ポケモン判定された異形種   作:紅絹の木

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赤子のポケモン

 

 

 雪山から飛び立って、赤子を落とさないように、気をつけて運ぶ。

 町の上空で止まる。眼下の光景を見て私は目を丸くした。

 ポケモンがいる。

 ピカチュウが、デデンネが……他にもたくさんのポケモンがいた。

 町の中では、おそらくトレーナーと共に。外は野生として、群れで生活している。

 

「ここって……オーバーロードの世界じゃない?」

 

 なんてこった。ポケモンの世界に来てしまったらしい。私は衝撃で身を固くした。

 途端に赤子が、より大きな声で泣き出す。

 おっと、何人かが異変に気づいた。目立ちたくないので、とにかく病院を探そうと思って……気づいた。

 看板に書いてある文字が読めません。

 ならば、ポケモンセンターに行こう。特徴的なあの建物ならわかりやすい。

 

 モンスターボール、多分赤い屋根……、ジョーイさん。

 見つけた!私は町の隅っこにあるポケモンセンターに向かった。

 

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 

 もうすぐ夕方になる。あと少しで交代だ。いつも隣にいるショップのお兄さんは、ちょっとだけ用事で出かけていた。

 今日は急患もなく、穏やかな一日だったと思う。

 ここチャンプルタウンは食事処が多く、しかもおいしいのだ。今回はどこで食べようかな。カントーやジョウト地方から入った、ラーメンというものを食べようか?

 

 人の気配がした。

 振り返って「こんにちは。回復されますか?」と、ほとんど条件反射で聞いた。

 真っ直ぐ“それ”を見る。

 

 人ではない。

 真っ黒で丸い頭部、白い魔女の帽子、体を覆うほど長いベール、肌を見せない白と赤のドレス、腕には何か抱えている。

 その腕の中から赤子の声がした。

 

「赤ちゃん!?」

 

 私はひどく動揺したが、体は動いた。

 軽々と台を乗り越えて、それの近くへ寄る。得体の知れないものへの恐怖よりも、ジョーイとしての意地が勝った。

 腕の中の何かを覗いた。

 やっぱり赤子だ。それに衰弱しているように見える。

 私は急いで、ポケットの中の携帯を取り出し、救急車を呼んだ。

 

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 

 ポケモンセンターらしき建物を見つける。

 ジョーイさんらしき人が、救急車を呼んでくれる。

 赤子が無事か見届けたくて、救急車について行った。

 赤子、病院内へ。私は、ポケモンと思われているのか、病院内へは入れてもらえなかった。

 

 数日、日中は病院内の中庭でうろうろと過ごす。夜は人里離れた場所に、アイテムボックスから取り出したマジックアイテムであるテントを使って、その中で寝た。

 見た目は小さな一人用テントだが、中は二人分ぐらいの広さがある。それなりに快適だ。

 何より、アイテムボックスもマジックアイテムも使えるようで安心した。

 

 今日も朝から病院の中庭で、ぶらぶらと時間を過ごす。人からは見慣れないポケモンとして警戒され、ポケモンたちからは「あいつ見慣れない奴だけど、ウチのナワバリを荒らしに来たわけじゃないな」って感じで、受け入れられつつある。

 病院のポケモンが挨拶してくれるようになった!

 

 それで、わかった事があるんだけど。

 ポケモンの言葉はわかるんだけど、人間の言葉がさっぱりわからないんだよね……。なんでや。

 

「――アルセウスが私を呼んだから……だったりして。まさかね!」

 

 寒気がしたので、この事を考えるのやめとこうぜ!

 

 

 

 そんなわけで、私の所に訪ねてくる病院のポケモンたちに「赤子に会いたい」事を伝えまくる。元気かどうか知りたいんだ!

 すると、その翌日には話を聞きつけた看護師さんがイエッサンと共に来た。

 どうやら案内してくれるらしい。

 

 大人しく着いていくと、赤子は産婦人科の赤ちゃんたちが集まる……預かる部屋か?とにかく、赤ちゃんがいっぱいいる部屋に、いた。

 ガラス越しに、赤子たちを見つめる。

 イエッサンが話しかけてきた。

 

「わかる?一番左奥が、あなたが連れてきた赤ちゃんよ」

「分かった。ありがとう」

 

 私はじっと、赤子を観察する。

 今は寝ていた。ほっぺはふにふにそうで、温かく柔らかそうだ。

 私はほっとした。元気そうだった。良かった。

 イエッサンはさらに話しかけてくる。

 

「これからどうするの?」

「どうって?」

「赤ちゃんの事、ずっと傍にいるの?」

「それは……」

 

 ずっと、か。

 

「どうすればいいんだろう。顔を見たら結構満足しちゃったんだよね」

「その子のポケモンになれば、大きくなった姿も見れるよ」

「それは、良いな」

 

 本当に良いと思う。赤子が子供になって、走り回る姿を想像した。元気でよろしい。

 

「守ってあげられるのは、私たちポケモンだけよ」

「そうだね」

 

 ここがどの地方なのかはまだ知らないが、もしもカントーやらジョウトだったりした場合、マフィアがいる。

 誰かが、あの子を守らなくちゃ。

 赤子を凝視した。ふくふくしていて、大変可愛らしい。

 

「誰かには、任せられないから……私がやろうかな」

「気持ちは決まった?」

「うん。この子のポケモンになるよ。赤子が嫌がったら、離れる」

「わかったわ。看護師さんに伝えてもいいかしら?」

「よろしくお願いします。……そうだ、私ってポケモンなの?」

「?……どこからどう見てもポケモンよ」

 

 そうなのかー……。

 ますますアルセウスが怪しくなってきたな。

 うう、寒気が!

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 赤子のポケモンになると決意して、数日がたった。

 この事は、イエッサンから病院のポケモンたち、そして職員さんたちに伝えられた。

 そして一日に一回、数十分だけ赤子に会える時間を、もらえるようになった。

 

 赤子はすくすくと育っている。

 毎日、新しい発見があって面白い。

 今日もご機嫌に笑っている。

 

「何か、楽しい事があったの?」

 

 赤子はニコニコと笑う。

 たまらなく可愛い。

 

 

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