災害の悪魔は、高いところから東京の街並みを眺めることが好きだ。特に夕方……人の往来が多くなる時間帯の。
日が沈みきる直前特有の空の色と、吹き抜けていく夜を纏った少し冷たい風が好きだ。
しかし、さきほどの公安とテロリストたちとの戦闘で、今日は警察や救急ばかりで漠然としたつまらなさを感じていた
「…おい」
「すまなかったね、呼びつけて」
アースは声のした方に振り向くと、背後に立っていたデンジに向かって少し申し訳なさそうに微笑んだ
「今夜は家で寿司食うんだ、早く戻んねぇとパワーに全部食われちまう」
「仲が良いようで嬉しいよ」
困ったように眉を下げ、アースは静かに笑った
「これでしょーもねぇ用事だったら、アンタのこと殴っちまうかもしんねぇ…」
「ははは、大丈夫。君にとっても、そう悪い話じゃないと思うよ」
「殴ると怒られっから、それは冗談だけどさ……こんなとこで話さなきゃなんねぇ話なのか?」
「デンジくんは、こうやって街を眺めるのは好きじゃないかい?」
「んー…女となら楽しめるかもな」
「君らしくてたいへん結構、ここは私のお気に入りの場所なんだ」
「ふぅん」
大して興味のなさそうなデンジの声に、正直だなぁと苦笑しつつ、アースは本題に入った
「いつ崩れるか分からない、私たちが守るべき民間人の日常を目に焼き付けておくのは大事ってこと」
街をぼうっと眺めるアースに倣って、デンジも隣に並んで眼下の街を見下ろしてみた。…が、デンジにとってそれが『楽しい』とはあまり思えなかった
「──デンジくんは知らないかもしれないけれど、悪魔はこの世界で死んでも地獄で蘇るんだ。そして地獄で死んだら、またこの世界に舞い戻ってこれる。
ただし、形成されていた知性や人格は全て失っている状態でね」
「…話が見えて来ねんだけど」
「まぁ焦らないでよ、順を追って説明するから。……要するにね、私が死んで再び『災害の悪魔』として蘇っても、『それ』はもう既に『私』じゃないんだ」
デンジはアースを見たが、西日のせいで彼の表情を読み取ることはできなかった。
数秒の沈黙の後、アースはパッと声を明るくさせた
「ところで、君は銃の悪魔を倒そうとしているんだって?」
「あ? そうだけど…マキマさんと約束したし……」
「じゃあ君はこの先、簡単には死なないよね?」
「不死身だしな」
「うん、やっぱり君にしてよかった。君に頼みたいことがあるんだ」
「頼みたいことだァ〜?? 誰がヤローのお願い聞くかっての」
「もちろんタダでとは言わないさ、私がデンジくんとマキマちゃんの仲を取り持ってあげるよ」
「…ほう?」
「手始めに、そうだな……2人きりで食事ができるように私が予定を調整する、とか」
「んなことできんのか」
「私は公安長いし、マキマちゃんとはそれなりに関係値があるから役に立てると思うんだけど…どうかな」
「ハッ、しっかたねぇな〜!! 話くらいなら聞いてやらァ」
アースはデンジの素直さの微笑ましさから、目を伏せ眉を下げて笑った
「ありがとう、デンジくん…助かるよ」