岸尾はチャーチルパンチカットの葉巻を手で握り口にあてがいながらうっすら煙を立てて語った。「その新商品、誠実か?」
部下「は、はい。」
岸尾「じゃぁそのディテールはないだろう」岸の顔が一瞬白い煙でプワッと隠れた。
部下「し、失礼しました。」
岸尾「peacementhol・・・ねぇ・・・1100に06を購入とは、購入のタイミングからして車でも売ったか。お目が高いのかただのバカなのか・・・」豪華な彫刻の入った木造の部屋はどこか甘みのある香りがあった・・・。
「あれは1100・・・サングラスに金髪、黒い服に青いタングステンネックレス・・・どうみても不審者・・・いや、地味ながらミュージシャンか・・・。おそらくやつか。peacementhol・・・。ふっ、アレを果たして見出すか・・・909で渋い顔をした・・・フフッ少しはできるじゃないか。」画面を眺める岸の手元にはジジっと音を立てるチャンセラー製トレジャラーがそっと細い線状の煙を上げている。
深くゆっくりと吐き出し、「ユーチューブでやたらしょぼいのが多い中いくつか光るのがあったが・・・あれでは足りんな。水曜日の昼過ぎに来た・・・休みを取った同業者かはたまたアルバイトか。ずいぶんよゆうげだな。」灰皿でSの字にずっと火種は消えた。
「ふっ、山根が目を付けたか。物好きだな。」
サングラスの不審者は右手を握り左手で包んで前に出して頭だけ少し下げた。山根は普通のお辞儀で対応し、肩が揺れて笑っているようだ。
「山根がまさか営業目的でなく笑うとは。あとで聞いてみるか」
数時間後
「山根、あのサングラスはなんと名乗っていた?」
「M.Oと言っておりました。」
「ほう、やはりな。宛名とメールアドレスが一致する。」平たいグラスを手で揺らしながら、moresが静かに短くなっていく。
「なぜおまえは笑っていたのだ?」
「わが社に無い型番を口にされました。たしか・・・T-5とか」
「面白いやつだな。確かに。しかし見たところあんな若造がなぜあんなものを・・・」
「ご存じで?」
「お前は知らなかったか。あの部署の一番最初のヘッドホンだ。セミオープンのな」
「私が知らないほど昔のものですか・・・」
「さしづめ線が切れて買い換えようにも判断つかないからうちを選び、どうせならと1100だろうな。正解っちゃ正解だがさてな。」
「それがもう樹脂が黄色くなっていて線に万が一があってはならんと箱に入れて管理しているそうです。赤い当社のヘッドホンおそらく900あたりを」
「7だ。あの小僧、まさか両翼を固めていたとはな。909でイヤそうな顔をしていたな。おまえエイジングしてないのを展示しただろう?」
「それは取り換えが間に合わず、ディスプレイ作業者全員を整列し、将棋倒しの制裁を与えました。」
「実に誠実だ。だがお前は別だ。責任は取れるな?」
「こちらを・・・」
岸尾に勝るとも劣らぬ達筆で辞表と書いてあった。
「私も鬼ではない。クビ扱いにする。さっさと職安で受け取ってこい。面接官には悪いようにしないよう言っておく。」
「申し訳ありませんでした、失礼いたします」
・・・
「60mk2に610か・・・610のおろしたてを聞いたならあの反応も腑に落ちる。いい耳に恵まれたな、peacementholとやら」
長いmoresはすでに口元まで火種が迫っていた。