学園仮面ライダー ~融汽 スターターサイクロン〜   作:大島海峡

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7.

 分解しながら宙に散ったデンガッシャー。その一部を掴み取ったノコの手に紫電が迸り、残りのパーツが集結し、連結する。

 そして弓型に組み上がったその間に、光線の弦が張られ、そこに指先をかけて速射。その内のいくつかが、不意を突かれたダブルを射当たる。

 

 だが、それも初撃、次撃だけのことで、あとは盾に防がれ、かつそれさえ傷つけることは能わない。

 

「下らない……さっきとスペックはほとんど変わってないじゃないか!」

 嘲りと共に、踏み出そうとした。その足下で、突き立った光矢が物質化し、円筒状になって盛り上がる。そこに開けられた気孔から、蒸気の如きものが噴き上がり、視界を埋める。

 

「いくら小細工を弄したところで」

 そう嘯きながら、自らの目元にガジェット、デンデンセンサーを取り寄せる。そして白霧の如き幕中で動く熱源を見定め、まさに今、死角より迫らんとした人のを捉え、後ろ蹴りを喰らわす。

 

 そして盾を押し付けるようにして突き倒し、胸部を圧する。

「技も、力も及ばない。君程度ではボクには勝てない」

 ガジェットを投げ捨てそう冷ややかに言い渡す来人に、

 

「いいや……勝ち方なら、すでに教えてもらった……!」

 ノコはそう返した。

 指先に、一枚のカードを秘して。

〈ワープテラ!〉

 ライダーパスに挿入したそのケミーカードを、バックルに読み取らせる。

 

 瞬間、ダブルの足下より、かのライダーは姿を消した。

 次の瞬間、中空を捻じ曲げて生じた歪みより、ノコは現れ、捕捉からまんまと抜け出た彼は、来人の意識と視覚の外より、拳と脚を叩き込んだ。

 体勢の整わぬうちに、何度となく。

 

「舐めるな……!」

 歯噛みつつ、来人は取り乱さず防御の構えをとり牽制。その上で、銀に青端子のメモリを取り出し、腰のスロットへと入れ、スイッチを叩く。

 

〈ゾーン! マキシマムドライブ!〉

 野太い音声と共に、彼の所蔵、鹵獲したであろう幾多のガイアメモリが浮き上がる。その中で、先に飛ばされたプリズムのメモリを手にして、剣の柄へ。

 

〈プリズム! マキシマムドライブ!〉

 ウインドの竜巻さえも裂いた光の刃が、ノコも貫かんとする。

 砂塵と蒸気の中、浮き彫りになったそれに対し、もう一枚のカードを、パスに入れる。ベルトにスライドさせる。

 

 それは風雅を助け起こした時に、託された一枚。

 おそらくは、その敗れる間際に、気づいた対策。

 

『力に頼りすぎるな……大切なのは、ケミーと共に戦う意志だ』

 彼より薫陶された、言葉のごとく。

 

〈クロアナ〉

 ノコの突き出した手の中に、小規模なブラックホールが生じる。

 それは向かっていく幾筋もの光帯を、暗黒の世界へと取り込み、葬り去る。

 

 のみならず。

 強烈な吸引力でもって、周囲のガイアメモリさえを引きつけていく。

 その内にあるであろう一本に、ノコは意識を絞った。

 

 先に、来人が声高に吹聴したこと。そして、

『ダブルの系統で厄介なやつ? そりゃあなんてったって……』

 ある日あの時、何げない疑問からの、他愛ないフータロスとの会話。何処からか流れ着き、拾ってきたダブルのキーホルダーを、どこか懐かしげに手で弄びながら、彼は答えてくれた。

 

「見つけたっ」

 ノコは飛びつくようにして、白いガイアメモリを掴み取った。

 そこに刻まれたイニシャルは『E』。それを掌上に置くと、内蔵される情報をもとに再構築。一枚のカードへと変化させる。

 

 それを使っていた……否、使って成るはずだったライダーの絵姿。それに元となったガイアメモリを組み合わせてマスコット化させたようなデザインのカード。

 

「馬鹿な……っ、エターナルメモリが、ケミーカードに!?」

 来人の前で、作り替えたカードをパスに挟む。

 

 その瞬間、赤と青のフレアが、内側から立ち上ってノコの心身を焼く。

 その苦痛に呻きながらも、両脚で踏ん張り、奥歯を食いしばる。

 わかっている。すでに敗残の身とは言え、他者の力として用いられることは、我慢がならないだろう。その反骨の意思を、ひしひしと感じる。

 

「今だけで良い……僕に、力を貸して……!」

 その意気に同調してか、拮抗、反発し合っていた二色の炎のうち、青が勝っていく。赤い側を己の内に飲み込み、火花として散らす。

〈エターナル〉

 ライダーパスを読み取ると、空間内を雷光が駆け巡る。

 

 エターナルの能力。T2以前のメモリを無効化させる。

 無論、使用しているメモリの大半は、そのT2ゆえに、基礎を揺るがすことは出来ない。

 

 ただ一つ。

 ガジェット付きのエクストリームメモリを除いては。

 

「なっ」

 瞬間、力無く鉄の鳥が、ドライバーから零れ落ちる。付随していたアクセルの特性も喪失し、その力も、姿も剥落していく。

 たちまちに仮面ライダーサイクロンに戻った来人に、キックを見舞わせた。

 蒼炎の螺旋が、若緑に再統一された外殻の前面に叩き込まれ、砂漠を転がる。

 

「異なるライダーの力を組み合わせ、ハードウェアを変質させる……こんなライダー、データに存在するわけがない!」

 声を裏返して叫んだ来人は、ロストドライバーに残されたサイクロンメモリをマキシマムスロットに移し替え、跳ね上がった。

 

〈サイクロン! マキシマムドライブ!〉

〈フルチャージ〉

 

 ノコの方も、眼前の障壁を打ち砕くべく、ボディの節々から蒸気を排出しつつ駆け出した。

 緑碧の旋風がノコの頭上を襲う。推進力を増してそれを潜り抜けたノコは、反転ざま飛び蹴りを食らわせるも、すばやく身を切り返したサイクロンのストンピングと打ち合った。

 

 そして必殺のキックを打ち合った状態で、刹那の拮抗。

 その瞬間に、ノコは再度パスを読み取らせた。

 

〈フルチャージ〉

 再充填された力のコードに従い、肩の煙突が体の線路(ライン)を伝い、打ち合う脚部に連結する。

 放出される熱が周囲の空間を捻じ曲げ、一気に風と蒸気と電流とが放出され、推し進ませる力を倍加させていく。

 そして空気の壁を裂くが如き駆動音を響かせながら、サイクロンの蹴撃を抜いた。胴を払った。

 

 直撃を受けた来人はその場に踏みとどまるも、その半身をえぐり取られていた。

 そこから血肉の代わりに、可視化された地球のデータコードと、スパークを散らしながら、自らを突破した若者を顧みた。

 

「……馬鹿な坊やだ……」

 サイクロンは、息も絶え絶えに言った。

 

「余計な好奇心に駆られて九堂風雅さえ拾わなければ……外の世界に憧れてこの牢獄を出さえしなければ、苦しい思いなんて、せずに済んだものを……」

 なおも冷笑を言葉の裏に含ませながら、

 

「まぁそれは――『ぼく』も、同じか……」

 自嘲めいた捨て台詞を最期に、仮面ライダーサイクロンはけたたましい、破裂音と電子音の混合物と共に、多くのガイアメモリを道連れに爆散した。

 

 園崎来人なる人間は、既に死んでいる。

 フィリップという少年は、生まれなかった。

 世界を荒らして回った末に、この砂漠で敗れ消えたのは、ただのデータの塊だった。

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