【書籍化】救いない怪異の世界をRPGの世界と勘違いしてるやつ   作:流石ユユシタ

97 / 97
第75話 教祖戦

 数百人の信者が、一斉に動き出した。それぞれの白い服の下から、鉈や鎌、鉄の棒が現れる。

 

 だが、無秩序に襲いかかってきたわけではない。

 

 

「足を止めなさい! 前後左右から一斉に攻撃しなさい!」

 

 

 教祖が両手を動かす。まるで人形を動かす手品師のようでもあった。すると、信者達の瞳に絡んでいた金色の糸が強く光った。

 

 正面から武器を持った信者が迫り、その間に別の者達が礼拝堂の左右へ広がっていく。さらに後方にも周り武器を振り上げる。

 

 数百人全員が、教祖の指示で一つの生き物のように動いている。

 

 

 

 

「やっぱり、アンタが司令塔なんだ」

「全ては我が手に収まっている!!」

 

 

 

 最初の信者が鉈を振り下ろす。黎明は半歩だけ横へ動き、その手首を掴んだ。そのまま男の足を払う。

 

 男の体が一回転し、後ろから来た三人を巻き込んで床へ落ちた。続いて、左右から鉄の棒が迫る。それも黎明は右の棒を手の甲で逸らした。

 

 軌道を変えた鉄の棒が、反対側から来た鎌へ衝突する。二つの武器が持ち主の手を離れ、天井近くまで飛んだ。

 

 その間を黎明が通り抜ける。次の瞬間、目にとも止まらぬ攻撃を繰り広げ、信者達は同時に崩れ落ちる。

 

 

「廊下にいた人達と、あんまり変わらないね」

「まだまだ!」

 

 

 教祖の指示を受け、さらに信者が集まる。前方から十五人。左右からも十人ずつ。

 

 そして後方から、何十本もの金色の糸が伸びる。人間の精神へ入り込み、教団への服従を強制する術だった。

 

 

 

「神の御前へ跪け!」

 

 

 しかし、黎明は飛んできた糸を片手で掴んだ。

 

 

 

「それは、さっき見た」

 

 

 掴んだ糸を引く。すると、後方で円盤を持っていた信者達が、まとめて前へ引っ張られた。

 

 さらに黎明が腕を横へ振ると、金色の糸が近くにいた別の信者へ絡みつく。

 

 

 

 

「さて、俺も操ってみるか」

 

 

 術を受けた信者達が、今度は互いに掴み合った。前へ進もうとする者と、それを止めようとする者が衝突し、礼拝堂の一角が動かなくなる。

 

 

 

 

「なぜ、神の御技を操れる……!」

「これくらいはね。俺も人形師やってみるかな」

 

 

 

 

 黎明はそのまま金の糸を、信者全体に巻き付くように広げていく。教祖に操られていた信者、それらを今度は自分が操ろうとしているのだろう。

 

 

 

「所詮は猿真似。神の御技を完全な再現はできん!!」

「いや、これ簡単だよ。糸にMPを流して、繋がっている人を動かすんでしょ?」

「何を――」

 

 

 黎明の霊力が、金色の糸へ流れ込んだ。その瞬間、教祖の腕が大きく弾かれる。

 

 金色の糸、それが黎明の手中に収まっていく。。教祖の霊力を押し返し、そのまま信者達との繋がりを奪っていた。

 

 

「馬鹿な! 上書きするつもりか!」

「お、できた」

 

 

 黎明が人差し指を曲げる。すると、鉈を持っていた男の腕が止まる。続けて中指を動かす。男は背後へ振り返り、近くにいた信者の頭を鉈の柄で殴った。

 

 

「ぐっ!?」

「な、何を!」

「違、違います! 体が勝手に!」

「こ、こっちも体が!?」

 

 黎明が五本の指を動かすたび、信者達の動きが変わっていく。

 

 鎌を持つ女が、別の信者の足を柄で払う。鉄の棒を振り上げていた男が、そのまま隣の男の腹を殴った。

 

 後ろから黎明を捕らえようとしていた者達は、突然互いの腕を掴み、そのまま床へ投げ合う。

 

 

 

 

「おお、面白い」

「やめろ! そいつらは私の信者だ!」

「モンスターバトルってのも面白いかも」

 

 

 教祖も両手を激しく動かした。信者の体が一度止まり、黎明へ向き直ろうとする。しかし、その前に黎明が指を弾いた。信者達は再び反転し、別の信者へ襲いかかる。

 

 

 

「動け! 私の命令に従え!」

「いけ、バトルだ」

 

 

 教祖と黎明が指を動かすたび、信者達が礼拝堂の中を右往左往する。だが、主導権は既に黎明へ移っていた。次第に教祖は誰一人として操ることは不可能となる。

 

 

 

「ちょ、待て! やめろ! 貴様ら同士で戦うな!」

 

 

 教祖が叫ぶ。だが、止まらない。黎明が両手を広げると、白い糸に繋がれた信者達も、一斉に腕を広げた。

 

 そのまま周囲にいる者達を抱え込む。黎明が腕を交差させる。すると、何十人もの信者が互いに絡まり、床へ倒れた。

 

 

 

「すごい。これ、便利だね」

 

 

 

 信者がある程度倒れたので、黎明は満足げだった。その様子を見ていた綾乃は黎明の方が教祖みたいだと思っていた。

 

 

 

(やってることだけ見たら教祖より教祖らしいわね……洗脳とかもお手のものでしょうし)

 

 

 

 再び、黎明が両手の指を動かした。操られた信者達が、まだ立っている者へ一斉に襲いかかる。

 

 正面から殴り合い、礼拝堂の至る所で信者同士の戦いが続く。もっとも、黎明は急所へ刃が向かないように調整している。

 

 この場にいるのは半人半魔。半分は怪異だが、半分は人間なのだ。だからこそ、殺すことは避けていた。

 

 ただ、数百人による乱闘は続く。殴られ、投げられ、長椅子へ叩きつけられたり、大騒ぎ状態だ。

 

 教祖も慌てるが、信者達は言うことを聞かない。そっぽを向いて乱闘を続けるのだ。

 

 

「やめろ! 立ちなさい! 神の敵を殺せ!」

「教祖様!!!」

「──っ!!」

「て、手が勝手に……」

 

 

 教祖の命令は、もう誰にも届かない。最後に残った信者が、白い糸に引かれて教祖の顎へ拳を入れた。

 

 そのまま白目を剥き、床へ倒れる。そこで礼拝堂から、人の声が消えた。数百人いた信者は、全員が床へ横たわっている。

 

 

 

 

──教祖は操るのが得意だが、戦闘の強さは、そこまでだった。なので信者の拳でノックアウトだった。

 

 

 

 

「さてと、この信者達をなんとかするかな」

「ど、どんだけ強いのよ」

「これくらいはね」

「……陰陽庁の全勢力を注いでも、ここを平定するのは無理だったでしょうね」

 

 

 

 陰陽庁が複数の部隊を送り込んでも、全滅しているほどの戦力だった。しかし、黎明からしたら、新技を試してる間に終わる程度の戦力だろう。

 

 

「まだだ……」

 

 

 綾乃が驚きを隠せない中……殴られて気絶したはずの、教祖の声が聞こえた。教祖は立ち上がれない。倒れたままだが、口を動かすくらいはできた。

 

 

 

 

 

「ククク、これで勝ったと思ったか。既に手筈は整っている……お前達が死ぬ準備はな」

「手筈?」

「その通り。既に、神の復活の手筈は整っていた。そして、その封印は先ほど解かれていたのだ」

 

 

 教祖は血を吐きながら笑った。

 

 

「本当なら、金の糸で支配下に置く予定だった。だが、もういい。全て、水に流そう。文字通りな」

「どういうこと? もっとストレートに言ってくれないと」

「人間も怪異も、全ての上に立つ神格……罔象大神(みつはおおかみ)を、この世へ戻す! クク、もう既に封印は解かれているがな」

 

 

 

 

 光の明日の本拠地から離れた山中で、神の封印を解くための儀式が始まろうとしていた。

 

 

 

 

「へぇ、それはそれは。是非とも気になるモンスターだ。でも、その前に……信者とか、澪の両親をなんとかしないとね」

 

 

 

 

 そう言って、黎明は落ちていたナイフを拾う。

 

 

 

 

「モンスターの部分だけを抉ったりするから、ちょっとグロいかも。澪には見せられないな。綾乃は大丈夫そうだから、澪をフォローしてあげて」

「な、なんでわたしは大丈夫だと思うのよ……いやまぁ、大丈夫だけど」

 

 

 

 

 綾乃は未だ地面に伏して落ち込んでいる澪を、介抱する様子。一方、黎明はナイフで怪異の部分を剥ぎ取り始めていた。

 

 

 

 

 

「さて、さっさと回復させるか」

 

 

 

 

 一方、黎明は軽い感じで信者達を次々と人間に戻していった。約三分後、この部屋にいるすべての半人半魔は無事に、人間へと戻ることができた。




【9月12日】
書籍版『救いない怪異の世界をRPGの世界と勘違いしてるやつ』が、9月12日に発売されます!
書籍といえば、やはりイラストですね。

なんと、見本誌が届いたので載せますね。是非見てください。

【挿絵表示】



表紙はもちろん、挿絵もすべて素晴らしいクオリティに仕上げていただいております。さらに、WEB版から一部加筆もしていますので、ぜひぜひ、お手に取っていただけると嬉しいです!


【9月12日発売!】
下に表紙とAmazonの予約ページへのリンクを載せておきますので、気になった方はぜひチェックしてみてください!
【タイトル入り表紙】

【挿絵表示】


【Amazon予約ページ】
https://www.amazon.co.jp/dp/4815642303



そして、明日も11時更新!! お楽しみに!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ホラゲーにハッピーエンドを作った男の末路(作者:POTROT)(オリジナル現代/ホラー)

鬱要素の強いホラゲーに特殊な力を持って転生って、そんなのもうハッピーエンドを作るしかないじゃん。▼……いや、大丈夫だから。別に主人公たちを救った代償として俺が……とか、そんなんじゃないから。▼多少想定外だったけど、マジのガチのハッピーエンドだから。▼だからまぁ、安心して聞いていってくれよ。


総合評価:33028/評価:8.95/連載:25話/更新日時:2026年08月31日(月) 22:32 小説情報

【8/24 1巻発売!】因習村出身でも現代ダンジョンでなろう系をやれますか?~俺の後ろの上位存在があまりにもラスボスすぎる~(作者:不破ふわる)(オリジナル現代/ホラー)

上位存在に日替わりで性別をコロコロされる生贄系転生者が、因習村を抜け出して怪異風味の現代ダンジョンに殴り込み(強制)を仕掛ける話。


総合評価:23751/評価:9.01/連載:181話/更新日時:2026年09月01日(火) 20:00 小説情報

【一巻発売中】裏切りや絶望が溢れるゲーム世界で、鬱展開全てぶっ壊す(作者:棘棘生命)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

(旧題:裏切り・絶望がテーマの同人ゲー世界で、全てぶっ壊す)▼ニッチな需要のあるゲーム世界で、鬱展開を破壊する話▼鬱を破壊した分、様々な種類の闇は主人公に降りかかるものとする▼オーバーラップノベルス様から、8月20日に第一巻が発売しました!▼皆様のおかげです。ありがとうございます!▼書影が公開されました!▼【挿絵表示】▼書籍のページはこちらになります!▼ht…


総合評価:16648/評価:8.88/連載:133話/更新日時:2026年08月28日(金) 22:21 小説情報

【書籍化】 ま! よ! け! の! 塩! (120年分)(作者:哀森賢人/哀しみを背負ったゴリラ)(オリジナル現代/ホラー)

【書籍化決定!】2026年08月24日 GCノベルズ(GCN文庫)様より発売中!▼  自分の部屋の天井の四隅を同時に見てみよう。▼  大丈夫。何も起きないから。絶対なにも起きないから、大丈夫だから。ね?ね?▼夜の山をじっと見続けると、何か光るモノが見えるよ。▼それが動いていたら、スマホで動画を撮ってみよう。▼きっとバズるよ。ほら撮って。▼    寝る前に布団…


総合評価:27418/評価:9.09/連載:49話/更新日時:2026年08月31日(月) 01:01 小説情報

貞操逆転世界で湿度高めヒロイン達を無自覚に沼らせる転生者~死にゲー世界で鬱エンドを迎えるヒロイン全員救う、全員が曇る(作者:しば犬部隊)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

死にゲーに転生した主人公(男)が遺伝子的に湿度が高く重い女達に囲われていく話。▼なお、主人公は自分に価値を見出していないので、自分を犠牲にしたりする。▼だが それが逆に重い女の琴線に触れた!▼無自覚にヒロインを沼らせていく、ただ平穏に生きたいだけの男。▼書籍化決定 5月20日 オーバーラップノベルス様より発売! ▼


総合評価:31860/評価:8.9/連載:54話/更新日時:2026年08月25日(火) 12:14 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>