次元が歪む。
時空そのものが裂け、ところどころ反転しているようだ。
神秘的な光が近づいてきてその中へと吸い込まれていく。
意識が混沌とする中、気付くとそこは見覚えのある場所だった。
天冠山頂上。
四匹のポケモンたちも一緒だ。
そして目の前には光の階段が天へと昇るように続いていた。
階段を上る。宇宙が近く感じる。
そしてついに、大きな丸い平面が足場となる空間へ出た。
多くの丸でできた幾何学模様があるが、何を意味しているのかはわからない。
その瞬間、背後に大きな気配を感じた。
振り返ると、そこには先ほどの光があった。
「よく来てくれました。私はアルセウス。あなたたち人がそう呼ぶもの。ここは時間も空間も超えた私の宇宙。始まりの間」
光が次第に生物としての形を成していく。
白い体。
黄金の輪。
創造神。
その姿は、まさに神々しい。
人智を超えた神のような存在。
「ここまで辿り着いたあなたの力……私に見せてください」
力を示せ。まあ、そういうことだよな。
ファイアローが先制する。
ブレイブバード。
ファイアローが超スピードで接近する。
その速度は、確かに速い。
だが、アルセウスは、ただその場に立ちながら、隕石をファイアローへ放つ。
ファイアローは吹き飛ばされた。
強い。否、理不尽。そんな形容が相応しい。
距離を取って、ロトムに指示を出す。
だが、アルセウスは一瞬でテレポートしレーザービームを放つ。回避しきれず、ロトムは弾け飛ぶ。
束の間、今度はエリアの一角にワープし、波状に広がる地を這う巨大な衝撃波で広範囲を吹き飛ばす。
地上にいるグレイシアとザシアンが被弾する。
気付くとアルセウスの姿が見えない。
刹那、時空の壁をぶち割り、死角からこちら目掛けてダイブしてくる。
ザシアンと一緒に吹っ飛ばされる。
立て直す時間もない。
続けて、アルセウスは青いオーラを纏い三体の幻影を召喚する。
二体の分身が範囲攻撃を放つ。対応するファイアローとロトム。
その間に力を溜めた本体が、時間が歪むほどの咆哮を打ち出す。
回避できず、諸に食らうグレイシア。
息もつけない。
またアルセウスが大きな力を溜めている。身の毛がよだつ。
周りの空間に穴が開き、その場にいた全員がまとめて引き裂かれる。
圧倒的な力。
レジェンドプレートが浮かび上がる。
アルセウスから裁きの礫が放たれる。
四匹が、その全てに対応しなければならない。
だが、みんなもう既に満身創痍だ。
こちらにも迫ってくる。
ああ、これは避けられない。
そう感じて、目をギュッと瞑る。
全てを覚悟したが、礫は振ってこない。
恐る恐る目を開けると、そこには、見たことのない一匹のポケモンが、無数に降り注ぐ礫の盾になっている。
だが、おれにはわかる。
ジガルデ。
姿は出会った時と違うが。
人型になり、完全体って感じ?いや、まだ更に進化するのかもしれない。
緑だけでなく、赤と、そして青い色が体に刻まれていた。
全ての礫を受け切り、そこから、一瞬で飛び立つ。
超カッコイイ。
コアパニッシャーを放つ。
フェアリープレートに切り替え、迎え撃つアルセウス。
攻撃が通り、アルセウスにZが刻まれる。
だが、まだだ。まだアルセウスは瀕死になっていない。
その瞬間、ポケットの中の石ころがパワーを放ち始めた。
以前ジガルデからもらったものだ。
石ころを取り出すと、ジガルデナイトに変化した。
メガシンカだ!
ジガルデは輝き出す。
そして、頭の上に大きな砲台を構えた、メガジガルデが爆誕した。
アルセウスはその間に再度力を溜め、大量の裁きの礫を放つ。
メガジガルデも大砲を構え、コアパニッシャーを放つ。
アルセウスの光を、無に帰す光だ。
四匹も最後の力を振り絞り、アルセウスに攻撃を繰り出す。
ファイアローの炎。ロトムの電気。グレイシアの氷。ザシアンの剣。
全てが一つになり、ついにアルセウスに届いた。
攻撃を受けたアルセウスは、沈黙の後、彼を見る。
カントーでの旅の始まりから見てきた人間。
「あなたたちは、真の力を見せてくれました。これからのあなた、そしてあなたが生きていく宇宙を、私は祝福しましょう」
「己の限界に挑むことで あなたの世界を広げてください。あなたが望む限り、挑戦は続きます」
アルセウスが光に包まれる。
そして消えた。
審判は、終わったようだ。
気が付くと、元の世界に戻っていた。
混沌とした意識の中で、悠久の時をかけ、宇宙の始まりと終わりを見たかもしれないし、見ていないかもしれない。
なぜかシロナが目の前にいて、心配そうにこちらを見ている。
何やらどこからともなく突然現れたそうだ。
ここはシント遺跡という場所らしい。
アルセウスとシンオウ神話に関する話を聞かせてくれた。
もしかすると、アルフの遺跡と槍の柱で感じた視線はジガルデではなかったのか…?
ジガルデはこれから秩序の乱れたカロス地方に行くらしい。
必要なら呼んでほしい。この借りは返さないと、だよな。
ザシアンも、元の場所へ帰る。
彼女も自分の新しい役割を見つけたようだ。
短いアイコンタクトを掛け合って去っていった。
彼は見送った。
長い旅路だった。ファイアロー。ロトム。グレイシア。三匹も鳴いた。