下を、剛風が一陣、突き抜けていく。
盾を前面に押し出した、ダブルだった。
来人はシールドを投擲し、手裏剣を撃ち落とす。
それが地に落ちる前に、ノコと、そしてフータロスがキャッチした瞬間、彼らの一体を剣が薙いだ。
その衝撃で地に臥すも、ノコ達は動きを止めない。一瞬でも留まれば、その太刀筋の餌食だ。即時に起き上がったフータロスは、手をついて飛び上がった。そのすぐ下より、返す一閃が屈折しながら追う。
「ヤベッ」
フータロスはそれを足裏で防いだ。
如何なる材質による刀剣であれ、斬撃というものの本質は摩擦にある。
よって挽かれるより先んじて足を引けば、損耗は軽微で済む。
だが、二撃三撃までは、防げない。
神速で間を空かさず肉薄する来人は、着地間際の彼らを盾で突撃。デンガッシャーで迎撃した新ライダーを強引に圧し切り、こじ開けたガード上から、神速の刺突を繰り出し、胸を貫かんとする。
咄嗟に飛び退くも、間に合わない。致命傷は免れたが、それでも遥か先の岩壁へ吹き飛ばすには充分な威力を有していた。
「だが地力も経験もまるで足りない……少々慎重になり過ぎたかな。そのせいか仕留め切れなかった」
と来人はせせら笑う。
「くそ……っ、やっぱ半端ねぇな」
と、その圧倒的な戦力差は、フータロス自身も認めざるを得ないところだった。
『フーさん、代わって』
そんな中、彼の内……もとい契約者の内部から、本人の声が響いてきた。
「いや、代わってつったって」
『大丈夫』
危惧するイマジンに、ノコは断ずるが如く、言った。
『もう、
と。
そして、逡巡して答える間も無くノコの腕は、フータロスの制御を超えて、自身の意思力をもって突き上げられる。
「来いッ、スチームライナー!」
そう高らかに発した音声の末尾に、一抹の不安が強張りとして滲み、淀む。今、己がやろうとしていること。いずれ、試しにやらんとしていたこと。それが為せる確証は、何処にもない。
それでも――全ての荷が揃った巣立ちなど、何処にもない。嵐の中、飛び出さねばならない時がある。
『スチームッッ!』
あらためて腕で天衝くノコの意気に応じ、横転したままだったスチームライナーが応ずる。野太い声と共に走り出し、我が身を縮小させながら、その指先に挟まるカードに収まった。
「それを、スーツの裏の自らの指輪から、風雅に託された錬金の証から雷光を迸らせながら調整の錬成。ライダーパスへと滑り込ませた。
「何だと!?」
来人は初めて、激しい動揺を見せた。
それを意に介さず、バックルに読み取らせた。
〈スチームフォーム〉
パージされた外装が、色を変え裏返り、形を変える。放電とともに、再びプラットフォーム体に吸い寄せられ、再構築されていく。
鈍い紫紺の輝きをシャープな目に宿し、両肩に蒸気機関車の頭部を模した装甲が、その上半身を覆う。
ノコ自身の時の運行に従い、錬金とイマジン、異種なる力と技術を繋ぐ線路に切り替わる。
その姿が、そこにはあった。