彼はカミツレに会うために再びライモンシティへ訪れる。
シント遺跡からテレポートしてもらった。
いろいろ考えたが、イッシュで新たな生活を始めてみることにした。
すっきりした気持ちだ。
彼女は既に外で待っていた。一体どんな勘してんだ。
彼女の目は、期待と不安に揺れていた。
「帰ってきたのね」
彼女は彼を見つめた。
彼が彼女の手を取るとカミツレの目が潤んだ。
彼はカミツレを抱きしめた。
それから、彼とカミツレはソウリュウシティでアパートを借りて一緒に暮らし始めた。
ソウリュウジムのジムリーダー、シャガはとにかく暑苦しかったが、自分たちを気にかけてくれ、人気の少ない場所を用意してくれた。
小さな部屋だが、二人にはそれで充分だった。
過去と未来が絡み合う町。
新しい時代をいつも感じられる。
カミツレとならば、理想に満ちた未来が見られると思う。
エリカには、これまでの旅の話、元気でやっていること、そしてこれからの生活のこと、手紙を出した。
彼女はタマムシシティを愛している。
きっと自分で四天王にならないのも、そんな理由からなんじゃないだろうか。
ファイアローは、朝から飛び立ち夜になると戻ってくる。
元居た群れでいつの間にか伝説的な存在となっていたようで、ゴッドバードとか言われて教祖みたいな扱いを受けているらしい。
ロトムは、家電やテレビにいるようだ。
AI技術が進歩していけば、いつかロトムとも会話できるようになるかもしれないな。
そんな最先端かつ、人とポケモンの架け橋になるかもしれない存在だ。
テレビでは混沌とするカロスのニュースが流れている。
次はあいつの助けにもなってやらないとな。
グレイシアとは、相変わらず昔のように過ごしている。
時々、部屋に入ってきて、彼とカミツレの隣で寝ている。
カミツレのおかげでどんどん服も増えていっているようだ。
な、抗えないだろ?
そんなおれは、ただ静かに日々を過ごしていた。
そこに昔感じていた空虚はない。
満たされている。
最初はブラックシティでITビジネスに挑戦した。
ロトムにもちょっと手伝ってもらった。
とても刺激的だった。
力と金さえあれば成功できる資本主義の縮図のような街だった。
いろいろなことを学んだ。
仕事をする。あの時選ばなかった一つの道だ。
同年代のみんなもきっと同じように、どこかで働いているのだろう。
一定満足もしたし、お金も貯められた。
おれは、過去に諦めていたもう一つの道へ進むことにした。
大空を自由に飛ぶ。
昔はそんな理想を抱いていた少年だったっけ。
フキヨセシティに行く。
どうやら、フウロがフライトトレーニングをしてくれるようだ。
カミツレと仲がいいらしく、推薦してもらい、とんとん拍子に話が決まっていった。
もっと早く話しておけばよかったかな?
黒い電紋はもうない。
ある日、霧の向こうに、青白い光が見えた。
聞きなれた咆哮。
それだけで、充分だった。
ある日、雷雲が現れた。
だが、雨は降らない。
代わりに雷雲の中から雷が降ってくる。
師匠…挨拶のつもりなのか。
ある日、空を見上げると、たまたまフリーザーが飛んでいた。
向こうも気づいたようだが、降りてはこない。
ただ、空を一周して飛び去った。
元気だ、と伝えてくれたのだろう。
カミツレが彼の肩に頭を乗せた。
「綺麗」
そんな彼女の綺麗な横顔に見惚れていると彼女もこちらの視線に気付く。
照れたようにモジモジしながら、慌てたように言葉を紡いでくる。
「ああ、そう言えば今度ポケモンの大会に出るのだけれど、あなたのロトム貸してくれない?」
断る理由はなかった。カミツレとのバトルならきっとロトムも楽しめるだろう。
そんな他愛のない話をしながら、毎日を過ごしている。
エピローグ:青の旅
自分の人生は特別ではない、そう思っていた。
だが、間違っていた。
今、彼は生きている。
朝、目を覚ます。理由がある。
カミツレがそこにいるから。
食事をする。味がする。
ポケモンたちと一緒に食べるから。
時間も過ぎ、日々も流れてゆく。
だが、空虚さはもうない。
窓の外を見る。
グレイシアが寝そべっている。
空を見上げる。
ファイアローが飛んでいる。
部屋を見渡す。
ロトムがテレビに入り込んでいる。
そして——
遠くの空に、青い影が見えた。
隣には、カミツレがいる。
彼女も、遠くの空を見つめていた。
あの時、ふたご島で死のうとしていた自分。
もういない。
今の自分は、生きている。
本当の意味で、生きている。
ポケモンたちと。
愛する者と。
青の旅は、終わった。
だが——
物語は、続いていく。
彼とポケモンたち、そして愛する人との、新しい日々が。
諦めていた理想を求める新たな旅路が。