【書籍化】救いない怪異の世界をRPGの世界と勘違いしてるやつ   作:流石ユユシタ

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小話 炎の占い師の配信デビュー

 影森町の朝は、いつもと変わらず静かだった。

 

 火の鳥様神社の境内に、今日も冷たい空気が流れている。そして、鳥居の朱色が朝日に照らされて鮮やかに輝いていた。

 

 神社には常に神秘的な雰囲気が溢れている。その神社は火の鳥様と言われる神様が祀られている場所。

 

 少し前までは薄暗く、汚れているような部分もあった。しかし、黎明が現れて以降、神秘的な雰囲気が溢れ、志乃や志麻が掃除をしたことで綺麗になっている。

 

 ただ、その祀られている火の鳥様は神社にはおらず……

 

 ──篝火家に居候状態であった。

 

「ねえねえ、スザクさん。ちょっと気になることがあるんですけどぉ」

 

 篝火志麻のゆったりとした声が篝火家リビングに響いた。その部屋ではソファで寝転がり、リンゴを齧りながら、スザクがスマホをいじっている。彼女は人間の女子高生の姿のまま、ずっと過ごしていた。

 

 本来の姿、とは言えないがスザクは今の姿が妙に気に入っていた。

 

「……なにー? 今、周回してるんだけど。悪いけど後にしてくれるかしら」

 

 現代機器に夢中になる神様。志麻は僅かに苦笑いをしながら、リンゴを差し出した。

 

 

「あのリンゴをうさぎさんみたいに切ったので……少し話いいですかぁ?」

「……そう、それなら聞いてあげなくもないわ」

「その、少し気になることがあって」

「ふん?」

「スザクさん、霊力が最近少しだけ小さくなってないですか? 本当に誤差みたいなものかもしれないですけど。ちょっとだけ気になりまして」

 

 スザクは彼女の話を聞きながら、リンゴを一口ついばんだ。そして、もぐもぐとリンゴを咀嚼して食べ終える。

 

 その後に、ようやく志麻の話に真面目に返答を始めた。

 

「そりゃ、そうでしょ。ワタシは信仰から生まれたんだから。現代じゃ信仰が無いんだから、徐々に消えるのは不思議じゃないでしょ」

「あ、そ、そうなんですかぁ? で、でも、黎明さんが山神を倒した時に、霊力が沢山入ったんじゃ?」

「一時的にね。ワタシの霊力総量も上がったわ。ただ、ワタシの場合は徐々にまた減ってくのよ。人間の場合も老いていったら霊力が減るの。それと一緒よ」

「あ、そ、そうなんですね」

 

 スザクは信仰から生まれた神。それ故に信仰がなければ徐々に滅びへと向かってしまう。しかし、スザクはそれに対して、そこまでの恐怖を持っていない。

 

 寧ろ滅びを受け入れるのだ。だからこそ、何事もないように過ごし続ける。

 

「よ、よくそんな落ち着いてますねぇ?」

「ワタシは1000年生きてるしね。特に今更って言うか」

「そ、そうですかぁ。でも、志乃もわたしもスザクさんが、消えちゃうのは悲しいって言うか」

「いや、山神の霊力吸収してるから、消えるとしても100年くらい先よ。黎明に会わなかったら、数年で消えてたかもだけど」

「あ、そ、そうなんですか?」

「ワタシを心配なんてしなくていいわよ。あんた達よりはどっちにしろ長生きするだろうし」

 

 そうか、自分たちよりは長生きをするのか。そう思った志麻は、ちょっとだけ安心をしてスザクの隣に座り込んだ。

 

「そうなんだぁ。でも、生きられるなら、わたしが死んでもスザクさんには生きてほしいですけどぉ」

「あら、そう。まぁ、ワタシはあんまりなんとも……逆に生きたいって思うと山神みたいな神になっちゃうしね」

「そうかぁ、でも、なんか消えてくのが分かってるのに、何もしないのも嫌だなぁって思いますぅ」

「そう」

「……スザクさんには感謝もしてるし、最近はずっと一緒だしぃ、もっと、ずっと生きてくれる方法があればいいんですけどぉ」

 

 志麻はそう言って少し考え込んだ。スザクはスマホの画面を見ながら、ふんと鼻を鳴らした。

 

「別に、そんなこと考えなくていいわよ。ワタシはワタシで、もう十分長く生きたし」

「でもぉ……」

 

 志麻は悩んでいたようだった。そして、ふと思いついたように顔を上げた。

 

「あ、そうだぁ。スザクさん、占いとかできますかぁ? 前に詩さんが、陰陽術の中には他者の運命を予測するのもあるって言ってましたよねぇ」

「占い? あぁ、占星術くらいなら使えるけど……なんで急に?」

「えっとですねぇ、わたし、VTuberやってるじゃないですかぁ」

「ああ、黒魔導士シマとかいうやつね。知ってるわよ。最近、Vチューバーも見てるし。人間も面白いことを考えるわよね。安倍晴明も変化する術を使ってるの見たことあったけど、似たようなもんかしらね」

「あ、いや、それは知らないですけど……その、占い配信とかやったら、スザクさんのこと、もっと色んな人に知ってもらえるんじゃないかなぁって」

 

 

 スザクは、一瞬、手を止めた。

 

「……は?」

「だからですねぇ、占い師としてコラボ配信するんですぅ。そしたら、視聴者さんも『すごい!』って思ってくれて、スザクさんへの信仰が増えるんじゃないかなぁって」

 

 スザクはしばらく黙っていた。そして、呆れたように言った。

 

「……馬鹿じゃないの? そんなことで信仰が増えるわけないでしょ」

「でもぉ、やってみないと分かんないじゃないですかぁ」

「てか、増やしたいとか思わないし」

 

 

 スザクは否定的だが、志麻は随分と乗り気だった。志麻からすれば、父親を亡くしているのが心に残っていた。

 

 それ故に消えてしまうかもしれない、という事実を無かったことにはできないのだ。

 

 

「わたし、スザクさんに消えてほしくないんですぅ。だから、できることは全部やってみたいんですぅ」

 

 スザクは少し驚いたように志麻を見た。

 

「……いや、消えるのは100年ぐらい先よ。黎明が倒した山神ってマジで化け物で、霊力溜め込んでたし」

「そうだとしても……ほら、そのままにしておくっていうのも気持ちがスッキリしないですぅ。スザクさんは、わたしの大事な恩人ですし」

 

 

 志麻はそう言って立ち上がった。

 

「じゃあ、近いうちに配信しますねぇ。準備しといてくださぁい」

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 勝手に決めないで!」

「そうですねぇ。一旦、わたしのマネージャーに聞いてみますぅ」

 

 志麻は、にこにこと笑った。スザクは困ったような表情を浮かべて、諦めたのか、スマホのゲーム周回を再開した。

 

 もう勝手にしてくれ、と言ってるようにも見える。

 

 

「……志乃もだけど、あんた達は押しが強くなったわね」

「そうですねぇー。スザクさん、お父さん、そして、黎明さんのおかげで強くなったんですぅ」

 

 

 志麻はそう言って、部屋を後にした。

 

 

 

◾️◾️

 

 その日から数日が経過した。

 

 志麻はマネージャーに確認をとり、許可をもらう。スザクを占い師として配信活動に登場させることが決定したのだった。

 

 ちなみに変な人だったら困るということで、能力の実証を求められたのだが。マネージャーの眼の前で実践してもらったところ、余りにも当たりすぎて、マネージャーがビビり散らかして逆の意味で心配されたのは余談である。

 そして、志麻もここまで当たるとは思ってもみなかったので、内心驚いている。

 

 

 それはさておき、志麻の配信が始まった。

 

 画面にはいつものように黒い魔導士の姿をしたアバターが映っている。だが、今日は少し雰囲気が違う。

 

 背景には星座が描かれたタペストリーが掛けられており、テーブルには水晶玉が置かれていた。

 

「今宵も黒魔導士シマが降臨した。我が魔導書達よ、待たせたな」

 

 

 志麻の厨二チックな声が配信に響く。すると視聴者のコメントが、次々と流れてくる。

 

 

『シマちゃんこんばんは~』

『今日は占い師と絡むって予告で言ってたけどマジ?』

『背景変わった?』

 

 志麻はにこにこと笑いながら言った。

 

「その通り、今日は我が未来をとある占い師に見通してもらう企画である!」

 

 その瞬間、コメント欄が一気に動いた。

 

『占い師!?』

『え、シマちゃんを占うんだ? 絶対インチキ』

『怪しいwww』

『占い師は基本適当じゃ?』

『どうせ適当に言うだけでしょ』

 

 志麻は予想通りの反応に、心の中でにやりとした。

 

「ふっ、確かに疑うのもわからなくはない。だが、今宵のゲストは一味も二味も違う」

『誰?』

『どうせインチキでしょ』

『占いとか全部嘘だし』

 

 志麻は少し間を置いて言った。空気をよく吸って威厳ある声音を発する。

 

「では紹介しよう。紅蓮の瞳で未来を見通す少女、スザクだ!」

 

 

 画面に、炎の鳥のアバターが表示された。

 

『なんか、燃えてる鳥が出てきたw』

『鳥なのに燃えてて大丈夫?』

『鳥に占いできるの?』

 

 色んな意見が交差する中、スザクの声が、配信に響く。

 

「……よろしく」

 

 ──ぶっきらぼうな声だった。

 

『声渋い』

『でも可愛い感じするね』

『でもインチキでしょ』

『でもでも、可愛い声だからよし』

 

 

 志麻はコメントを見て予想通りと感じる。まぁ、占い師と言っても完全に信じる方がどうかしているからだ。

 

 

「ククク、魔導書達が疑惑の念が伝わってくるぞ。だが、このスザクは本物だ。スザク、お前の力を見せてやれ」

「……まぁ、いいけど」

「それでは、占ってほしい魔導書はいるか?ちなみに、生年月日を言ってもらうから、言いたくないなら名乗りをあげるでないぞ」

 

 志麻がそう言うと、視聴者の中から沢山の手が上がる。

 

 なんだかんだここにいるリスナーはオカルト好きや厨二病が多い。わざわざ企画として呼んだ占い師が完全な一般人ではなかろうと、興味津々なのであった。

 

 

『はいはいはい!!』

『おれ!!』

『はいはい!!』

 

 

 

 次々とコメントが流れる。その中で、スザクは適当に選んでその視聴者の名前を呼んだ。

 

 

「『夜空の星』。あんたにするわ」

『え、俺?! やったー』

「そうね、生年月日だけ教えてくれるかしら」

『2014年3月15日』

『わかくね?』

『ここにいるのはおじだけじゃないんか』

『つうかあっさり個人情報晒して怖くないんか』

「そう、少し待ってくれるかしら」

 

 

 スザクは、少しの間、黙っていた。そして――

 

 

「……あんた、最近、仕事で悩んでるでしょ」

『え』

 

 そう言われてコメント主が、驚いたような気配を見せる。

 

「上司との関係が上手くいってない。それと、転職を考えてるけど、踏み切れてないわね。因みに営業、保険を売ってるわね」

『は!? な、なんで分かるんですか!?』

 

 

 スザクは淡々と続けた。別にこの程度は驚かれるほどではないからである。

 

 

「運気の波として、来月、その場に良縁ありとでてるわ。だから、今は浮気心を抑えて、眼の前の仕事に全力を尽くしなさい」

『マ、マジですか!? ありがとうございます! マジで悩んでたんです』

 

 

 その反応を見て、コメント欄が、一気に動き出した。もしかしたら、本物かもしれないと一部の視聴者が思ったからだ。それと同時に疑う視聴者もコメントをする。

 

 どちらにしろ、反応が加速するのだ。

 

 

 

『え、マジ? すごくね?』

『当たってるっぽい』

『いや、やらせとかじゃ?』

『いうて誰にでも言える事を言ってるだけともいえるぞ』

『インチキじゃない?』

『いや、流石にやらせか?』

 

 

 

 凄い凄いと言われてるが、スザク本人からするとそこまで驚くようなことではなかった。

 

 占星術、と言われる陰陽術がある。これは、生年月日さえ分かれば、それを教えた相手の運気が見れる。という術だ。

 

 スザクはそこに独自の改良を施し、より詳細に相手の運勢にとどまらず、ある程度の情報を見れる術にしあげていた。

 

 一見すると凄まじい効果だが、これには欠点もあった。

 

 それは、相手の霊力が一定以下でないと見ることが出来ないということだ。一般的な人間の未来ぐらいしか見ることが出来ない。

 

 しかも、その対象に対して怪異などが近くにいる場合、未来が見ることが出来ないというものだった。

 

 安倍晴明はこの術を発明したが、見たとしても一般的な情報しか見ることが出来ないため、使用することはほぼなかったという記録が残っていたりもする。

 

 そして、スザクもそれを知っているので実戦では全く使い物にならない。だからこそ、なんともないような反応をしているのだ。

 

 

 ただ、一般からしたら凄い以外の感想はない。むしろ、凄すぎるのだ。

 

 

 スザクと一般人では価値観も次元も違う。だから、そんな凄まじい現象を見て一般人は疑ってしまう。

 

 

 ──流石に一回じゃ信じるはずがない。それは志麻も思っていた。

 

 

 だからこそ、次に占ってほしい視聴者を募る。

 

 

「クク、まだ疑っているようだな。まだまだ、占ってほしい魔導書はいるか?」

『はいはい!』

『疑ってるけど、俺も試してほしい』

『うーん、どうなんだろう?』

 

 

 

 

 ──疑う視聴者が多かった。

 

 

 だが、ここからスザクは何度も何度も、占いで視聴者の悩みなどを見抜き、アドバイスを行なっていく。

 

「次は……かるびん、ね。懐の金運に陰りが見えてるわ。おそらく社長なんでしょう?財務状況、特に税の関係をきっちり見直すことね。サボると破滅の未来が見えてるわよ」

「次は、語彙力ないタニシ、ね。隠し事に凶事ありと出てるわ。ここでは言わないけど、奥さんに話すべきことがあるんじゃないの?逆に全てを打ち明けることで吉に転じると出てるわよ。覚悟を決めなさい」

「次は給料日前の震える財布、ね。金運以前に、健康運が真っ黒よ。特に肝臓。お酒で現実逃避しても、財布の中身は増えないわ。今夜、緑色の野菜を摂りなさい。それをしないと、次の給料日は病院のベッドで迎えることになるわよ」

「次は……モロボシショウ、ね。仕事運に大凶が出てるわ。大事な取引先に送ってないメール、あるでしょ? それも相手、相当難しい人よね。返信待ちのまま放置してるはずよ。今すぐ受信箱を確認しなさい。あの相手を怒らせたら二度と関係修復できないわ。このまま忘れてると、明日には信用を失って、来月には取引打ち切りよ」

 

 徐々に反応が変わりつつある中。スザクはさらに視聴者を占っていった。そして、そのほとんどが「当たっている」という反応を見せた。

 

 

「次は『月光』ね」

『俺か!?』

「あんたは……大学生とみたわ。ああ、恋愛で悩んでるわね」

『あ、当たってます……』

『さっきからだけど、まずこの時点で当たってるのがヤバいわ』

『それな』

「好きな相手がいるけど、告白できずにいると出たわ。中学からの同級生のようね? 大学生になっても、なかなか距離が縮んでないようね」

『それも当たってます……。なんで分かるんです?』

「でも、来週中に、強い運気が来るわ。告白の機会としてね。その時を逃さないようにしなさい。女は度胸よ」

『マジですか!? 頑張ります!突撃します!』

『すげえ』

『ていうか女なんか。そっから当ててるのヤバ』

『スザクって人さっきからすごすぎる』

『魔導書って男しかいないと思ってた』

『なるほど!つまりオフ会とかあれば……』

『出会い厨はBANよろ』

 

 

 配信の終盤、コメント欄は完全に変わっていた。

 

 

 

『リスナーの特定早すぎww』

『占いっていうかエスパーだろ』

『拡散してきます』

『マジでスゴイ』

『流石に本物と信じるしかない』

『信者になります』

 

 

 そのコメント欄を見ながら、志麻はにこにこと笑った。

 

 

「クククどうだ、当たるであろう?」

『当たる!』

『信じるわ』

『スザク様天才!』

 

 

 スザクは少し照れたように鼻で笑う。あまり素直になれないのが、彼女なのである。

 

 

「ふん、これくらい当然よ。ワタシは神なんだから。それより、信じたならちゃんと崇め奉ることね。信仰なさい。そしたらまたやってあげなくもないわ」

『ツンデレかわいい』

『自称神のツンデレは可愛い』

『また絶対やってください!』

『信仰します!信者になりました!』

 

 スザクと視聴者の対話を見て、志麻はくすくすと笑った。

 

「クク、スザクには定期的に来てもらうことにしようか。では、今宵はここまでだ! また深き深淵で会おう」

 

 配信が終わり、志麻はパソコンの前で大きく伸びをした。

 

 

「……ふぅ。疲れましたぁ」

 

 

 そして、後ろを振り返ると、スザクが静かに佇んでいた。

 

 

「どうでしたかぁ、スザクさん?」

「……確かに信仰が深まったようね。こんなやり方もあるなんて、変な感覚よ」

 

 

 スザクは、小さく笑った。

 

 

「悪くない感覚、ね。まぁ、これが良いことなのか知らないけど」

「良いことですよ!」

 

 

 志麻はにこにこと笑った。

 

 

「これで、スザクさんももう少し長生きできますねぇ」

「……100年が100年と10日になったかもね」

「えー、それならよかった。志乃もきっと喜びますよぉ」

 

 志麻はそう言って、椅子に深く座り込んだ。

 

「でも、これからも続けないとですねぇ。一回だけじゃ意味ないですしぃ」

「そう……」

「うん。週一くらいでやろうかなぁ。そうしたら1000年生きられますねぇ」

「そうなったら、2000歳になっちゃうわね」

「おー、そんなに行ったら凄いですねー」

 

 

 そう言って、志麻はスマホを取り出し、スケジュールを確認した。その時、画面に通知が表示された。

 

「……お、話題になってますねぇ」

 

『#火の鳥様占い がトレンド入り』

『マジで当たる占い師見つけた』

『黒魔導士シマの配信やばい』

 

 志麻は、嬉しそうに笑った。

 

「ねえねえ、スザクさん。見てくださぁい。もうネットで話題になってますよぉ」

「……なるほどね」

「え? 何がですか」

「詩が言ってたでしょ。現代だとSNSがあるから恐怖の伝染が早い。だからこそ、怪異は秘匿してるって」

「あぁ、そうですねぇ」

「ワタシの信仰は確かに増えてる。しかも、この瞬間にも……なるほどね。こりゃ、怪異が公になると大分人間は困るでしょうね」

 

 

 

 スザクは自分の手のひらを見つめながら、詩が言っていたことを思い出していた。現代では恐怖の伝染があまりに早く、それ故に秘匿がされていると。

 

 

「こりゃ、現代陰陽師が保守になるのが分かるわね。恐怖が伝染したら大問題でしょうし」

「え、えっとぉ、スザクさんの力見せちゃったんですけど、それってもしかしてダメでした?」

「いや、ワタシの場合は大丈夫よ。ただ、詩が言っていたことが深く理解できたわ、身をもって実感してね」

 

 

 そう言ってスザクは少しの間、黙っていた。そして、再び小さく笑った。

 

 

「……まぁ、ワタシのために一応してくれたわけだしね。一応、礼を言っておくわ。それとまだまだ消えたりしないわ。安心しなさい」

「そ、そうですかぁ」

 

 

 そう言われて、志麻はにこにこと笑う。単純に嬉しさが表情に溢れていた。

 

「じゃ、これからもよろしくお願いしますねぇ、スザクさん」

「……仕方ないわね」

 

 

 ここから、少しずつスザクの話題が大きくなり、彼女も有名になっていく。

 

 ついには、彼女もVチューバーとして、華々しくデビューするのであるが、それはまた先の話である。

 

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