【書籍化】救いない怪異の世界をRPGの世界と勘違いしてるやつ   作:流石ユユシタ

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第53話 グループ分け

連絡が来たのは、昼間だった。

 

 詩のスマホに、陰陽庁からの緊急連絡が入る。画面を見た瞬間、眉間に皺が寄った。

 

 

 

 東京、千葉、埼玉。三か所同時。美術館にて、異変が発生。怪異により人間が襲われる動画がSNSにて確認された。

 

 

 

 

 

 この事態を受けて、東京、千葉、埼玉の美術館、それぞれに二名の陰陽師の派遣は決定済み。

 

 

 しかし、どれほどの規模で異変が起こっているのか、どのような怪異がいるのか、全てが不明のままである。

 

 

 

 僅か二名では探索に時間がかかる、戦力的にも足りない場合が考えられる。

 

 

 【様々な可能性を考慮し、全ての美術館に追加派遣の要請が来ていた】

 

 

 

 

「……三か所同時か」

 

 

 

 詩はチョコスティックを咥えながら、篝火家のリビングに向かった。最近、禁煙を始めた彼女は口寂しいので似たような形状のお菓子をよく口にしている。

 

 

 そんな彼女はスザクの元に向かった。何かあれば相談するのが、最近はスザクになっていた。

 

 一方、スザクはソファに寝転び、スマホをいじっている。そして、志麻がお茶を持ってきたところだった。

 

 

 

「スザク、緊急だ」

「なに、今いいとこなんだけど」

「あ、詩さん、いらっしゃーい」

「志麻、お邪魔してる。それと、スザクを借りるぞ」

「どうぞぉー」

「いや、志麻の所有物じゃないんだけど」

 

 

 

──二人は少し場所を移動し、家の外で話をすることにした。

 

 

 

 

「それで、なに?」

「東京、千葉、埼玉、それぞれで大きな異変が起こった。そして、その被害の大きさが今までの規模ではない」

「……」

「おそらく、千人は超える事態だ」

 

 

 

 

 スザクは持って来たスマホをズボンにしまう。その目が、少し変わった。

 

 

 

 

「……ふーん、聞かせて」

「あぁ、さっきも言ったが、東京、千葉、埼玉の三ヶ所同時に異変が起こった」

「三か所同時、ねぇ。何か関係があるの?」

「三ヶ所で、美術館が開催されている。全て、日本の歴史の展示物が多いそうだ」

「……何か、やばいのでも展示されてたのかしら? 怪異が封印されてた霊具とか。ただ、そうなると人為的な可能性もあるわね」

「そう考えるのが自然だろう。しかし」

 

 

 詩は、少し考えるそぶりをした。そして、再度考えがまとまったのか、スザクの目を見据える。

 

 

「それだけでもない気がする。今、各地で封印が緩んでいるのは分かっているだろう。今回の展示物の出所は、京都の資産家だ。名前は吉井達也。洛北に広大な私有地を持ち、長年、土地から出てきた古物を収集していたらしい」

「洛北、あら……?」

 

 

 スザクが何かを思い出したかのように目を見開く。その目に、珍しく真剣な色が宿る。

 

 

「……洛北の山ね。あそこには、晴明が封印した霊具が複数あったはずよ」

「晴明が?」

「えぇ。霊具に怪異を封じるのは晴明の得意とするやり方の一つ。まぁ、洛北だけじゃなくて京都の各地……いや、全国に点在してるけどね」

「そうだな。饗島とかにも封印の鎖などがあった」

「ただ、洛北には結構多くの封印物が多いと本人が言ってたわね」

「安倍晴明本人か」

 

 

 

 

 スザクは安倍晴明により、作られたと言っても過言ではない存在。だからこそ、会話をしたこともあった。

 

 

 だからこそ、本人からの貴重な証言を知っている。

 

 

 

「そうね。封印したと聞いたわ。確か、それを管理する一族とかもいたはずだけど」

「いや、そんな話は聞いていない」

「現代では消えたってわけね。まぁ、時間が大きく経てば……管理する人間が消えてしまったり、管理も適当になっていったのかもしれないわね」

「それを、資産家が霊具と知らずに掘り起こして、展示したと」

「まぁ、その可能性もあるわね。ある意味では人為的とも言えるけど。まさか、古物として集めていたなら、まさか中に怪異が封じられているとは思わないでしょうし。展示という形で大勢の人間が集まる場所に置いた。それで、人間の恐怖や感情が封印を刺激した可能性もある」

 

 

 

 

 詩はしばらく黙って携帯を確認する。陰陽師には独自の連絡網などもあり、それについて見ているようだ。

 

 

 

「……人為的な異変か、それとも封印の自然崩壊か。どちらにしても、今は関係ない。現場を制圧するのが先か」

「あら、アンタが行くの? まぁ、今回は三ヶ所同時だしね。黎明だけって訳にもいかないしね」

「あぁ、だから、今回は全員で行く。それぞれにグループを分けてな」

 

 

 流石に黎明でも分身はできない。なので、今いる黎明陣営の戦力を分けて、同時に向かわせる。そう詩は考えていた。

 

 

 

「で、誰をどこに向かわせるの」

 

 

 二人は向かい合って話し続ける。スザクも今回は自分も行くことになりそうであると察したが、異論はないらしい。

 

 

「三か所にそれぞれ、相応の戦力を割く必要がある」

「黎明は一人で東京にもで行かせれば? 人も多いから、怪異の強さも上がってるでしょうし。でも黎明なら問題ないでしょうし」

「確かに、そうだろうな。あの力なら、一ヶ所だけでなく、三ヶ所全部回ることすら可能かもしれない。だが、以前も言ったが黎明だけに責任を多くはしたくはない」

「ふーん、まぁ、それに他の人間も育てるなら、一人より黎明の戦ってる姿とか見せた方が学びにもなるしね」

 

 

 黎明が実際に怪異と戦う瞬間は、貴重だ。それに黎明が怪異を倒した際、怪異の霊力が散らばり、近くにいる存在にも霊力が入る。そこに居るだけで成長してると言っても過言ではない状態だ。

 

 だから、戦力を大きくする意味でも黎明だけで行かせることを彼女はしない。

 

 

「あぁ。黎明と行動することで得られるものがある。だから、今回は饗島から来た、透と祈にしようと思う」

「饗島からもう一人来てたじゃない。九条透の娘が」

「いや、二人は相手の強さを数値で見れる貴重な人材。同じ場所に送るのは無駄だろう」

「ふーん、あくまで成長も考えての組み分けと」

「あぁ、そして、このグループの場合、表向きのリーダーは透だ」

「九条透、ね。まぁ、黎明を秘匿したアンタからすれば、天才は隠れ蓑にはちょうど良さそう。それで、九条透、その娘である瞳月はどこに?」

「千葉だ。千葉には蓮と紅を向かわせる。それと志麻も」

 

 

 志麻と聞いて、スザクは少し驚く顔をしたが、すぐに納得の表情に戻った。志麻も配信活動をしながらも、修行はしていたからだ。戦力として大きい。

 

 

「あー、志麻も行かせるのね、まぁ、今日は暇そうだし」

「志麻の霊力量は、並の陰陽師では及ばない。術も言霊なしで発動できる。これなら、瞳月をフォローしつつ、双子の力にもなる。後方で支援に回す」

「なるほど」

「千葉のリーダーは紅だ。蓮は突っ込みすぎる癖がある。紅が抑えてくれれば安定する」

「で、埼玉は?」

「私とお前と、志乃だ」

 

 

 スザクが軽く目を細めた。ふーんと、適当に相槌を打ちながら、納得の表情を浮かべる。

 

 

「ワタシと詩と志乃、ね。まぁ、妥当かしら。現状、ワタシが黎明を除けば、最強だし」

「あぁ、そこに志乃も入れればほぼ負けなしだろう。ただ、陰陽庁に報告をする際のリーダー役として、二人は難しいからな。私も行く」

「……志乃は若すぎるし、世間知らずだし。ワタシはどっちかというと怪異に近いからね。矢面には立てないわね」

 

 

 スザクは少し自嘲的に笑いながら、詩の方を見る。

 

 

「まぁ、足を引っ張らないことね。これでも黎明を除けば、ワタシが最強なんだから」

「そうだな。準最強の足を引っ張らないようにする」

「そう、良い心がけね。それじゃ、準備ができたらもう一度、話しに来なさい。美術館に向かうから」

「あぁ、助かる」

「あ、この準備ができたら話しかけに来な、みたいなのRPGみたいよね」

「……黎明みたいなことを言うな」

「……あら、そうかしら? まぁ、RPG最近やってるから、ハマってるし。黎明が言ってることとか考えてることとかようやく理解が及び始めた気はするわね」

 

 

 

 

 

 スザクがますます、現代に馴染んでいく様子を見て詩は、なんとも言えない顔をする。しかし、人間に友好的な感じもするので、軽くスルーをした。

 

 

 そして、詩は他のメンバーにも連絡をとり始めた。

 

 

 

 

 

◾️◾️

 

 

 

 

 

 黎明に話を通したのは、それから少し後のことだった。

 

 黎明は縁側に座って、モンスター図鑑を書いていた。最近出会った怪異の特徴を、独自の名称で記録している作業だ。

 

 

「黎明、美術館の件は聞いたか」

「うん、俺は東京だよね」

「透と祈も一緒だ」

「そっか、三人パーティーか。経験値多いといいな」

 

 

 

 詩は少し呆れた表情をしたが、どこか笑みを含んでいた。これから怪異の元に向かうと言うのに、黎明はいつも通りだから。

 

 

 

「黎明が強いのは知っている。だが何がいるか分からない。気を抜くな」

「おけ。新しいモンスターなら図鑑に追加できるし、楽しみ」

「……お前は本当にブレないな。と言うかそれずっと書いていたな」

「山を出た時くらいから書いてるよ」

 

 

 

 黎明はそう言って、図鑑のページを閉じた。その顔には、迷いがない。怖さも、不安もない。ただ、経験値が欲しいだけなのだ。

 

 

 詩はその横顔を見ながら、小さく息を吐いた。

 

 

(怪異をモンスターを考え、それを図鑑にまとめるか。安倍晴明も怪異の特徴をまとめていた文書がある。黎明も同じようなのを作るとは)

 

 

(……やはり天才とは常軌を逸することを平気で行う。安倍晴明、か。黎明に比べれば大したことはないと思っていたが……。人類を滅ぼしかねない怪異を数多封印している。黎明ほどではないが紛れもない天才なのだろう)

 

 

 

(黎明のせいで感覚がおかしくなっているが、そもそもここまでの平和を作り上げるのその手腕。尋常ではない)

 

 

 

 

(どんな人間だったか興味が出てきた。まぁ、今はいい。さっさとメンバーを集めなければ)

 

 

 

 

 

──詩は黎明陣営を全員集めた。

 

 

 

 

 志乃の家の前に三つのグループが集まった。

 

 

 

【千葉の美術館グループ】

安倍紅(あべべに)安倍蓮(あべれん)篝火志麻(かがりびしま)九条瞳月(くじょうひづき)

 

 

【埼玉の美術館グループ】

白妙詩(しろたえうた)篝火志乃(かがりびしの)、スザク

 

 

【東京の美術館グループ】

九条透(くじょうとおる)朝霧黎明(あさぎりれいめい)白守祈(しろもりいのり)

 

 

 

 

合計十名がそれぞれの美術館へと出発した。




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