車ごと爆風に飛ばされたことで、アースはデンジがレゼに勝てなかったことを悟った。
瓦礫の中から起き上がり、彼はレゼと真正面から対峙した
「レゼ」
彼の静かな声から感情を読み取ることは容易ではなく、俯いていた彼の表情を見ることも難しかった。
昔から本心をなかなか見せないアースが、レゼは今でも苦手だった。簡単に金や女に靡かないアースの性格は、彼女にとって扱いにくかった。
……あるいは、苦手であると、彼女自身に言い聞かせていた
「君と交わした約束は、私の本心だ。不本意ながらも公安に捕まってしまったとき、真っ先に君のことを考えたよ」
「思い出話でもするつもり?」
「いや、
「私はそんな風に思ったことはない…それで、何が言いたいの?」
ああ、これだから嫌なんだ。レゼは、心の中で悪態をついた。アースと話していると、何が本心なのかレゼ自身も分からなくなってくる。
それは、アースでさえ自覚していないアースの強みだった。
理性的かつ淡白な喋り方で感情を隠し、相手の思考さえ乱し、相手に『自分の次の手』を悟らせない
「そうか……」
「……」
ぴり、と空気が張り詰め
「だが…いや、だからこそ……かな。ビームに傷を負わせた君を、許すつもりも毛頭ない」
「!!!」
大地が脈打ち、アースを取り囲んで大量の雨が降り注いだ。目の前すら見えないほどの、強い、雨。
今、どこに誰がいるのかも分かりやしない。
数秒間それが続き、アースが能力を停止させたと同時に、ピタリと全てが止まった。不気味なほどに、一瞬で綺麗に。
もうそこに、アースもレゼの姿もなかった
「今だ、アキくん!!」
姿は見えなかったが、アースの声が響き、アキの剣によって、レゼはデンジを持っていた方の腕を斬り落とされた
「あ゙ぁ゙…クソッ、フラつく……貧血か」
ビームに分けた分の血液、そして能力を使う際に失った血液。その失血量は、彼の1回の使用限界量を僅かに超過していた
「どこだ、ビーム…デンジくん」
壁伝いにずりずりと動きつつ、アースは必死に頭を回した
「きっとレゼは、あれくらいの振動と雨量なら避けれてしまう…それはいい、アレはアキくんを備えさせるための目眩ましのようなモノだ。
問題は……レゼに仲間を呼ばれる可能性があるということ…」
と、そこまで考えたところで、突如として暴風が吹き荒れた
「!!?」
アースは暴風の正体に思考を巡らせると、1つの答えに辿り着き、舌打ちをした
「台風の悪魔を、呼んだのか……レゼ!!」